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7.悪事
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オルトの実と他にも今夜の夕食に使う食材の入った紙袋を抱え、歩いていていると、前の方の八百屋で何やら揉めている様子の少年とその店の店主らしき人がいた。
「おい、ガキ!お前、また盗もうとしただろ!何度ダメっていったら分かるんだ!!」
「うっせぇよ、オッサン!だいたい、こんなにいっぱいあるんだから、1個くらいくれたっていいだろ!?」
いいわけないだろう。と、思わず口を挟みそうになったが、面倒ごとに首を突っ込むと後が大変だ。
そう思って、そのまま彼等の横を通り過ぎようとしたが、怒った店主が拳を振り上げたのが見えて、僕は咄嗟に少年の前に出た。
「いくら彼が悪さをしたからといって、殴るのはいけません。」
拳が振り下ろされる前に、店主の手首を掴み、止めさせる。
「あ”?…って、なんだ、あんた」
「すみません。勝手に割り込んでしまって。ッと、少年。帰る前に、しっかり謝りなさい。」
店主から手を離し、僕に庇われたことで逃げようとした少年の手を掴む。
そして、抵抗をする少年の頭に手を置き、頭を下げさせると、僕も一緒に頭を下げた。
「勝手に商品に手を出してしまい、すみませんでした。今日のところはお許しいただけませんか?」
僕よりも大きな店主を見上げると、なぜか店主は頬を赤く染めて、「ま、まあ、俺も大人げなかったし、いいけど」と、店の中へ戻って行った。
「おい、お前なんてことしてくれてんだよ!!しかも、無理矢理頭を下げさせるなんて、最低だッ!!」
「売っている物を盗むのは、いけないことです。そして、謝らないのは、それこそ最低なことですよ。」
少年の手を引きながら人ごみを抜けて、少年と目線の位置が合うように僕はしゃがみ込むと、「ひどい!最低!許さない!」と叫び散らす少年にあくまで強く、言った。
「誰かの物を盗めば、いつか罰が下ります。今は赦されていても、大人になれば誰もあなたを許さないし、味方にだってなってくれなくなります。だから、今後こういうことをするのはやめなさい。」
「何様のつもりだよ!!どーして初対面の女なんかに、そんな説教じみた聞かされなきゃなんねーんだ!!!」
女…。やっぱり、髪、切りましょうかね……。
「……僕、男なんですけど。…あなた、名前は何というのですか?」
「はぁ?……ないよ」
「え?」
「だから名前なんてねぇよ!」
「そうなんですか…。しかし、困りましたね。名前…名前…、あ。では、リヒトなんてどうですか?カッコいい名前でしょう?」
僕がそう言って、少年――リヒトに微笑むと、リヒトは心底驚いたように目を丸くしたまま固まった。
「おーーーーい!!」
しばらくリヒトと共に居ると、遠くから、こちらへ向かって叫んでいる人が。
「シーク兄ちゃん!」
そう呼ばれた人物は、息を切らしながら走って僕等のところまで来た。
男性で180センチくらいの、二十代後半といったところか。
「はぁ、はぁ…。もう、探したんだよ。…と、あなたは?」
「僕は、アルフレイドと申します。リヒ…、いえ、こちらの少年が人ごみに紛れて迷子になっていたところを見かけ、一緒にお兄さんが来るのを待っておりました。」
さりげなくリヒトと会った理由をいかにもな感じに変え、驚くリヒトにしー、と自分の口元に人差し指を当てながら微笑んだ。
「そ、それはそれは、大変ご迷惑をおかけしました!あ、あの…もし、よければなんですが、お茶でも飲みませんか?家が、すぐ近くなんです。」
言いながら、男は強い力で僕の腕を引き、歩きはじめる。
…最初から拒否権ないじゃないですか。
「リヒト、さっきのこと、忘れてはいけませんよ。」
前を行くシークさんに聞こえないような小さな声で、僕はリヒトに告げた。
リヒトはさっきとは少し違う、どこか幼さが戻ったような雰囲気で、こくりと頷いて、笑った。
「おい、ガキ!お前、また盗もうとしただろ!何度ダメっていったら分かるんだ!!」
「うっせぇよ、オッサン!だいたい、こんなにいっぱいあるんだから、1個くらいくれたっていいだろ!?」
いいわけないだろう。と、思わず口を挟みそうになったが、面倒ごとに首を突っ込むと後が大変だ。
そう思って、そのまま彼等の横を通り過ぎようとしたが、怒った店主が拳を振り上げたのが見えて、僕は咄嗟に少年の前に出た。
「いくら彼が悪さをしたからといって、殴るのはいけません。」
拳が振り下ろされる前に、店主の手首を掴み、止めさせる。
「あ”?…って、なんだ、あんた」
「すみません。勝手に割り込んでしまって。ッと、少年。帰る前に、しっかり謝りなさい。」
店主から手を離し、僕に庇われたことで逃げようとした少年の手を掴む。
そして、抵抗をする少年の頭に手を置き、頭を下げさせると、僕も一緒に頭を下げた。
「勝手に商品に手を出してしまい、すみませんでした。今日のところはお許しいただけませんか?」
僕よりも大きな店主を見上げると、なぜか店主は頬を赤く染めて、「ま、まあ、俺も大人げなかったし、いいけど」と、店の中へ戻って行った。
「おい、お前なんてことしてくれてんだよ!!しかも、無理矢理頭を下げさせるなんて、最低だッ!!」
「売っている物を盗むのは、いけないことです。そして、謝らないのは、それこそ最低なことですよ。」
少年の手を引きながら人ごみを抜けて、少年と目線の位置が合うように僕はしゃがみ込むと、「ひどい!最低!許さない!」と叫び散らす少年にあくまで強く、言った。
「誰かの物を盗めば、いつか罰が下ります。今は赦されていても、大人になれば誰もあなたを許さないし、味方にだってなってくれなくなります。だから、今後こういうことをするのはやめなさい。」
「何様のつもりだよ!!どーして初対面の女なんかに、そんな説教じみた聞かされなきゃなんねーんだ!!!」
女…。やっぱり、髪、切りましょうかね……。
「……僕、男なんですけど。…あなた、名前は何というのですか?」
「はぁ?……ないよ」
「え?」
「だから名前なんてねぇよ!」
「そうなんですか…。しかし、困りましたね。名前…名前…、あ。では、リヒトなんてどうですか?カッコいい名前でしょう?」
僕がそう言って、少年――リヒトに微笑むと、リヒトは心底驚いたように目を丸くしたまま固まった。
「おーーーーい!!」
しばらくリヒトと共に居ると、遠くから、こちらへ向かって叫んでいる人が。
「シーク兄ちゃん!」
そう呼ばれた人物は、息を切らしながら走って僕等のところまで来た。
男性で180センチくらいの、二十代後半といったところか。
「はぁ、はぁ…。もう、探したんだよ。…と、あなたは?」
「僕は、アルフレイドと申します。リヒ…、いえ、こちらの少年が人ごみに紛れて迷子になっていたところを見かけ、一緒にお兄さんが来るのを待っておりました。」
さりげなくリヒトと会った理由をいかにもな感じに変え、驚くリヒトにしー、と自分の口元に人差し指を当てながら微笑んだ。
「そ、それはそれは、大変ご迷惑をおかけしました!あ、あの…もし、よければなんですが、お茶でも飲みませんか?家が、すぐ近くなんです。」
言いながら、男は強い力で僕の腕を引き、歩きはじめる。
…最初から拒否権ないじゃないですか。
「リヒト、さっきのこと、忘れてはいけませんよ。」
前を行くシークさんに聞こえないような小さな声で、僕はリヒトに告げた。
リヒトはさっきとは少し違う、どこか幼さが戻ったような雰囲気で、こくりと頷いて、笑った。
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