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第44話【気持ちの良い負け】
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大体の強化を終え、戦況に目を向ける。
すでに前衛後衛入り乱れての戦闘が始まっていた。
セシルが募集で人数が同程度の、と書いたけれど、【蒼天】のメンバー数は約20人だった。
それに関しては事前に連絡をもらっていて、マスターのケロからも提案はあったらしい。
こちらがちょうど10人なので、あちらを10人ずつに分けて二回戦闘するのはどうか、というもの。
ただ、こちらは攻城戦で人数が多い戦闘に慣れていたし、そもそも勝ち負け自体が問題ではないのでそのまま全員で、ということになった。
つまり、単純計算すると、一人当たり二人ほど相手にしなければいけない。
そのせいで、強化が済むまでに、何度も回復薬を挟まなければいけないほどには、こちらが劣勢だった。
攻城戦では敵と出会う前に強化が終わっている。
強化しながら戦闘をするというのは新鮮で、色々と気付きもあり、楽しんでいる自分がいた。
「強化終わったから、私も攻撃に移るね!」
そう叫ぶと、セシルと対峙している一人に暗闇を付与する毒薬【ダゴンの墨】を投げ付ける。
幸い暗闇に関して耐性が低かったのか、たまたま運が良かったのか分からないけれど、うまく状態異常が発動したようだ。
「くそっ! 暗闇付与か! いったん下がる!」
「させない!!」
後衛の回復職に状態異常回復をしてもらうために身を引こうとした相手に、セシルの攻撃が襲う。
隣で戦っていたケロはフォローに入ろうとするけれど、それをハドラーが狙いをすましたように魔法で邪魔をする。
前から思っていたけれど、ハドラーはセシルとの協力プレイが驚くほど上手い。
今だって、自分自身戦っている相手もいるのに、よく意識が向いたものだ。
ハドラーの援護でセシルの攻撃は暗闇が付与された相手に大ダメージを与えた。
追い討ちをかけるようにハドラーの攻撃が今度はセシルがダメージを与えた相手に降り注ぎ、初のダウンとなる。
「ハドラーナイス!!」
セシルが叫び、体勢を取り戻したケロの攻撃を受ける。
魔法を唱えるための詠唱があるハドラーは、答えることなく次の攻撃の準備に移っていた。
「さぁ! 私の一撃を受けたいのは誰からだい!?」
「気を付けろ! この人たちの攻撃、異常に重いぞ!! 離れて攻撃を心がけろ!」
セシルから少し離れた戦闘の輪の中心あたりでは、アンナとギルバートが複数人を相手に戦っていた。
アンナもギルバートも近距離攻撃しかない職業のため、近付いて攻撃する必要があるのだけれど、どうやら相手はそれを簡単にはさせてくれなさそうだ。
「男らしくないね! 前衛なら殴り合って最後に立ってた方の勝ちでやりなよ!」
「アンナさん……それじゃあ、あまりにも無謀すぎるよ……」
味方のギルバートに突っ込まれてはいるけれど、もともとアンナはそういう性格だから仕方がない。
それを分かった上でギルバートも言っているのだろうけれど。
「ちまちま、そんな攻撃効かないよ! ギルバート! 右だ! 一気に行くよ!」
「はいはい。仰せのままに」
何度も一緒に戦っている二人は、すでにツーカーの仲と言える。
アンナがギルバートにどう動いて欲しいか、戦闘が終わる度に二人で話し合っているのだとか。
素早さの高いギルバートは、アンナより一足先に目的に相手の前に移動する。
相手が身構えている隙間を縫って、スキル【秘孔・封】を打ち込む。
このスキルは、攻撃力は低いけれど、高確率で相手の動きを一瞬制限させる。
攻撃を受けて素早い動きができなくなった相手に、アンナは一撃必殺とも言える大技を繰り出した。
スキルの効果でインパクトの瞬間に後方にノックバックした相手を追うように、ギルバートが距離を詰める。
激しい衝撃のせいで体勢が崩れている相手に、今度はダメージ重視のスキルを放ち、ダウン二人目。
さらに目線を奥に向けると、戦線を潜り抜けたであろうカインが、後衛を相手に攻撃を繰り広げていた。
カインの速さが速すぎるのもあるけれど、近接戦が苦手な後衛たちは、カインの攻撃になす術なく倒されていく。
それに気付いた相手の前衛たちが戻ろうとした場所には、ウィルが仕込んだ罠が待ち受けていて、それにかかったプレイヤーたちの叫び声が聞こえた。
それに向けてすかさずソフィが弓で攻撃し、HPを削っていく。
私の隣では、序盤にかなりの緊張感で回復魔法を連発していたレクターが、こっちに顔を向け苦笑いしている。
恐らく、一方的な戦況に変わってしまったので手持ちぶさたなのだろう。
私はレクターにウィンクをすると、目に付いた相手に毒薬を投げた。
☆
「いやぁ。負けた負けた。まさか半分の人数相手にここまで惨敗するなんて、思ってもみなかったよ」
「すいません……少しやり過ぎましたかね?」
一回戦目のクラン対クランの戦闘が終わり、闘技場のロビーに戻った私たちは、一度集まった。
最初に声を発したのは相手のクランマスター、ケロだった。
「いやいや。むしろ手を抜かれたなんて知ったら、怒るよ。もちろん勝ちを取りに行ったが、ふざけた相手に勝っても嬉しくないだろう?」
「そうですか。なら、良かったです」
「それにしても驚くほどの強さだな。個人の能力が異常に高いのも気になるところだが、仲間同士の連携がすごい」
「言ったでしょ? うちには勝利の女神がいるって」
カインが私の方に目線を向ける。
注目されても困るので、私は無意識に顔を隠してしまった。
「なるほどな。えーっと、サラさんだっけ? 勝利の女神って言われるのも納得がいく。【薬師】が戦っているところを見るのは実は初めてだけど、恐ろしい性能だな」
「もちろんさ! うちのサラちゃんは世界一だからね!!」
アンナまで言い出すので、私は恥ずかしくてここから逃げ出してしまいたくなってしまった。
そんな私に、サブマスターのトールが近付いて声をかけてきた。
「完敗だよ。もし、俺もこのクランに入ったら、他のみんなみたいに強くなれるかな?」
「え? えーっと。頑張ります」
私の返事がおかしかったのか、トールを含め、相手のメンバーの多くが声を出して笑った。
なんだか分からないけれど、みんなで顔を合わせて頷き合っている。
「マスター! 良い移転先を見つけてくれたみたいだな! こんな気持ちのいい負けは初めてだ。俺は、このクランで第二のゲームを楽しみたい。みんなもそうだろう?」
トールの声に、【蒼天】のメンバー全員が賛成の返事をする。
こうして、残る二、三回戦を始める前に、【蒼天】メンバーの【龍の宿り木】への加入が決定した。
すでに前衛後衛入り乱れての戦闘が始まっていた。
セシルが募集で人数が同程度の、と書いたけれど、【蒼天】のメンバー数は約20人だった。
それに関しては事前に連絡をもらっていて、マスターのケロからも提案はあったらしい。
こちらがちょうど10人なので、あちらを10人ずつに分けて二回戦闘するのはどうか、というもの。
ただ、こちらは攻城戦で人数が多い戦闘に慣れていたし、そもそも勝ち負け自体が問題ではないのでそのまま全員で、ということになった。
つまり、単純計算すると、一人当たり二人ほど相手にしなければいけない。
そのせいで、強化が済むまでに、何度も回復薬を挟まなければいけないほどには、こちらが劣勢だった。
攻城戦では敵と出会う前に強化が終わっている。
強化しながら戦闘をするというのは新鮮で、色々と気付きもあり、楽しんでいる自分がいた。
「強化終わったから、私も攻撃に移るね!」
そう叫ぶと、セシルと対峙している一人に暗闇を付与する毒薬【ダゴンの墨】を投げ付ける。
幸い暗闇に関して耐性が低かったのか、たまたま運が良かったのか分からないけれど、うまく状態異常が発動したようだ。
「くそっ! 暗闇付与か! いったん下がる!」
「させない!!」
後衛の回復職に状態異常回復をしてもらうために身を引こうとした相手に、セシルの攻撃が襲う。
隣で戦っていたケロはフォローに入ろうとするけれど、それをハドラーが狙いをすましたように魔法で邪魔をする。
前から思っていたけれど、ハドラーはセシルとの協力プレイが驚くほど上手い。
今だって、自分自身戦っている相手もいるのに、よく意識が向いたものだ。
ハドラーの援護でセシルの攻撃は暗闇が付与された相手に大ダメージを与えた。
追い討ちをかけるようにハドラーの攻撃が今度はセシルがダメージを与えた相手に降り注ぎ、初のダウンとなる。
「ハドラーナイス!!」
セシルが叫び、体勢を取り戻したケロの攻撃を受ける。
魔法を唱えるための詠唱があるハドラーは、答えることなく次の攻撃の準備に移っていた。
「さぁ! 私の一撃を受けたいのは誰からだい!?」
「気を付けろ! この人たちの攻撃、異常に重いぞ!! 離れて攻撃を心がけろ!」
セシルから少し離れた戦闘の輪の中心あたりでは、アンナとギルバートが複数人を相手に戦っていた。
アンナもギルバートも近距離攻撃しかない職業のため、近付いて攻撃する必要があるのだけれど、どうやら相手はそれを簡単にはさせてくれなさそうだ。
「男らしくないね! 前衛なら殴り合って最後に立ってた方の勝ちでやりなよ!」
「アンナさん……それじゃあ、あまりにも無謀すぎるよ……」
味方のギルバートに突っ込まれてはいるけれど、もともとアンナはそういう性格だから仕方がない。
それを分かった上でギルバートも言っているのだろうけれど。
「ちまちま、そんな攻撃効かないよ! ギルバート! 右だ! 一気に行くよ!」
「はいはい。仰せのままに」
何度も一緒に戦っている二人は、すでにツーカーの仲と言える。
アンナがギルバートにどう動いて欲しいか、戦闘が終わる度に二人で話し合っているのだとか。
素早さの高いギルバートは、アンナより一足先に目的に相手の前に移動する。
相手が身構えている隙間を縫って、スキル【秘孔・封】を打ち込む。
このスキルは、攻撃力は低いけれど、高確率で相手の動きを一瞬制限させる。
攻撃を受けて素早い動きができなくなった相手に、アンナは一撃必殺とも言える大技を繰り出した。
スキルの効果でインパクトの瞬間に後方にノックバックした相手を追うように、ギルバートが距離を詰める。
激しい衝撃のせいで体勢が崩れている相手に、今度はダメージ重視のスキルを放ち、ダウン二人目。
さらに目線を奥に向けると、戦線を潜り抜けたであろうカインが、後衛を相手に攻撃を繰り広げていた。
カインの速さが速すぎるのもあるけれど、近接戦が苦手な後衛たちは、カインの攻撃になす術なく倒されていく。
それに気付いた相手の前衛たちが戻ろうとした場所には、ウィルが仕込んだ罠が待ち受けていて、それにかかったプレイヤーたちの叫び声が聞こえた。
それに向けてすかさずソフィが弓で攻撃し、HPを削っていく。
私の隣では、序盤にかなりの緊張感で回復魔法を連発していたレクターが、こっちに顔を向け苦笑いしている。
恐らく、一方的な戦況に変わってしまったので手持ちぶさたなのだろう。
私はレクターにウィンクをすると、目に付いた相手に毒薬を投げた。
☆
「いやぁ。負けた負けた。まさか半分の人数相手にここまで惨敗するなんて、思ってもみなかったよ」
「すいません……少しやり過ぎましたかね?」
一回戦目のクラン対クランの戦闘が終わり、闘技場のロビーに戻った私たちは、一度集まった。
最初に声を発したのは相手のクランマスター、ケロだった。
「いやいや。むしろ手を抜かれたなんて知ったら、怒るよ。もちろん勝ちを取りに行ったが、ふざけた相手に勝っても嬉しくないだろう?」
「そうですか。なら、良かったです」
「それにしても驚くほどの強さだな。個人の能力が異常に高いのも気になるところだが、仲間同士の連携がすごい」
「言ったでしょ? うちには勝利の女神がいるって」
カインが私の方に目線を向ける。
注目されても困るので、私は無意識に顔を隠してしまった。
「なるほどな。えーっと、サラさんだっけ? 勝利の女神って言われるのも納得がいく。【薬師】が戦っているところを見るのは実は初めてだけど、恐ろしい性能だな」
「もちろんさ! うちのサラちゃんは世界一だからね!!」
アンナまで言い出すので、私は恥ずかしくてここから逃げ出してしまいたくなってしまった。
そんな私に、サブマスターのトールが近付いて声をかけてきた。
「完敗だよ。もし、俺もこのクランに入ったら、他のみんなみたいに強くなれるかな?」
「え? えーっと。頑張ります」
私の返事がおかしかったのか、トールを含め、相手のメンバーの多くが声を出して笑った。
なんだか分からないけれど、みんなで顔を合わせて頷き合っている。
「マスター! 良い移転先を見つけてくれたみたいだな! こんな気持ちのいい負けは初めてだ。俺は、このクランで第二のゲームを楽しみたい。みんなもそうだろう?」
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