タイムエイジマシン

山田みぃ太郎

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最強の抑止力

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 それから茶トラ先生はスワンボートを器用に操作して、ミサイルに接近し、そしてボートに付けられたワイヤー製のカウボーイの投げ縄をミサイルに掛けた。
 まるでカウボーイが悪い奴を捕まえるみたいに。
「さて、この物騒な粗大ゴミは、宇宙の果てまで飛んでいってもらおう」
「宇宙の果て?」
「このワイヤーでミサイルを第三宇宙速度まで加速するのだ」
「第三宇宙速度って?」
「太陽系脱出速度だ。この速度まで加速すると、太陽の引力を振り切って、太陽系を脱出できる」
「へぇー、でどのくらいの速度?」
「毎秒42.1キロメートルだ」
「それって、1秒でフルマラソンなのね。まぢ、すごい!」
「それじゃ早速、みんなでこぐとするか。しかしこれも、月へ行けるほどスワンボートの性能が向上したおかげだな」
「じゃ、魔改造したかいがあったよね」
 それからスワンボートは長いワイヤーでミサイルを引っ張り、第三宇宙速度プラスアルファまで加速した。
 そしてスワンボートのワイヤーを切り離すと、ミサイルはワイヤーを付けたまま飛んでいった。
「これでミサイルは、太陽系脱出速度で飛行中だ。もちろんボートのコンピューターでの軌道計算では、太陽系のいかなる惑星にも衝突しないコースに乗っておる。だからこのまま無事に宇宙の果てまで飛んでいくだろう」
「だけど遠い遠い未来に、太陽系外のどこかの星に落ちて、そこに文明があったら、それってすごいはた迷惑なんじゃ? 放射能だよ!」
「仮にそこまで到達したとして、それまでに何億年、いや、何兆年かかることやら。だからそれまでには、プルトニウムは完全に無害な鉛の塊になっておるだろう」
「そうなんだ。だったらただの隕石みたいなものなんだね」
「ねえ、茶トラ先生、私思うのだけど、もしかしてどこか遠くの星の文明が、宇宙船か何かでこのミサイルを見つけたら、何と思うかしら?」
「そうだぜ! ゆりちゃん鋭いこと言うぜ! だってこれ人を殺す道具だぜ。遥か彼方のチキュウって星がの連中が、そんな人殺しの道具作ってたってばれたらさぁ。これってヤバいくらいダサいじゃん」
「たしかにわしもそう思う。人類とは全くバカげたものを作ったもんだ」
「そうよ。これまぢ、ばかげてるわよ。こんなの作った人、もうぶったた…」
「ねえねえ、それはそうと、もしかしてぼくらがやったこのミッションって、すごいことだよね。考えてみると人類が未来に核戦争をやらかしたとしても、ぼくらのタイムメールネットワークでそれを予知して、で、スワンボートでことごとく核ミサイルを捕まえて、ぼこぼこにしてから、ええと、ことごとく宇宙の果てへ飛ばせばいいんだもんね。つまりこれって、核兵器に対するすさまじい抑止力だよね」
「そうよ。そうすれば世界中の核ミサイルは、もはや意味をなさなくなるんんじゃないかしら?」
「そうだぜ。ゆりちゃんはいいことを言うぜ!」
「だったら私、核ミサイルの起爆装置を機関砲で壊すの、すごーく痛快だから、いくらでもやっていいよ。で、これって、ゲシュタルト先生が言っている、空手の『寸止め』に通じるものがあると思うの。つまりこうやって、核ミサイルを全部『役立たず』、つまり寸止めにしていけば、核兵器が無意味なものになって、核武装するなんていう馬鹿なことを考える政治家もいなくなるかも知れないし、そうしたら将来は核廃絶になるかも知れないし、だからこれからもどんどん核ミサイルが飛ばされたら、こうやってぶっ壊して、宇宙の果てに追放しようよ!」
「そうだよな。そうやって核兵器が無意味ってなれば、核のない平和な世界が訪れるかも知れないしな」
「ぼくもそう思う!」
「よしよし分かった。それじゃこれからもわしは、こうやって核兵器を無意味なものにするように、努力するとするか」
「そうだぜ! 先生がんばんな!」
「先生、頼んだわよ」
「でも私たちもがんばるよ。協力するよ」
「そうだね。みんなで力を合わせようね」
「ともあれ、わしの発明したいろんな機械が、未来のいろんな不幸な出来事を、未然に防いだり、そして核のない世界、すなわち世界平和に貢献できるとすれば、わしはこんな幸せなことはない。ともあれ、あ~、そうすれば地球はずいぶんと平和になる」

 弾道ミサイル 完
 アタゴ先生という新しいキャラを得て、またぼちぼち書いていきます。
 よろしく
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