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第2章
第22話
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残酷なシーンがあります。苦手な方は例のごとく文末のまとめを読んでください。該当は一個目の場面転換(◇)以降になります。
◇◇◇◇◇◇
カインは安堵していた。フェニックスは要件を伝え、カインがそれに了承すると満足したのか、再び北へと戻って行った。
フェニックスの話によると、フェニックスは生きるのに飽きてしまったらしい。悠久の時を越えて生きる不死鳥であるフェニックスは、死ぬことが許されていなかった。
元々南の高い山に住んでいたフェニックスは、度重なる冒険者達の襲撃に嫌気がさしていた。
昔からその巨大すぎる力が故に、武勲を上げようとする冒険者から挑戦を挑まれることは何度かあったがそう多くはなかった。
何度か自身に勝る者もいた。しかし、その行為は全て無駄だった。不死鳥たるフェニックスは死なない。
身に一定以上の傷を負い生命の危険を感じると、全身が一筋の巨大な炎となり、周囲を燃やし尽くした後、自身はその炎の中から再生するのだ。
再誕と呼ぶに相応しいほどに傷一つ残らず生まれ変わるのだが、残念なことにそれまでの記憶は引き継いだままだった。
そして最近はフェニックスに挑むには実力が無さすぎるような冒険者ですらも、フェニックス討伐に訪れる冒険者は後を絶たなかった。エリクサーの疑似薬の原料だとして。フェニックスは度重なる襲撃に飽き飽きしていた。
そのため、根城を南の山から遠く離れた北の地へと移動したのだ。突然現れた強者に恐れをなして逃げ出した魔物の内の一匹があのグリズリーだったのだ。
とにかくフェニックスは生きることが面倒くさくなっていたのだ。死ぬことも許されず、永遠と生きていくことに。
それで、カインに自身を殺してほしいと依頼をしてきたのだ。カインは何故自分なのか、そもそもどうやったらこの魔物を殺すことができるのか皆目見当もつかなかったが、ここで断って敵意を向けられては、殺されるのは自分だと思ったため、フェニックスの依頼を受けることにした。
フェニックスは満足し、手付金だと、先ほど自分が放った羽根をくれるといった。カインは何の役に立つのかも分からなかったが、言われた通り、その羽根を自分の懐にしまった。
◇
男達が馬車の外に出てからしばらくが経った。ジョセフは未だに妄想に耽っていた。
「ぎゃあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
突如、馬車の外から男達の叫び声と馬のいななきが聞こえ、しばらく続いた後ぴたっと止まり、辺りはまた静けさに包まれた。
「おい! 今のはなんだ! 何の騒ぎだ! おい! 誰か!」
ジョセフは叫んだが、いくら待っても返事はない。覚悟を決して馬車の外に体を乗り出した。
初めに目についたのは馬車を引くための馬がいるはずの場所だった。馬の姿はなく、馬と荷台を繋ぐための金具は力任せにねじ切られていた。御者の姿もない。
恐る恐る馬車が死角になって見えていない方に体を移動させていく。
がりっ、ぴちゃっぴちゃ、何か汁気の多い硬い物をかじる様な音が聞こえてきた。
地面の方に目を向けると、男を抱え、貪り食っている魔物の姿が見えた。昼間だというのに夜と見間違うようなほど真っ黒に染まった巨大な体、顔は豚のようだ。
周りにはすでに息絶えたと思われる、残りのならず者達と馬が転がっていた。
「ひいいいいいいぃぃぃぃぃぃぃ!!!」
◇
突然の叫び声にカイン達は元来た道に視線を向けた。カインは慌ててその方向に意識を向け魔力で状況を探った。
まずい。フェニックスと遭遇している間に何かあったようだ。
カインはジョセフ達が近づいていることに気付いていた。何が狙いか分からなかったが、念のため常に後方の確認をしていた。
しかし、フェニックスの到来によって一時的にだが、その意識は完全に断たれた。
今探った結果では、複数人いたはずの男達は姿を消していた。馬車の外に塊のようなものが見えるからもしかしたらそこに倒れているのかもしれない。
だが、何が起きたか分からない。馬車の周囲を探ってみたが、盗賊や魔物などの姿も見えない。
しかし、いくらあんな相手とは言え、身の危険が迫っている所を見殺しにするのは気が引けた。
「シャルルさん! 後ろで何か起こったようです。様子を見てきます。2人は危険があるといけないので、このまま村に向かってください!」
返事を待たずにカインは駆け出し、ジョセフのもとへ走った。
◇
カインは初め、何が起こっているのか分からなかった。カインが到着した時、ジョセフはまだ生きていた。
確かに生きているのだが、その足先は失われ、今も徐々にその長さを短くしていった。
「痛い! 痛い! 痛いぃぃぃぃぃぃぃぃぁぁあああ!!!!」
あまりの痛みに失神と覚醒を繰り返しているのだろうか。ジョセフは身体中の穴からあらゆるものを垂れ流し、それに食われていた。
カインは注意深く、ジョセフの足元を探索した。初めは気付けなかったが、陽炎のように周囲がぼんやりと歪んでいる空間が有ることに気付く。
恐らくそれが、ジョセフを食っているのだろう。
初めての体験だった。この視界を手に入れてから、その認識に及ばないものの存在に出くわしたことは一度もなかった。
恐らくそれはカインの魔力と何の干渉もしないのだろう。ほぼ空気と一緒だった。しかし、空気もごくわずかであるが、魔力と干渉する。
それは恐らく一切の干渉を持たない。そのわずかな差で意識を集中すれば何とか、それの存在がカインにも認識することができた。
すでにジョセフは痛みの余りこと切れてしまっていた。襲い掛かる痛みが許容量を超え、身体が耐えられずに死を選んだのだ。
カインは一瞬迷った。助けるべき者はもういない。ならば逃げるか。自身にはこの魔物を倒す術がない。こんな田舎の街道で戦ってくれる人物が通りかかるなどまずありえないだろう。
しかし、人を襲い食べる魔物だ。このまま放っておくわけにもいかない。
そう思った時だった。ふと、懐かしい魔力の流れを感じた。
「お父さん!!!」
サラは走っている馬から躊躇なく飛び降りた。危なげなく着地すると、父のもとへ駆け寄った。
「お父さん! なんでこんな所にいるの!」
「サラ。久しぶりだね。また髪が伸びたみたいだ。再会を喜びたいんだが、いかんせん状況が良くなくてね。所でサラ、サラにはあの魔物の姿が見えるかい?」
「見えるかいって、お父さんにはあのオークキングが見えないの?! あれはオークが何らかの原因で変異した魔物よ。目につく生き物を貪り食ってる! 今ここで絶対に倒さないと!」
「ああ、何故か視えないんだよ。とにかくサラが来てくれてよかった。これで戦える。援護するからよろしく頼むよ」
次の瞬間、カインは慌てて呪文を唱えた。陽炎のように見える魔物、オークキングがカイン達目がけて突進してきたのだ。
しかし、カインが作った空気の壁に進行方向をずらされ、街道脇の木に追突し、木を文字通り粉々にして突き進み、止まった。
空気の壁はいとも簡単に壊されており、流すように進行方向とほぼ水平に壁を作らずに、受けようと壁を作ったなら、その壁ごと吹き飛ばされていたことだろう。
初速からほぼ最高速度の突進、単純だが、強力で対処も難しい攻撃だった。
「精霊の王よ。天の雷よ。矮小なる我が敵に裁きを!」
ソフィがオークキング目がけて雷の魔法を放った。ソフィが使うことのできる中ではかなり高等な魔法だった。
稲光が現れ、オークキングに閃光が落ちた。間違いなくオークキングに直撃したのにも関わらず、オークキングは平然としていた。
その体表面に蓄えられた分厚い脂肪が電気を阻んだのだ。オークキングは何事もなかったかのようにゆっくりと近づいてきた。
◇◇◇◇◇
ジョセフの仲間は食べられた。ジョセフも食べられた。オークキングに食べられた。
カインはオークキングが視えない。困っていたらサラとソフィやっと登場。出番がなかったヒロインがんばれ。
でもソフィの雷魔法は効果ない。脂肪は電気を通しにくい。
◇◇◇◇◇◇
カインは安堵していた。フェニックスは要件を伝え、カインがそれに了承すると満足したのか、再び北へと戻って行った。
フェニックスの話によると、フェニックスは生きるのに飽きてしまったらしい。悠久の時を越えて生きる不死鳥であるフェニックスは、死ぬことが許されていなかった。
元々南の高い山に住んでいたフェニックスは、度重なる冒険者達の襲撃に嫌気がさしていた。
昔からその巨大すぎる力が故に、武勲を上げようとする冒険者から挑戦を挑まれることは何度かあったがそう多くはなかった。
何度か自身に勝る者もいた。しかし、その行為は全て無駄だった。不死鳥たるフェニックスは死なない。
身に一定以上の傷を負い生命の危険を感じると、全身が一筋の巨大な炎となり、周囲を燃やし尽くした後、自身はその炎の中から再生するのだ。
再誕と呼ぶに相応しいほどに傷一つ残らず生まれ変わるのだが、残念なことにそれまでの記憶は引き継いだままだった。
そして最近はフェニックスに挑むには実力が無さすぎるような冒険者ですらも、フェニックス討伐に訪れる冒険者は後を絶たなかった。エリクサーの疑似薬の原料だとして。フェニックスは度重なる襲撃に飽き飽きしていた。
そのため、根城を南の山から遠く離れた北の地へと移動したのだ。突然現れた強者に恐れをなして逃げ出した魔物の内の一匹があのグリズリーだったのだ。
とにかくフェニックスは生きることが面倒くさくなっていたのだ。死ぬことも許されず、永遠と生きていくことに。
それで、カインに自身を殺してほしいと依頼をしてきたのだ。カインは何故自分なのか、そもそもどうやったらこの魔物を殺すことができるのか皆目見当もつかなかったが、ここで断って敵意を向けられては、殺されるのは自分だと思ったため、フェニックスの依頼を受けることにした。
フェニックスは満足し、手付金だと、先ほど自分が放った羽根をくれるといった。カインは何の役に立つのかも分からなかったが、言われた通り、その羽根を自分の懐にしまった。
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男達が馬車の外に出てからしばらくが経った。ジョセフは未だに妄想に耽っていた。
「ぎゃあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
突如、馬車の外から男達の叫び声と馬のいななきが聞こえ、しばらく続いた後ぴたっと止まり、辺りはまた静けさに包まれた。
「おい! 今のはなんだ! 何の騒ぎだ! おい! 誰か!」
ジョセフは叫んだが、いくら待っても返事はない。覚悟を決して馬車の外に体を乗り出した。
初めに目についたのは馬車を引くための馬がいるはずの場所だった。馬の姿はなく、馬と荷台を繋ぐための金具は力任せにねじ切られていた。御者の姿もない。
恐る恐る馬車が死角になって見えていない方に体を移動させていく。
がりっ、ぴちゃっぴちゃ、何か汁気の多い硬い物をかじる様な音が聞こえてきた。
地面の方に目を向けると、男を抱え、貪り食っている魔物の姿が見えた。昼間だというのに夜と見間違うようなほど真っ黒に染まった巨大な体、顔は豚のようだ。
周りにはすでに息絶えたと思われる、残りのならず者達と馬が転がっていた。
「ひいいいいいいぃぃぃぃぃぃぃ!!!」
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突然の叫び声にカイン達は元来た道に視線を向けた。カインは慌ててその方向に意識を向け魔力で状況を探った。
まずい。フェニックスと遭遇している間に何かあったようだ。
カインはジョセフ達が近づいていることに気付いていた。何が狙いか分からなかったが、念のため常に後方の確認をしていた。
しかし、フェニックスの到来によって一時的にだが、その意識は完全に断たれた。
今探った結果では、複数人いたはずの男達は姿を消していた。馬車の外に塊のようなものが見えるからもしかしたらそこに倒れているのかもしれない。
だが、何が起きたか分からない。馬車の周囲を探ってみたが、盗賊や魔物などの姿も見えない。
しかし、いくらあんな相手とは言え、身の危険が迫っている所を見殺しにするのは気が引けた。
「シャルルさん! 後ろで何か起こったようです。様子を見てきます。2人は危険があるといけないので、このまま村に向かってください!」
返事を待たずにカインは駆け出し、ジョセフのもとへ走った。
◇
カインは初め、何が起こっているのか分からなかった。カインが到着した時、ジョセフはまだ生きていた。
確かに生きているのだが、その足先は失われ、今も徐々にその長さを短くしていった。
「痛い! 痛い! 痛いぃぃぃぃぃぃぃぃぁぁあああ!!!!」
あまりの痛みに失神と覚醒を繰り返しているのだろうか。ジョセフは身体中の穴からあらゆるものを垂れ流し、それに食われていた。
カインは注意深く、ジョセフの足元を探索した。初めは気付けなかったが、陽炎のように周囲がぼんやりと歪んでいる空間が有ることに気付く。
恐らくそれが、ジョセフを食っているのだろう。
初めての体験だった。この視界を手に入れてから、その認識に及ばないものの存在に出くわしたことは一度もなかった。
恐らくそれはカインの魔力と何の干渉もしないのだろう。ほぼ空気と一緒だった。しかし、空気もごくわずかであるが、魔力と干渉する。
それは恐らく一切の干渉を持たない。そのわずかな差で意識を集中すれば何とか、それの存在がカインにも認識することができた。
すでにジョセフは痛みの余りこと切れてしまっていた。襲い掛かる痛みが許容量を超え、身体が耐えられずに死を選んだのだ。
カインは一瞬迷った。助けるべき者はもういない。ならば逃げるか。自身にはこの魔物を倒す術がない。こんな田舎の街道で戦ってくれる人物が通りかかるなどまずありえないだろう。
しかし、人を襲い食べる魔物だ。このまま放っておくわけにもいかない。
そう思った時だった。ふと、懐かしい魔力の流れを感じた。
「お父さん!!!」
サラは走っている馬から躊躇なく飛び降りた。危なげなく着地すると、父のもとへ駆け寄った。
「お父さん! なんでこんな所にいるの!」
「サラ。久しぶりだね。また髪が伸びたみたいだ。再会を喜びたいんだが、いかんせん状況が良くなくてね。所でサラ、サラにはあの魔物の姿が見えるかい?」
「見えるかいって、お父さんにはあのオークキングが見えないの?! あれはオークが何らかの原因で変異した魔物よ。目につく生き物を貪り食ってる! 今ここで絶対に倒さないと!」
「ああ、何故か視えないんだよ。とにかくサラが来てくれてよかった。これで戦える。援護するからよろしく頼むよ」
次の瞬間、カインは慌てて呪文を唱えた。陽炎のように見える魔物、オークキングがカイン達目がけて突進してきたのだ。
しかし、カインが作った空気の壁に進行方向をずらされ、街道脇の木に追突し、木を文字通り粉々にして突き進み、止まった。
空気の壁はいとも簡単に壊されており、流すように進行方向とほぼ水平に壁を作らずに、受けようと壁を作ったなら、その壁ごと吹き飛ばされていたことだろう。
初速からほぼ最高速度の突進、単純だが、強力で対処も難しい攻撃だった。
「精霊の王よ。天の雷よ。矮小なる我が敵に裁きを!」
ソフィがオークキング目がけて雷の魔法を放った。ソフィが使うことのできる中ではかなり高等な魔法だった。
稲光が現れ、オークキングに閃光が落ちた。間違いなくオークキングに直撃したのにも関わらず、オークキングは平然としていた。
その体表面に蓄えられた分厚い脂肪が電気を阻んだのだ。オークキングは何事もなかったかのようにゆっくりと近づいてきた。
◇◇◇◇◇
ジョセフの仲間は食べられた。ジョセフも食べられた。オークキングに食べられた。
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