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第2章
第16話
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前話に続き、少し残酷な描写があります。苦手な方は注意してください。
場面転換(◇)以降が対象になります。
文末にその部分のまとめを書いておきますので、読み飛ばした方はまとめを読んでください。
◇◇◇◇◇◇
「サラちゃんに借りるのはどうかな・・・?」
誰かがそう呟いた。確かにAランクになったサラなら村の納税額くらい用立てるのはわけないだろう。しかし。
「ばかやろう! てめぇ恥ってもんがねぇのか! 大体誰が頼むんだ! カインにやらせるつもりか!」
ウィルが怒鳴り声を上げた。
「いや。もしどうしようもないのならひとつの案として考えておくのはいいだろう。もしもの時には俺が直接頼んでもいい。優しい子だ。きっと貸してくれるだろう。もしかしたら返さなくていいとまで言ってくれるかもしれない。でもだ。今年はそれで良くても、来年以降はどうする?毎年頼み込むのか?一人の少女に頼らないと存続できない村なんて、存続しない方がいいと俺は思うがね」
「カインの言う通りだ。確かに今緊急で必要なことは今年の税をどうするかだが、今後のことも考えなくちゃなんねぇ。それにサラちゃんはもう村を出た子だ。村のこととは関係ねぇ」
「思うんだが、まずは領主代行の言う通り、この村の作物や羊毛が他よりも高く売れるのかどうか調べないか? 今年とれた羊毛はまだ売っていないだろう? うまく高く売れるならいくらかの足しになるだろう。なんだったら今年は取れた羊毛を全部売ってもいい。寒さを凌ぐ衣類が足りない家は言ってくれれば俺が何とかしよう」
「そうだな! それにもし村の小麦が高く売れるなら、納める時に融通してくれるかもしれねぇ。いや! そうなるよう俺が説得しよう。なんたって、質がいいって言い出したのは向こうだからな。質のいい作物を作ったら税を上げるって言うんだから、その質のいい作物を納めたら質の悪いのと同じ量が必要ってことにはなるまい」
カインの一言で場が動き出した。集まった男達は早速にと村に備蓄されている売る用の作物や羊毛がどれだけあるのか調べ始めた。
その他にも近くの森から取れる木材を売りに出してはどうかなどの案が出て、沈んでいた空気はいくらか明るくなった。
◇
3人は順調に旅を続けた。あの盗賊以降も、何度か魔物や盗賊に襲われたが、どれも取るに足らない相手であり、一つの被害も受けることはなかった。旅程も残りわずかというところで、異変は起こった。
街道の向こうから男が息を切らしながら走ってきた。見た目は村人のそれであり、その形相は何か恐ろしいものから命からがら逃げだしているようだった。
一瞬、そうやって油断を誘う盗賊の手口かとも思ったが、あまりにも真に迫っている。その線はないだろう。
男は無我夢中で走っているようで、こちらが近づいていることになかなか気づかなかったようだが、さすがに馬車の騒音に気付き、顔こちらに向けるとひいっと声を上げるとその場にへたり込んでしまった。
よほど長時間走っていたのか、足ががくがく震え、顔は滝のような汗をかいている。
「・・・! ・・・・・・! ひぃ! た・・・・ひぃ!! た・・助けてくれ!」
走り過ぎたせいか、それとも別の理由か、声にならない声で男は喘ぐように懸命に助けを求めた。
「落ち着いてください。どうしたんですか? ここは安全です。私達はSランクの冒険者です」
サラは馬車から降りて、男に声をかけた。男その言葉に少し落ち着いたのか、過呼吸気味の息を落ち着かせ、何度か深呼吸を繰り返すとこう切り出した。
「俺はこの先の村のもんだ。今日用事があって、朝から村の東の森ん中に行ってたんだが、村に戻ると・・・誰もいなくなってたんだ!」
「いなくなっていた? いなくなっていたとはどういうことです?」
「なんだか分からねぇ。村に戻っても辺りに人っ子一人見つからねぇから、変だなと思って、そしたらよ! 赤かったんだよ! 辺り中! 血だ! 血の海だったんだ! 大声上げてもよ! 誰も返事しねぇんだよ・・・。俺、恐ろしくて。俺・・・」
「なんですって?!」
どうやらこの先の村が魔物にでも襲われたらしい。少なくともそれなりの数が犠牲になっているようだ。
それが本当なら、まずは状況を確認するために村へ行かなくては。
どちらにしろ、今日はその村に一泊する予定だったのだからそんなことがなくとも向かうのだが、危険な魔物が近くにいるとなると、気を引き締めなくては。
3人は男に一緒に村に行くよう勧めたが、男は頑なにあの村にはもう戻りたくないと言った。
男を前の町まで送り届け、再度出発するということも考えたが、結局、男には自力で町まで行ってもらい、3人は村まで進むことになった。
町への道はすでに魔物や盗賊も倒されているから危険は少ないだろうという判断だった。
村に着くと確かに男の言ったように人影は見当たらなかった。かと言って、魔物に襲われた村という印象も外から見る分にはなかった。
建物が破壊されているような形跡が見られなかったからだ。しかし、村の中に足を踏み入れると、状況は一変した。
血の海、とは言い難いが、至る所に血の跡が出来ていた。しかし、妙に綺麗すぎた。
確かに逃げ回ったような痕跡が見られるものの、争った痕跡や破壊されたものなどがほとんど見受けられなかった。
また、本来ならばあるべきものがそこにはなかった。死体だ。魔物に襲われて殺されたとしてその死体は何処に行ったのか。
血の跡を見る限り、至る所で殺されているようだが、どこにも死体は見つからなかったし、死体を移動させたような跡も見られなかった。
まるで殺したその場で死体を消したように見える。人間を襲い食べる魔物もいるが、それにしても食べ残しや骨が全くないのはどういうことだろうか。
それともう一つ気になることは、血の跡が村の外には全くないことだ。ばらばらに逃げ惑う村人を一切に村の外に逃がさず殺すなど出来るのだろうか。
「想像以上に大変なことが起きたみたいね」
「恐らくあの男の言う通り、村人は全滅。逃げ出せた人は一人もいないでしょうね。それにしても一体死体は何処へ行ったのかしら。全て食べたっていうなら骨まで食べたことになるわ。相当の量よ」
「お、恐ろしいこと平気で言うのね・・・。あなたたち。さすがは冒険者なのかしら」
惨状に真っ青な顔したシャルルはこの村を見て回る間に何度か戻してしまっていた。御者も同様だ。
血やもしかしたらあるかもしれない死体など見たくないと馬車の中に残る主張をしたのだが、2人が村を回っている間に馬車が襲われては危険だということで、2人を同行させていた。
「それで、これからどうするの?」
「ひとまず今日はもう日が暮れそうだから、予定通りこの村で一泊して、次の町を目指しましょう。この村の現状を伝えないと。本当は私達はここに残って2人だけで町に行ってもらうのがいいのだけど、途中で襲われる危険性もあるからそれは出来ないものね」
「この村に泊まるの?! 冗談でしょう?」
「冗談じゃないわ。このまま次の町に進めば、野宿になるわ。危険な魔物がいる可能性がある以上、それは得策じゃない。幸い家はたくさんあることだし、綺麗そうな家を探しましょう」
シャルルはこの時ばかりは高ランクの冒険者と旅を共にしていることを恨めしく思った。
◇◇◇◇◇◇
まとめ:3人の旅の途中に立ち寄った村人が全員殺されたようだが、死体は見つからなかった。3人は(御者も)その村に一泊することになった。
場面転換(◇)以降が対象になります。
文末にその部分のまとめを書いておきますので、読み飛ばした方はまとめを読んでください。
◇◇◇◇◇◇
「サラちゃんに借りるのはどうかな・・・?」
誰かがそう呟いた。確かにAランクになったサラなら村の納税額くらい用立てるのはわけないだろう。しかし。
「ばかやろう! てめぇ恥ってもんがねぇのか! 大体誰が頼むんだ! カインにやらせるつもりか!」
ウィルが怒鳴り声を上げた。
「いや。もしどうしようもないのならひとつの案として考えておくのはいいだろう。もしもの時には俺が直接頼んでもいい。優しい子だ。きっと貸してくれるだろう。もしかしたら返さなくていいとまで言ってくれるかもしれない。でもだ。今年はそれで良くても、来年以降はどうする?毎年頼み込むのか?一人の少女に頼らないと存続できない村なんて、存続しない方がいいと俺は思うがね」
「カインの言う通りだ。確かに今緊急で必要なことは今年の税をどうするかだが、今後のことも考えなくちゃなんねぇ。それにサラちゃんはもう村を出た子だ。村のこととは関係ねぇ」
「思うんだが、まずは領主代行の言う通り、この村の作物や羊毛が他よりも高く売れるのかどうか調べないか? 今年とれた羊毛はまだ売っていないだろう? うまく高く売れるならいくらかの足しになるだろう。なんだったら今年は取れた羊毛を全部売ってもいい。寒さを凌ぐ衣類が足りない家は言ってくれれば俺が何とかしよう」
「そうだな! それにもし村の小麦が高く売れるなら、納める時に融通してくれるかもしれねぇ。いや! そうなるよう俺が説得しよう。なんたって、質がいいって言い出したのは向こうだからな。質のいい作物を作ったら税を上げるって言うんだから、その質のいい作物を納めたら質の悪いのと同じ量が必要ってことにはなるまい」
カインの一言で場が動き出した。集まった男達は早速にと村に備蓄されている売る用の作物や羊毛がどれだけあるのか調べ始めた。
その他にも近くの森から取れる木材を売りに出してはどうかなどの案が出て、沈んでいた空気はいくらか明るくなった。
◇
3人は順調に旅を続けた。あの盗賊以降も、何度か魔物や盗賊に襲われたが、どれも取るに足らない相手であり、一つの被害も受けることはなかった。旅程も残りわずかというところで、異変は起こった。
街道の向こうから男が息を切らしながら走ってきた。見た目は村人のそれであり、その形相は何か恐ろしいものから命からがら逃げだしているようだった。
一瞬、そうやって油断を誘う盗賊の手口かとも思ったが、あまりにも真に迫っている。その線はないだろう。
男は無我夢中で走っているようで、こちらが近づいていることになかなか気づかなかったようだが、さすがに馬車の騒音に気付き、顔こちらに向けるとひいっと声を上げるとその場にへたり込んでしまった。
よほど長時間走っていたのか、足ががくがく震え、顔は滝のような汗をかいている。
「・・・! ・・・・・・! ひぃ! た・・・・ひぃ!! た・・助けてくれ!」
走り過ぎたせいか、それとも別の理由か、声にならない声で男は喘ぐように懸命に助けを求めた。
「落ち着いてください。どうしたんですか? ここは安全です。私達はSランクの冒険者です」
サラは馬車から降りて、男に声をかけた。男その言葉に少し落ち着いたのか、過呼吸気味の息を落ち着かせ、何度か深呼吸を繰り返すとこう切り出した。
「俺はこの先の村のもんだ。今日用事があって、朝から村の東の森ん中に行ってたんだが、村に戻ると・・・誰もいなくなってたんだ!」
「いなくなっていた? いなくなっていたとはどういうことです?」
「なんだか分からねぇ。村に戻っても辺りに人っ子一人見つからねぇから、変だなと思って、そしたらよ! 赤かったんだよ! 辺り中! 血だ! 血の海だったんだ! 大声上げてもよ! 誰も返事しねぇんだよ・・・。俺、恐ろしくて。俺・・・」
「なんですって?!」
どうやらこの先の村が魔物にでも襲われたらしい。少なくともそれなりの数が犠牲になっているようだ。
それが本当なら、まずは状況を確認するために村へ行かなくては。
どちらにしろ、今日はその村に一泊する予定だったのだからそんなことがなくとも向かうのだが、危険な魔物が近くにいるとなると、気を引き締めなくては。
3人は男に一緒に村に行くよう勧めたが、男は頑なにあの村にはもう戻りたくないと言った。
男を前の町まで送り届け、再度出発するということも考えたが、結局、男には自力で町まで行ってもらい、3人は村まで進むことになった。
町への道はすでに魔物や盗賊も倒されているから危険は少ないだろうという判断だった。
村に着くと確かに男の言ったように人影は見当たらなかった。かと言って、魔物に襲われた村という印象も外から見る分にはなかった。
建物が破壊されているような形跡が見られなかったからだ。しかし、村の中に足を踏み入れると、状況は一変した。
血の海、とは言い難いが、至る所に血の跡が出来ていた。しかし、妙に綺麗すぎた。
確かに逃げ回ったような痕跡が見られるものの、争った痕跡や破壊されたものなどがほとんど見受けられなかった。
また、本来ならばあるべきものがそこにはなかった。死体だ。魔物に襲われて殺されたとしてその死体は何処に行ったのか。
血の跡を見る限り、至る所で殺されているようだが、どこにも死体は見つからなかったし、死体を移動させたような跡も見られなかった。
まるで殺したその場で死体を消したように見える。人間を襲い食べる魔物もいるが、それにしても食べ残しや骨が全くないのはどういうことだろうか。
それともう一つ気になることは、血の跡が村の外には全くないことだ。ばらばらに逃げ惑う村人を一切に村の外に逃がさず殺すなど出来るのだろうか。
「想像以上に大変なことが起きたみたいね」
「恐らくあの男の言う通り、村人は全滅。逃げ出せた人は一人もいないでしょうね。それにしても一体死体は何処へ行ったのかしら。全て食べたっていうなら骨まで食べたことになるわ。相当の量よ」
「お、恐ろしいこと平気で言うのね・・・。あなたたち。さすがは冒険者なのかしら」
惨状に真っ青な顔したシャルルはこの村を見て回る間に何度か戻してしまっていた。御者も同様だ。
血やもしかしたらあるかもしれない死体など見たくないと馬車の中に残る主張をしたのだが、2人が村を回っている間に馬車が襲われては危険だということで、2人を同行させていた。
「それで、これからどうするの?」
「ひとまず今日はもう日が暮れそうだから、予定通りこの村で一泊して、次の町を目指しましょう。この村の現状を伝えないと。本当は私達はここに残って2人だけで町に行ってもらうのがいいのだけど、途中で襲われる危険性もあるからそれは出来ないものね」
「この村に泊まるの?! 冗談でしょう?」
「冗談じゃないわ。このまま次の町に進めば、野宿になるわ。危険な魔物がいる可能性がある以上、それは得策じゃない。幸い家はたくさんあることだし、綺麗そうな家を探しましょう」
シャルルはこの時ばかりは高ランクの冒険者と旅を共にしていることを恨めしく思った。
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