タイムエイジマシン

山田みぃ太郎

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残念会を阻止しなければ!

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 それからぼくは取るものもとりあえず、自転車をぶっ飛ばして茶トラ先生の所へと向かった。
 ぼくは息を切らしてやっとこさたどり着き、そしてぼくは吠えた。
「茶トラ先生ぇ~~、大変だ大変だぁ~~! お父さんたちが、ざざざ、残念会がを~~!」
 だけどそのとき茶トラ先生は、優雅に茶トラガウンなんかを着て、縁側にフラスコに入れたコーヒーを置き、庭に立派な天体望遠鏡を出し、のんびりと土星なんかを見る準備をしているようだったが、ぼくが大慌てで、しかも引きつった顔だったので、急いでフラスコと天体望遠鏡を片付けてから実験室へもどり、そしてぼくの話を聞いてくれた。
「それはまずいなぁ。おそらく運命のエネルギーが似たような現象を引き起こしておるのだ。これはわしが危惧していたことだ」
「ぼくだって、思い切り危惧していたよ!」
「しかも、一番街のイカ天にカラオケのオーラムときた。これは全く同じストーリーだ」
「そうだよ。ストーリーまでカンペキに同じだよ!」
「すると、二次会のカラオケへ行く途中、デパート前の交差点で…」
「そうだよ。きっと『絶望だぁ~』とか何とか言っちゃって寝ころんじゃって、そのとき大型トラックが来るんだよ。これってそっくりじゃないか。ねえ、お父さん、やっぱり死ぬの?」
「う~ん、月曜日の運動会か…」
「あ~、またその分かりにくいたとえ話? ねえ、ところでドッペルゲンガー現象っていったい何?」
「そいつは死の前触れとして有名な現象だ。ある日突然自分そっくりの人物が見えて…」
「…わかったよ。もういいよ。ぼくその話聞きたくない!」
「それがどうかしたのか?」
「もういいよ。何でもないよ」
「変な事を言うなあ。しかしまだお前さんの親父さんが死ぬとは限らんじゃないか」
「うん…」
「しかしその一方で、誰かが身代わりという可能性は、ないわけではない」
「またそのややこしい言い方!」
「これはわしのクセだと言っただろう」
「ねえねえ、で、その身代わりってだれ?」
「それはわしには見当もつかん」
「そうか。つまりどう転んでもやばいんだね。で、どうすればいいの?」
「う~ん。それなら調査をせねばなるまい…」
「また調査? で、今度は何色のスーツ?」
「今回わしが着るのはスーツではない」

 そう言うと茶トラ先生は実験室のどこかから、反射材のついた交通整理のガードマンが着るような服と、交通整理に使うような笛と、お巡りさんが持っているような赤いランプが点く誘導灯と、大きな救急箱と、そして赤いスーツを持ってきた。
 よくもまあこんなにいろんなガラクタがあるもんだとぼくは豪快に感心したが、まあそれはいつものことだ。
 それはともかく、それから茶トラ先生はぼくに、その赤いスーツを着るように言った。
「このスーツはどうしたの?」
「この前、グレーのやつを赤に塗りなおしたんだ。結局元の色だ」
「で、どうしてガードマンの格好やら、赤いランプやら笛やら救急箱?」
「いいからいいから」
「またいいからいいから?」
「おおそうだ。お前さんの親父さんに気付かれんようその帽子を被れ。ソンブレロという。昔メキシコで買ったものだ。深くかぶるのだ」
 そう言って、実験室の壁に掛けてあった赤いソンブレロをぼくの頭に被せた。
 それから、
「で、幸いなことにイカ天は中華料理屋だから子供でも行ける。これが飲み屋だったらお前さんを二十歳以上にする必要があった。ところがタイムエイジマシンは今調子が悪いんだ」
「そうなんだ…」
 それでぼくは赤いスーツと赤いソンブレロ。
 茶トラ先生は茶トラガウンを脱いでから着替えてガードマンの格好になり、赤いランプやら救急箱やらを持ち、笛を首に掛け、それからぼくらはけげんな顔の運転手のタクシーで一番街へ向かい、イカ天の前で降りた。
 そしてイカ天の店員やらほかの客やらの思い切り冷たい視線を浴びながら、ぼくらは店に入った。
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