1 / 7
昔の思い出
しおりを挟む
《回想》
『ねぇねぇ!』
『!』
『キミの名前は何て言うの?』
『…水沢絵津子(みずさわえつこ)』
『オレ、衣川優太(きぬがわゆうた)!あのさ!良かったら一緒に遊ばない?』
『…うん!』
『グスッ。』
『泣かないで、えっちゃん。きっといつか会いに行くから。』
『…本当?』
『うん!約束!』
『…約束!』
≪現在≫
ピピピピ、ピピピピ…。
目覚まし時計の音が鳴り響く。
「…ん。」
カチッ。
時計の音が止んだ。
絵津子はベットから体を起こす。
「(…またこの夢か。)」
最近同じ夢ばかり見る。
小さい頃の懐かしい記憶。
忘れられない楽しい思い出。
「(…何で今になって。)」
いや、本当はその理由が分かっている。
戻るからだ。
昔の思い出の場所に。
絵津子は今日、東京を離れる。
そして、小さい頃に住んでいた場所に戻ることになったのだ。
鹿児島県伊佐市。
鹿児島県の北部に位置し、金の産出で有名な場所だ。
彼女はそこで生まれ、小学生の頃まで住んでいた。
しかし、親の仕事の都合で東京に引っ越すことになり、それから10年近く東京で生活していた。
今回、彼女が伊佐市に戻るのには理由がある。
今年の初めに父親が病気で亡くなってしまった。
その父親の墓を伊佐に作ることにしたのだが、そのときに母親が「このまま伊佐に引っ越しちゃおうか。」と言い出した。
絵津子はそれを快諾したのだ。
友達と離れるのは寂しかったが、伊佐で暮らしていたときの方が絵津子には気が楽だった。
そして、絵津子にはどうしても行きたい場所があった。
昔の大切な友達、そして初恋の相手である、衣川優太の家である。
優太の母親から連絡が来たのは去年のことだった。
久しぶりの連絡に絵津子は喜んだ。
しかし、その気持ちは一瞬で崩れ去った。
《優太がいなくなった。》
詳しく話を聞くと、本当に突然いなくなったのだ。
趣味の写真を撮りに行くと言ったまま。
直ぐに警察に失踪届を出したが、未だに情報は来ていない。
生きているのか、死んでいるのかも分からない。
優太の母親は泣きながらそう教えてくれた。
絵津子はその話を聞いたとき、頭が真っ白になった。
ショックで食事も喉を通らない状態が続いた。
そんなとき、伊佐に引っ越すことを母親に聞いた。
チャンスだと思った。
警察は当てにできない。
自分で探すしかないと思ったのだ。
「よしっ。」
今まで住んでいた部屋には、もう何もない。
荷物はすべて引っ越しのトラックに詰め込んだ。
この家には本当に世話になった。
「今までありがとうございました。」
絵津子は一礼すると、部屋を出ていった。
部屋の中には、若い男性が笑顔で立っているだけだった。
『ねぇねぇ!』
『!』
『キミの名前は何て言うの?』
『…水沢絵津子(みずさわえつこ)』
『オレ、衣川優太(きぬがわゆうた)!あのさ!良かったら一緒に遊ばない?』
『…うん!』
『グスッ。』
『泣かないで、えっちゃん。きっといつか会いに行くから。』
『…本当?』
『うん!約束!』
『…約束!』
≪現在≫
ピピピピ、ピピピピ…。
目覚まし時計の音が鳴り響く。
「…ん。」
カチッ。
時計の音が止んだ。
絵津子はベットから体を起こす。
「(…またこの夢か。)」
最近同じ夢ばかり見る。
小さい頃の懐かしい記憶。
忘れられない楽しい思い出。
「(…何で今になって。)」
いや、本当はその理由が分かっている。
戻るからだ。
昔の思い出の場所に。
絵津子は今日、東京を離れる。
そして、小さい頃に住んでいた場所に戻ることになったのだ。
鹿児島県伊佐市。
鹿児島県の北部に位置し、金の産出で有名な場所だ。
彼女はそこで生まれ、小学生の頃まで住んでいた。
しかし、親の仕事の都合で東京に引っ越すことになり、それから10年近く東京で生活していた。
今回、彼女が伊佐市に戻るのには理由がある。
今年の初めに父親が病気で亡くなってしまった。
その父親の墓を伊佐に作ることにしたのだが、そのときに母親が「このまま伊佐に引っ越しちゃおうか。」と言い出した。
絵津子はそれを快諾したのだ。
友達と離れるのは寂しかったが、伊佐で暮らしていたときの方が絵津子には気が楽だった。
そして、絵津子にはどうしても行きたい場所があった。
昔の大切な友達、そして初恋の相手である、衣川優太の家である。
優太の母親から連絡が来たのは去年のことだった。
久しぶりの連絡に絵津子は喜んだ。
しかし、その気持ちは一瞬で崩れ去った。
《優太がいなくなった。》
詳しく話を聞くと、本当に突然いなくなったのだ。
趣味の写真を撮りに行くと言ったまま。
直ぐに警察に失踪届を出したが、未だに情報は来ていない。
生きているのか、死んでいるのかも分からない。
優太の母親は泣きながらそう教えてくれた。
絵津子はその話を聞いたとき、頭が真っ白になった。
ショックで食事も喉を通らない状態が続いた。
そんなとき、伊佐に引っ越すことを母親に聞いた。
チャンスだと思った。
警察は当てにできない。
自分で探すしかないと思ったのだ。
「よしっ。」
今まで住んでいた部屋には、もう何もない。
荷物はすべて引っ越しのトラックに詰め込んだ。
この家には本当に世話になった。
「今までありがとうございました。」
絵津子は一礼すると、部屋を出ていった。
部屋の中には、若い男性が笑顔で立っているだけだった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
1
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる