補助魔法はお好きですか?〜研究成果を奪われ追放された天才が、ケモ耳少女とバフ無双

黄舞

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第三十八話

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「とぼけても無駄だぜ。さっき呪文と一緒に空中に魔法陣を描いていただろ。そんな魔法は補助魔法しか知らないぜ?」
「情報屋と言ったか? それじゃあ、お前の情報が間違っているんだろう」

 ハンスはうっとしそうにそう答えると、話は終わりとばかりに、パックに背を向けてしまった。
 舌打ちをして、パックは標的をセレナに変え、話しかけた。

「魔法はあんたがかけられたんだろ? という事は強化の方だな? どっちをかけられたんだ? 筋力増強ストロングか? それとも肉体堅牢ハード?」
「あ……あの、私、分かりません……」
「なんだ? あんた女の子かい? その短剣を見るとあんたも冒険者なんだね? で、どっちなんだい? 教えておくれよ」
「あの……その、私本当に分かりませんから……」

 パックは畳み掛けるようにセレナを質問攻めにする。
 セレナは困った顔で、主人が背を向け会話を拒否した相手に、ひたすら分からないと、か細い声で答えた。

「ちっ。あんたらも口が堅いね。いいじゃないか教えてくれても。減るもんじゃないし」

 パックは悪態をつきながら元の場所へと戻っていった。
 ハンスはくるりと向きを変え、セレナの方を向く。

「セレナ。他の誰かがいる時には、補助魔法を使う際に気を付けよう。開発した当時は世間に知らしめて、補助魔法を広めようと思い紙に記したが、実際に使ってみて、誰もがこの魔法を使えることへの危機感が強くなってきた」
「分かりました。ハンス様」

 ハンスが使う補助魔法は強力で、これがあれば冒険や討伐が遥かに優位になることは間違いない。
 しかし、誰でも使えるようになれば、そのうち犯罪などに使う輩が現れるだろうとハンスは思ったのだ。

 その後、二度の野宿を経て、乗合馬車は冒険都市ティルスまであと少しという所まで来た。
 途中、乗り合わせた冒険者達が交代で行った、夜中の見張り番で一緒になった男から、今ティルスのダンジョンでは大変なことが起きていて、その解決のために多くの冒険者が導入されているということを聞いた。

 なんでも、ダンジョン内にオーガの大群が現れ、素材の採集がままならないのだという。
 その解決には多額の報酬が用意されていて、その報酬目当てに多くの冒険者がティルスに集まっているのだ。

 かく言うこの男も、その男が所属するパーティも報酬目当てでティルスを目指しているのだという。
 なるほど、いくら乗合とはいえ、これだけ多くの冒険者が乗っているは少し不思議に思ったが、他の冒険者達もそれが目的かもしれない。

 そもそも馬車は一般市民や駆け出しの冒険者が、気軽に乗れるようなものではなく、より早く目的地に着けるといっても、その運賃はそれなりだ。
 普段はどのくらいの人数が乗るのか知らないが、この馬車の御者も突然訪れた幸運にほくそ笑んでいることだろう。

「オーガの群れか……」
「ハンス様も受けるんですか? このクエスト」

 ハンスのつぶやきにセレナが言葉を投げかける。
 ハンスはうーんっと唸ってから、首を縦に振った。

「少し試したい魔法があってね。恐らくなんだが、相手はある程度知性を持っていないといけないと思うんだ。かと言って賢すぎるのも良くない。他にも色々あるが、オーガの、しかも群れというのは試すにはうってつけだと思うんだ」
「また難しい話ですね。私はハンス様が行く所なら何処へでもお供しますから。それではハンス様の力で、ティルスの困り事を解決して差し上げましょう」

 実際にオーガを倒すのはセレナなんだけどね、とハンスは思いながら、眼前に見えてきた、ティルスの街並みを眺めていた。
 セレナは風にフードが飛ばされないよう両端を手で抑えながら、ハンスと同じ様に、これから降り立つ街に思いを馳せた。
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