完結|ひそかに片想いしていた公爵がテンセイとやらで突然甘くなった上、私が12回死んでいる隠しきゃらとは初耳ですが?

七角@書籍化進行中!

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5章 筋書きならお任せください

15話 再演の幕開け②

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(その調子です。わたしを見なさい)

 彼を魅了できれば、殺されはすまい。わたしが否と言ったらニコにも与すまい。
 ペトルがわたしを見上げる。

「おれを、許してくださるのですか」
「そもそも怒っていませんよ?」

 小首を傾げてみせた。ソーマには「他の男の前でしないで……」と呻かれた仕草だが、今夜の目的を思えばやったほうがいい。

「兄上は怒っていたのですか」

 しらじらしくも尋ねれば、ペトルは上体を丸めて俯いてしまう。
 なぜなら、兄は雨をおして面会に来てはいない。両親が危険だと止めているし、婚約に関して「公爵」に考え直してもらうのか他の候補を探すのかで、それどころではなかった。

 ペトルの主君への恋心は、報われない。
 悪の主人公に徹して、そう浮き彫りにする。その上で畳み掛ける。

「兄上にも、わたしが話を通します。いずれ王宮に戻れたら、わたしの専属護衛になってくれますか」
「――っ、一生、ユーリィ殿下に忠誠を誓います。『その証に、抱かせ」
「また来ます」

 言質を取れた。目の光が消えたペトルの言葉を遮り、踵を返す。あとはしばらく物語の本筋から離れていてもらう。

 今まで、演じる才能は兄に及ばないし、苦手だとも思っていた。でも、愛する人を目の前で喪くした私は、何でもする。



 翌週は尾根を越え、雨にけぶるパルラディ王宮に出向く。
 応接間で、白い軍服姿のステヴァン殿下と相対する。個人的かつ直接の相談を持ち掛けたのだ。

「フセスラウ国は最近大変なようだが?」

 彫刻木の椅子にゆったり腰掛けるステヴァン殿下のほうから探りを入れられた。第二王子が何の用かと内心警戒しているだろう。

(フセスラウの内情も把握しておられます)

 一周目は気づかなかったが、フセスラウの情勢次第で攻め込む心づもりらしい。

 だからと言って、敵対はしない。行動原理を先取りして抱き込む。
 わたしはふ、と、片頬のみ上げて笑ってみせた。

「恥ずかしながらおっしゃるとおりです。というのも――」

 指摘を否定せず、打ち明ける。王太子の婚約がほぼ白紙なこと。しかし国内には公爵の他に相応しい相手がいないこと。
 その最後に、核心をつく。

「ステヴァン殿下は、わたしの兄をどう思われますか」


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