怖気怪談。SS集

coco

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石灯籠

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 知り合いのDさんが、子供のころに体験したお話です

 隣の家の庭に、石灯籠いしどうろうが作られました。
 石灯籠といっても、その家のご主人が形の合う石をいくつか積み上げて作った簡単なものです。
 何日かして、Dさんが学校から帰って来た際に、ふと隣の家の庭を見ると、その家の奥さんが立っていました。
 奥さんはあの石灯籠の前に立ち、ぼんやりとそれを見つめていました。
あの石灯籠が気に入って眺めているのかな、とDさんは思ったそうです。

 その翌日、Dさんが学校から帰って来た際に再び隣の庭を見ると、奥さんがまたあの石灯籠の前に立っていました。
 しかし、奥さんの様子が昨日とは少し違いました。
 その石灯籠に向かって何かブツブツと呟いているのです。
 その様子はどこか楽しそうで、その口元には薄い笑みを浮かべていました。
 Dさんは気味が悪くなり、家の中に逃げ込みました。

 そんなことがあり、しばらくDさんは隣の庭を見ることを辞めました。
また奥さんのおかしな様子を見ることになったら恐ろしい、そう思ったからです。

 それからしばらくしてDさんは、母親と祖母が隣の奥さんについて話している場面に出くわしました。
「何だか最近、隣の奥さんの様子がおかしかったでしょう。私がこの前見た時は、石灯籠に頬ずりして笑ってたわ。気味が悪かったから、その話をご主人にしたのよ。」
「もしかしてあの石灯籠が無くなっていたのは、それが理由ですか?」
「ご主人も奥さんの様子がおかしいことに、気づいてたみたいでね。それがいつからかって考えたら、どうもあの石灯籠を庭に置いてからだと思ったみたい。」
「あの石灯籠って、結局何だったんでしょうね…。」
「よく分からないけど…。あの石はね、ご主人が近くの河原から運んできたものらしいわ。形が気に入ったから、石灯籠に使おうとしてね。でも…河原の石を拾って持って帰るのは、良くないというでしょ?昔お墓で使われていた石が、混じっている場合があるからって。もしかしたら、それが原因かもしれないわね。」

 不思議なこともあるわね、と話す二人の様子を見て、Dさんはぶるりと身震いしました。






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