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第3章
第38話
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何度目の店の扉を開けただろうか。
3人は贔屓にしている店も特になく、いつもその時の気分で店を選んでいるらしい。
コルマールは元々それなりに大きな街である上に、ここ数年は店の進出衰退が激しく、地元の者でもどこになんの店があるのかよく分からない状態になっていて、店を一軒一軒探すのは途方もない事のように思えた。
ふと、カインは情報屋に聞いたある物のことを思い出し、それを目印に探すことが出来ないか考えた。
ある物とはミスリルで出来た、ピアス、ネックレス、リングで、それぞれルーク、ミュー、ララに渡したものだった。
カリラの死後、家を出る際に、杖と一緒に持ち出した物だった。
ミスリルは魔力に応じてその形を自在に変える。
ただしそれには熟練の技が必要で、カインはカリラに教えられながら、魔力操作の練習台として数え切れないほど、その一塊のミスリルに魔力を込めて形を変えていた。
3人と出会い、話の種にと毎日繰り返していたその練習風景を見せたところ、ひどく気に入られ、それならばと、小さく3つに分けて形を整え3人に贈ったのだ。
これならば形も分かるし、何よりミスリルは魔力との相性がいいから、魔力捜査で探す対象としては打って付けだった。
気合を入れて、自分を中心に魔力を薄く引き伸ばすように広げていく。
流石冒険都市の一つだけあって、様々な珍しいものが至る所で見受けられた。
しかし、今回の目当てのものははっきりとしている。
意識を集中させてしばらくすると、それらしい形のミスリルが3つ、近い範囲に揃っているのが見つかった。
広げていた魔力に指向性を持たせ、その場所を重点的に捜査する。
間違いない。カインは焦る気持ちを抑え、しかし、速い足取りで目的の場所に向かった。
◇
「しっかし、ここら辺も不味いくせに高いだけの店が増えたな」
お手製の特殊な香草を小さな紙できつく巻き付け片側に火をつけたものをくわえながら、ルークは悪態をついた。
ふーっと息を吐くと大量の白い煙が現れ、近くでそれを吸った人がむせ込む。
「酒も質が悪いし、この店はだめね。昔は高い金額に見合った酒がどこでも飲めたのにね」
全身鎧の兜を外したミューは食べ物にほとんど手をつけず、開始早々から飲み続けているが、顔色は一向に変わらない。
そのミューが食べ残した物を処理しているのがララだ。
「えー。私は美味しいと思うけどなー。贅沢がすぎるんじゃないの? リーダーもミューぴょんもー」
「ララは食べ物ならなんでもいいんでしょ。それにしてもまったく。その体のどこにそれだけ入るのよ」
「ふーんだ。私は育ち盛りなんですー」
「もう横にしか育たねぇだろ」
3人がいつものようにたわいもないやり取りをしていると、一人の男が近付いてくるのを感じた。
3人はふざけながらもその男の挙動を視界の隅に置いた。
「こんばんわ。失礼ですが、ルークさん、ミューさん、ララさんですか?」
少し息を切らせながら、男は3人の名前を聞いてきた。
見た目が自分達と同じ歳くらいだろうか。
小綺麗だが、その格好は冒険者ではなく、どこかの村人のようだ。
しかし、ララは来ている服が有名な高級ブランドのものだと気付く。
「なんだてめぇは?」
ルークはいつでも対応出来るように、剣の柄に手を置きながらその男に問いかける。
まるで見えているように自然な素振りを見せているが、この男は視力を失っているようだ。
目線の動きからルークはその事実に気付き、この男の動きの自然さに不気味さを感じた。
ミューは先程から、男の顔をじっと見つめ、驚いたような表情を見せていた。
「カインちゃん! カインちゃんじゃないの!! やだ! やっぱり生きていたのね! 探したのよ?!」
「え? ミューぴょん、この人カンちゃんなの? やっほーカンちゃん。つー」
「え? ああ。かー?」
「うわ! ほんとだ! カンちゃんだ! リーダー! カンちゃんが帰ってきたよ。お帰りカンちゃん。今までどこへ行ってたの?」
「なんだと? おい。お前本当にカインか? 下手な嘘をこくと許さねぇが、カインを偽るのは特に許さねぇぞ?」
「ああ、ルーク。本当さ。本当にカインなんだ。どうやったら信じてくれるかな? 君の好きな食材でも言ったら信じてくれるかい?」
「なんだその質問は。まぁいい。試しに答えてみろ」
「君の好きな食材は海の悪魔だよ」
ちなみに海の悪魔というのは、海にすむ生き物で、その体は骨が無く自由自在に動き、つるりとした形をした頭から生えた八本もある足には無数の吸盤が並んでいる恐ろしい姿をしていた。
しかし、食用にすると美味で、カインもルークに勧められて食べた事があるが、歯ごたえのある食感が癖になる食材だった。
「ちっ。変なこと知ってんな 。じゃあこれも答えられるか? 俺の好きな物語の主人公の名前は?」
「ナタリーだったね。いまだに好きなのかい?」
「まじでカインなのか? おい! やっぱり生きてやがったな?! 随分と待たせやがって! ちくしょう、煙が目にしみるぜ」
カイン達は再会を喜び合い、お互いの近況を語り合った。
20年の空白を埋めるように、話はとどまることを知らず、3人が拠点としている屋敷に移動した後も朝まで続いた。
◇◇◇◇◇◇
いつも読んでくださりありがとうございます。
昨日のあとがきに書きましたが現在中国に滞在中です。
しかし幸いにもネット接続に問題は見られませんでしたので、いつも通り更新することが出来ました。
今回の話も少し文字数が少ないですが、話の区切りがいいのでここで切らせてもらいました。
3人は贔屓にしている店も特になく、いつもその時の気分で店を選んでいるらしい。
コルマールは元々それなりに大きな街である上に、ここ数年は店の進出衰退が激しく、地元の者でもどこになんの店があるのかよく分からない状態になっていて、店を一軒一軒探すのは途方もない事のように思えた。
ふと、カインは情報屋に聞いたある物のことを思い出し、それを目印に探すことが出来ないか考えた。
ある物とはミスリルで出来た、ピアス、ネックレス、リングで、それぞれルーク、ミュー、ララに渡したものだった。
カリラの死後、家を出る際に、杖と一緒に持ち出した物だった。
ミスリルは魔力に応じてその形を自在に変える。
ただしそれには熟練の技が必要で、カインはカリラに教えられながら、魔力操作の練習台として数え切れないほど、その一塊のミスリルに魔力を込めて形を変えていた。
3人と出会い、話の種にと毎日繰り返していたその練習風景を見せたところ、ひどく気に入られ、それならばと、小さく3つに分けて形を整え3人に贈ったのだ。
これならば形も分かるし、何よりミスリルは魔力との相性がいいから、魔力捜査で探す対象としては打って付けだった。
気合を入れて、自分を中心に魔力を薄く引き伸ばすように広げていく。
流石冒険都市の一つだけあって、様々な珍しいものが至る所で見受けられた。
しかし、今回の目当てのものははっきりとしている。
意識を集中させてしばらくすると、それらしい形のミスリルが3つ、近い範囲に揃っているのが見つかった。
広げていた魔力に指向性を持たせ、その場所を重点的に捜査する。
間違いない。カインは焦る気持ちを抑え、しかし、速い足取りで目的の場所に向かった。
◇
「しっかし、ここら辺も不味いくせに高いだけの店が増えたな」
お手製の特殊な香草を小さな紙できつく巻き付け片側に火をつけたものをくわえながら、ルークは悪態をついた。
ふーっと息を吐くと大量の白い煙が現れ、近くでそれを吸った人がむせ込む。
「酒も質が悪いし、この店はだめね。昔は高い金額に見合った酒がどこでも飲めたのにね」
全身鎧の兜を外したミューは食べ物にほとんど手をつけず、開始早々から飲み続けているが、顔色は一向に変わらない。
そのミューが食べ残した物を処理しているのがララだ。
「えー。私は美味しいと思うけどなー。贅沢がすぎるんじゃないの? リーダーもミューぴょんもー」
「ララは食べ物ならなんでもいいんでしょ。それにしてもまったく。その体のどこにそれだけ入るのよ」
「ふーんだ。私は育ち盛りなんですー」
「もう横にしか育たねぇだろ」
3人がいつものようにたわいもないやり取りをしていると、一人の男が近付いてくるのを感じた。
3人はふざけながらもその男の挙動を視界の隅に置いた。
「こんばんわ。失礼ですが、ルークさん、ミューさん、ララさんですか?」
少し息を切らせながら、男は3人の名前を聞いてきた。
見た目が自分達と同じ歳くらいだろうか。
小綺麗だが、その格好は冒険者ではなく、どこかの村人のようだ。
しかし、ララは来ている服が有名な高級ブランドのものだと気付く。
「なんだてめぇは?」
ルークはいつでも対応出来るように、剣の柄に手を置きながらその男に問いかける。
まるで見えているように自然な素振りを見せているが、この男は視力を失っているようだ。
目線の動きからルークはその事実に気付き、この男の動きの自然さに不気味さを感じた。
ミューは先程から、男の顔をじっと見つめ、驚いたような表情を見せていた。
「カインちゃん! カインちゃんじゃないの!! やだ! やっぱり生きていたのね! 探したのよ?!」
「え? ミューぴょん、この人カンちゃんなの? やっほーカンちゃん。つー」
「え? ああ。かー?」
「うわ! ほんとだ! カンちゃんだ! リーダー! カンちゃんが帰ってきたよ。お帰りカンちゃん。今までどこへ行ってたの?」
「なんだと? おい。お前本当にカインか? 下手な嘘をこくと許さねぇが、カインを偽るのは特に許さねぇぞ?」
「ああ、ルーク。本当さ。本当にカインなんだ。どうやったら信じてくれるかな? 君の好きな食材でも言ったら信じてくれるかい?」
「なんだその質問は。まぁいい。試しに答えてみろ」
「君の好きな食材は海の悪魔だよ」
ちなみに海の悪魔というのは、海にすむ生き物で、その体は骨が無く自由自在に動き、つるりとした形をした頭から生えた八本もある足には無数の吸盤が並んでいる恐ろしい姿をしていた。
しかし、食用にすると美味で、カインもルークに勧められて食べた事があるが、歯ごたえのある食感が癖になる食材だった。
「ちっ。変なこと知ってんな 。じゃあこれも答えられるか? 俺の好きな物語の主人公の名前は?」
「ナタリーだったね。いまだに好きなのかい?」
「まじでカインなのか? おい! やっぱり生きてやがったな?! 随分と待たせやがって! ちくしょう、煙が目にしみるぜ」
カイン達は再会を喜び合い、お互いの近況を語り合った。
20年の空白を埋めるように、話はとどまることを知らず、3人が拠点としている屋敷に移動した後も朝まで続いた。
◇◇◇◇◇◇
いつも読んでくださりありがとうございます。
昨日のあとがきに書きましたが現在中国に滞在中です。
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