1 / 56
1巻
1-1
しおりを挟む章一――お前を雇ってくれるところなんて――
「おいハンス! この魔法薬、間違ってるだろ!? 用意するのは初級が十本じゃなくて、初級、中級、上級がそれぞれ十本ずつだ! 納期は明日だぞ! 分かってんのか!?」
俺の所属するギルド【白龍の風】に怒声が鳴り響く。
その矛先はいつも通り、錬金術師がよく着る服装をした黒髪黒目の男、つまり俺、ハンスに向かっている。
場所はギルド長室。豪華な調度品がところ狭しと並べられている部屋だ。
部屋にいるのは、俺を怒鳴りつけているギルド長のゴードンと、俺だけ。
俺を擁護してくれそうな人などいないのだから、自分で弁明するしかない。
「しかしギルド長。指示いただいた時は、間違いなく作るのは初級魔法薬だけだと。この納入先は、いつも三種類を頼まれているので確認したはずです。ここにメモも――」
「なんだと!? 俺のせいだって言う気か!! この無能が!! くだらん言い訳している暇があったら、さっさと残りの魔法薬を作り始めろ!! 間に合わなくて損害が出たら、全部お前の責任だからな!!」
「ちょっと待ってください。発注を受けた時に始めれば間違いなく間に合いました。しかし、今からじゃとても……それに、その納入品の終了報告は随分前にしていたはずです。せめてその時に言ってもらえていれば……」
「なんだと? まだ言い訳をするのか? お前の替えなんていくらでもいるんだぞ」
目が痛くなるような、ギラギラした装飾を身にまとったギルド長は、いつも通りの脅し文句を投げかけてきた。
身寄りがなかった俺の才能を見出してくれて育ててくれたのは、間違いなくギルド長だ。
その点については感謝している。
逆に言うとここでの仕事を失ってしまえば、他に知識も何もない俺は、野垂れ死ぬ運命だというのも分かっている。
そのことは、決まり文句のように続く、ギルド長のこの言葉でも物語っていた。
「ハンス。お前みたいな無能を使ってくれるようなところなんて、他にないんだぞ? そんなお前を使ってやってるんだ。感謝すべきなのに、お前といったらいつになったら役に立てるようになるんだ」
「すみません。急いで間に合わせます。徹夜になると思いますので、工房の使用許可をください」
「まったく! 工房を使うのだってタダじゃないんだぞ。間に合っても、今回の件はお前の落ち度だ。残業した分の経費はお前の分から引くからな」
「はい。分かりました。それで構いません」
それだけ言うと、ギルド長は去っていく。
俺は大急ぎで工房に向かい、足りない中級魔法薬と上級魔法薬を作り始めた。
工房には様々な素材が無造作に積み上げられていて、錬成に必要な器具が雑多に置かれたままになっていた。
器具は俺の私物だが、他にこの工房を使う者もいないので、俺が使いやすいように置いているのだ。
俺は素材の山から魔法薬に必要なものを選別し机に載せる。
まずはこれを砕いて細かくして、魔法薬に必要な成分を取り出す作業をするのだ。
しかし本来のやり方なら、とてもじゃないが間に合わない。
いつも通り、俺は独自にアレンジした方式で、順に魔法薬を生成していく。
まずは【酸性抽出】。
俺が作った言葉で、これをやるのとやらないのとでは抽出の速度に大きな差が生じる。
普通の方法、つまり一般的な抽出作業では素材を水でただひたすら煮るだけだが、酸性抽出では水にスライムの酸液を加える。
これを加えることで、素材に含まれている魔法薬の成分が、格段に速く水の中へと溶け込む。
十分煮たら、今度はアルカリアの草の灰を加える。
こうすることで、成分が容器の底にたまる。
これが魔法薬の元となるもの。
普通にやれば手に入れるために相当な時間がかかるが、酸性抽出ならばこのようにすぐに入手できる。
問題は、素材自体の質が悪いと、邪魔な成分も含まれていて魔法薬には使えないということ。
このまま作れば、魔法薬の品質が下がってしまう。
そのため、ここからその不純物を取り除く作業が必要だ。
俺は慣れた手つきで作業に取りかかった。
「ふぅ。なんとか間に合った」
俺が魔法薬を作り終えたのは朝日が上ったあとだった。
眠い目を擦りながら、納品しに行く。
向かったのはいつも通りギルド長室。
扉を叩き、返事を待ってから入る。
「ギルド長、なんとか間に合いました。中級魔法薬と上級魔法薬がそれぞれ十本です。確認をお願いします」
俺はそう言って、作り終えたばかりの魔法薬をギルド長の目の前にある机に並べていく。
ギルド長は魔法薬を一瞥すると、懐から銀貨を一枚取り出し、こちらに向かって放り投げた。
慌てて空中で掴み取ろうとして失敗し、床に転がる銀貨をしゃがんで拾う。
ギルド長は尊大な口調で言った。
「ギリギリだが、まぁ間に合ったんだから許してやる。お前は昔っからそうだ。俺がいないと、ろくに期限も守れないんだからな」
「あの、これは?」
「あ!? 今回の報酬だろ。分かんねぇのか? お前の首の上には何が乗っかってるんだ? 帽子の台か? いらねぇなら返せ」
「いえ、今回の報酬は金貨一枚だったはずです。これではとても……」
銀貨百枚で金貨一枚の価値だ。
銀貨一枚ではパン一個買うくらいしかできない。
いくら徹夜で工房を使った分を差し引くとは言っても、これではあまりに少なすぎる。
すると、ギルド長は露骨に優しげな顔をしてみせた。
「ハンス。いいか? これはお前に対しての親心だ。人間は間違いから成長していく。ここでお前を甘やかしたら、親代わりである俺が、お前の成長を妨げてしまうことになるだろう? ……そんなことより、これが次の仕事だ。明後日までに精錬銅と精錬鉄を二十。さっさと始めろ」
「ちょっと待ってください。さっきまで徹夜でやっていたんです。明後日が納期だなんて……それに、他にも仕事は山積みなんです。今から始めたらまた徹夜ですよ!」
実を言えば徹夜は昨日が久しぶりだけれど、深夜まで働いているのはここ最近ずっとのことだ。
短い納期や今回のような指示ミスによる追加の仕事のせいで、休むことなく働いている。
決まった休みがないのはどの職業でも一緒だけれど、さすがにこのまま続ければ倒れてしまう。
俺の反論に、ギルド長は表情を一変させて不機嫌な顔になった。
「そんなの知るか。間に合わないのはお前が無能だからだろうが。文句があるなら他の働き口を探せ! どうせお前みたいな無能を使ってくれるようなところなんて――」
「分かりました。辞めます」
「あ!? お、お前! 今なんて言った?」
「辞めます。今まで僕みたいな無能を使っていただきありがとうございました。でも、もう無理です」
正直、もう限界だった。
育ててもらった恩はある。
また、ギルド長が言うように、こんな俺を他に雇ってくれるところなんかないのだろう。
それでも、俺はもうここで働いていく自信も気力も体力も全て失ってしまっていた。
「ば、馬鹿言うな。お前みたいな――」
「いいんです。心配してくれている気持ちは痛いほど分かります。でもこれ以上は無理ですし、ご迷惑もかけられません。それでは失礼します」
「お、おい! 一日くらい休みを取らせてやってもいいぞ! 休んだら来い! 分かったな!? 俺の優しい親心が分からないお前じゃないだろう!?」
突然休みをくれると言いだしたギルド長だが、どういう風の吹き回しだろうか。
だが、俺はもう決めたのだ。
それにただでさえ迷惑をかけているのに、休みを取るなんて迷惑の上乗せになってしまう。
「いいえ。大丈夫です。それでは、今までありがとうございました。ギルド長もお元気で」
俺は未練が残らないよう、走って部屋をあとにした。
後ろではまだギルド長が何かを叫んでいたが、耳を塞ぎ聞かないようにして全速力で駆けた。
走って、走って、走って。
流れていく街並みを気にもせず、行く当てもなく走り続けた。
息が切れ、そこで立ち止まる。
気がついた時には、俺は街の中心にあるダンジョンの入口まで来ていた。
屈強そうな探索者が、どんどん入口に入っていく。
彼らはほとんどが武具を身に着けている。それほどダンジョン内が危険な場所だということだろう。
ダンジョンはこの街の基幹産業であり、色々な意味で街の中心だ。
その中には良質な素材となる植物や鉱石があり、そしてモンスターたちがいる。
凶悪なモンスターたちも、見事討伐できれば、他では手に入れることのできない様々な素材に変わる。
「過去の遺物」と呼ばれるとんでもない宝物が見つかることもあり、多くの者がパーティを組んでダンジョンに挑むのだ。
人々は彼らのことを探索者と呼ぶ。
その探索者を支援するために、様々な職人が集まり、この街オリジンを形成している。
探索者や職人連中をまとめあげるのがギルトだ。
大小様々なギルドが多くの職人を抱え、探索者の無茶な要求に応えている。
俺がさっきまで所属していた【白龍の風】は、ギルドの中でも一、二を争う、総合ギルドだ。
職人の集まりであるギルドには、単一の分野における職人が集まる専門ギルドと、異なる分野の職人がいる総合ギルドがある。
当然ながら、一般的には総合ギルドの方が規模が大きい。
【白龍の風】には多くの探索者が所属し、また、多種多様な職人たちを抱えていた。
と言っても錬金術師は俺一人だったけれど。
俺は探索者につられて、ダンジョンの入口――通称『奈落』の前に近付いていた。
最奥部がどうなっているかすら分からない、『奈落』の口がぽっかりと空いている。
「このまま一歩を踏み出せば、こんなちっぽけな人生を終わらせられるかな……」
そんなことを呟きながら、俺はダンジョンの入口を見つめていた。
戦闘技能を持たない俺がダンジョンに踏み込めば、間違いなく死が訪れるだろう。
「……!?」
次の瞬間、俺の頭に今まで見たこともない情報がとめどなく流れてきた。
あまりの情報量に目眩がして、その場にうずくまる。
――白い薄手の外套のようなものを着た男たちが、大量に並べられたガラスの容器の前で何かをしている。
正確に重さを計る器械や、容器の中にある小さな白い石棒みたいなものを自動で回す器械が見える。
その後も様々な場面が俺の頭の中に現れては消えてゆく。
「こ、これは……そうか。思い出したぞ。俺はまた同じ過ちを……」
頭に流れてきたのは、俺の前世の記憶だった。
日本という、この世界とは異なる国で暮らしていた前世の俺はいわゆるブラック企業に就職し、無能と言われ続け、電車を待つホームに立ち、今と同じことを考えていた。
結局、ホームから飛び下りることも、仕事を辞めることもできずに、俺は過労死してしまう。
前世の俺の職業は――化学者。
今いるこの世界にはない、地球という異世界の職業だ。
しかし俺の今の職業、錬金術師と似ている部分も多い。酸性抽出をはじめとする俺独自のアレンジは、前世の記憶が無意識のうちに浮かび上がり、踏襲した方法だったようだ。
それからしばらくうずくまっていた時だ。
「どうした? 大丈夫か? それにその格好、とてもこれからダンジョンに潜る格好じゃ……って、おい。うちの錬金術師様じゃないか。こんなところで何をしているんだ?」
「ソフィア? あ、いや。なんでもないんだ」
背後から聞こえた心配しているような声の方を振り返ると、そこには【白龍の風】の筆頭探索者、″魔法剣のソフィア〟が立っていた。
見た目の可憐さとは裏腹に、屈強な男たちも敵わない、魔法と剣術を組みあわせた戦法が持ち味の探索者だ。
トレードマークとも言える紅一色のフルプレートアーマーを装備し、腰には白く輝く長剣を提げている。
まだ街中だからだろうか、ヘルムの部分は腕に抱えていて、綺麗に編まれた金髪と、人を惹きつける碧眼の美貌が露になっていた。
周りを見渡しても他のパーティメンバーは見当たらない。
しかし、俺みたいに気付いたらここにいたというのでなければ、彼女が意味もなくダンジョンの入口に来ることなんてない。今日は一人でダンジョンに潜るのだろうか。
初心者の探索者なら、一人でダンジョンに挑むのは無謀と笑われるが、ソフィアほどの腕前ならたとえ単独で挑むと言っても笑う者はいないだろう。
そんなことを考えながらソフィアの顔を見つめていると、何故か彼女の頬が赤く染まった。
「おい。ハンス。私の顔に何か付いているのか? そんなにじっと見るな」
「え? ああ。ごめん、ごめん。ソフィアはこれから一人でダンジョンに? というか俺の名前を知っていたんだね」
無能と罵られるばかりの俺と違って、ソフィアは【白龍の風】のエースだ。
俺が彼女を知っているのは当然。
一方、ソフィアが俺のことを、しかも名前まで知っているとは正直驚きだ。
ギルド長に言われて、普段から他のギルドメンバーが集まるところには近寄らないようにしていたので、顔を合わせたのも一、二度くらいだろう。
「うちのギルドでお前を知らない奴なんているのか?」
ソフィアは不思議そうに言ったあと、言葉を続ける。
「私はちょっと魔法薬の素材を取りにな。正直なところ、うちで一から魔法薬を頼むと、他よりずっと高いだろ? だからせめて素材だけは集めて材料費を浮かせたいんだよ。それでもハンスが作る魔法薬は格別だからな。あれを一度使ったら、二度と他のやつのは飲めん」
「え? 魔法薬なんて誰が作っても一緒じゃないのかい?」
魔法薬というのは、人の体に流れる魔力を回復してくれる薬だ。この世界の人間は、誰しも魔力を持っている。
魔力は魔法の使用などで消耗する。大量に消耗すると疲労感が生じ、更に使い続けると気絶してしまうことまである。
魔力は時間の経過で回復するので、普通に生活する人は魔法を使ったあとに適宜休憩すれば問題ないが、常に危険と隣り合わせの探索者はそうもいかない。ダンジョンで魔力切れを起こしたら、死に直結するからだ。
また、探索者のために作られたと言っても過言ではないこの街では、魔法薬の種類に明確な区別がある。
区分は初級、中級、上級の三つ。それぞれの魔法薬は、生成のための素材も決まっている。
そのため、素材が同じならば出来上がる魔法薬の性能は一緒になると思っていたのだが……そうではないのだろうか。
疑問を抱きつつ、俺はソフィアに続けて言う。
「それに、俺はもうギルドを辞めたんだ。俺みたいな無能はいらないって、前から散々言われていたしね。だから、これからギルドに発注したら新しく雇われた人が作ると思うよ」
そう言った途端、ソフィアの顔が今度は青ざめた。
まるでとんでもなく悲しいことが起こったような表情だ。
「な、なんだって!? それにハンスが無能だって!? 高いとは言ったが、あんな高品質の魔法薬を作れるハンスが無能なわけがないだろう!」
「え? いや……でも実際に毎日ギルド長に怒鳴られていたけど、ソフィアは知らないの?」
俺の質問に、ソフィアは首を大きく横に振る。
あまりに強く振るので、頭がもげてしまいそうだ。
そういえば探索者がギルド長のところに直接来ることは、滅多にない。
というか、ギルド長のところではその他の職人もほとんど見かけなかった。仕事の話はギルド長から直接受けるはずなのに。
てっきり俺と時間が被ってないのだろうと深く考えずにいたけれど、今考えてみればおかしな話だ。彼らは一体いつ、どこで仕事の話を聞くのだろう?
そう思った俺は、ソフィアに尋ねてみた。
すると、彼女は首を捻って答える。
「ギルド長から直接? そんなことはまずないぞ? 探索者だって職人だって、普通は受付窓口に行くんだ」
「そうなのかい? あまり受付には近寄るなってギルド長に言われていたから、俺は行かなかったな」
「とにかく! 辞めるなんて嘘だよな?」
「いや。辞めたのは本当なんだ。今更戻れないよ。あれだけ迷惑だと言われ続けてきて、辞めると言って飛び出したんだ。今更どんな顔で戻ればいいか。それに……」
今の俺は正直なところ混乱していた。
親代わりに俺を育ててくれ、言葉は厳しいが、俺みたいな無能を使ってくれていたギルド長。
昔のギルド長は今よりもう少しだけ優しかった。
だから俺がもっとしっかり仕事をこなしていれば、また昔みたいに優しい言葉を投げかけてくれる日が来る――そう信じて今まで頑張ってきた。
ギルド長を信じたいという気持ちはある。
しかし、先ほど思い出した俺の前世の記憶が、どうしてもその考えを揺らがせる。
ギルド長の振る舞いは、日本で言うところのブラック上司のそれと同じだった。
彼の態度は、とてもではないが自分に愛情を持っている者のものではないと、前世の記憶が主張している。
ギルド長は果たして俺を子供のように、家族のように思ってくれていたのだろうか。
それに、ソフィアの話によると、俺はどうやら他のギルドメンバーから隔離されていたらしい。まるで俺が余計な知識を得ないように、ギルド長がわざと俺を世間から遠ざけていたようにも思える。
俺はしばらく考え、もう少しソフィアに尋ねてみることにした。
「ソフィア。魔法薬をギルドに頼むつもりだと言ったね? 何をどれだけ、いくらで頼む気だったんだい?」
「え? 別に普通だよ。上級を五本。金貨十枚だ」
「は……!?」
「え……?」
俺は思わず目が点になり、口をだらしなく開けてしまった。
その表情を見たソフィアも、困惑の表情を浮かべている。
つまり上級魔法薬一本につき、金貨二枚が相場だってことだ。
素材はソフィアが用意すると言っているのだから、彼女が言った金額はほぼ錬金術師の作業料ということになる。
どういうことだ?
いくら儲けの全てが俺の報酬になるわけじゃないにしても、俺が今までもらってきた報酬は低すぎやしないか?
一体ギルド長は、今までいくら稼いできたというのだろう。
ギルド長に対する疑念が徐々に強くなっていく。
もしかしたら、俺は辞めて正解だったのだろうか。
今となっては、辞めると言った途端にギルド長が手の平を返したのも別の思惑を感じる。まるで、金のなる木を手放したくないとでも言うような……
「おい。本当に大丈夫か? なんか変だぞ?」
「うん? ああ。大丈夫だよ。それよりねぇ、ソフィア。その魔法薬、俺に注文しないかい? もし注文してくれるなら全部まとめて半額の金貨五枚、いや、金貨一枚で受けるけれど」
俺は思わずそんな提案をしてしまう。
ソフィアはとても驚いていた。
「なんだと!? 冗談だろう? ハンスの作る魔法薬は本当に品質がいいから、一本の値段が金貨二枚でも買うんだ。というか他のギルドに頼んだって、上級魔法薬は一本で金貨一枚はするぞ?」
ということは、一般的な相場は金貨一枚ってことか……まぁでも問題ない。
「それはあのギルドで買ったら、でしょ? 俺がもらっていた報酬に比べれば、これでも十分すぎるほどさ」
そう言うとソフィアは訝しげな顔を見せるが、嘘は言っていない。
この前の依頼は初級、中級、上級の魔法薬がそれぞれ十本ずつで、報酬は結局たったの銀貨一枚だった。減額される前に提示された報酬でも金貨一枚だ。
しかしソフィアは、上級魔法薬を五本の依頼で金貨を十枚も払おうとしていた。俺からすれば、上級魔法薬が五本ならば金貨一枚でも破格だ。
「そんなに安くなくても頼みたいところだが、ギルドを辞めたってことは、ハンスは今無所属なのだろう? さすがにこの街の法に触れるのはな。しかしハンスの作った魔法薬以外飲みたくないしなぁ。うーん」
「あ、そういえばそうだったな」
この街では、ギルドに所属していない者に仕事を依頼することは禁じられている。
ギルドを守るための法であり、ギルドに所属する職人を守ることにもなる。
6
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~
放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」
大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。
生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。
しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。
「すまない。私は父としての責任を果たす」
かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。
だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。
これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。
わたくしがお父様に疎まれている?いいえ、目に入れても痛くない程溺愛されております。
織り子
ファンタジー
王国貴族院の卒業記念パーティーの場で、大公家の令嬢ルクレツィア・アーヴェントは王太子エドワードから突然の婚約破棄を告げられる。
父であるアーヴェント大公に疎まれている――
噂を知った王太子は、彼女を公衆の面前で侮辱する。
【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました
ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。
冷遇王妃はときめかない
あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。
だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。
悪役令嬢が処刑されたあとの世界で
重田いの
ファンタジー
悪役令嬢が処刑されたあとの世界で、人々の間に静かな困惑が広がる。
魔術師は事態を把握するため使用人に聞き取りを始める。
案外、普段踏まれている側の人々の方が真実を理解しているものである。
公爵令嬢は結婚式当日に死んだ
白雲八鈴
恋愛
今日はとある公爵令嬢の結婚式だ。幸せいっぱいの公爵令嬢の前に婚約者のレイモンドが現れる。
「今日の結婚式は俺と番であるナタリーの結婚式に変更だ!そのドレスをナタリーに渡せ!」
突然のことに公爵令嬢は何を言われたのか理解できなかった。いや、したくなかった。
婚約者のレイモンドは番という運命に出逢ってしまったという。
そして、真っ白な花嫁衣装を脱がされ、そのドレスは番だという女性に着させられる。周りの者達はめでたいと大喜びだ。
その場所に居ることが出来ず公爵令嬢は外に飛び出し……
生まれ変わった令嬢は復讐を誓ったのだった。
婚約者とその番という女性に
『一発ぐらい思いっきり殴ってもいいですわね?』
そして、つがいという者に囚われた者の存在が現れる。
*タグ注意
*不快であれば閉じてください。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
