辺境暮らしの付与術士

黄舞

文字の大きさ
62 / 133
第4章

第60話

しおりを挟む
「あ! いたいた! すいませーん! ニィニィさん!!」
「あら? サラちゃんにソフィちゃん。どうしたの? そんなに慌てて」

「えーと、ちゃんと話すのは初めてですよね。初めまして。カインの娘のサラです」
「まぁ。ご親切に。でも、うふふ。とっくに知ってるわよ。それでなんの用かしら?」

「そうですよね。知ってて当然ですよね。・・・あの! 単刀直入に聞きます! お父さんのことどう思っていますか?!」

 サラは自身の人見知りを何とか跳ね除け、言葉足らずだが、最も聞きたいことを、ニィニィに迫った。
 あまりの剣幕にニィニィは少し驚いた表情を見せたが、優しい笑顔を作り、ゆっくりと口を開いた。

「まぁ。随分と唐突ね? カインさん、ね。そうねぇ。私の恩人よ。あんな素敵な人見たことないわ。そして私の人生を変えてくれた人。カインさんは知らないふりしてるけど、すごく大切な物を貰ったわ」
「・・・そうです、か。ニィニィさん、妊娠したんですよね? おめでとうございます。相手は次期ドワーフの国の長になるって・・・」

「え? ええ。カインさんに聞いたの? 意外とお喋りなのね。あ、いいのよ。めでたい事だから。そうなの。ありがとうね」
「いえ。お幸せに!」
「あ! 待って! サラ!」

 サラは踵を返すと、走り去ってしまった。
 ソフィはその後を追う。

 ニィニィは何だったのか分からず、少し困惑していたが、直接話せたことで、2人に送る髪飾りの構想が固まった。
 忘れないうちにと、足早に家に戻り、製作に取り掛かった。



「どうしよう、ソフィ。ニィニィさん、すごく幸せそうだったのに、なんか、胸の辺りがチクチクするの」
「サラ・・・」

 2人が食堂で、注文もせずに座っていると、1人の立派な黒髭を蓄えたドワーフの男が近づいてきた。
 ドワーフ特有の短身長ではあるものの、その肉体は鋼のように鍛え上げられており、小ささなど感じさせなかった。

「おぅ! この前この国に来たっていう、3人組だな! もう1人のひょろ長い男は一緒じゃないのか? 会えたらお礼が言いたかったんだがな。まぁいい。お前らも冒険者なんだってな? どうだ。俺に外の話をきかせてくれないか」
「えーと、すいません。どちら様ですか?」

「がっはっは! こりゃいけねぇ。名乗るのを忘れてたな。俺はボルボル。この国じゃあ、ちょっとは名の知れた男よ。知り合いになって損は無いと思うぜ」
「はぁ。こんにちは。ボルボルさん。ひょろ長い男、カインの娘のサラです」
「そのパーティメンバーのソフィです」

「おぅ! よろしくな! サラにソフィ。ところで、人間の女性ってのは随分と小食なんだな? なんも食べてねぇじゃねぇか」
「ああ。すいません。ちょっと悩み事してて」

「なんだと? それはいけねぇな。どうだい? ひとつ俺に話してみたらどうだ? 手助けをしてやれるかもしれんぞ?」
「ええっと。実はですね・・・」

 普段なら他人に話す内容でもないのだが、あまりの出来事に気が動転しきっていたことと、ボルボルの勢いと雰囲気に押され、サラはカインとニィニィのことを話してしまった。
 最初は笑顔で聞いていたボルボルの顔が徐々に赤黒く険しい顔つきに変わっていく。

「いいか? もう一度聞くぞ? その話、間違いじゃないんだな?」
「ええ。2人に別々に聞いたんです。間違いないと思います」

 実際は勘違いの末の間違いだらけなのだが、サラの頭の中では、これがすでに真実になっていた。
 サラの返事を聞いたボルボルは、怒髪天を衝くを地でいくような怒りをあらわにして、テーブルをその岩のような拳で強く叩いた。

「くそやろう!! そのカインって野郎はどこにいるんだ?!!」
「今日は街の西の方を探索してみるって言ってました」

 ボルボルは勢いよく食堂を出ていった。
 途中何人かが、その進行の妨げになる位置に立っていたが、ボルボルはそれを乱暴に突き飛ばした。

「どうしよう。ソフィ。私なにかまずい話をしちゃったのかな?」
「そんなことより! どうしてカインさんの居場所教えちゃったのよ。あの人絶対カインさんに何かするわよ!」

「え! どうしよう!」
「とにかく後を追いましょう!」

 慌てて、サラ達も食堂を出ようとすると、その腕を握られ、引き留められた。
 見ると、食堂のおばちゃんだった。

「ちょっと。あんた達、このまま逃げるつもりじゃないでしょうね?」

 そのおばちゃんの目線は、ボルボルに殴られ、真っ二つに割れたテーブルと、サラ達の顔を交互に睨みつけていた。



 カインは今日も街中をうろうろしていた。
 頭の中は山に住み着いたという、魔物の事でいっぱいだった。

 恐らく、魔物避けの付与を付けた置物でも設置していけば、多くの魔物は近寄らなくなるだろう。
 しかし、山は広い。その全てを網羅するには無理がある。

 また、出来たとしても、結局はその魔物達は別のどこかへ行くだけで、今度はそこに住む人々の生活を脅かすことになるだけだ。
 もう一つは、そもそも強力な魔物には魔物避けが効きにくいということが問題だった。

 それにカインの付与魔法を、ドワーフの国の人々に教えるかどうかも問題だ。
 街をうろうろ歩いて分かったが、この国の人々は、オティスの村の人々と似ていた。

 恐らく、教えてもこの国人々がカインをどうこうするとは思えないが、話がどこに漏れるか分からない以上、易々と教えられるものでは無い。
 最近になって、カインも自身の魔法の重大性に気付き、慎重になっていた。

 そんなカインの目の前に、1人の屈強なドワーフの男が、怒気をおびながら近付いてきた。

「カインってのはお前だな?」
しおりを挟む
感想 42

あなたにおすすめの小説

追放されたS級清掃員、配信切り忘れで伝説になる 「ただのゴミ掃除」と言って神話級ドラゴンを消し飛ばしていたら世界中がパニックになってますが?

あとりえむ
ファンタジー
【5話ごとのサクッと読める構成です!】 世界を救ったのは、聖剣ではなく「洗剤」でした。 「君のやり方は古いんだよ」 不当な理由でS級クランを追放された、ベテラン清掃員・灰坂ソウジ(38歳)。 職を失った彼だったが、実は彼にはとんでもない秘密があった。 呪いのゴーグルのせいで、あらゆる怪物が「汚れ」にしか見えないのだ。 ・神話級ドラゴン  ⇒ 換気扇の頑固な油汚れ(洗剤で瞬殺) ・深淵の邪神  ⇒ トイレの配管詰まり(スッポンで解決) ・次元の裂け目  ⇒ 天井の雨漏りシミ(洗濯機で丸洗い) 「あー、ここ汚れてるな。チャチャッと落としておくか」 本人はただ業務として掃除をしているだけなのに、その姿は世界中で配信され、人類最強の英雄として崇められていく! 可愛い元ダンジョン・コアや、潔癖症の聖女も入社し、会社は今日も大忙し。 一方、彼を追放した元クランは、汚れ(モンスター)に埋もれて破滅寸前で……? 「地球が汚れてる? じゃあ、一回丸洗いしますか」 最強の清掃員が、モップ片手に世界をピカピカにする、痛快・勘違い無双ファンタジー! 【免責事項】 この物語はフィクションです。実在の人物・団体とは関係ありません。 ※こちらの作品は、カクヨムと小説家になろうでも公開しています。

無能だと追放された「雑用係」のハル、現代の知恵(ライフハック)を駆使したら、呪われた魔王城が聖域化して伝説の賢者と呼ばれ始めた

ユネ
ファンタジー
「君のような無能な掃除係は必要ない!」 勇者パーティーからゴミのように捨てられた雑用係のハル。だが彼女には、前世で培った【家事のプロとしてのライフハック】があった。 ​移り住んだのは、誰もが恐れる『呪われた魔王城』。しかしハルにとっては、ただの「掃除のしがいがある大型物件」に過ぎなかった! 重曹とクエン酸で呪いを浄化し、アルミホイルで魔物を除け、ジャガイモの皮で伝説の鏡を蘇らせる。 ​魔法より便利な知恵で、お城はいつの間にか世界一快適な聖域に。 一方、ハルを失った勇者たちは、汚部屋と化した拠点と自らの無知に絶望することになり――。 ​これは、一人の「掃除好き」が知恵と工夫だけで異世界に革命を起こし、最高のスローライフを手に入れるまでの物語。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

主人公は高みの見物していたい

ポリ 外丸
ファンタジー
高等魔術学園に入学した主人公の新田伸。彼は大人しく高校生活を送りたいのに、友人たちが問題を持ち込んでくる。嫌々ながら巻き込まれつつ、彼は徹底的に目立たないようにやり過ごそうとする。例え相手が高校最強と呼ばれる人間だろうと、やり過ごす自信が彼にはあった。何故なら、彼こそが世界最強の魔術使いなのだから……。最強の魔術使いの高校生が、平穏な学園生活のために実力を隠しながら、迫り来る問題を解決していく物語。 ※主人公はできる限り本気を出さず、ずっと実力を誤魔化し続けます ※小説家になろう、ノベルアップ+、ノベルバ、カクヨムにも投稿しています。

掃除婦に追いやられた私、城のゴミ山から古代兵器を次々と発掘して国中、世界中?がざわつく

タマ マコト
ファンタジー
王立工房の魔導測量師見習いリーナは、誰にも測れない“失われた魔力波長”を感じ取れるせいで奇人扱いされ、派閥争いのスケープゴートにされて掃除婦として城のゴミ置き場に追いやられる。 最底辺の仕事に落ちた彼女は、ゴミ山の中から自分にだけ見える微かな光を見つけ、それを磨き上げた結果、朽ちた金属片が古代兵器アークレールとして完全復活し、世界の均衡を揺るがす存在としての第一歩を踏み出す。

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

処理中です...