並行世界の殺人~十二人の「私」と連続殺人事件~

yamatsuka

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第一章

報告②

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「え? なに、まさか男?」

 未奈が裏切り者を見るような目つきで私に言う。私は困りながら笑うと、

「違うよ」

 と否定した。それから、

「ごめん。ちょっといい?」

 と、未奈に聞いた。

「いいよ。いいよ。あたしのことなんか気にせず電話を取りなさい」

 未奈はちょっと拗ねたように言った。

「うん。ごめんね。ありがと」

 私は手を合わせて未奈に謝ると、慌ててミュートにし、タブレットを手に取った。
「丑」の「私」は「子」に位置する私と一番近く、私が最初にコンタクトを取ったもう一人の「私」だ。

 私たちはよく話していたが、それでもいつもは、色々な理由で通話をする時間を事前に決めている。

 細かいメールなんかはこれまでもすこしずつあったけど、こうした緊急の電話は初めてのことだった。

「丑」の「私」は現在、数年前に発症した精神病が再発したために休職中の身だった。

 私はなにがあったのだろうと思い、急いで通話ボタンをタップした。すぐにノイズ混じりの「私」が画面に表示される。

「ああよかった。繋がった! 聞こえる? 音、届いてる?」

 画面の向こうの私は、どこか正気を失っているように見えた。私と違って大胆に紫に染めた長い髪も、動揺してかきむしったのか、頭のてっぺんで太陽フレアのようにぴょんと飛び跳ねている。

「聞こえるよ。どうしたの? いきなり。普通の日じゃノイズまみれになるって何度も言ったでしょ?」

 私はそう言ってそれとなく「私」の行動を責めた。画面の向こうの「私」はそれを聞いてため息を漏らした。

「ごめん。でもね、それどころじゃないの。ああ、もう、どう言ったらいいんだろう」

「私」はそう答えると、おろおろし出した。画面越しにその感情が私に伝染してくる。私は恐怖で我を失っているように見える自分の情けない姿に苛立った。

「なに? なんの用? 私ね、いま友達と話していたところだったの。早くしないと通話、途絶えちゃうかもよ」

 私は彼女を急かした。同じ「私」なのに「丑」の「私」にはもったいぶるところがある。それが彼女と私の違いなのか、それとも私が見たくない私の一部なのかはわからない。

「そうだね。わかった。言うよ」

 ノイズによって半目を開いて、魂が抜け落ちたような表情で固まったまま「私」が言った。接続が切れてしまったのかと思ったが、映像が元に戻り、私は頷いた。

 彼女は私を真っすぐ見つめると、こう言った。

「私が殺されたの」
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