怖気怪談。SS集

coco

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靴と白蛇

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 Iさんが幼い時の話です。

 ある日Iさんは、靴箱から自分の靴を取ろうと扉を開けました。
 すると突然、雪のように白い体に真っ赤な瞳を持った蛇が、にゅっと顔を出しました。
 Iさんは突然のことに驚いて、叫び声を上げました。
 その声に驚いたのか、白蛇は頭を引っ込めました。

 それを見たIさんは逃がさないようにすぐ靴箱の扉を閉め、家族を呼びに行きました。
 祖父がちょうど家にいたので、わけを話し蛇を捕まえてもらうことにしました。
 網を持って二人で靴箱に向かい、せーので扉を開けました。
「何もいないぞ?」
 祖父にそう言われ、Iさんは靴箱の中に顔を入れ隅々まで見ましたが、白蛇は居ませんでした。
「おかしいなぁ、この目でしっかり見たのに。」

 そんなIさんに、祖父はこう言いました。
 靴というのは、あの世の入り口だからな。
 死んだ者の棺の中に、くつを入れて送ることがあるけど、あれもあの世に無事に入れるようにってことらしいぞ。
 もしかしたら、偶然あの世の入り口が開いて、あの世の御使いの白蛇さんが、顔を出したのかもしれんな。

 その話を聞いたIさんは、そういえばあの靴箱には、亡くなった曽祖父の革靴が入れっぱなしだったな…と思いました。
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