放課後の事件簿〜この美人探偵は凄腕なのにやる気がない〜

黄舞

文字の大きさ
5 / 13

第5話【笹山という男】

しおりを挟む
「これが……あの日乗ってた冷車れいしゃ……と同じやつだ。本当のやつは今警察だ……」
「はぁはぁ。なるほど。改めて近くで見ると結構大きいのですね。中を拝見してもよろしいでしょうか?」

 笹山さんに連れられて外の倉庫にある件の冷蔵車を見せてもらっています。どうやらというか、事故にしろ殺人にしろ事件があった車両ですから、実際の車は証拠として警察に預けられているようです。
 笹山さんは無言で頷きながら後ろに周り、扉を開けて中を見せてくれました。この笹山さんという方は歳は50歳くらいでしょうか。白髪が混じった短髪で、顔には日焼けとシワが目立ちます。

 体付きは大きく、巻くし上げた袖から見える腕は僕の脚くらいありそうです。性格は落ち着いていると言うよりは、人間関係が苦手そうです。ぼそぼそと途切れ途切れに話すので少し聞き取りにくいです。

「中は……当然カラなのですね。当日は相当な量が積まれていたのですか?」
「いや……最近は不景気でな。ウチみたいな零細には仕事が回ってこないんだ……しかし大手はいつも人手不足って言ってやがる……全く嫌な世の中だぜ……」

「では当日はそんなに積荷は多くなかったと?」

 笹山さんはまた無言で頷きました。その笹山さんに向かってさっきは無言を守っていた先生が突然質問を始めました。

「お前が最後にガイシャを見たのはいつだ?」
「……外車?」

「被害者、つまり社長だ」
「詳しく覚えてないが……事件の三日前が最後だな……」

 僕はメモを取りながら、おや? と思いました。その間二人はお互いどこにいたのでしょう?

「すいません。その三日前から事件までは社長と笹山さんはそれぞれどうしていたんです?」
「俺は隔日で夜にここに来て運転して夕方に車を返す……社長会うのは……いつも車を返す夕方だな……毎日社長はその時間は会社にいるんだ……次の日は俺は休みだったし、その次の日は社長はもう帰っている時間だ……」

 事件の三日前、つまり24日の夕方という事ですね。25日は休みで、26日の夜に車に乗って運転し、27日の朝に死体になった毛利社長と再開したと。ちゃんとメモ取りましたよ。
 あれ? 僕は時系列のメモを見て、疑問に思いました。あとで先生に聞いてみましょう。

「ちなみにこういっては失礼なんですが、笹山様が毛利様の死因に直接的に関連しているなんて話もございまして……」
「俺はやってない!!」

 今までの声とは打って変わって大きな声を出して、笹山さんは冷蔵車の荷台の壁を勢いよく横手でん殴りつけました。僕はびっくりして身体に電気が走ったみたいにビクッとしてしまいました。轟さんは相変わらず同じ笑顔です。

「分かりました。大変失礼いたしました。また何かあればよろしくお願いいたします」
「俺は……やってない……」

 去り際に呟いた笹山さんの顔は、とても悲しそうな表情をしていたように見えました。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

「地味ブス」と捨てられた私、文化祭の大型スクリーンで王子様の裏の顔を全校生に配信します

スカッと文庫
恋愛
「お前みたいな地味女、引き立て役にもならないんだよ」 眼鏡にボサボサ頭の特待生・澪(みお)は、全校生徒が見守る中、恋人だった学園の王子・ハルトから冷酷に捨てられた。 隣には、可憐な微笑みを浮かべる転校生・エマ。 エマの自作自演により「いじめの犯人」という濡れ衣まで着せられ、学園中から蔑まれる澪。 しかし、彼女を嘲笑う者たちはまだ知らない。 彼女が眼鏡の奥に、誰もが平伏す「真実の美貌」と、学園さえも支配できる「最強の背景」を隠していることを――。 「……ねぇ、文化祭、最高のステージにしてあげる」 裏切りへのカウントダウンが今、始まる。 スクリーンの裏側を暴き、傲慢な王子と偽りのヒロインを奈落へ突き落とす、痛快・学園下剋上ファンタジー!

義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。

石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。 実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。 そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。 血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。 この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。 扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

物置部屋に追いやられた伯爵令嬢ですが、公爵様に見初められて人生逆転しました〜妹の引き立て役だったのに、今では社交界の花と呼ばれています〜

丸顔ちゃん。
恋愛
伯爵家の令嬢セレナは、実母の死後、継母と義妹に虐げられて育った。 与えられた部屋は使用人以下の物置、食事は残飯、服はボロ。 専属侍女も与えられず、家の運営や帳簿管理まで押し付けられ、 失敗すれば鞭打ち――それが彼女の日常だった。 そんなある日、世間体のためだけに同行させられた夜会で、 セレナは公爵家の跡取りレオンと出会う。 「あなたの瞳は、こんな場所に閉じ込めていいものではない」 彼はセレナの知性と静かな強さに一瞬で心を奪われ、 彼女の境遇を知ると激怒し、家族の前で堂々と求婚する。 嫁ぎ先の公爵家で、セレナは初めて“人として扱われ”、 広い部屋、美味しい食事、優しい侍女たちに囲まれ、 独学で身につけた知識を活かして家の運営でも大活躍。 栄養と愛情を取り戻したセレナは、 誰もが振り返るほどの美しさを開花させ、 社交界で注目される存在となる。 一方、セレナを失った伯爵家は、 彼女の能力なしでは立ち行かず、 ゆっくりと没落していくのだった――。 虐げられた令嬢が、公爵の愛と自分の才能で幸せを掴む逆転物語。

短編【シークレットベビー】契約結婚の初夜の後でいきなり離縁されたのでお腹の子はひとりで立派に育てます 〜銀の仮面の侯爵と秘密の愛し子〜

美咲アリス
恋愛
レティシアは義母と妹からのいじめから逃げるために契約結婚をする。結婚相手は醜い傷跡を銀の仮面で隠した侯爵のクラウスだ。「どんなに恐ろしいお方かしら⋯⋯」震えながら初夜をむかえるがクラウスは想像以上に甘い初体験を与えてくれた。「私たち、うまくやっていけるかもしれないわ」小さな希望を持つレティシア。だけどなぜかいきなり離縁をされてしまって⋯⋯?

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

【完結】ドアマットに気付かない系夫の謝罪は死んだ妻には届かない 

堀 和三盆
恋愛
 一年にわたる長期出張から戻ると、愛する妻のシェルタが帰らぬ人になっていた。流行病に罹ったらしく、感染を避けるためにと火葬をされて骨になった妻は墓の下。  信じられなかった。  母を責め使用人を責めて暴れ回って、僕は自らの身に降りかかった突然の不幸を嘆いた。まだ、結婚して3年もたっていないというのに……。  そんな中。僕は遺品の整理中に隠すようにして仕舞われていた妻の日記帳を見つけてしまう。愛する妻が最後に何を考えていたのかを知る手段になるかもしれない。そんな軽い気持ちで日記を開いて戦慄した。  日記には妻がこの家に嫁いでから病に倒れるまでの――母や使用人からの壮絶な嫌がらせの数々が綴られていたのだ。

処理中です...