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第5章
第112話
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肉眼で見えるほど近くなった今となっては、歌声が確かに女性の形をした何かによるものだと言うことが分かる。
一人難しい顔をしているのはカインだった。
「まいったな。歌声は聴こえるが、皆が言う女性達がやっぱり視えない。この前と同じ何かだということは間違いないね」
「それにしてもすっかり気を散らしていて見ていなかったけど、バレーんの群れはどこへ行ったのかしら?」
「ああ。さっきのでかい魚の群れならちょうどあの辺りで海の中へ潜って行ったよ。ちょうど、ほら。妙に空に鳥が集まっているあたりだ」
「鳥って? あ!」
カインが指差した先には無数の鳥達が空を飛んでいた。
よく見ればワイバーンやワイアームなどの魔物も混ざっている。
その場所はちょうど歌声を上げる女性の形をした何かが集まる真上だった。
おびただしい量の鳥と亜竜達は上空でしばらく旋回していた。
そして次々へと水中に向かって急降下を始めた。
一瞬、水面に上ってきた魚を捕食しているのかと思ったが、様子がおかしい。
「見て! 鳥達や亜竜達が海の中に潜っていくわ!!」
「なんだあれは!? 明らかにおかしい! 何が起きてる。あの歌声のせいか?」
カインは慌てて船倉に居るシバへ念話で様子が分かるまで近付かないように話をした。
『シバさん! 聞こえますか? どうやら前方に正体不明の魔物が居ます。よく分からないことが起きているので、状況が分かるまでこの場で待機してください!』
しかし念話を送った後も船は変わらず最大速度で問題の海域へと進んでいる。
念話はあくまでカインからの一方通行、相手の意志を受け取ることが出来ないため、念の為もう一度念話を送る。
『シバさん! 聞こえますか!? 異常事態発生です。すぐ船を止めてください!!」
カインの再度の呼びかけも虚しく、どんどんと船は近付いていく。
「くそ! 誰か! 状況をシバさんに話して船を止めるよう言ってくれ! こんな時に限って念話が通じてないようだ!!」
ベヒーモスとの戦いの後お試しで習得した念話だったが、カインは今後の戦いを有利にするものと理解し、積極的に修練に励んだ。
その結果、実戦でも使えるほど熟練したと考えていた。
「分かった! お父さん。私が行ってくるね!」
そう言うとサラは急いで船倉へと駆けて行った。
そこでカインはあることに気付く。こういう場面で率先して声を上げるアオイがやけに静かなのだ。
考えれば歌声が聞こえてきた辺りから、アオイは妙に静かだった。
そのアオイは船首に近い位置に立ち、進行方向をじっと見つめていた。
「アオイさん。大丈夫ですか? 何かあれで知っていれば教えてください」
カインはアオイに近付き、声をかける。
しかしアオイはカインの言葉など聞こえていないかのように微動だにしないで先ほどと同じように一点を見つめている。
「アオイさん? 大丈夫ですか? アオイさん!!」
いくら声をかけてもアオイはピクリとも動かない。
不安を覚えたカインはアオイの目の前に身体を移動し、再度声をかけようとした瞬間。
「ジャマダ。ドケ!!」
アオイの声とは思えないような声とともに右手が乱暴に払われ、カインの身体を腕の上から押し退けた。
骨が折れる音が響き、カインが苦悶の表情を見せる。
「カインさん!!」
その場にいたソフィが駆け寄る。
どうやらアオイの尋常ならざる腕力によって、カインの右腕が骨折させられたらしい。
「このっ!! 仲のいい振りをして、何が目的だ!!」
カインのことなど歯牙にもかけないと言ったふうにアオイは相変わらず、一心に鳥や亜竜が投身自殺を繰り返す場所、この船の進行方向を凝視していた。
ソフィはアオイを殺すための魔法の詠唱を始める。
「待つんだ! ソフィちゃん!! たぶんアオイさんは魅了されている!!」
「え!? 魅了ですか?」
カインの静止によって詠唱を中断するソフィ。
「多分だが、様子が明らかにおかしい。まるで……そうか! ソフィちゃん、例のペンダントをアオイさんにかけるんだ。視界を遮る真似さえしなければ問題ないはずだ」
骨折による苦痛で額に脂汗をかきながら、カインはソフィに伝える。
意図を理解したソフィは急いでアオイに駆け寄り、後ろから素早く自分がかけていたペンダントをかけた。
「はっ!? 俺は一体何を?」
「良かった。なんとか正気に戻りましたね」
アオイは折れた腕を庇いながらうずくまるカインを見て、何は起こったか理解した。
慌てた様子で万が一の補修用に用意していた材木を適当な大きさに切断し、カインの折れた腕の添え木にする。
「すまない……まさかこんなことになろうとは」
「仕方ありません。私のミスでした。材料はあった。事前に準備できなかったわたしの責任です」
カインの言うように船の装甲を強化する目的として運んだ大量のミスリル。
それを使えばサラとソフィ以外にも同じ付与魔法をかけたペンダントが用意出来たが、カインはその事に思いが寄らなかった。
「カインさん! アオイさんが魅了されていたって事はシバさんやコハンさんも!!」
「まずい! 船倉へ向かうぞ!!」
三人は魔道核により船を操る二人が居る船倉、サラが先に向かった先へと駆けて行った。
一人難しい顔をしているのはカインだった。
「まいったな。歌声は聴こえるが、皆が言う女性達がやっぱり視えない。この前と同じ何かだということは間違いないね」
「それにしてもすっかり気を散らしていて見ていなかったけど、バレーんの群れはどこへ行ったのかしら?」
「ああ。さっきのでかい魚の群れならちょうどあの辺りで海の中へ潜って行ったよ。ちょうど、ほら。妙に空に鳥が集まっているあたりだ」
「鳥って? あ!」
カインが指差した先には無数の鳥達が空を飛んでいた。
よく見ればワイバーンやワイアームなどの魔物も混ざっている。
その場所はちょうど歌声を上げる女性の形をした何かが集まる真上だった。
おびただしい量の鳥と亜竜達は上空でしばらく旋回していた。
そして次々へと水中に向かって急降下を始めた。
一瞬、水面に上ってきた魚を捕食しているのかと思ったが、様子がおかしい。
「見て! 鳥達や亜竜達が海の中に潜っていくわ!!」
「なんだあれは!? 明らかにおかしい! 何が起きてる。あの歌声のせいか?」
カインは慌てて船倉に居るシバへ念話で様子が分かるまで近付かないように話をした。
『シバさん! 聞こえますか? どうやら前方に正体不明の魔物が居ます。よく分からないことが起きているので、状況が分かるまでこの場で待機してください!』
しかし念話を送った後も船は変わらず最大速度で問題の海域へと進んでいる。
念話はあくまでカインからの一方通行、相手の意志を受け取ることが出来ないため、念の為もう一度念話を送る。
『シバさん! 聞こえますか!? 異常事態発生です。すぐ船を止めてください!!」
カインの再度の呼びかけも虚しく、どんどんと船は近付いていく。
「くそ! 誰か! 状況をシバさんに話して船を止めるよう言ってくれ! こんな時に限って念話が通じてないようだ!!」
ベヒーモスとの戦いの後お試しで習得した念話だったが、カインは今後の戦いを有利にするものと理解し、積極的に修練に励んだ。
その結果、実戦でも使えるほど熟練したと考えていた。
「分かった! お父さん。私が行ってくるね!」
そう言うとサラは急いで船倉へと駆けて行った。
そこでカインはあることに気付く。こういう場面で率先して声を上げるアオイがやけに静かなのだ。
考えれば歌声が聞こえてきた辺りから、アオイは妙に静かだった。
そのアオイは船首に近い位置に立ち、進行方向をじっと見つめていた。
「アオイさん。大丈夫ですか? 何かあれで知っていれば教えてください」
カインはアオイに近付き、声をかける。
しかしアオイはカインの言葉など聞こえていないかのように微動だにしないで先ほどと同じように一点を見つめている。
「アオイさん? 大丈夫ですか? アオイさん!!」
いくら声をかけてもアオイはピクリとも動かない。
不安を覚えたカインはアオイの目の前に身体を移動し、再度声をかけようとした瞬間。
「ジャマダ。ドケ!!」
アオイの声とは思えないような声とともに右手が乱暴に払われ、カインの身体を腕の上から押し退けた。
骨が折れる音が響き、カインが苦悶の表情を見せる。
「カインさん!!」
その場にいたソフィが駆け寄る。
どうやらアオイの尋常ならざる腕力によって、カインの右腕が骨折させられたらしい。
「このっ!! 仲のいい振りをして、何が目的だ!!」
カインのことなど歯牙にもかけないと言ったふうにアオイは相変わらず、一心に鳥や亜竜が投身自殺を繰り返す場所、この船の進行方向を凝視していた。
ソフィはアオイを殺すための魔法の詠唱を始める。
「待つんだ! ソフィちゃん!! たぶんアオイさんは魅了されている!!」
「え!? 魅了ですか?」
カインの静止によって詠唱を中断するソフィ。
「多分だが、様子が明らかにおかしい。まるで……そうか! ソフィちゃん、例のペンダントをアオイさんにかけるんだ。視界を遮る真似さえしなければ問題ないはずだ」
骨折による苦痛で額に脂汗をかきながら、カインはソフィに伝える。
意図を理解したソフィは急いでアオイに駆け寄り、後ろから素早く自分がかけていたペンダントをかけた。
「はっ!? 俺は一体何を?」
「良かった。なんとか正気に戻りましたね」
アオイは折れた腕を庇いながらうずくまるカインを見て、何は起こったか理解した。
慌てた様子で万が一の補修用に用意していた材木を適当な大きさに切断し、カインの折れた腕の添え木にする。
「すまない……まさかこんなことになろうとは」
「仕方ありません。私のミスでした。材料はあった。事前に準備できなかったわたしの責任です」
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それを使えばサラとソフィ以外にも同じ付与魔法をかけたペンダントが用意出来たが、カインはその事に思いが寄らなかった。
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