タイムエイジマシン

山田みぃ太郎

文字の大きさ
80 / 121

また帰ってきて…

しおりを挟む
 そして過去の茶トラ先生がタイムエイジマシンを完成させ、それでぼくらは帰ってきて、さっそく居眠りをこいている茶トラ先生をゆり起こした。
「たしかにわしの夢の中でも、その静香ちゃんという子が出てきたのだ。そしてその子はどんどん小さくなり、まるで卵のようになり、そしてゆりちゃんの体の中へ入り込んでしまった」
「だろう!」
「だからその静香ちゃんという子は、ゆりちゃんと深い関係があると考えられる。従ってこれは、調査せねばなるまい…」
「だよね」
「しかし考えてみると、メーデルハーデル先生はゆりちゃんの病気の主治医だ。だから彼女を定期的に検査しておる。そして今夜わしは、メーデルハーデル先生とゲシュタルト先生と飲みに行く」
「茶トラ先生また飲みに行くの? 肝臓が悪くなるよ」
「わしが飲みにいくときは、研究の合間にバカ話をして脳を休めるのだ。そしてわしは通常、ノンアルコールビールしか飲まん」
「あらそうなの。で、その飲みに行く話しと『これは、調査せねばなるまい…』と何か因果関係あるの?」
「だからメーデルハーデル先生に、その調査の相談もしてみようと思っておるのだ」
 数日後、ぼくとデビルは懲りずにまた遊びに行き、またまた茶トラ先生の話を聞いた。
 例の「これは、調査せねばなるまい…」をメーデルハーデル先生に相談して、それからどうなったかを知りたかったし。
「ゆりちゃんは一応、病気の治療も終わり、元どおりに元気になり、状態も安定しておる。現在は学校へも行き、空手も習っておるそうだ」
「うん。それは知ってるよ」
「そうだよ。それでおれ、ゆりちゃんに謝れたし。イチロウがうまいことゆりちゃんにホラ話を吹き込んでくれて、それで、へへ、うまいこと仲直りも…」
「ほら話? だれがやったのだ?」
「先生、まあいいじゃんか」
「まあいいが。それにイチロウがどんなホラ話を創作したかは知らんが、まあ嘘も方便という言葉もある。それはいいが、これからゆりちゃんは、メーデルハーデル先生のところへ、半年に一度程度通院し、血液や、その他いろいろ調べてもらうことになっておるそうだ」
「じゃ、やっぱりまだ悪いの?」
「いやいや、病気が病気だ。慎重を期さんといかん。だから定期的な検査は必要なのだ」
「そうか…、そりゃそうだよね。ところで、ええと、『これは、調査せねばなるまい…』の話は一体どうなったの? それ、メーデルハーデル先生に相談したの?」
「それに関してメーデルハーデル先生は、それじゃタイムエイジマシンで先回りして、半年ごとに自分の病院へ来ればよいと言い出したんだ」
「先回り?」
「なんといっても、わしとメーデルハーデル先生と、あ~、それについてはゲシュタルト先生もだが、タイムエイジマシンについてはつーかーなのだ」
「つーかー?」
「つまりみんな、マシンのことを知りつくしておるのだ」
「そうか! つまり変人三人組で、タイムエイジマシンのこと、熟知しているんだね」
「変人三人組? まあいいが、それからもちろん、タイムとエイジが連動していることも、みな知っておるのだ。だから二人ともわしと同じことをやって、みな百十五歳でもいたって元気な予定だ」
「それはすごい! だから茶トラ先生が百十五歳まで健診を受けたみたいに、ゆりちゃんも半年ごとの未来へ行って検査を受けて、で、百十五歳まで元気?」
「そうあってほしいが、しかしもし万一のことがあったとしても、こうすれば早めの対応もできるのだ」
「万一? そんときはおれの骨髄使ってくれよな」
「万一に備えて、それは考慮しておこう」
「それで、『これは、調査せねばなるまい…』の話のつづきは? なんかぼく、少しじれったいのだけど」
「そうだそうだ。それで、その静香ちゃんとやらとゆりちゃんの関係も、そうやってタイムエイジマシンで未来を先取りして調査していけばいいだろうという話になったのだ」
「なるほどねえ」
「それとメーデルハーデル先生は、こんなことも言い出した」
「どんな?」
「わしもそう思うのだが、実在するかどうかもはっきりしていないのに、どうして『静香ちゃん』などという名前が確定しておるのだ?」
「あ!」
「静香ちゃんとやらは、現時点では『謎の少女』なのだ。彼女は一年前の過去の、はたまたわしの夢の中のホームセンターに現れ、田中君が突然『静香ちゃ~ん』と呼んだのだ。だが一体全体、その名前の由来は? 何でその子が『静香ちゃん』と分かるのだ? 実在するかどうかもはっきりせんというのに」
「あ! ねえ、田中君、どうしてあのときその子を『静香ちゃん』って呼んだの? 考えてみるとおかしいじゃん」
「あれれ、たしかにそうだよな。だけどそのときあの子を見て、ゆりちゃんのお姉さんで、しかも名前は静香ちゃんだって、おれ、そう確信したんだよな。まるで甲子園であの無名の言問高校が優勝するとか、おれの母ちゃんや、ゆりちゃんの病気を確信したみてえによ」
「つまりこれも、田中君の鋭いカンだったというのか? そしてそれにみんなが乗せられた、いや、操られたのかというのか? う~ん。すると過去の例から考えてみても、田中君のカンの的中率はすさまじいから、これはもしかして、何かあるのやもしれん…」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

日本新世紀ー日本の変革から星間連合の中の地球へー

黄昏人
SF
現在の日本、ある地方大学の大学院生のPCが化けた! あらゆる質問に出してくるとんでもなくスマートで完璧な答え。この化けたPC“マドンナ”を使って、彼、誠司は核融合発電、超バッテリーとモーターによるあらゆるエンジンの電動化への変換、重力エンジン・レールガンの開発・実用化などを通じて日本の経済・政治状況及び国際的な立場を変革していく。 さらに、こうしたさまざまな変革を通じて、日本が主導する地球防衛軍は、巨大な星間帝国の侵略を跳ね返すことに成功する。その結果、地球人類はその星間帝国の圧政にあえいでいた多数の歴史ある星間国家の指導的立場になっていくことになる。 この中で、自らの進化の必要性を悟った人類は、地球連邦を成立させ、知能の向上、他星系への植民を含む地球人類全体の経済の底上げと格差の是正を進める。 さらには、マドンナと誠司を擁する地球連邦は、銀河全体の生物に迫る危機の解明、撃退法の構築、撃退を主導し、銀河のなかに確固たる地位を築いていくことになる。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

巨乳すぎる新入社員が社内で〇〇されちゃった件

なほ
恋愛
中高生の時から巨乳すぎることがコンプレックスで悩んでいる、相模るな子。新入社員として入った会社でるなを待ち受ける運命とは....。

処理中です...