タイムエイジマシン

山田みぃ太郎

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スワンボートのテスト飛行1

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「わしは未来のわしから設計図と未来の部品をもらい、開発を引き継ぎ、さっそくこの時代で確保できる部品も全てそろえ、そして組み上げてみた。それに、スワンボートだから、ばりっと真っ白に塗装もしたのだ」
「ああ、茶トラ先生は、塗装は得意中の得意だったよね。スーツをいろんな色に…」
「あ~、それでさっそく今夜は試験飛行をやる。といっても、お前さんを乗せて万一のことがあってはならんから、実はわしは、前もってこれを何度も飛ばし、安全性は十分に確認してある」
「そうなの。それはよかった」
「そしてお前さんを乗せた試験飛行の前に、すこしばかりこのスワンボートの説明をする必要がある。それは技術的な説明だ。少々ややこしいが」
「ややこしくてもぜんぜん構わないよ。茶トラ先生の説明はいつも思い切りややこしいし」
「それで、あ~、このスワンボートは、見かけはただのスワンボートだ。だがこれはただの、まあ、遊園地の池などに浮かんでおる、そんじょそこらのスワンボートとは全くわけがちがう」
「それはもう思い切り知ってるよ」
「あ~、話の腰をおらん」
「はいはい」
「それで、あ~、実はこれの推進力は、通常のスワンボート同様、ペダルを回すことで得られるのだが、宇宙空間にある、いやいや、地球上でもいいのだが、とにかく周囲の空間にあるエネルギーを吸収し、それをいったん、内蔵された質量電池に蓄電する」
「質量電池?」
「これはアインシュタインのE=MC2乗の公式から導かれるもので、わずか数グラムで、原爆ほどのエネルギーを蓄えることができるのだ」
「そんなに?」
「だからスペースシャトルのようにばかでかい燃料タンクなど不要なのだ」
「へぇー」
「で、これをエネルギー源とし、ボートのペダルをこぐと、搭載されたイオンエンジンが作動する」
「イオンエンジン?」
「これは例をあげると、最近では小惑星イトカワに着陸したハヤブサでも使っておるものだが、あれよりもはるかに強力なエンジンだ」
「へぇー、すごいエンジンなんだね」
「とにかく、このエンジンが、このスワンボートのペダルをこぐ力を増幅し、それによってスワンボートは推進されるのだ。まあこれはほとんど、未来からやって来た、未来のわしの受け売りなのだが」
「それも知っているよ。茶トラ先生が未来の茶トラ先生を引き継いだんでしょう? で、要するにこれ、ぶっちゃけて言っちゃうと、電動アシスト宇宙船ってわけね」
「そう言うと身もふたもないが、しかしお前さん、うまいこというなあ。まあ、はっきりいってそうだ。しかしそのアシスト量は、電動アシスト自転車の2倍とか3倍とかいうちゃちなものではなく、数万倍から数十万倍にも及ぶ」
「数十万倍? へぇー、で、それってどのくらいのスピードが出るの?」
「最高速度はまだ試しておらん。何といってもそれはペダルをこぐ力にも依存するし、わしは年寄りだ。そんなに強くはこげない」
「だって茶トラ先生、怪力じゃん」
「ごちゃごちゃ言うな。ともあれ、お前さんが力いっぱいこげば、一体どのくらいの速度が出るのかは、試してみんとわからんのだ。そしてこれは実験だ。実はわしは、お前さん一人の力で、スワンボートが一体どれくらいの速度が出るのかが知りたいのだ。ともあれ、すさまじい速度が出ることだけは、まちがいないが」
「へぇー」
「さて、もう暗くなった。さっそくこれを飛ばすとしよう」
「あれれ、このスワンボート、周囲が暗くないと飛ばないの?」
「こんな物騒な代物が白昼堂々、街の上空などを飛んでおったら大騒ぎになる」
「あはは、それもそうだよね」

 それから茶トラ先生と二人で、ガレージからそのスワンボートを押して庭に出した。
 こうやって動かすときのために、ボートには小さな車輪が付けられていた。もちろん飛ぶときは格納されるらしいけれど。
 さて、それからボートの横っ腹の両側にある、上へ開くイカしたドアをガオ~ンと開け、それから中を見ると、そこにはぶったまげるようなイカした宇宙船のようなコックピットがあり、計器類やスイッチや、何やらかんやらがずらりと並んでいた。
 そして前に二つの、つまり機長と副操縦士が座るような席があり、その足元には自転車のペダルが付いていた。
 そのへんは遊園地なんかのスワンボートと同じだ。そしてその後ろには3人分の座席があり、合計で5人乗がれるようになっていた。
 それから茶トラ先生が左側の機長席、ぼくが右側の副操縦席についた。
 そして先生はスイッチなんかをいろいろと操作し、それから先生が「ゆっくりとペダルをこいでみろ」というのでぼくが恐る恐るこいでみたら、機械みたいなのが「シュウィ~ン」という音を出し始めた。
 そして「ずっとゆっくりこいでいろ」と、先生が言って、それから「飛ぶぞ!」というと、何と、ボートはゆっくりと垂直に登り始めた。

「これは垂直離着陸が可能なんだ。だから滑走路など不要なのだ」
 上昇するボートの中で、茶トラ先生はこう言った。
 ぼくはその滑走路という言葉を聞いて、あのラジコン飛行場で、お父さんの替え玉作戦をやったときのことを一瞬思い出したけれど、それはどうでもいい。
 それからスワンボートは垂直にどんどんと高度を上げ、周りの視界が開け、ぼくの住んでいる街が、きれいな夜景になった。
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