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スワンボートのテスト飛行2
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スワンボートの窓からは、たくさんの住宅の明かりや、遠くの街の明かりや、道路を走っているたくさんの車の光や、いろんなものがきれいに見えた。
それから茶トラ先生がレバーを前へ動かすと、スワンボートは前へ進み始めた。
何だかヘリコプターにでも乗っているような感じ。
それからどんどん前へ進んで、そしてしばらくは国道に沿ってその上空を飛んでいると、暴走族らしいオートバイの集団が列をなしてジグザグに、そしてファオンファオンと爆音を響かせながら走っているのが遠くに見えた。
すると茶トラ先生はぼくを見て、にやりと笑ってからレバーを動かし、スワンボートの高度を下げながら、暴走族を追いかけるように後ろから接近し、彼らの頭上に迫ったところで、
「イチロウ、いまだ。思い切りこげ!」というので、なぜだかわからないけれど、ぼくは思い切りこいだ。
するとスワンボートは暴走族のわずか上空を追い越し、それから急上昇した。
と、そのとき、突然暴走族のオートバイの爆音がブスンブスンという変な音に変わり、それからすぐに、爆音はぴたりと止まった。
そして茶トラ先生はもう一度にやりと笑ってから後ろを振り返り、ぼくも振り返って見ると、オートバイは全車エンストし、そして悪がきたちが呆然としているのが見えた。
「このスワンボートは周囲のエネルギーを吸収しながら飛ぶと言っただろう。お前さんが思い切りこぐことで暴走族のオートバイからエネルギーを一気に吸収してやったのだ。これでずいぶんと街が静かになったわい」
「エネルギーを吸収されたって、いったいオートバイはどうなっちゃったの?」
「ガソリンのエネルギーを吸収してやったので、燃料タンクの中はおそらく二酸化炭素と水だけになっただろう」
「へぇー」
「だが善良な人たちの運転する自動車や公共交通機関なんかのエネルギーを吸収するのは申し訳ないから、なるべく高い高度で飛ぼう。といっても軽飛行機の近くは飛ばないほうがよさそうだ。エンストさせると申し訳ない」
そういうと茶トラ先生は再びスワンボートの高度を上げた。
そうするといろんなところから少しずつ万遍なくエネルギーを吸収できるから、あまりはた迷惑にはならないそうだ。
しかも高度を上げると、宇宙からのニュートリノなんかの宇宙線のエネルギーも使えるから都合がいいらしい。
それからスワンボートはどんどん高度を上げ、街の夜景は宝石のような細かな、キラキラとした光の集まりになり、かすかに遠くの地平線や海も見え、まるで旅客機から見た地上の風景のようになった。
「現在高度12000メートル。速度は、あ~、時速1000キロといったところだ」
「そんなに?」
「さっき暴走族からちょうだいしたエネルギーは、どうやら使い切ったようだな。あとは宇宙からやってくるニュートリノなどのエネルギーが頼りだ」
「へぇー、そんなエネルギーを使うの?」
「それとお前さんがこぐエネルギーだ」
「ぼくも役に立っているんだね」
「さて、最高速度を試さんといかん。よし、どんどんこげ」
それから茶トラ先生がそう言ったので、ぼくはしばらくの間、必死でこいだ。
すると突然「ドン!」というものすごい音がしたのでぼくが心配そうに見ると、茶トラ先生は、
「今、音速を超えた。あの音は音速を超えるときに生ずる衝撃波だ。まあいい。もっとこげ」
それでぼくは茶トラ先生が言うとおり、必死でどんどんこぎ続けた。
するとスワンボートはどんどん高度を上げると同時に、ものすごい速度に達しているようだった。
外を見ると景色もどんどん変わり、もはや「飛行機から見た景色」ではなく、それはもう完全に宇宙船から見た地球! へと変わっていった。
「イチロウ、でかしたぞ。今、人工衛星軌道に乗った」
「茶トラ先生、やったね! だけどぼく、もう疲れた」
「わかったわかった。しかしお前さん一人の脚力で人工衛星軌道までは行けるのだな。これはすごいもんだ」
「暴走族のエネルギーもだろう?」
それからぼくらは人工衛星軌道で地球を一周した。
だけどそれは1時間半くらいしか掛からなかった。
そしてスワンボートの窓からは、青い地球の陸地、海、雲、そしてぶったまげるような星空が見えた。
それから、いったん人工衛星の軌道に乗ると、ぼくがこがなくてもスワンボートはそのまま地球の周回を続け、ぼくらは太平洋、北アメリカ、南アメリカ、アフリカ、インド、そして東南アジアの上空を飛び、それからちょうど一周したところで速度を落とし、そしてどんそん高度も下げ、やがて茶トラ先生の家の上空へとたどりつき、そしてゆっくりと庭へ着陸した。
それから、あまり晩くなるといけないので、ぼくはすぐに自転車で家へ帰った。
帰るとお父さんに「ぼく、さっきスワンボートで地球一周してきたよ。たったの1時間半しか掛からなかったんだよ」と言ってやったら、お父さんはにやにやしながら「そいつはでかしたぞ」と言ってくれた。
それから茶トラ先生がレバーを前へ動かすと、スワンボートは前へ進み始めた。
何だかヘリコプターにでも乗っているような感じ。
それからどんどん前へ進んで、そしてしばらくは国道に沿ってその上空を飛んでいると、暴走族らしいオートバイの集団が列をなしてジグザグに、そしてファオンファオンと爆音を響かせながら走っているのが遠くに見えた。
すると茶トラ先生はぼくを見て、にやりと笑ってからレバーを動かし、スワンボートの高度を下げながら、暴走族を追いかけるように後ろから接近し、彼らの頭上に迫ったところで、
「イチロウ、いまだ。思い切りこげ!」というので、なぜだかわからないけれど、ぼくは思い切りこいだ。
するとスワンボートは暴走族のわずか上空を追い越し、それから急上昇した。
と、そのとき、突然暴走族のオートバイの爆音がブスンブスンという変な音に変わり、それからすぐに、爆音はぴたりと止まった。
そして茶トラ先生はもう一度にやりと笑ってから後ろを振り返り、ぼくも振り返って見ると、オートバイは全車エンストし、そして悪がきたちが呆然としているのが見えた。
「このスワンボートは周囲のエネルギーを吸収しながら飛ぶと言っただろう。お前さんが思い切りこぐことで暴走族のオートバイからエネルギーを一気に吸収してやったのだ。これでずいぶんと街が静かになったわい」
「エネルギーを吸収されたって、いったいオートバイはどうなっちゃったの?」
「ガソリンのエネルギーを吸収してやったので、燃料タンクの中はおそらく二酸化炭素と水だけになっただろう」
「へぇー」
「だが善良な人たちの運転する自動車や公共交通機関なんかのエネルギーを吸収するのは申し訳ないから、なるべく高い高度で飛ぼう。といっても軽飛行機の近くは飛ばないほうがよさそうだ。エンストさせると申し訳ない」
そういうと茶トラ先生は再びスワンボートの高度を上げた。
そうするといろんなところから少しずつ万遍なくエネルギーを吸収できるから、あまりはた迷惑にはならないそうだ。
しかも高度を上げると、宇宙からのニュートリノなんかの宇宙線のエネルギーも使えるから都合がいいらしい。
それからスワンボートはどんどん高度を上げ、街の夜景は宝石のような細かな、キラキラとした光の集まりになり、かすかに遠くの地平線や海も見え、まるで旅客機から見た地上の風景のようになった。
「現在高度12000メートル。速度は、あ~、時速1000キロといったところだ」
「そんなに?」
「さっき暴走族からちょうだいしたエネルギーは、どうやら使い切ったようだな。あとは宇宙からやってくるニュートリノなどのエネルギーが頼りだ」
「へぇー、そんなエネルギーを使うの?」
「それとお前さんがこぐエネルギーだ」
「ぼくも役に立っているんだね」
「さて、最高速度を試さんといかん。よし、どんどんこげ」
それから茶トラ先生がそう言ったので、ぼくはしばらくの間、必死でこいだ。
すると突然「ドン!」というものすごい音がしたのでぼくが心配そうに見ると、茶トラ先生は、
「今、音速を超えた。あの音は音速を超えるときに生ずる衝撃波だ。まあいい。もっとこげ」
それでぼくは茶トラ先生が言うとおり、必死でどんどんこぎ続けた。
するとスワンボートはどんどん高度を上げると同時に、ものすごい速度に達しているようだった。
外を見ると景色もどんどん変わり、もはや「飛行機から見た景色」ではなく、それはもう完全に宇宙船から見た地球! へと変わっていった。
「イチロウ、でかしたぞ。今、人工衛星軌道に乗った」
「茶トラ先生、やったね! だけどぼく、もう疲れた」
「わかったわかった。しかしお前さん一人の脚力で人工衛星軌道までは行けるのだな。これはすごいもんだ」
「暴走族のエネルギーもだろう?」
それからぼくらは人工衛星軌道で地球を一周した。
だけどそれは1時間半くらいしか掛からなかった。
そしてスワンボートの窓からは、青い地球の陸地、海、雲、そしてぶったまげるような星空が見えた。
それから、いったん人工衛星の軌道に乗ると、ぼくがこがなくてもスワンボートはそのまま地球の周回を続け、ぼくらは太平洋、北アメリカ、南アメリカ、アフリカ、インド、そして東南アジアの上空を飛び、それからちょうど一周したところで速度を落とし、そしてどんそん高度も下げ、やがて茶トラ先生の家の上空へとたどりつき、そしてゆっくりと庭へ着陸した。
それから、あまり晩くなるといけないので、ぼくはすぐに自転車で家へ帰った。
帰るとお父さんに「ぼく、さっきスワンボートで地球一周してきたよ。たったの1時間半しか掛からなかったんだよ」と言ってやったら、お父さんはにやにやしながら「そいつはでかしたぞ」と言ってくれた。
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