補助魔法はお好きですか?〜研究成果を奪われ追放された天才が、ケモ耳少女とバフ無双

黄舞

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第十四話

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 ハンスたちは順調にクエストの達成と、それに付随した様々な魔物の素材の収集とを続けていた。
 多くの魔物を狩り、魔素を吸収したおかげか、続いていたセレナの咳も鳴りを潜め始めた。
 元々は病気で弱っていた体力を補うためにかけていた補助魔法のおかげで、セレナは単純に疲れを知ることの無い少女へと変貌を遂げていた。

「セレナ! そっちにもう一匹の魔物が向かってきてるぞ! 慌てず、迎え撃て! 今補助魔法をかける!」
「はい! ハンス様!」

 セレナは繰り返し行われる戦闘にも慣れ、複数の魔物の相手も難なくこなすようになっていた。
 元々亜人は身体能力において、人間を凌駕する特性を有する者が多い。
 その特性は種族によって傾向があり、ワーキャットと呼ばれる種族は、特に柔軟性や俊敏さに秀でている。
 セレナ自身が自分の種族を知らず、奴隷屋が証明を出さなかったため、ハンスはセレナの種族がなんであるのかは知らない。

 人間が正確に認知できている亜人の種族はごく僅かだと言う学者もいるのだからと、ハンスはセレナの種族に特に強いこだわりは持たなかった。
 セレナの俊敏さが、補助魔法がなくともそこら辺の冒険者よりも遥か上だという事実の方が重要だった。

「ふぅ。しかし、やはり複数の魔物が来ると、補助魔法の単発性というのが問題だと思い知らされるな」

 ハンスは現在、単体ごとにしか補助魔法を放つことが出来ない。
 強力な魔物一体と出会うよりも、そこそこの強さの魔物の群れに会う方が、遭遇率は高い。

 特に現在黄銅級へとランクアップした二人が狩場としている場所は、強力な魔物がいないが、群れで襲ってくる魔物の種類が多い。
 セレナ自体を強化できればまだ楽なのだが、咳は止まったものの、完治にはまだ少し時間がかかりそうだ。

 ここで試しに別の補助魔法をかけて、せっかく治りかけている病気を悪化させては目も当てられないと、ハンスは逸る気持ちを抑えた。
 それよりも、複数に効果を一度の発現できる補助魔法を構築できれば、セレナの完治の有無によらず、大きな手助けとなる。

 ハンスは途切れ途切れに襲ってくる魔物の群れの相手をしながら、一方で、複数発動型の補助魔法の理論を頭の中で考えていた。

「……ス様! ハンス様!!」
「お? どうした、セレナ? そんな大きな声を突然出して」
「もう! 突然じゃないですよ。さっきからずっと呼んでいるのに、全然気付いてくれないんですから!」
「お、おう。そうか? それは悪かったな。ちょっと考え事をしていて」

 何かをしながらでもハンスは考えを巡らせることに長けていた。
 傍から見ると容易には気付かないのだが、慣れてくると思考の海に深く潜っているかどうか分かるようになる。
 ルーチンのように、同じ作業は問題なくこなすが、何か思考が必要な作業が入ると、徐々に行動がおかしくなっていくのだ。

「さっきから、倒した魔物にばかり魔法をかけてましたよ? しかも何か普段より大きさもまちまちで」
「なんだって? 大きさが違う?」
「ええ。普段ハンス様が魔物に私と同じような印を付ける時は、だいたい同じ大きさの印が付くんですけど、さっきから魔物の死骸に付けている印は大きかったり、小さかったり、大きさがまちまちでした」
「なんだって?! セレナ! 良くやった! 今日はクエストはもう終わりだ! 直ぐに街に戻るぞ。準備しろ!」

 目を輝かせながら叫ぶハンスに、セレナは戸惑いを顕にする。

「え? ええ?? もうですか? 確かにクエスト達成分の魔物の討伐は済んでいますけど。あ! ハンス様! 待ってください!!」
「セレナ! 早くしろ! 俺はすぐさま宿へ戻って、この理論を完成させなければならない!!」

 ハンスはそう言うと、セレナのことなど忘れているかのように、ずんずんと街へ向かって移動を始めた。
 セレナは荷台から魔物の素材が落ちないように気を付けながら、慌ててハンスの後を追った。
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