後方支援なら任せてください〜幼馴染にS級クランを追放された【薬師】の私は、拾ってくれたクラマスを影から支えて成り上がらせることにしました〜

黄舞

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第24話【二人の認識】

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 セシルが勢いよく、まさに槍投げのように投げた槍は、かなり離れた位置にいるモンスターへと一直線に飛んでいく。
 見事命中したと思ったら独りでにすぐにセシルの手元に戻ってくる。

 槍で攻撃を受けたモンスターはセシルへのヘイトを溜め、こちら向かって近付いてくる。
 その間にセシルは今のより少し近くに居るモンスターに向けて同じ動作を繰り返していた。

 やがて複数のモンスターが同時期にセシルの元へ集まってくる。
 既にお互いが直接攻撃を当てることの出来る距離だ。

「はっ!」

 掛け声とともにセシルは頭上で槍を大きく横に数度回転させる。
 刃先から衝撃波のようなものが伸び、周囲に居たモンスターを一網打尽にする。

 今のは槍のスキル【風車】で、セシルを中心とした小規模範囲へ複数のモンスターに攻撃ができるものだ。
 先ほどからこのように遠くにいるモンスターを集めて範囲攻撃で一気に倒す、釣り狩りと呼ばれる狩りをしている。

 本来は釣り役と攻撃役は別のプレイヤーが担うのだけれど、セシルはそれを一人二役でこなしている。

「やっぱりこの【主神オーディンの槍】は便利だな。サラさんに買えって言われた時、買って正解だったよ! ありがとう!」
「ううん。見つけたのはセシルだし。それにごめんね。薬作るための素材集めだから、強化薬普段より弱いやつになっちゃって」

 薬の素材を落とすモンスター自体は、セシルのレベルから見れば既にそこまで驚異ではない。
 ただ、一度で全ての素材が集まる訳では無いので、今使っているのは【神薬】ではなく、以前作って余っていた【妙薬】だった。

「ううん。十分! それにここら辺の敵は弱いからさ。全然問題ないよ。ところでさ……」
「うん。なに?」

「いや、会った時に勢いで攻城戦のランキング一位を目指す、なんて言っちゃったけど。サラさんは本当のところ、どう思ってるのかなぁって」
「え?」

 狩りを続けながら、セシルは話を続けた。
 弱いと言っても普通なら一人で複数の作業をこなしているのだから、集中しないといけなさそうだけれど、話しながらも危なげなく倒しているのが凄い。

「俺の今の目標は、攻城戦のランキング一位だけどさ。サラさんもそれでいいのかなって。実は余計なことしたんじゃないかって。最近考えてるんだよね。ユースケって、結局もうこのゲーム辞めたんでしょう?」
「あ、うん。そうだね。もう辞めちゃったみたい」

「だからさ。もうサラさんとしては終わっていると言うか。このゲーム自体も好きで始めたわけじゃないだろうし、俺が変に引き止めちゃったのかなって」
「そ、そんなことない! あ、ごめん。でも、違うよ。前は確かに……このゲームを楽しみきれてないって言うのがあったかもしれないけど、今は楽しい! セシルと一緒に遊べて、すごく楽しいよ。私!」

 セシルは本当に年下なのだろうか。
 私なんかよりずっと大人な気がする。

 言ったことは本当だけれど、どこか見透かされているような気がして、声が大きくなってしまった。
 きっとセシルにも私の焦りのような気持ちが伝わってしまっただろう。

 しかし、恐る恐るセシルの顔を見ると、何故か少し頬を赤めて、嬉しさを無理に殺そうとしているような顔をしていた。
 ドラゴニュートなのだから、顔付きは少し怖いはずなのだけれど、何故かセシルに関しては怖いと思ったことが一度もないから不思議だ。

「う、うん。ありがとう。そう言ってもらえると嬉しいけどさ。このまま、攻城戦のランキング一位を目指していいのかな?」
「うん! もちろん! 私は全力で応援する!!」

 素直な気持ちをセシルに投げる。
 するとそれを聞いたセシルは、額に手を当てて少し考えるような仕草をした。

 もちろん、狩りの途中だからそれは一瞬だったけれど。

「応援する……か。ねぇ。サラさんはさ。なにか自分の目標はないの?」
「え? 私の目標?」

 聞かれて答えるかどうか、一瞬迷ってしまった。
 この間、アーサーに答えたばかりなので、すでに答えを言おうと思えばすぐに出る。

 だけど、話すだけのアーサーとは違い、セシルは距離が近すぎた。
 きっと話したら、そっちを最優先で叶えようとしてくれる気がした。

 それは嬉しい。なぜセシルがこんなに私に良くしてくれるのか、いまいち分からないけれど、自惚れじゃなくそうしてくれることは想像出来る。
 それがセシルにとっていい事なのか、迷惑になってないか悩んでしまう。

 しかしここで嘘を言う気にもなれず、私は伝えることを決心した。

「あのね。実は私自身の夢があるの。それはね――」

 全ての薬のレシピを完成させること。
 もちろんアップデートが来ればそれはまた新しい薬探索を始めるスタートにもなる。

 だけど、今作ることの出来る薬は必ず有限だ。
 アップデートの先のことはその時になったらまた挑戦すればいい。

 私が一時期でも夢を叶えるのが先か、それとも追いつくことが出来ずに終わるか。
 これはある意味、私とこのゲームを作った運営チームとの戦いとも言える。

 そんな話を伝えた後、セシルは得意のドッグスマイルを見せながら、私にこう言った。

「ありがとう。教えてくれて。凄くいい夢だと思う。俺もサラさんの夢、応援するよ。だからさ。どっちかって言わずに、両方目指そうよ」
「え? 両方?」

「うん。サラさんが凄い薬を作れるようになったら、俺たちももっと強くなれるでしょ? そうしたら攻城戦も有利に戦える。だからサラさんの夢を叶えることはクランにもメリットがあるよね?」
「そう……言われたらそうだけど」

「よし! 決定! クラン目標は変わらず攻城戦で一位を目指す! それはクランマスターになった俺の夢。サラさんはそれを応援してくれるんだよね?」
「うん。もちろん!」

 私の返事に、セシルの笑顔はより強いものとなった。

「サラさんの夢を俺は応援する! きっとクランの皆に手伝ってもらう必要がある時も来るだろうけれど、マスターとしてそれはお願いしていく。どっちかじゃなくて、どっちも! ね。いいでしょ?」
「うん……凄い……セシルって凄いよ」

 私ならどちらかの夢を優先したら、もう片方は諦めないといけないと思ってしまう。
 だけどセシルはどちらも目指すと自信を持って言えるのだ。

 もちろんどちらも難しく、達成出来ないかもしれない。
 しかしこれはゲーム、楽しむために、何かを目指して精一杯頑張ることにも意味がある。

 目標が達成出来たらセシルと一緒に喜ぼう。
 達成できなくても、セシルと楽しんだ時間を大切にしよう。

 私は、セシルのおかげでまた何か一つ殻を破ることができた気がした。
 私より年下の、犬みたいに笑うセシルは、そんな私を嬉しそうな顔で見つめていた。

 明日の攻城戦初戦。
 私たちの夢の始まりを、最高の勝利で迎えようと私は心に決めた。
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