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閑話1
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女子寮に到着し、出迎えた寮生たちを視線で【魅了魔法】漬けにして一息。
夜のお店で商売女達に相手されるのもいいけど、若い女の子たちに”ちやほや”されるのも、時にはいいねぇ。
そんなことを考えながら、彼女たちの誘いに応えて玄関を上がろうとした涼だったが、立ち上げていたステータス画面に、八州姉妹(はちすかしまい)に”虫”がたかった、という”警告”がログ上に記された。
セレスディアから二人へのアプローチ許可を得てから、彼女たちの近況に変化がないか監視していた。
なるべくなら、彼女たちとは穏便な方法で関係構築をしたかった。
涼は、二人に近づくための”機会”をうかがっていた。
その網に都合がいい”虫”が、誘蛾灯に惹かれるように”甘い蜜”にたかりだした。
アカコレ(アカシックレコード)のログを見るに、彼らは涼が”砂霧”を拉致…もとい保護したことで、この時点では出会うはずの無かった、姉妹に目標を変えたようだった。
街中で”砂霧”をロックしていた二人が所属する【せいぎ倶楽部】
”せいぎ”は”正義”ではなく”性戯”、要は女の子たちをナンパして連れ去り、いかがわしいことをしようと集まったバカ集団だ。
リーダーは【芹沢会】の若頭の息子”充(みつる)”、大病院の院長の息子の誠二、芸能関係のネタ収集の為に武田プロモーション社長の息子の悟(さとる)………など、”親の因果が子に報う”がごとく、親が親なら子も子というか…親たちが設立した、ヤリサークルそのままをパクったような倶楽部を親の縁で知り合った、バカ者どもが復活させてしまった。
なぜ、父たちが自身のサークル活動に終止符を打ったのか、彼らは知らない。
”蛙の子は蛙”というが、彼らも父たちが犯した過ちを模倣するがごとく、市内の【芹沢会】所有ビルの地下1階に本拠を構え、活動していた。
充が悟を脅して紹介させた、武プロ所属で売れないアイドル達をコンパニオン代わりに連れ込み、誠二が都合した精神高揚系薬物で酩酊させて、廻してさんざんやりつくした挙句、芹沢会系列の風俗店へと流す、ということを繰り返していた。
それだけで飽き足らず、とうとう素人娘に手を出そうと考えたらしい。
それがたまたま、”砂霧”だったわけだが。
目の前で俺にかっさらわれ…次の獲物探索中に、姉妹に目を突けた、と。
二人が連れ込まれたのは雑居ビルの地下1階の閉店した店舗。
そこへと続く階段の踊り場周辺に、人気が無いことを確認した涼は、こちらに近づく麗奈の”視聴端子”を置き去りに転移した。
……………………………………………………………………………………
ちっ…親父の奴、日和(ひより)やがって……
充は足早に街の雑踏をくぐりぬけ、下校途中の学生が良く見渡せる場所を目指した。
充達【性戯倶楽部】の構成員は武プロの売れない所属アイドルを食い散らした。
しかし、彼女達は所属プロの社長にすでに手を付けられ、調教を受けた上で枕営業をしていた。
見た目もいまいちで体型もいまいち。
悟にまんまと騙されていたことに気付いた充は、彼を肉体言語で黙らせ事務所の極秘資料から”鮎川 砂霧”を見つけ、彼女が寮へ帰る時間を狙って行動にうつっていた。
芹沢会に入りたがっている悪がきを走らせ、【清涼女学園】の情報収集に努めた。
初めての”素人娘”捕獲に興奮を隠せなかった。
だが、事がうまく動き出した矢先、充に冷や水を浴びせたのは彼の父、芹沢 保(たもつ)。
アレは昨日の事。
いつも通り、根城にしている店舗へ向かおうとしていた充に、かかってきた携帯の着信音。
充は母親と共に高級マンションに住んでいるが、父の保は愛人宅を転々と泊まり歩いていた。
敵対組織に対する備え、だと言っていたが、どうだか。
充は保の行いが母親を裏切る行為だとは、欠片ほども思わず”いつか俺も”という考えだった。
そんな保が充を彼の”仕事場”に呼び出した。
「…邪魔するぜ。なんだよ親父。何か用か?」
充の無作法にもどこ吹く風、というように部屋奥のマホガニー製のデスクで自身の爪を爪磨きでこする保。
「おう、元気でやってるな……早速だがお前、最近派手に遊んでいるそうじゃねぇーか?」
「何のことだか…」
「ふんっ……まぁいい。陽一の奴がぼやいてやがったんでな。一応、くぎ射しとこうと思っただけだ」
「そっか、わかった。気を付ける」
”陽一”というのは武プロの社長、だったな…ちっ、悟め…後で覚えてろよ…
少ない会話に父が彼を気遣う気持ちを感じ、充は素直にうなずく。
「おいおいっ、殊勝だな。まぁいい、話はそれだけだ。小遣い少なくなってるだろ?もってけ」
ドサッ、と音がしそうなくらい分厚い財布を投げてきた保。
中身を確かめた充は、軽く200万はあることに驚き父親を見やった。
「ん?…多いか?まぁ、あれだ。しばらく活動を控えろ、サツが嗅ぎまわっている」
「…サツってあっち関連は、昇(のぼる)の父親が握りつぶしてくれるんだろ?」
充は保の学生時代の悪友で、次期警視総監候補と噂されている、昇の父”高見沢 恭平”の事を言った。
「…お前には判らんだろうが、ああいう手合いとは、程よい距離と塩梅な関係が、長続きの秘訣なのさ。弁護士の矢田の奴からも釘さされてるしな。今は動くな」
充は保の慎重すぎる態度にイライラがつのる。
自分は若いころにやらかしといて、俺には自重しろ、だとふざけるな!
「その顔はわかっていないようだな。ふん、痛い目にあって勉強するのは若いもんの特権だが…昔とは違う。権力は時には使いようだが、厄介な奴が嗅ぎまわっている。高見沢で抑えきれないかもなぁ」
「厄介な奴って誰だよ?」
「逆巻 謙二。今は地域課にいるが、”カン”が鋭く…証拠探しの一芸持ち。厄介な奴さ」
「…ほどほどに気をつけるよ。じゃ」「まて」
まだ、何かあんのかよ。思ってたよりも親父は過保護だったようだ。
げんなりする充は保の制止に応え室内に戻る。
「お前の事だから、そろそろ素人に手~出す頃合いだと思うが?……図星か」
何でわかるんだ?この親父。
「何でわかる?みたいな顔してるな。ははっ…お前は昔の俺の若いころにクリソツだよ。向こう見ずで無鉄砲で恐いもの知らずで……野心家だ。違うか?」
ああ、その通りだ。俺はいつか親父を越えて上に立つ!
「お前の好きにすればいい……と、突き放すのも酷だ。もう一つ忠告してやる。【権田原組】には手を出すな」
【権田原組】は、今うちの芹沢会が手を伸ばしているシマの古株。
今時、任侠だ義侠だ、友誼だと…古臭いことを平気で標榜している。
取るに足らない弱小やくざ、と聞いていた。
「こいつらには特に気ぃーつけろ。この女はやばい」
親父が写真を数枚デスクに置く。70代ぐらいで頬傷を持つ白髪の男、屈強なプロレスラーを思わせる風貌の男、20代前半に見える色気のあるまなざしが特徴的な美女、有名女子高の制服を着た二人の少女の合計5枚の写真。
その中の美女を指さし、親父は言った。
「その年で”腎虚(じんきょ)”にはなりたくねぇーだろ?」
何言ってる?”腎虚”…ってあれか、やり過ぎるとなるっていう。
充は親父の”じんきょ”という単語にいぶかしげに首を傾げ、興味深そうに写真の女を見た。
見れば見るほどいい女で、そこいらで見られない”妖艶(ようえん)”と、これほど似合う人間はいないだろう。
是非とも相手をしてやりたいものだ。仲間を呼んで…
「てめぇーの顔見りゃ何考えてるかは、判るがこいつは”蟒蛇(うわばみ)”で底なし、だからなぁ。てめぇーの仲間集めて、かかっても逆に喰われる。老婆心ながら年上からの忠告、覚えとけや」
親父の顔は青ざめ真面目過ぎる、マジなのか?
どことなく美女の遺伝子を受け継いだ少女達に目を向ける。
「この二人は?」
「ああ、”清涼女学園”に通うこいつの娘たちだな。奴らは身内を大事にする。手出すなよ?」
「……親父がそこまで言うんだ。おとなしくしてるよ」
充に退出の許可をもらい事務所を後にする。そういえば今頃だったな、”清涼”の下校時間は。
まぁ、”権田原”に手を出さなきゃいいわけだし。ちょっくら”砂霧ちゃん”をエスコートすっか、ぬふふふっ。
……………………………………………………………………………………
充が事務所を出るタイミングで入れ替わりに入ってきた保の左腕ともいえる男。
「若、いいんですかい。ぼっちゃんに”あんな言い方”をしたら…」
にやり、と人の悪そうな顔を向け保は答える。
「まぁ、なるようになるんじゃねぇ?いざとなったら、チャカでズドンよ」
保は自身の手で”ピストル”を構える真似をして見せる。
「オヤジは”セレスタン”に玉取られたくないから、手出し厳禁というフレでしたが」
「おめーも信じてるのか?ありゃーな、耄碌(もうろく)じじいの戯言(たわごと)よ。それに30年前の事だ」
自分の父で”芹沢会”の実質トップの会長をこき下ろす保に呆れながらも納得してうなづく部下。
「俺は期待してるのよ、充の行動力にな」
どこまで本気か分からない、保の態度。
賽は投げられた。保の焚き付けに充のやる気が高められたか、は今は誰も知らない。
……………………………………………………………………………………
さっきのは何だったんだ?
…砂霧拉致の為に市街地に繰り出し、目標を見つけ…さぁ、という時に消えてしまった。
そうとしか表現できなかった。それなのに周囲の群衆は、最初驚きはしたものの何もなかったように行動をはじめ、全てを見ていた充には訳が分からなかった。
砂霧が目の前で消えたことも、何もなかったように行動し始めた人々の様子も。
分からないながらも、この場所を離れなければならない焦燥に駆られ、郊外へと歩いてきてしまった。
ちっ……今日はついてねー…親父に小言いわれるわ、獲物は消えるわ。このまま、帰るか。
そう思いながら、何か釈然としない気持ちを持て余し、路地をさまよう。
ここでどんな神の偶然が作用したのか。充は出会ってしまった、最高の獲物に。
んっ?ありゃあ……権田原の…ふふん、俺はついてる。
「やぁ、俺、充。俺達とイイ事しようぜ」
新たな子羊を求めさまよい…極上の獲物を得た。俺はついている。
……………………………………………………………………………………
……………………………………………………………………………………
あけましておめでとうございます。本年も宜しくお願い致します。
という割には日にちは経っているわけですが、なかなか時間が取れなかったことが一つ、乗りに乗ってかけなかったのが一つ。
よく、小説作家の方があとがきで、”キャラクターが勝手に動き出す”なんて表現されますが、ほんとに全く実感する、というかなんというか。
打ち込めるときは打ち込めるのに、ノレナイ時はノレナイ。そんなときもあります。
悪い側の話………という割には”性悪”の部類ですが、世の中には”ありふれた”あっちこっちにいる方々だと、思います。
本筋、は”ファンタジー”と”異世界”モノを謡いながら、未だに”現代”に縛られ”どこへも”言っていない状況です。
ですから、この話は”閑話”です。数話や悪だけに”やられ”確定キャラに色付けしようとすると、駄文が続く…ある設定を成り立たせるために蛇足を継ぎ足していく、みたいな作業でした。
彼ら”やられ役”に重厚な設定は、”いらない”ですね。自分的に面白くないです。
ですが、時間をかけて書いてしまったものを消去するのは忍びない、という思いです。
夜のお店で商売女達に相手されるのもいいけど、若い女の子たちに”ちやほや”されるのも、時にはいいねぇ。
そんなことを考えながら、彼女たちの誘いに応えて玄関を上がろうとした涼だったが、立ち上げていたステータス画面に、八州姉妹(はちすかしまい)に”虫”がたかった、という”警告”がログ上に記された。
セレスディアから二人へのアプローチ許可を得てから、彼女たちの近況に変化がないか監視していた。
なるべくなら、彼女たちとは穏便な方法で関係構築をしたかった。
涼は、二人に近づくための”機会”をうかがっていた。
その網に都合がいい”虫”が、誘蛾灯に惹かれるように”甘い蜜”にたかりだした。
アカコレ(アカシックレコード)のログを見るに、彼らは涼が”砂霧”を拉致…もとい保護したことで、この時点では出会うはずの無かった、姉妹に目標を変えたようだった。
街中で”砂霧”をロックしていた二人が所属する【せいぎ倶楽部】
”せいぎ”は”正義”ではなく”性戯”、要は女の子たちをナンパして連れ去り、いかがわしいことをしようと集まったバカ集団だ。
リーダーは【芹沢会】の若頭の息子”充(みつる)”、大病院の院長の息子の誠二、芸能関係のネタ収集の為に武田プロモーション社長の息子の悟(さとる)………など、”親の因果が子に報う”がごとく、親が親なら子も子というか…親たちが設立した、ヤリサークルそのままをパクったような倶楽部を親の縁で知り合った、バカ者どもが復活させてしまった。
なぜ、父たちが自身のサークル活動に終止符を打ったのか、彼らは知らない。
”蛙の子は蛙”というが、彼らも父たちが犯した過ちを模倣するがごとく、市内の【芹沢会】所有ビルの地下1階に本拠を構え、活動していた。
充が悟を脅して紹介させた、武プロ所属で売れないアイドル達をコンパニオン代わりに連れ込み、誠二が都合した精神高揚系薬物で酩酊させて、廻してさんざんやりつくした挙句、芹沢会系列の風俗店へと流す、ということを繰り返していた。
それだけで飽き足らず、とうとう素人娘に手を出そうと考えたらしい。
それがたまたま、”砂霧”だったわけだが。
目の前で俺にかっさらわれ…次の獲物探索中に、姉妹に目を突けた、と。
二人が連れ込まれたのは雑居ビルの地下1階の閉店した店舗。
そこへと続く階段の踊り場周辺に、人気が無いことを確認した涼は、こちらに近づく麗奈の”視聴端子”を置き去りに転移した。
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ちっ…親父の奴、日和(ひより)やがって……
充は足早に街の雑踏をくぐりぬけ、下校途中の学生が良く見渡せる場所を目指した。
充達【性戯倶楽部】の構成員は武プロの売れない所属アイドルを食い散らした。
しかし、彼女達は所属プロの社長にすでに手を付けられ、調教を受けた上で枕営業をしていた。
見た目もいまいちで体型もいまいち。
悟にまんまと騙されていたことに気付いた充は、彼を肉体言語で黙らせ事務所の極秘資料から”鮎川 砂霧”を見つけ、彼女が寮へ帰る時間を狙って行動にうつっていた。
芹沢会に入りたがっている悪がきを走らせ、【清涼女学園】の情報収集に努めた。
初めての”素人娘”捕獲に興奮を隠せなかった。
だが、事がうまく動き出した矢先、充に冷や水を浴びせたのは彼の父、芹沢 保(たもつ)。
アレは昨日の事。
いつも通り、根城にしている店舗へ向かおうとしていた充に、かかってきた携帯の着信音。
充は母親と共に高級マンションに住んでいるが、父の保は愛人宅を転々と泊まり歩いていた。
敵対組織に対する備え、だと言っていたが、どうだか。
充は保の行いが母親を裏切る行為だとは、欠片ほども思わず”いつか俺も”という考えだった。
そんな保が充を彼の”仕事場”に呼び出した。
「…邪魔するぜ。なんだよ親父。何か用か?」
充の無作法にもどこ吹く風、というように部屋奥のマホガニー製のデスクで自身の爪を爪磨きでこする保。
「おう、元気でやってるな……早速だがお前、最近派手に遊んでいるそうじゃねぇーか?」
「何のことだか…」
「ふんっ……まぁいい。陽一の奴がぼやいてやがったんでな。一応、くぎ射しとこうと思っただけだ」
「そっか、わかった。気を付ける」
”陽一”というのは武プロの社長、だったな…ちっ、悟め…後で覚えてろよ…
少ない会話に父が彼を気遣う気持ちを感じ、充は素直にうなずく。
「おいおいっ、殊勝だな。まぁいい、話はそれだけだ。小遣い少なくなってるだろ?もってけ」
ドサッ、と音がしそうなくらい分厚い財布を投げてきた保。
中身を確かめた充は、軽く200万はあることに驚き父親を見やった。
「ん?…多いか?まぁ、あれだ。しばらく活動を控えろ、サツが嗅ぎまわっている」
「…サツってあっち関連は、昇(のぼる)の父親が握りつぶしてくれるんだろ?」
充は保の学生時代の悪友で、次期警視総監候補と噂されている、昇の父”高見沢 恭平”の事を言った。
「…お前には判らんだろうが、ああいう手合いとは、程よい距離と塩梅な関係が、長続きの秘訣なのさ。弁護士の矢田の奴からも釘さされてるしな。今は動くな」
充は保の慎重すぎる態度にイライラがつのる。
自分は若いころにやらかしといて、俺には自重しろ、だとふざけるな!
「その顔はわかっていないようだな。ふん、痛い目にあって勉強するのは若いもんの特権だが…昔とは違う。権力は時には使いようだが、厄介な奴が嗅ぎまわっている。高見沢で抑えきれないかもなぁ」
「厄介な奴って誰だよ?」
「逆巻 謙二。今は地域課にいるが、”カン”が鋭く…証拠探しの一芸持ち。厄介な奴さ」
「…ほどほどに気をつけるよ。じゃ」「まて」
まだ、何かあんのかよ。思ってたよりも親父は過保護だったようだ。
げんなりする充は保の制止に応え室内に戻る。
「お前の事だから、そろそろ素人に手~出す頃合いだと思うが?……図星か」
何でわかるんだ?この親父。
「何でわかる?みたいな顔してるな。ははっ…お前は昔の俺の若いころにクリソツだよ。向こう見ずで無鉄砲で恐いもの知らずで……野心家だ。違うか?」
ああ、その通りだ。俺はいつか親父を越えて上に立つ!
「お前の好きにすればいい……と、突き放すのも酷だ。もう一つ忠告してやる。【権田原組】には手を出すな」
【権田原組】は、今うちの芹沢会が手を伸ばしているシマの古株。
今時、任侠だ義侠だ、友誼だと…古臭いことを平気で標榜している。
取るに足らない弱小やくざ、と聞いていた。
「こいつらには特に気ぃーつけろ。この女はやばい」
親父が写真を数枚デスクに置く。70代ぐらいで頬傷を持つ白髪の男、屈強なプロレスラーを思わせる風貌の男、20代前半に見える色気のあるまなざしが特徴的な美女、有名女子高の制服を着た二人の少女の合計5枚の写真。
その中の美女を指さし、親父は言った。
「その年で”腎虚(じんきょ)”にはなりたくねぇーだろ?」
何言ってる?”腎虚”…ってあれか、やり過ぎるとなるっていう。
充は親父の”じんきょ”という単語にいぶかしげに首を傾げ、興味深そうに写真の女を見た。
見れば見るほどいい女で、そこいらで見られない”妖艶(ようえん)”と、これほど似合う人間はいないだろう。
是非とも相手をしてやりたいものだ。仲間を呼んで…
「てめぇーの顔見りゃ何考えてるかは、判るがこいつは”蟒蛇(うわばみ)”で底なし、だからなぁ。てめぇーの仲間集めて、かかっても逆に喰われる。老婆心ながら年上からの忠告、覚えとけや」
親父の顔は青ざめ真面目過ぎる、マジなのか?
どことなく美女の遺伝子を受け継いだ少女達に目を向ける。
「この二人は?」
「ああ、”清涼女学園”に通うこいつの娘たちだな。奴らは身内を大事にする。手出すなよ?」
「……親父がそこまで言うんだ。おとなしくしてるよ」
充に退出の許可をもらい事務所を後にする。そういえば今頃だったな、”清涼”の下校時間は。
まぁ、”権田原”に手を出さなきゃいいわけだし。ちょっくら”砂霧ちゃん”をエスコートすっか、ぬふふふっ。
……………………………………………………………………………………
充が事務所を出るタイミングで入れ替わりに入ってきた保の左腕ともいえる男。
「若、いいんですかい。ぼっちゃんに”あんな言い方”をしたら…」
にやり、と人の悪そうな顔を向け保は答える。
「まぁ、なるようになるんじゃねぇ?いざとなったら、チャカでズドンよ」
保は自身の手で”ピストル”を構える真似をして見せる。
「オヤジは”セレスタン”に玉取られたくないから、手出し厳禁というフレでしたが」
「おめーも信じてるのか?ありゃーな、耄碌(もうろく)じじいの戯言(たわごと)よ。それに30年前の事だ」
自分の父で”芹沢会”の実質トップの会長をこき下ろす保に呆れながらも納得してうなづく部下。
「俺は期待してるのよ、充の行動力にな」
どこまで本気か分からない、保の態度。
賽は投げられた。保の焚き付けに充のやる気が高められたか、は今は誰も知らない。
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さっきのは何だったんだ?
…砂霧拉致の為に市街地に繰り出し、目標を見つけ…さぁ、という時に消えてしまった。
そうとしか表現できなかった。それなのに周囲の群衆は、最初驚きはしたものの何もなかったように行動をはじめ、全てを見ていた充には訳が分からなかった。
砂霧が目の前で消えたことも、何もなかったように行動し始めた人々の様子も。
分からないながらも、この場所を離れなければならない焦燥に駆られ、郊外へと歩いてきてしまった。
ちっ……今日はついてねー…親父に小言いわれるわ、獲物は消えるわ。このまま、帰るか。
そう思いながら、何か釈然としない気持ちを持て余し、路地をさまよう。
ここでどんな神の偶然が作用したのか。充は出会ってしまった、最高の獲物に。
んっ?ありゃあ……権田原の…ふふん、俺はついてる。
「やぁ、俺、充。俺達とイイ事しようぜ」
新たな子羊を求めさまよい…極上の獲物を得た。俺はついている。
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あけましておめでとうございます。本年も宜しくお願い致します。
という割には日にちは経っているわけですが、なかなか時間が取れなかったことが一つ、乗りに乗ってかけなかったのが一つ。
よく、小説作家の方があとがきで、”キャラクターが勝手に動き出す”なんて表現されますが、ほんとに全く実感する、というかなんというか。
打ち込めるときは打ち込めるのに、ノレナイ時はノレナイ。そんなときもあります。
悪い側の話………という割には”性悪”の部類ですが、世の中には”ありふれた”あっちこっちにいる方々だと、思います。
本筋、は”ファンタジー”と”異世界”モノを謡いながら、未だに”現代”に縛られ”どこへも”言っていない状況です。
ですから、この話は”閑話”です。数話や悪だけに”やられ”確定キャラに色付けしようとすると、駄文が続く…ある設定を成り立たせるために蛇足を継ぎ足していく、みたいな作業でした。
彼ら”やられ役”に重厚な設定は、”いらない”ですね。自分的に面白くないです。
ですが、時間をかけて書いてしまったものを消去するのは忍びない、という思いです。
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