タイムエイジマシン

山田みぃ太郎

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中華料理屋「イカ天」で

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「ともあれこんな格好、とてもじゃないが『調査』をやっておるとは誰も思うまい…」
「そうだね」
 店に入ると奥の方のテーブルに、お父さんたちのグループがすでに来ていて、「残念会」をやっているのが分かった。
 それでぼくらは隣のテーブルに座り、中華どんぶりを二つ注文した。
「ねえねえ茶トラ先生、ぼくらの格好、場違いなんてもんじゃないよね」
「いいからいいから」
「またいいからいいから?」
「とにかく! そんなことより、親父さんたちの会話を注意深く聞いておけ」
 それでぼくは耳を澄ました。
 確かにぼくらのテーブルからは、お父さんたちの会話もよく聞こえた。
 お父さんは自分が替え玉(ぼく!)に飛行機を落とされたことなど全く気付いておらず、自分はラジコンパイロット失格だと嘆いていた。
 そしたら同僚の人たちが「猿も木から落ちる。飛行機も空から落ちる」とか、「弘法も筆の誤り。鈴木君も操縦桿の誤り」とか、訳の分からないことを言っていた。
 それから、さっきの電話をそのままリプレイするような会話も始まった。
「しかしお前さん、どうしてあんな無茶苦茶な操縦をしたんだい?」
「それが、全然記憶がないんだ」
「何だって?」
「トイレへ行ってそこでくらくらとめまいがして、そして何者かに後ろから羽交い絞めにされたような感覚が起こり…」
「そんなバカなことあってたまるか。あの時間、トイレにはお前しかいなかったはずだ。スタッフもみんな駐機場にいたんだぞ。お化けにでも羽交い絞めにされたってか?」
「お化け? そんな怖いこと言うな! お化けは怖いからいいよ。で、気が付いたら、おれそっくりの奴が、おれに送信機とサングラスを手渡して、それから駐機場へ行けと言ったんだ。で、行ってみたら、あのありさまさ」
「お前そっくりの奴? じゃ、お前自身がお前自身を羽交い絞めにってか? そんなバカなことがあってたまるか!」
「いや、羽交い絞めじゃなくて、おれそっくりのやつがおれに送信機を渡したんだ。本当なんだ!」
「わけのわからんことを! お前、頭がイカれたのか。そうだ! そいつはひょっとして、いわゆるドッペルゲンガー現象じゃないのか?」
「ドッペルゲンガー現象?」
「そうだ。ある日突然自分そっくりの奴が見えて、それは死の前触れなんだ…」
 それでお父さんは、またまたとても不安そうになったけれど、そのとき誰かが訳の分からない助け舟を出した。
「まあまあまあ二人とも。いいかい? ドッペルゲンガー現象ってえのにはだな、アルコールが特効薬なんだ!」
 そして、「まあまあ飲め飲め!」とか言いながら、お父さんのコップにビールをついだ。
 いずれにしても、アルコールでだんだんと話が支離滅裂になっていって、とうとう誰かが、「今度はラジコン宇宙ステーションを作ろうぜ!」とか言い始めた。
 ぼくはあきれて〈聞いてらんない〉と思い、何となく店の入口の方を見たら、なぜかデビルが子分を引き連れて、どやどやと店に入ってきた。
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