怖気怪談。SS集

coco

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洋館

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 これは友達のUさんが、小学生のころに体験した話です。

 ある日Uさんが、友達と学校から帰っていた時、二人の目の前に見慣れない洋館が現れました。
 レンガ造りの壁には緑のツタが絡みついて伸びていて、屋根の上には煙突えんとつが立っていました。
 その時代、まだそういった建物は珍しく、二人はその洋館をまじまじと見つめました。
「こんな所に、こんな建物あった?」
「どうだろう?あったような、無かったような…。」
 お互いに、何故か記憶がはっきりしません。
 
 すると友達が、Uさんにこう言いました。
「ねえ、中に入ってみない?」
「ええ、誰か住んでたら、怒られるよ。」
「それこそ、この建物を見せて下さいって、お願いすればいいんだよ。」 
 そう言って友達はUさんの腕を掴み、二人はその建物の中へと入っていきました。

 念のため、お邪魔しますと声をかけましたが、誰かがいる様子はなかったので、二人はそのまま中を見て回ることにしました。
 その建物は1階に部屋が3つあり、階段を昇った2階にも部屋がいくつかある様でした。
 Uさんは友達と一緒に1階だけ見て回りましたが、やはり知らない家を覗いて回るのは気が引けてしまい、玄関まで戻ると靴を履きそこに座り込みました。
 そんな様子を見た友達は、一人で2階を見てくるからそこで待ってて、とUさんに声をかけると階段を昇って行きました。

 キイ、パタン…キイ、パタン。
 2階にいる友達が、扉を開け中を確認した後に扉を閉める、そんな音が静かな館内に響き渡ります。
 そして、キイ…と次の部屋の扉を開けた音がした、その時です。

 ぎゃあああああー!
 大きな悲鳴ひめいがしたかと思うと、ダダダダダッと階段を駆け下りる音がして、友達が走り下りてきました。
 そして靴も履かず、そのまま外へと飛び出して行きました。
 Uさんは慌てて友達の靴を掴み、その後を追いかけました。

 50メートル程走ったところで、友達は道にしゃがみこんでいました。
 そして真っ青な顔をして額からは大粒の汗が噴き出し、ガチガチと歯を鳴らしていました。
 Uさんは友達に、2階で何があったのかを尋ねました。
「み、見てない。知らない。私…見てない。」
 そしてそれ以降は全く口を開かず、その日は別れました。
 
 翌日、学校で友達を見たUさんは、さっそく声をかけました。
「おはよう。昨日は、あれから大丈夫だった?」
 すると友達は、きょとんとした顔でUさんを見つめました。
「昨日?何かあったっけ?」
「え?昨日、あの洋館で。私たち見慣れない洋館に入ったでしょ?」
「…洋館?何それ?」
 友達は、何のことかさっぱり分からない、といった様子でした。
 Uさんは、友達がふざけている様には、全く見えなかったと言います。
 そしてあの洋館は、あれからUさんが何度探しても、決して見つけることはできなかったそうです。
 
 あの洋館は何だったのか、そして友達が目にしたものとは何だったのか…それは謎のままです-。
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