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突然やってきた未来の茶トラ先生
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ある日の夕方、ぼくのケイタイ風無線機がぶーとださい音を出し、それで呼ばれたと思って茶トラ先生の実験室へ行ってみると、タイムエイジマシンの前には、いつもと微妙に雰囲気の違う茶トラ先生が立っていて、そしていきなり変なことを言い始めた。
「実はこの時代のわしは現在、空手のゲシュタルト先生と呑みに出かけたところだから今はおらん。わしはわしの行動をあらかた記録しておるからわかるのだ」
「『この時代のわし』って、じゃ、今ここにいる茶トラ先生は、一体いつの時代のわしなの?」
「お前さんの目の前におるこのわしだが、お前さんがNASAの宇宙基地から火星へと出発する、少し前の時代から来たわしだ。もちろんあいかわらずタイムマシンとエイジマシンが連動しておるから…」
「ああ、そのことは知っているよ。茶トラ先生、一度骨になったしね。だから本当なら茶トラ先生は115歳くらい?」
「わしは今114だ。だがそれでもいたって元気だ」
「そうだったね。未来の病気も全部治したり予防したりしたんだったね」
「それでだ。実はわしがここにおるのは他でもない。火星行きスワンボートのことだ」
「ああ、茶トラ先生が遊園地の池からかっぱらってきた、あのださいスワンボートのこと?」
「あ~、かっぱらってきたのではない。あれは遊園地から払い下げてもらったのだと、わしは50年前に、お前さんに明確に言ったぞ!」
「ああ、そいいえばそうだったね。それで、茶トラ先生はこれから50年かけて、そのスワンボートを火星へ行けるよう魔改造するって言っていたもんね」
「魔改造? まあいい。たしかにそうなのだが、実はわしはあれからかれこれ50年、そのスワンボートの開発に取り組んでおった」
「え? じゃ、完成したの?」
「それがだな、実は困難を極めておるのだ。あ~、ボートは一応飛ぶようにはなった。もちろん宇宙空間でも立派に飛べる」
「それじゃぁすごいじゃん!」
「だが火星へ行くには、まだまだスピードが全く遅すぎるのだ。現時点では月まで行くのにも二日もかかる」
「え~、月までたったの二日で?」
「いやいや、そんなものじゃだめだ。つまり火星まで行くにはまだまだ時間がかかりすぎる。これではこいでおる乗組員は腹は減るわ、トイレへ行きたくなるわ、そもそも、へばってしまってどうにもならんのだ」
「そうかぁ…、だけどそれでもすごいじゃん。宇宙へ行けるんだろう?」
「いやいやその程度ではだめなのだ。まだまだ開発せねばならんことは山ほどある。そしてお前さんが…、といっても未来のお前さんなのだが、あ~、その未来のお前さんがNASAの宇宙基地から出発するまでには、もうそれほどの時間はない。だがスワンボートはまだ月までも…」
「つまり開発がぜんぜん間に合わない?」
「そういうことだ」
「じゃ、どうするの?」
「それでわしはあれこれ考えたのだが、あるときはたと名案が浮かんだ」
「あるときはたと、どんな名案?」
「つまりこの時代のわしに、その開発を引き継いでもらうことにしたのだ」
「どうやって引き継ぐの?」
「そう先を急ぐでない」
「は~い」
「そしてこの時代のわしが開発を引き継げば、わしはこの開発から一切手を引き、新たな研究に没頭できる」
「新たな研究? で、何?」
「そう先を急ぐでないと、たった今わしはお前さんに、明確に言ったぞ!」
「あはは、そうだったね。で?」
「あ~、それについてはまだ明確には決めてはおらん」
「あらそうなの」
「で、一方、開発の話だが、この時代のわしが引き継げば、さらに50年、開発ができるわけだ」
「それじゃ、この時代の茶トラ先生がこれから50年かけてもやっぱり開発できなければ、またまた未来から帰ってきて同じことを…」
「理論上は半永久的に開発が出来るというわけだ」
「だけどどうやって引き継ぐの?」
「だからわしがこれまでに開発したスワンボートの詳細な設計図と、それからこの時代では入手困難な、いろいろな機械部品やら電子部品やらをどっさりと持ってきた。予備も含めて二機分ある。もちろん本来なら開発中のスワンボートそのものを持ってくるべきだったが、証明写真がベースのタイムエイジマシンには、とても入りきれんのだ」
それからその未来の茶トラ先生は、さっさといろんな部品みたいなものと、それから何冊もあるような、分厚い本のようになった、それは設計図らしいのだけど、とにかくそいうものをタイムエイジマシンから次々と下ろし、実験室のテーブルの上にずらりと並べると、「それではこの時代のわしによろしく」と言ってから、タイムエイジマシンでさっさと未来へ帰って行った。
それでぼくも実験室のテーブルに、事情を説明した簡単な置手紙を書いてから、さっさと家へ帰った。
それからしばらくして、ださいケイタイ風無線機がぶーと鳴ったので、さっそくまた茶トラ先生の実験室へと向かった。
着いたら茶トラ先生はガレージの方から手招きしていて、それで行ってみるとガレージには真っ白な真新しいスワンボートがあった。
そのスワンボートには白鳥の長い首があり、しゃれた赤い蝶ネクタイなんかも付いていて、もちろん屋根もあり、それから窓にはしっかりとした窓ガラスもはまっていた。
そして茶トラ先生は、喜色満面で話を始めた。
「これで宇宙旅行も可能なのだぞ…」
「実はこの時代のわしは現在、空手のゲシュタルト先生と呑みに出かけたところだから今はおらん。わしはわしの行動をあらかた記録しておるからわかるのだ」
「『この時代のわし』って、じゃ、今ここにいる茶トラ先生は、一体いつの時代のわしなの?」
「お前さんの目の前におるこのわしだが、お前さんがNASAの宇宙基地から火星へと出発する、少し前の時代から来たわしだ。もちろんあいかわらずタイムマシンとエイジマシンが連動しておるから…」
「ああ、そのことは知っているよ。茶トラ先生、一度骨になったしね。だから本当なら茶トラ先生は115歳くらい?」
「わしは今114だ。だがそれでもいたって元気だ」
「そうだったね。未来の病気も全部治したり予防したりしたんだったね」
「それでだ。実はわしがここにおるのは他でもない。火星行きスワンボートのことだ」
「ああ、茶トラ先生が遊園地の池からかっぱらってきた、あのださいスワンボートのこと?」
「あ~、かっぱらってきたのではない。あれは遊園地から払い下げてもらったのだと、わしは50年前に、お前さんに明確に言ったぞ!」
「ああ、そいいえばそうだったね。それで、茶トラ先生はこれから50年かけて、そのスワンボートを火星へ行けるよう魔改造するって言っていたもんね」
「魔改造? まあいい。たしかにそうなのだが、実はわしはあれからかれこれ50年、そのスワンボートの開発に取り組んでおった」
「え? じゃ、完成したの?」
「それがだな、実は困難を極めておるのだ。あ~、ボートは一応飛ぶようにはなった。もちろん宇宙空間でも立派に飛べる」
「それじゃぁすごいじゃん!」
「だが火星へ行くには、まだまだスピードが全く遅すぎるのだ。現時点では月まで行くのにも二日もかかる」
「え~、月までたったの二日で?」
「いやいや、そんなものじゃだめだ。つまり火星まで行くにはまだまだ時間がかかりすぎる。これではこいでおる乗組員は腹は減るわ、トイレへ行きたくなるわ、そもそも、へばってしまってどうにもならんのだ」
「そうかぁ…、だけどそれでもすごいじゃん。宇宙へ行けるんだろう?」
「いやいやその程度ではだめなのだ。まだまだ開発せねばならんことは山ほどある。そしてお前さんが…、といっても未来のお前さんなのだが、あ~、その未来のお前さんがNASAの宇宙基地から出発するまでには、もうそれほどの時間はない。だがスワンボートはまだ月までも…」
「つまり開発がぜんぜん間に合わない?」
「そういうことだ」
「じゃ、どうするの?」
「それでわしはあれこれ考えたのだが、あるときはたと名案が浮かんだ」
「あるときはたと、どんな名案?」
「つまりこの時代のわしに、その開発を引き継いでもらうことにしたのだ」
「どうやって引き継ぐの?」
「そう先を急ぐでない」
「は~い」
「そしてこの時代のわしが開発を引き継げば、わしはこの開発から一切手を引き、新たな研究に没頭できる」
「新たな研究? で、何?」
「そう先を急ぐでないと、たった今わしはお前さんに、明確に言ったぞ!」
「あはは、そうだったね。で?」
「あ~、それについてはまだ明確には決めてはおらん」
「あらそうなの」
「で、一方、開発の話だが、この時代のわしが引き継げば、さらに50年、開発ができるわけだ」
「それじゃ、この時代の茶トラ先生がこれから50年かけてもやっぱり開発できなければ、またまた未来から帰ってきて同じことを…」
「理論上は半永久的に開発が出来るというわけだ」
「だけどどうやって引き継ぐの?」
「だからわしがこれまでに開発したスワンボートの詳細な設計図と、それからこの時代では入手困難な、いろいろな機械部品やら電子部品やらをどっさりと持ってきた。予備も含めて二機分ある。もちろん本来なら開発中のスワンボートそのものを持ってくるべきだったが、証明写真がベースのタイムエイジマシンには、とても入りきれんのだ」
それからその未来の茶トラ先生は、さっさといろんな部品みたいなものと、それから何冊もあるような、分厚い本のようになった、それは設計図らしいのだけど、とにかくそいうものをタイムエイジマシンから次々と下ろし、実験室のテーブルの上にずらりと並べると、「それではこの時代のわしによろしく」と言ってから、タイムエイジマシンでさっさと未来へ帰って行った。
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