【コピペ】を授かった俺は異世界で最強。必要な物はコピペで好きなだけ増やし、敵の攻撃はカットで防ぐ。え?倒した相手のスキルももらえるんですか?

黄舞

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第1話【俺のスキルは【コピペ(カット機能付き)】】

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「あーもう! 一体いつになったらコピペ使えるようになるんだ!!」

 これが俺のこの人生で最後の言葉だった。
 パソコンが苦手を通り越して覚える気もない上司に、いつものようにコピペを教えて、無駄な残業をした日の帰り道。

 人気のない交差点で、俺がつい心の叫びを発した直後の出来事だった。
 痛みはない。あっという間の出来事。
 結論から言うとトラックに轢かれ、俺は二十五歳という若さでこの人生に幕を閉じた。

 ああ……こんなことなら、上司のことなんてほっといて、今日の飲み会参加してるんだった……。

「あなたの願い叶えましょう。ただし、この世界では使えない能力なので、それが可能な世界に移ってもらいます。見た目と年齢は少しサービスしてあげますね。うふふ」

 そんなことを言う女神のような神々しさと美しさを兼ね備えた女性をぼんやりと覚えている。
 その蠱惑的な声だけが、ずっと耳にこびりついていた。



「はっ!?」

 気が付き、俺は慌てて体を起こす。
 ここは何処だ?

 あたりを見渡しても、まばらに木々が生えた林の中だということしか分からなかった。
 突然の出来事に頭が混乱しているようだ。

 まだ寝ぼけているような頭で思いついたのは、ひどく喉が渇いているということだった。
 人や生き物の気配もない林を当てもなくふらふらと歩くと、俺は湖を見つけた。

 喉の渇きに耐え切れず、たまらずその水を口に運ぶ。
 そこで水面に映った俺の姿を見て、驚きのあまり口に含んだばかりの水を吹き出してしまった。

「誰だこれ!?」

 そこには、男の俺でも可愛らしいと思ってしまうような、つぶらな黒目と艶のある黒髪をもった少年の姿があった。
 まるで少女漫画にでも出てきそうな顔立ちだ。

「どうなってるんだ? 俺の記憶だと、元の顔も年齢もこんなんじゃなかったはずだ。これはもしかして……」

 俺は一瞬、小説で読んだ転生という言葉を思い浮かべた。
 馬鹿らしい、とは思うが、先ほどから感じる現実味を帯びた五感が、これが夢ではないと語っている。

 そんなことを思いながら、俺は今の状況を改めて考えてみることにした。
 そして、何も分からないことを改めて理解した。

「はー。どうすんだよこれ。服は着てるけど、持ち物とか何もないし……しかし、あの女神。俺の願いを叶えたってどういうことだ?」

 途方に暮れて俺は立ちすくむ。
 そんな俺の脳内に夢だと思っていた空間で会った、あの女神の声が響く。

『どうですか? 新しい人生。望みのスキルもばっちりですし。あ、その見た目は私の好みなのであしからずー』
「え? あ! おい!! 俺の望みのスキルってなんだよ!? そしてここは何処だ!? 俺はどうなったんだ!?」

 思わず俺は叫んでいた。
 答えてくれるかどうか分からなかったが、今持っている疑問を全て投げ付ける。

 正直な話、俺の頭は大混乱に陥っている。
 この夢みたいな現実にも、そして脳内に直接響き渡る女神の声にも。

『え? 転生前に望んでいた能力ですよ。【コピペ】っていうんですよね? 私、分からなくて調べちゃいました。コピーアンドペーストの略なんですねぇ。うふふ。あ、なんか似たような機能もおまけで付けときましたんで』
「スキル【コピペ】? なんだそれ。どうやって使うんだ!」

『えーっと、それはですねぇ。あ、すいません。もうこれ以上の干渉は無理みたいです。一応これだけ。スキルは強く念じれば使えますからねー。それじゃあ、頑張ってくださいね』
「おい!! 待てって。おい!!」

 結局、その後は何を言っても返事が返ってくることはなかった。
 俺はその場でやるせなさを吐き出すように叫ぶ。

 叫んだが、それで何か変わるわけもない。
 仕方がなく、俺はまた当てもなく歩くことにした。

 とりあえずは何か口にするものを探さなくては。
 このままでは餓死してしまう。

 水を飲んで渇きを潤した身体は、次にひどい飢えを俺に訴えてくる。
 どのくらい食べていなかったのか分からないほどに、俺の腹は痛みさえ感じるほど飢えていた。

 そんな状態でしばらく歩いていると、俺は一本の木を見つけた。
 俺は思わずその木の根元に駆け出していた。
 そこには赤いリンゴのような実がなっていたのだ。

「あれ、食べられるかなぁ。うぅ、腹減った。食べられるなら今すぐ食べたい。お? あれは鳥か? しめた! 実を食べているな」

 他の生き物が食べているなら毒はないだろう。
 そんな安直な考えだったが、あながち間違いではないと思った。

 そもそも毒とは実を獣や鳥などに食べさせないためだと聞いたことがある。
 その鳥が食べているのだから、毒があるとは思えない。
 
 俺は試しに木に登ろうと手足を幹にかけてみる。
 実は見えるものの、はるか頭上にあって、とてもじゃないが地上からは届かないからだ。

「くそ、無理か。そもそも木登りなんて、俺したことないしな。そういえば名前も忘れたけど、あいつは木登りうまかったなぁ」

 俺は舌打ちをする。
 こんなことなら、若いころ近所の友達の輪に嫌がらず入っていればよかった。

 無理だと分かって諦めた俺は、今度は体当たりを木にしてみる。
 ゲームなんかの世界では、体当たりで木の実が落ちてくるなんてのは良くある話だからだ。

 結果はダメだった。
 少年の体でいくら体当たりをかましても、一向に落ちる気配はない。

 俺は体当たりで赤くなった手のひらをさすりながら、恨めしそうに上を見あがれる。
 すると、木の上で実を食べていた鳥の体が別の実に当たった拍子に、良く熟れていたと思われる実が一つ落ちてくるのが見えた。
 慌てて落下地点に行き、両手でその実を落とさないように受け止める。

 その実を鼻に近付けると、思わずかぶりつきたくなるようないい匂いがした。
 衝動に勝てず、俺はその実に歯を立てる。

「美味い!!」

 見た目はリンゴだが、味は甘みの強いブドウのような味がした。
 ふた口かじった後、俺はふと思いつき、食べるのを止める。

 このまま食べてしまえば、俺はまた食べ物を探さなくてはいけないのだ。
 しかし、今みたいに運良く手に入ることなど、まずないと思っていいだろう。

「スキル【コピペ】と言ったな……」

 俺は半信半疑で、手に持つ実を増やすことが出来ないか試してみることにした。

「まずは……【コピー】!!」

 スキルの使い方は強く念じればいいと女神が言っていたが、念のため口に出してみる。
 しかし、試しに叫んでみたものの、何の変化も起きない。

「問題はここからだ。【ペースト】!!」

 そう叫んだ瞬間、右手に持っていた実と同じ物が俺の左手に現れた。
 間違いなく同じ物で、かじった痕まで一緒だ。

「は……はは!! 出来た!! これは凄い!!」

 俺は目の前で起こった出来事に興奮していた。
 調子に乗ってもう一度【ペースト】と叫んでみると、更にもう一つ同じ実が現れる。

 どうやら、このスキルはパソコンの【コピペ】と一緒で、一度コピーさえすれば、何度でもペースト出来るらしい。

「それなら……【コピー】!! それで、【ペースト】!!」

 どうせ増やすなら食べかけではない物をと思い、俺は頭上にある実に意識を向け【コピー】を使い、そして【ペースト】を使ってみた。
 しかし現れたのは先ほどと同じ、かじった痕のある実だ。

「あれ? 触ってないとコピーできないのかな?」

 どうやら発動条件があるらしい。
 俺は首を傾げるが、目の前で起きてることが全てだろう。

 どんな世界かも分からないこの世界を、このスキルで今後生きていかなければいけない。
 そう思った俺は、可能な限り自分のスキルについて試してみることにした。

 結果分かったのは、手を触れなくても【コピー】出来ること。
 しかし、【コピー】出来る物と出来ない物があるらしいということ。

 これについては、おおよそ予測がついた。

「つまり生き物や、生き物の一部はダメだけど、本体から離れたものについては出来るってことか」

 俺が試したのは木と木の枝の【コピー】だった。
 結果は失敗。

 しかし、木から生えたままの枝では【コピ―】出来ないが、折ってしまえば出来ることが分かった。

「それと、おまけの能力ってのは……これだな。【カット】!!」

 俺が叫んだとたん、手に持っていた木の枝は跡形もなく消え失せる。
 次いで【ペースト】を叫ぶと、再び同じ木の枝が手元に現れた。

「このくらいだな。今分かるのは」

 俺は自分の試験結果に満足し、一人頷く。
 昔からこうやって色々と試してみるのは好きなので、なんだかんだ楽しくなっていたのだ。

 ちなみに、【ペースト】で出現させることが出来るのは、最後に【コピー】もしくは【カット】したもののみらしい。
 これもパソコンの機能と一緒のようだ。

 一通りスキルの発言条件を確認した、その時だった。

「きゃー! 誰か! 助けてー!!」

 明らかに若い女性の声が、近くで上がったのだ。
 俺は一瞬の迷いもなく、その声のした方へ急いだ。

 後で思えばおかしな話だ。
 俺は、この世界に来たばかりで、どんな危険が待ち受けているのかも、そして俺がその危険に立ち向かえる能力なんてあるのかも分かっていなかったのに。

 それでも俺は走り、やがて声の主を見つけた。
 そこには一人の少女と、今にも襲い掛かろうとしている、熊のような生き物が居た。
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