恋の干支レース

サッキー(メガネ)

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レース開幕

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レース当日。

校庭には学校のほぼ全生徒、教師、さらには1000を越える観客がいた。

見てみると、カメラが数台、撮影用ヘリ数機、アナウンサーや司会者まで用意してある。

「まるで駅伝だな。」

「…ああ。」

さすが柊財閥。

スケールが並外れている。


『皆様、お待たせ致しました。只今より第1回十二支徒競争、通称干支レースを開催致します!』

的場さんが開会宣言をすると同時に、花火が上がった。

これから大規模なレースが始まる。

『司会は私、的場が務めさせていただきます。今からレースに参加していただく皆様には25キロの距離を走っていただきます。時間制限はありません。5キロごとに給水所を設けています。さらに、5キロごとに皆様にはチャレンジをしていただきます。このチャレンジをクリアしなければ先に進むことは出来ません。』

…25キロって。学校のマラソン大会より長いじゃないか。

『尚、レースに参加する皆様には干支の動物をモチーフにしたプレートをつけてもらいます。このプレートにはGPSがついており、居場所が確認できるようになっております。決して外したりしませんようによろしくお願いいたします。』



『このレースで優勝した方には、優勝賞金100万円、並びにペアで行く老舗旅館2泊3日無料宿泊券を贈呈致します。』

的場さんの近くには賞金金額の書かれたプラカードと、無料宿泊のペアに勝手にさせられた白石さんが座っていた。

白石さんは暗い表情をしていた。
『それでは、参加者の皆様はスタート地点にお並びください。』

続々と12人のレース参加者がスタート地点に並ぶ。

「トモ。」

「秀一郎。」

「いよいよだな。」

「ああ。」

「…負けねぇからな。」

「…ああ。」

『それでは皆様、健闘を祈ります。』

的場さんのその言葉と同時に、カウントダウンが始まった。

10…9…8…7…6…5…4…3…2…1…

ビィー!!

音が鳴ったと同時に一斉に走り出した。


これから1人の女性を巡る、12人の男の熱いレースが始まる。



ハァ…ハァ…。

スタート序盤、皆並んだように走っていたが、4キロを過ぎた辺りで徐々にばらつきが出てきた。

と言っても50cm離れているかいないかという距離だ。

俺は先頭集団のほぼ後ろを走っている。

5キロ地点に差し掛かった。

見ると、たくさんの小さな箱が道に置かれている。

『さぁ、来ました第1ステージ!100箱宝探し!!100箱の箱の中から鍵を探し出して下さい!そしてゲートにある鍵穴に鍵を差し込んでください!鍵を見つけなければ先に進むことは出来ません!』

学校でも人気の放送部員が高らかな声でルールを説明する。

…100箱か。多いな。

「ハンッ!こんなもん、踏んじまえば簡単に見つかんだろ!」

そう言って篠山は箱を踏んでいく。

しかし、箱はそう簡単に綺麗には潰れない。

小さければ尚更だ。

しかも箱は紐でラッピングされていて簡単には中身が出ないようになっている。

よほどのラッキーがない限り簡単には見つからないだろう。

「…さて、どうやって見つけたものか。」

恐らくこの箱には何かがある。

鍵の入っている箱とそうでない箱を見分ける何かが。

見ると、倉田が既に箱から鍵を見つけ出していた。

倉田は俺を見ると、薄ら笑いを浮かべてゲートに向かって走っていった。

…なんなんだ。

俺は軽く深呼吸をすると、箱をじっくり観察した。

1つ1つしっかりと。

「…ん?」

見ると、1つだけおかしな箱がある。

見た目がおかしいというわけではない。

他の箱はラッピングしている紐の結び方が違うのだ。

「…なるほどね。」

見てみると、紐の結び目が逆になっている。

つまり、左利きの人が結んだ紐が正解の箱、鍵が入った箱ということだ。

俺は箱を開けた。

すると、思った通り鍵が入っていた。

俺は急いで鍵をゲートの鍵穴に入れた。

ビーッ!と音が鳴ると、ゲートの扉が開いた。

俺はゲートを抜けて走り出した。



現在9キロの地点を走っている。

そろそろバラつきが出てきた。

俺はまだ上位ランナーたちと並走している。

もうすぐ10キロ地点というところで、俺は妙なものを見た。

目の前に人が立っている。

それも1人や2人ではない。

ざっと見て100人といったところだろうか。

「うぉーーーーー!!」

100人が僕たちに向かって突進してきた。

『さぁ!第2ステージは100人タックル!筋骨隆々な男子100人を掻い潜り、道を突破してください!怪我をしないように気を付けて!』

「いや、どうやって抜けんだよこんなの。」

「うぉーーーーー!!」

本郷が100人相手に突っ込んでいく。

そしてどんどん相手をなぎ倒していく。

まるで戦車だ。

俺は咄嗟に本郷の後ろにつく。

本郷のお陰で俺は相手を倒すことなく前に進めている。

相手側も本郷に気をとられ俺には気付いていない。

しばらくすると、人の群れから解放されていた。

俺はすかさず本郷を抜き去った。

「むっ!?」

本郷は急に俺が出てきたことで驚いている。

俺はそんな彼を無視し走り続けた。



14キロの地点。

俺は上位陣に食らいついている。

やっと半分と言ったところか。

次のチャレンジはなんだろうか。

15キロに差し掛かったとき。

目の前に机と椅子が見えた。

…なんだ?

『次のステージは100人の名前書けるかな?学校に在籍している生徒100人の名前を紙に書いてください!どうしても分からない場合は1分間学生名簿を見ることのできるお助けタイムを与えます!しかし、このお助けタイムを使うと、クリアしても1分間その場から動くことを禁じます!出来る限りお助けタイムを使わずにクリアを目指してください!!』

「マジか…。」

…100人とか多すぎだろ。

とにかく、俺は椅子に座り名前を書き始めた。

レースに参加している人間、司会などをしている放送部員、クラスメート。

書けるだけの人間を書いていく。

周りを見ると、倉田と篠山が頭を抱えて苦戦していた。

篠山は不良で周りから煙たがられている。

そのため、自分からも周りと馴染まないようにしてるんだろう。

倉田は周りの人間を見下している。

そんな人間がクラスの名前を覚えているとは思えない。

あの2人は苦戦するだろうな。

山岡はスラスラと名前を書いていく。

おそらく女子の名前ばかりだろう。

俺は90人の名前を書いたところでペンが止まった。

ここまでの名前が書けたのは、秀一郎のお陰だ。

秀一郎はよく友達を紹介してくれた。

あいつはコミュニケーション能力が高い。

コミュニケーション能力の低い俺を心配してくれていたのだ。

正直めんどくさいと思うこともあったが、今は心から感謝している。

俺はお助けタイムを使用した。

残り10人。

1分もあれば十分書ける。

1分のロスは痛いが、体を休めるためにと割りきることにした。

俺はすぐに10人の名前を書き、残りの時間で足をマッサージした。


1分のロスタイムが終わった。

俺はすぐに席を離れ、給水所で水を受け取った。

水を飲み、残りは頭にかけた。

「…よしっ!!」

俺は気合いを入れて、ロスタイムを埋めるためにペースを上げた。



20キロ地点。

本来なら、ここでチャレンジが発生するはずなのだが…。

「…あれ?」

「なんだこれ?」

隣には秀一郎がいた。

…いつのまにいたんだ。

今ここにいるのは秀一郎、俺、そして柊の3人だ。

しかし、モタモタしていたらすぐに他の人間もやって来るだろう。

『さぁ、いよいよ最後のチャレンジとなります!最後のチャレンジは、100マスグリコ!皆さんグリコというじゃんけんゲームはご存じでしょう。今回はそれを行っていただきます!液晶画面に表示されるグー、チョキ、パーのじゃんけんに勝つことができたらマスを進むことができます!負けたら進むことはできません!ゲームを円滑に進めるためにここからはサクサクと行かせていただきます!』

「グリコかぁ。懐かしいな。」

「…確かに。」

秀一郎は笑いながら俺に言ってきた。

…こいつ、この状況でも楽しそうだなぁ。

『それでは皆さん、スタートのマスにお着きください!』

俺たちは「スタート」と書かれたマスに集まった。

『それでは早速始めさせていただきます。最初はグー、じゃんけんポン!』

画面に表示されたのはチョキだ。

つまり進めるのはグーを出した人間。

グーを出したのは俺と柊だった。

『勝った方はお進みください!あいこの方は進むことはできませんのでご注意ください!』

「負けたの俺だけかよ!?」

…そういえばあいつじゃんけん弱かったな。

自慢じゃないが、俺は秀一郎にじゃんけんで負けたことはない。

早くゲームを終わらせるためにはじゃんけんに勝ちつつ、グーかパーでより多くのマスに進むしかない。

「…長丁場になりそうだ。」



『最初はグー、じゃんけんポン!』

これで10回目のじゃんけんが終了した。

『勝った方は前に進んでください!』

現在の1位は、柊だ。

俺は2位。

柊とは20マスほどの差がある。

…妙だな。

俺は違和感を感じていた。

柊はじゃんけんは弱い方ではない。

気になるのは勝ち方だ。

柊はさっきからグーやパーでしか勝っていない。

偶然と言われればそれまでだが、出し方に迷いがない。

まるで何が出るか知っているようだった。


また柊が勝った。

このまま行くと、柊との差が開いていってしまう。

俺は頭をフル回転させた。

「…そうだ。」

『…最初はグー!じゃんけんポン!』

画面に出たのはチョキ。

柊はパー、俺はグーを出した。

このじゃんけん、ちょっとした法則がある。

2の倍数の時はパー、3の倍数の時はチョキ、5の倍数の時はグーが出るようになっているのだ。

法則が分かれば簡単に勝てるが、立て続けに勝てば不正をしているのではないかと疑われる。

だからチョキの時は負けるようにしているのだ。

俺は柊とは少しやり方を変えた。

出る回数の多い2の倍数(パー)を避け、3の倍数(チョキ)、5の倍数(グー)の時に勝つようにしている。

恐らく、ゲームを続けるなかで複数の人間がこのじゃんけんの仕組みに気付くだろう。

その前にゴールしなければ。


『最初はグー!じゃんけんポン!』

現在、1位は俺と柊。

あと1回でゴールだ。

次はパーが出る。

勝つためには同時にゴールするのが確実だ。

『最初はグー!…じゃんけんポン!』

画面に表示されたのはパー。

俺と柊はもちろんチョキを出した。

「バカな…。」

柊を見ると、驚いたような表情をしていた。

『なんと!2人同時にゴールしました!これにてチャレンジイベントは全て終了です!後はゴールに向かって走るのみ!果たして優勝するのは誰だ~!!』

俺と柊はほぼ同時に走り出した。

残り5キロ。

ゲームのお陰で少し体力は回復できた。

後は全力で走るだけだ。



ハァ…ハァ…。

全てのチャレンジが終わり、後は走るだけとなった。

俺は今柊の後ろを走っている。

一向に距離が縮まらない。

…コイツ、ただの卑怯なやつじゃなかったのか。

ゴールまで後2キロほど。

このままでは柊が優勝してしまう。

…白石さん。

俺は全身に力を入れて走り出した。

柊との距離が徐々に縮まっていく。

残り500m地点。

俺は遂に柊を抜いた。

ハァ…ハァ…。

その後2人の差が縮まることはなく、俺は1位でゴールした。

『なんということでしょうか!終盤に来てまさかの追い上げ!優勝したのは、『羊』の高橋友喜さんでした!』

客席からは歓声が上がっている。

俺はその場に倒れ込んだ。

それから数分、生徒がドンドンとゴールしていく。

「トモ。」

秀一郎が息を切らしながら倒れた俺を見ていた。

「…秀一郎。」

「優勝おめでとう。」

そう言って秀一郎は倒れている俺に手を差し出した。

俺はその手を取って立ち上がった。

「あ~あ、白石さんと旅館で二人きりかぁ。羨ましいなぁ。」

「ハハハッ…。」

俺は苦笑いをした。

柊を見てみると、悔しそうな表情をしていた。

こうして、25キロに及ぶ長いレースは幕を閉じた。
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