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第6章
第127話
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領主代行とサラたちが去り、村に妙な静けさが戻った。
ウィルは心配そうな顔でカインを見つめる。
「おい。カイン。良かったのか? あんなこと言って。お前、下手したらS級冒険者を首になるんだろ? お前、それになるために村を出ていったんじゃないのか?」
「ああ。だが、それよりも大事なものがあるってことを思い出したよ。それに結局自分の力で手に入れたものでもないしな」
カインはウィルにそう告げると、自分の家へと足を運んだ。
家の中には入らず、庭へと向かう。
「ごめんな。君の大切な花を枯らさせることなんて、絶対にしないから」
カインの目の前には、妻が生前大切に育てていた花畑があった。
昨日までみずみずしくはりのある葉や花弁を携えていた花は、今や萎れてしまっている。
カインは完全に枯れてしまった葉、花弁を茎から折り取る。
枯れた部分をそのままにしておくと、花に余計な負担がかかってしまうためだ。
冒険者をしていた頃は花を愛でることも、ましてや花を育てることなど知るよしもなかった。
全ては亡き妻の指導の賜物だ。
初めの頃はせいぜいひと区画だった花畑も、今や元の数倍の広さに広がっている。
カインはその一つ一つを丁寧に処理してまわる。
幸いカインの放った魔法のおかげで、枯れきってしまった花は皆無だった。
このまま丁寧に手入れをしていけば、また元の花畑に戻るだろう。
「既に弱まっているな……やはり魔力も吸い出すのか」
作業が終わるとカインは村に周囲に張った半球形の見えない防壁に意識を向けた。
カインが言うように、防壁の外から徐々に魔力は放出され、壁の厚みが薄くなっていっているようだ。
カインは再び詠唱をした後、壁に魔法をかけ直す。
魔力枯渇に近い状態になり、その場にひざまずくが、察したマチのおかげで魔力を回復させ立ち上がる。
「このままではまずいな。なにか対策を練らないと。そうだ。全員は無理でも、近くの村や町の人々も体力の低い人はこの村に移動させないとな……」
カインの村は魔法のおかげで中にいる者に危険はないが、村の外は別だ。
事実、領主代行が言っていたし、被害も無視できなくなっているはずだ。
そうでなければ一地方の領主がS級冒険者三人もの強制クエストを依頼するはずなのなかった。
強制力を持たすためには、依頼者側もそれ相応の負担があるのは当然だ。
下手をしたら領主の財政が傾くかもしれないほどの膨大な金が必要だった。
しかし、放置すれば領内自体が壊滅するという、苦渋の決断の結果だったと伺い知れる。
「それを断り、亡き人の思い出を守るか……」
カインは自分とった行動が、非常に利己的であることに苦笑いした。
しかし、そうだとしても出した結論に後悔などしていなかった。
カインは見えない視界の中に亡き妻の顔を思い浮かべると、人に移動を手配するために村人たちに声をかけに行った。
☆
「それで。その伝説の魔物とやらの居場所はちゃんと分かってるんでしょうね?」
「今、新しく編成した隊が偵察に向かっています。決して近付かず、おおよその居場所を常に把握出来る距離で継続して魔物を追跡しています」
領主代行とサラたちは村の隣にある街へと向かっていた。
魔物の居場所を領主代行から聞きだし、ゼロにそこまで運んでもらおうとしたが、領主代行から待ったがかかった。
魔物はどうやら移動を繰り返し、広範囲で活動をしているようだ。
サラたちを連れてくる役目は領主代行に、その間に領内の騎士が居場所を突き止め、その情報をこの街に送る手筈だという。
「着きましたね。あの館に届いているはずです」
そう言うと領主代行は街に中央にある大きな屋敷へと歩を進めた。
そこは以前、この街を牛耳っていたとある商人の屋敷だった。
不幸にも当主は魔物に襲われ絶命し、また、数々の不正や犯罪に手を染めていたことが明るみになり、全ての資産は領主に没収された。
元々家を継ぐものもいなかったため、屋敷は領の持ち物として利用されることなった。
「お待ちしておりました。リーベランド様。伝達も既に届いております」
「ご苦労です。ここへ」
入口で領主代行を迎えた兵士は、敬礼をしてから奥へ向かうと、一羽の白い鳩を連れてきた。
足首には小さな筒が付いたリングをはめている。
「それではさっそく。今から内容を読みますので、みなさんはすぐに現場へ向かってください。この間にも多くの資源と命が危険にさらされています」
鳩の足の筒から小さな用紙を取り出すと、領主代行は内容を一瞥した。
「えーと、なになに……な、なんですって!? そんな事が……」
「なになに? 一人で驚いていてもなんにも伝わらないよ。一刻を争うんでしょ? さっさと教えなさいよ」
書かれた内容に驚いている領主代行にララが空気を読まずに口を出す。
しかし、正論だったため領主代行はすぐに頷き内容を口に出した。
「偵察に向かった隊は再び全滅したようです。おそらくこの手紙を書いた人物も含めて……居場所も北の山としか書かれていません……」
よく見ると鳩の真っ白な身体に所々赤い染みが付いていた。
魔物に襲われながらも少しでも情報をと必死で送ったに違いない。
領主代行は二度も部下たちを死に追いやった自分の命令を悔い、頭を下げた。
ウィルは心配そうな顔でカインを見つめる。
「おい。カイン。良かったのか? あんなこと言って。お前、下手したらS級冒険者を首になるんだろ? お前、それになるために村を出ていったんじゃないのか?」
「ああ。だが、それよりも大事なものがあるってことを思い出したよ。それに結局自分の力で手に入れたものでもないしな」
カインはウィルにそう告げると、自分の家へと足を運んだ。
家の中には入らず、庭へと向かう。
「ごめんな。君の大切な花を枯らさせることなんて、絶対にしないから」
カインの目の前には、妻が生前大切に育てていた花畑があった。
昨日までみずみずしくはりのある葉や花弁を携えていた花は、今や萎れてしまっている。
カインは完全に枯れてしまった葉、花弁を茎から折り取る。
枯れた部分をそのままにしておくと、花に余計な負担がかかってしまうためだ。
冒険者をしていた頃は花を愛でることも、ましてや花を育てることなど知るよしもなかった。
全ては亡き妻の指導の賜物だ。
初めの頃はせいぜいひと区画だった花畑も、今や元の数倍の広さに広がっている。
カインはその一つ一つを丁寧に処理してまわる。
幸いカインの放った魔法のおかげで、枯れきってしまった花は皆無だった。
このまま丁寧に手入れをしていけば、また元の花畑に戻るだろう。
「既に弱まっているな……やはり魔力も吸い出すのか」
作業が終わるとカインは村に周囲に張った半球形の見えない防壁に意識を向けた。
カインが言うように、防壁の外から徐々に魔力は放出され、壁の厚みが薄くなっていっているようだ。
カインは再び詠唱をした後、壁に魔法をかけ直す。
魔力枯渇に近い状態になり、その場にひざまずくが、察したマチのおかげで魔力を回復させ立ち上がる。
「このままではまずいな。なにか対策を練らないと。そうだ。全員は無理でも、近くの村や町の人々も体力の低い人はこの村に移動させないとな……」
カインの村は魔法のおかげで中にいる者に危険はないが、村の外は別だ。
事実、領主代行が言っていたし、被害も無視できなくなっているはずだ。
そうでなければ一地方の領主がS級冒険者三人もの強制クエストを依頼するはずなのなかった。
強制力を持たすためには、依頼者側もそれ相応の負担があるのは当然だ。
下手をしたら領主の財政が傾くかもしれないほどの膨大な金が必要だった。
しかし、放置すれば領内自体が壊滅するという、苦渋の決断の結果だったと伺い知れる。
「それを断り、亡き人の思い出を守るか……」
カインは自分とった行動が、非常に利己的であることに苦笑いした。
しかし、そうだとしても出した結論に後悔などしていなかった。
カインは見えない視界の中に亡き妻の顔を思い浮かべると、人に移動を手配するために村人たちに声をかけに行った。
☆
「それで。その伝説の魔物とやらの居場所はちゃんと分かってるんでしょうね?」
「今、新しく編成した隊が偵察に向かっています。決して近付かず、おおよその居場所を常に把握出来る距離で継続して魔物を追跡しています」
領主代行とサラたちは村の隣にある街へと向かっていた。
魔物の居場所を領主代行から聞きだし、ゼロにそこまで運んでもらおうとしたが、領主代行から待ったがかかった。
魔物はどうやら移動を繰り返し、広範囲で活動をしているようだ。
サラたちを連れてくる役目は領主代行に、その間に領内の騎士が居場所を突き止め、その情報をこの街に送る手筈だという。
「着きましたね。あの館に届いているはずです」
そう言うと領主代行は街に中央にある大きな屋敷へと歩を進めた。
そこは以前、この街を牛耳っていたとある商人の屋敷だった。
不幸にも当主は魔物に襲われ絶命し、また、数々の不正や犯罪に手を染めていたことが明るみになり、全ての資産は領主に没収された。
元々家を継ぐものもいなかったため、屋敷は領の持ち物として利用されることなった。
「お待ちしておりました。リーベランド様。伝達も既に届いております」
「ご苦労です。ここへ」
入口で領主代行を迎えた兵士は、敬礼をしてから奥へ向かうと、一羽の白い鳩を連れてきた。
足首には小さな筒が付いたリングをはめている。
「それではさっそく。今から内容を読みますので、みなさんはすぐに現場へ向かってください。この間にも多くの資源と命が危険にさらされています」
鳩の足の筒から小さな用紙を取り出すと、領主代行は内容を一瞥した。
「えーと、なになに……な、なんですって!? そんな事が……」
「なになに? 一人で驚いていてもなんにも伝わらないよ。一刻を争うんでしょ? さっさと教えなさいよ」
書かれた内容に驚いている領主代行にララが空気を読まずに口を出す。
しかし、正論だったため領主代行はすぐに頷き内容を口に出した。
「偵察に向かった隊は再び全滅したようです。おそらくこの手紙を書いた人物も含めて……居場所も北の山としか書かれていません……」
よく見ると鳩の真っ白な身体に所々赤い染みが付いていた。
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領主代行は二度も部下たちを死に追いやった自分の命令を悔い、頭を下げた。
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