後方支援なら任せてください〜幼馴染にS級クランを追放された【薬師】の私は、拾ってくれたクラマスを影から支えて成り上がらせることにしました〜

黄舞

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第10話【団体戦】

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「はっ!」
「【ブラストボム】!」

 セシルの槍が前衛に居た【蛮族】を切りつけ、相手の出鼻を挫く。
 怯んだすきにハドラーの放った魔法が追い打ちをかけるように炸裂し、あっという間に一人ダウン。

「二人とも頑張ってー!」
「ああ!」

 後方で応援の声を上げる私に、セシルが背中で応える。
 私はそのセシルの装備をまじまじと眺める。

 実はこれまでセシルの装備を一切変えてなかった。
 レベルがどんどん上がり、いつかと言いながら買うタイミングを損ねていた。

 それに気付いたハドラーは呆れて、団体戦をやる前に買い換えようと提案してきた。
 セシルはそんなに金に余裕があった訳じゃないけれど、レベルに合った装備を一式揃えることができた。

 攻撃力重視の装備の威力は上々で、今見たように同レベルの相手なら数撃で倒せるようになった。
 もちろん私の強化薬の効果もあるけれど。

 ハドラーもやっぱり強い。
 遠距離攻撃は命中させるのも難しいのだけれど、ハドラーの命中率は抜群にいい。

 それに前衛との連携もいいし、本当に初心者なんだろうか。
 上級者のサブキャラクターではないかと疑ってしまう上手さだ。

『すげぇな。あいつら。あのレベルでなんであんなに強いんだよ。相手格上だぞ?』
『Fランクにもつえーやつはいるんだな』

 薬を投げ終え手持ち無沙汰の私に、観客の声が聞こえてくる。
 団体戦の場合、プレイヤーに観客の声が聞こえてくる。

 Fランクなんて見に来る物好きは少ないけれど、Sランクの戦いともなると観客も多く、まるでスポーツ大会のようだ。
 それでも仲間が褒められるのはわるい気はしない。

「でやぁっ!」
「くそっ! お前ら二人だけで戦って、一人は高みの見物かよ! なめやがって!!」

「そうじゃない。サラさんの仕事はもう既に終わってるのさ」
「なにを意味のわかんねぇことを!」

 セシルとやり合っている同じ【竜騎士】の相手が、不満を漏らす。
 確かに向こうから見たら私は何もしていないようにしか見えない。

 でも、何もしないんじゃなくて出来ないんだって分かって欲しい。
 だって二人ともHPが全然減らないんだもの。

 最初に強化薬を使ってはいお終い。
 あとは見守るだけの簡単なお仕事です。

 セシルの怒涛の突きを受けて、二人目も倒れた。
 残るはハドラーとやり合っている【大魔導】の相手だけ。

 と思って目を向けたら既に倒れていた。
 範囲特化の【大魔導】と対人特化の【魔人】、実力が一緒でも分は【魔人】にあるのだから、当然の結果か。

 その後も順調に勝ち進み、気付けば既にCランクまで上がっていた。
 ランクが上がったおかげで経験値も上がり、既に二人とも40までレベルが上がっている。

 異変が起きたのはCランクの一戦目だった。
 相手は【重騎士】と【狩人】そして【聖職者】の三人パーティ。

 【重騎士】が前に立ち塞がり進路を断ち、受けた攻撃は【聖職者】が回復し、その間に【狩人】が攻撃をする。
 非常に理にかなった体制だった。

 中でも【重騎士】は巧みな腕で攻撃を一手に引き受け、なかなか後ろの二人に攻撃を当てさせないようにしていた。
 そんな中、【狩人】はセシルやハドラーではなく、私を狙い撃ちしてきたのだ。

「きゃっ!?」

 飛んできた矢が身体に当たる。
 衝撃を受け、HPが減ったのを感じた。

 このゲームはモンスターは傷が増えていく仕様だけれど、プレイヤーが攻撃を受けても衝撃を受けるだけで身体の欠損は全くない。
 ゲームだから当然といえば当然だ。

 私の装備は生産特化で、戦闘用装備というものを持っていない。
 そのため装甲はいわゆる紙だし、HPもレベルにしては少ない。

 慌てて【HP回復薬大】を自分に使う。
 これで受けたダメージ分は全て回復する。

「サラさん!?」
「大丈夫ですか!?」

 私が攻撃を受けたのを見て、セシルとそしてハドラーまでが慌てた様子でこちらを振り向く。
 そこを見計らって【重騎士】はスキルを使い、二人は攻撃を受けてしまった。

「私は大丈夫だから! ちょっとびっくりしただけ! 前に集中して!」
「この野郎! 何サラさんを狙ってるんだ! 狙うなら俺を狙えー!!」

 セシルは目の前の【重騎士】を置き去りにして、後ろに控えていた【狩人】に突進をした。
 【狩人】は驚いて一度攻撃を受けたけれど、【重騎士】と挟む形でセシルに攻勢をかける。

「セシルさん! いけません!! それではあなたが持ちません!!」
「これ以上サラさんに攻撃を当てさせる訳にはいかない! ハドラー援護を頼む!!」

 ハドラーの注意も聞かずにセシルは【狩人】を倒そうと必死で槍を振るう。
 しかし相手はレベルが10も上の格上、更に多勢に無勢で上手くいかない。

「やれやれ、仕方ありませんね。マスターの命令とあらば……」

 ハドラーは完全に今フリーになっている。
 一度こちらに視線を向けた意図を理解し、【SP回復薬大】を投げつける。

 SPというのはスキルを使う際に必要なポイントで、ほぼ全ての攻撃を魔法スキルで行う魔法職は最大値も多いけれど、消費も多いので回復薬は必須だ。
 私の薬のおかげでSPを満タンまで回復させたハドラーは、いつもより長い詠唱に入る。

 更にまだ使用を控えていた【智力の神薬】を投げつける。
 職業【魔人】でエルフアバターのハドラーは、既に知恵に関しては割合増加の方が効果が高くなっていた。

 知恵の増加に伴い、詠唱速度は速くなる。
 ステータスによる補正で、更に与えるダメージも増えるはずだ。

「……咲き乱れ! 【バーストロンド】!!」

 詠唱を終えたハドラーが放った複数のボーリングの玉ほどの大きさの火の玉は、寸分たがわず相手のプレイヤーに飛んでいく。
 ぶつかった瞬間、さらにそこを起点に爆発。

 HPの少ない【狩人】に多く当てたようで、その一撃で狩人は瀕死になっていた。
 そこをセシルが狙い撃つように鋭い一突き。

 そこで【狩人】は倒れ、攻撃の軸を失った相手を倒しきるのに、そう時間は必要なかった。
 少しヒヤッとしたものの、結果的に無事にCランクの初戦も金星を決めた。
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