しがない俺が手にした力でやれること

hagedaijin

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6.ある日…街中で○○に出逢った

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「それでね、アッコたら…」

 隣でクラスメイトの安田敦子の話をしてくれる親友の増田加奈。

 彼女の楽しげな様子に微笑みながら、砂霧(さぎり)は何とはなしに街中を見まわす。

 昼休みを幾分か過ぎた市街地は、中間試験を来週に迎え、短縮時間割により帰宅の早い学生達の姿をチラホラ見かける。

 私と加奈は学生寮からの通いなので、学舎から直線距離で300メートル先にある旧学生寮に向けて足を運んでいた。

 この辺りは昔、農村地域だった頃は田畑以外何もなくて、学舎の周りも田畑で私たちが入寮している建物は、昔の小学校の校舎を廃校と同時に買い上げて学生寮に改装したものだそうだ。

 だから、学園敷地と旧学生寮は離れて建てられている。

 新学生寮は昨今の少子化のあおりを受け、生徒の減少から使用されなくなった校舎を改装したものだ。

 旧学生寮は【高等部】の学生が入寮し、新学生寮は【大学部】の学生と【大学院】の院生が入寮している。

 私たちが通う【清涼女学院】は明治から続く、知る人ぞ知る名門女子学校だ。

 下は【幼稚部】から始まり【初等部】【中等部】、私たちが所属する【高等部】、【大学部】【大学院】まで。

 基本、入学後はエスカレーター式に上の学部へと上がる。

 優秀な人材であれば他校からの転入手続きもでき、成績優秀者には飛び級制度もある。

 ここまで言うと、いいことづくめだけど……もちろん例外を上げれば、学業の成績やクラブ活動における実績で優秀さを示せなければ、落第もあり最悪の展開では退学もありうる。

 と、言っても今までの学園の歴史上、退学者はいないらしい。

 古くは政財界や豪商の子女が集う、将来の人脈形成や花嫁修業の場として創設されたらしい。
 
 近年に入り近隣の市外からの入学も広く行われている。

 といっても、入学金と毎年払わなければならない供託金は、一般家庭の収入状況によっては、お高く敷居も高い。

 ごく普通のサラリーマン家庭であるウチが、私だけでなく【初等部】に妹の裕子まで入れたのは予想外だった。

 祖父母が懇意にしている、代議士の中岡さんがそれらを用立てている、というような話を以前母がしてくれた。

 自宅近くのマンションに独り暮らしの母の妹の彩夢(あやめ)叔母さんがいるが、彼女も清涼女学院の【高等部】を卒業していた。

 在学時は県のコンクールで入賞したほどで、イラストレーターとして、ゲーム会社に就職している。

 その縁もあって、入学が容易に認められた、という要素もある。

 うちのがっこうはなんというか、入学の審査が学力以上に出自や能力面を重視している傾向があるので、【親族に優秀な事績を持つOGがいる】というのは、信用の面で考慮されている。


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 隣を歩く親友”加奈”は、優しくて親身になって色んな相談にのってくれる、私にはできすぎな友達だ。

 顔見知りのまったくいなかった【初等部】入学時から、一番に友達になってくれて、彼女を通して友人を増やすことができた。

 私が”家庭の問題”で悩んでいた時も何度か勇気づけてくれた。

 そのかいもあって、私は頑張れたと思う。共に【高等部】まで進学できて素直に嬉しい。

 なのに……私の”家庭の問題”は絶賛続行中で終わりが見えない。

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 私は日課のように繰り返される、両親の喧嘩とも言えない歪な関係に悩まされていた。

 弱気で無口な父は私の目から見ても平凡で、あけっぴろげで奔放な性格の母とは、家が隣通しの幼馴染同士だった。
 子供の頃は仲が良く婚約までしていた。

 でも、母が高校に入学する直前にあった出来事で、関係が一度こじれた。

 でも、そのこじれた関係を修復し、二人は子供の頃の約束通り結婚した。

 長女だった母の実家の鮎川家に婿養子に入り、長女の私”砂霧”と次女の裕子をもうけた後、祖父母の家に同居することになった。

 そんなどこにもある平凡な、それでいて幸せな夫婦生活は徐々にひび割れていった。

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 私が生まれた少し前ぐらいから、母は男遊びをするようになり、度々夫婦喧嘩をするようになった。

 私は2人が楽しげに話している姿を一度も見たことが無い。妹の裕子もそうだ。

 いがみ合いながらも、同居を続け今に至る。

 何で離婚しないのだろう?普通の家族ならそうなりかねないのに…




 母の行動は”火遊び”の段階を越え、もう”本気”の領域に入り込んでいるようだ。

 この間なんか、裕子が学校から帰ると玄関に見知らぬ男性の靴が揃えられ置いてあり、かすかな声がする居間をのぞき込むと、年配の男性と母が”いかがわしい”行為に及んでいるのを見てしまったらしい。

 私はわが耳を疑った。でも本当だった。

 加奈から、母と見知らぬ男性がホテル街へ入っていくの見た、と聞かされた。

 初め私は相手が父だろうと思った、でも加奈は違う男性だと言う。

 加奈は以前、うちの両親と面識を持っていて父の顔は知っているので、絶対に知らない男性だった、という。

 加奈からの電話に驚きながら、私はすぐさま教えられた場所の近くへ確認しに行った。

 すると、繁華街のはずれにあるラブホテルの玄関から、まるで恋人同士のような雰囲気で仲むじく腕を組む、見知らぬ男性と母が出てきたところを見てしまった。

 私は胸の内に押し込んでいられず、父に事の顛末を漏らさず話した。

 当然、父は激昂し帰宅した母へ詰め寄った。

 でも、それに対する開き直ったの母の『あなたは役立たずじゃない』という言葉にショックを受け、よろめき押し黙ってしまった父を見て、夫婦関係はもう修復不可能なのだと思った。

 母は母親である前に女で、私たち姉妹の”母親”ではなかった。

 私たち姉妹に対する接し方も”おざなり”で、裕子が叔母の家へ入り浸るようになっても放置を決め込み、家事もしなくなった。

 叔母のマンションでは、妹用の部屋まで用意されていて、滞在費等は祖父母が用立てている。

 祖父母に相談したこともあったが、あきらめたような疲れた表情を見せるばかりで何もしてくれなかった。

 何もできないのは、私も同じ。養われる立場で子供でしかない私には、どうすることもできなかった。





 そんな他と比べて歪な家族像を私たちは、子供の頃から見させられていた。

 叔母の彩夢が自宅を出て【清涼女学院】の学生寮に入ったのは、私が生まれたころぐらいらしいので、そんな父母の不仲な関係を見たくなかったからに違いない。



 【高等部】からは原則全寮制ではあるものの、学園近隣に在住なら自宅から通学できた。

 私も昨年まではそうするつもりだった。でも、最近別の問題が浮上した。

 最近になって私を見る父の目が何となく、イヤらしいような気持ち悪いものに変わってきた。

 実の父親であるはずなのに、まるで他人のような態度の父と家で過ごす時間が安心できないものへと変わった。

 偶に街中ですれ違う、男の人たちが私に向ける視線によく似ている。

 全身を舐めまわすように上から下まで見る。

 特に最近成長著しい胸のあたりを凝視する男性が多く、父の視線はソレよりも気持ち悪かった。

 私は何度も思い過ごし、思い過ごし、と思うようにしたけど……無理だった。

 【中等部】3年の時、学校から帰宅したときに父は、私の胸元を鼻息荒く凝視しながら出迎え、余りの気持ち悪さに私が急いで立ち去ろうとした際、後ろに振り替えると私のお尻を見ながら”ニヤニヤ”した表情を浮かべていた。

 ある日、私が入浴していると、今まで母親としか入浴してこなかったにもかかわらず、『たまには一緒に入ろうか?』と言われたり……断る旨を何度も言っているのに、無理やり風呂場と脱衣所を仕切るドアをこじ開けようとしたり。

……その時は、たまたま母がいつもより早く帰宅し、『ただいま』という声が聞こえたことで、慌てて脱衣所から逃げ出した。

 母にこのことを相談すると、すぐさま父を糾弾してくれた。

 でも、父が私を見る目は日増しにイヤらしく感じるようになり、自分の部屋に用心の為に鍵を何個もつけて就寝するようになった。

 夜中に目を覚ますと、かすかにドアのノブが回され、鍵を開けようとする”カチャカチャ”という音が聞こえたこともある。

 さすがに身の危険を覚えた私は、頼りにならない祖父母と家に寄り付かなくなった母は信用が置けなくいので、近くに住む叔母に相談した。

 叔母は私の話に親身に向き合い、問題解決の為に私を伴って祖父母に直談判にいってくれた。

 叔母のおかげで【中等部】卒業前に、特例で昨年末から学生寮に入寮し、今に至る。




 今でもたまに用事で自宅に戻ると、父は相変わらずいやらしい顔で私を見てくるので、相手にしない。

 妹の裕子が家事もせず家にも帰らない、母親のいない家でなく、叔母と同居することになった事はある意味良かったとは思う。

 私以上に幼い裕子が、あの変態の父に嫌な目にあわされるかも?と思うと眠れなくなるからだ。

 相談に親身になってくれる親友の加奈と叔母の彩夢がいなければ、自分は今頃どうなっていただろう?…と、よく考える。


……………………………………………………………………………………



「…で、こう言ってやったのよ……???…どうしたの”さっちゃん”。ぼんやり前の方を見て」

 うん?ああ、以前の事を思い出している間に、加奈の話は佳境を迎えていたようだ。

 気付かぬうちに前方を何ともなしに見ていた。

 よそ見をしていたことを加奈に謝ろうと、顔を向けようとして視界に一人の男性が目に入った。

 こちらに向かって歩いてくる、自分と同年代に見える青年。

 秋に入り始めたとはいえ残暑が残る今日この頃、丸坊主に近い刈上げた頭髪と涼しそうなTシャツ、デニムパンツ姿にスニーカー履き、何ら違和感はない。

 体型は細マッチョというのだろうか、均整がとれていて”すっきり”している。

 顔はお世辞にも”イケメン”ではないが、精悍さがある表情は人によっては好みが分かれるとは思うけど、私は少しイイなと思った。

 彼は私を見ている。でも、周囲の男性が向けるイヤな視線とも、時々私に告白してくる、同年代の少年達とも違う視線だった。

 私を見て、感心し驚き頷く。そして憐れむような表情を浮かべ微笑んだ。

 何なの??その反応。意味不明なんですけど。

「おや、おやおや?さっちゃんはあの人のこと気になるの?」

 気にならないわけがない。チョット文句を言ってやる。

 隣で親友が”キャーキャー”喜んでいるところ悪いけど、意味不な視線と勝手に憐れむ表情にむかついたので、抗議しようと一歩、青年に踏み出した……


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「……あの、ちょっと??!えっ?」


 ここ、どこ?

 砂霧は唐突に視界が変わり狼狽を隠せなかった。

 騒がしかった周囲の喧騒も加奈の喜ぶ声も聞こえなくなり、周囲をレンガ壁で四方を囲まれている。

 広さは3畳ぐらい。天井まではだいたい4メートル。床はフローリングで正面の壁に金属で補強された頑丈そうな扉がはめ込まれている。

 とりあえず扉に近づこうとした砂霧は、数歩も進まないうちに止まらなければならなかった。

 左手首に装着された腕輪から延びる鎖が、背後の壁に固定されていた。

 継ぎ目も全くなく溶接痕もない、どうやって装着されたかも外せるかも分からない腕輪。

 それを見て途方に暮れる。わたしはこれからどうなるんだろう?

 それにここはどこ?……加奈ちゃんは?


 そして鮎川砂霧の”時間”は止まった。

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コレクションNo.01

名前 鮎川 砂霧  
年齢 15歳 
身長 165センチ サイズ B 95 W 60 H 85
職業 清涼女学園高等部1年生
家族構成 父、母、妹、祖父、祖母、叔母
ユニークスキル 無
技能スキル 無
魔術スキル 無


 幸先のいいスタートだと言える。

 人助けと蒐集活動を同時にこなせるなんて良いことづくめだ。

 でも、この子。クラスメイトは”スキル所持者”だらけなのに、顔とバストのサイズ以外は”普通の子”だ。

 実際に話してみないと分からないけど、どんな子なんだろ。楽しみだ。

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 設定を考えていくのは好きなのですが、中々まとまらず時間が経ちましたが、第6話です。

 主人公視点ではありません。”涼”の視点で進めようと思ったのですが、他の人からの視点やそれぞれの背景なんかは、”鑑定”だよりの説明より分かりやすいんじゃないかと思いました。
 プロットは立てていても文章に起こすと難しいですね。
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