辺境暮らしの付与術士

黄舞

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第4章

第55話

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 見渡す限りの岩山、その岩山には無数の穴が空いていた。
 まるでアリの巣を輪切りにして上から眺めたような無数の穴は、全て探鉱のために開けられた穴だった。

 カイン達は今、ミスリルの採掘現場にに足を運んでいた。
 しかし、直ぐに無駄足だったという事に気付かされた。

「そうですか。もうここではミスリルが取れないんですね」
「ああ。だいぶ前だな。最後に発掘されたのは。それ以来物好きが諦められずに掘ってるが、一向に鉱脈は見つけられないね。悪いことは言わない。他を当たるんだな」

「お父さん、ここもだめだったみたいね」
「ああ、そうだな。他にとなると、もう心当たりはひとつしかないな」

「これだけ回ったのにまだ心当たりがあるの? それは遠いの?」
「ああ。遠い。そもそもそこは人間の国じゃないんだ。彼らは気難しい。無事に国の中に入れるのかも分からない」

「どこなのそれ? でも他にあてがないんじゃあ、そこに行くしかないでしょう?」
「そうだね。その国はここからずっと南にある、ドワーフの国だ」



 屈強な肉体を持つ男達が集まり、何やら相談をしている。
 男達の身長は、成人男性よりも頭一つ分ほど低く、皆、顎や口に立派な髭を蓄えている。

 その周りで女達も立ち話をしている。
 女達は集まっている男よりも更に幾分か小さく、髭の代わりなのか、皆、長い髪を結わえている。

 長らしい男が口を開く。

「このままではどうにもならん。あいつをどうにかせんと。しかしだ。俺らではどうにも出来はせん。人間の冒険者とやらに依頼を出すのはどうだ?」
「しかし長、人間は信用ならん。長の娘だって、この前帰ってきて酷い目に合わされたと言っていたではないか」

「しかし、では誰があいつをどうにか出来る? 守り神がいらっしゃらなくなって久しい。今では我が物顔であいつはあの山に居座っている」
「それこそ、神様が居なくなったのは人間のせいではないか! やつらはあろう事か、神様を殺そうとした。それに嫌気がさした神様はお隠れになってしまったのだ!」

「神の加護が無くなったせいか、最近では竈の火も火力がでん。このままでは、今ある素材ですら鍛冶をすることもままならん」
「うーむ。どちらにしろこのままでは・・・」

「長! 大変だ! 人間がこの国に向かって歩いてきてる!」

 突然、まだ髭の短い男が、入ってきて叫んだ。

「なんだと? 全部で何人いる? 今どこまで来てるんだ?」
「人数は3人ぽっちだ! 背の高い男と、女が2人。女は剣を持ってやがる! 場所は今、渓谷の辺りだ」

「真っ直ぐ向かってきてるんなら、迷ってってことは無いだろう。お前ら! 何をぐずぐずしてやがる! 絶対に人間などこの国に入れるんじゃねぇぞ!」
「おう!!」



「お父さん、ドワーフの国にはもうすぐ着くのよね?」
「ああ。だがすんなり入れるとは思わない方がいいな。ドワーフ達は偏屈で有名だ。人間に特別な感情も無いはずだがね」

「それにしてもカインさん。何かがおかしいですよ。この辺りは火の精霊が多いはずなんですが、火の精霊の気配をほとんど感じません。代わりに風の精霊が多くいるようです」
「うん。この辺りはフェニックスの根城が近かったはずだからね。火の精霊が多かったのはそのせいだろう。少なくなったのもまたね。風の精霊が多い理由は分からないが」

「ソフィは風の精霊も従属化させるつもり?」
「うーん。風魔法も色々便利なんだけど、風の精霊は気まぐれなのが多いから、従属化させるのも一苦労なのよね」

「うん? ちょっと止まってくれ。どうやら歓迎されていないどころか、敵対する気らしい。こりゃまいったな」
「どういうこと?」

「この先にドワーフ達が集まっているが、皆手に武器を持っている。話し合いをしにっていう雰囲気じゃないな」
「私達なんにもしてないのに!」

「まぁ、とりあえず、ミスリルについては最後の砦だ。それにここら辺はフェニックスのお膝元。元だがね。何か情報を持っているかもしれない。なんとか話し合いに持っていこう」
「反抗しちゃだめってことね?」

「ああ。身の危険がない限り、こちらから攻撃する事はよそう。最悪の場合は逃げて、諦めよう」
「分かった。お父さんの言う通りにするわ」



 ドワーフ達は手に各々得物を持ち、近付いてくる人間を待ち構えていた。
 相手はたったの3人、こちらは50を超えている。

 いくらあっちが噂の冒険者とやらでも、この人数差はどうしようもあるまい。
 しばらくすると人間達が姿を現した。

 どうやって気付いたのか分からないが、こちらに前もって気付いていたようで、全員両手を高く上げながら歩いてきている。
 お互いの声が十分届く距離まで近付くと、その歩を止めた。

「ドワーフ国の方々とお目見えする! 我々は敵対の意思はない! どうか話をさせて欲しい!」

 背の高い男が叫んできた。
 叩けば折れそうな身体をしている。

 他の女も細い。あれでは戦いになれば、5分も経たずにこちらが勝つだろう。
 脅威では無さそうだと、安心し、長は男の要求にひとまず答えてやることにした。

「俺はこの国の長! ドムドムだ! 良かろう! 要件を言え!」
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