怖気怪談。SS集

coco

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花子さん

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 私が小学生の時に、体験した話です。

 私の小学校にも、あの有名な「トイレの花子さん」の話が伝わっていました。
 旧校舎一階の中央にある女子トイレに花子さんがいると言われていて、花子さんの呼び出し方にはいくつかの細かい条件がありました。
 そのトイレには5つの個室が並いて、左から3番目のトイレのドアを3回ノックした後、花子さんおいで下さい、これを3回繰り返します。
 そしてそれを行うのは、3人でなければいけません。
 それ以下でもそれ以上でもいけない、決められた人数でなければ花子さんは現れないのです。
 そしてこれらは3時33分に行うこと、とされていました。
 本来ならば夜中の3時33分がいいんでしょうが、私たち小学生がそんな時間にそれを行うことはまず不可能です。
 ですから私たちの間では、生徒の大半が帰った後の15時33分に、それを行うことにしていました。

 ある日のことです。
 私は友達2人と、放課後遅くまで教室で遊んでいました。
 もうそろそろ帰ろうという話になった時、友達の一人が帰る前にトイレに行きたいと言い出しました。
 ここから一番近い女子トイレは、あの花子さんの噂があるトイレです。
 友達が一人で行くことを嫌がったため、みんなで一緒に行くことになりました。
 その時の時間は15時30分ごろでした。

 その友達が用を足し、トイレから出てくるのを二人で待っていると、もう一人の友達が、花子さんを呼んでみようと言いだしました。 
 私とトイレから出てきた友達は辞めようと言いましたが、もうすぐ33分で、せっかく人数が3人揃っているんだから、一回だけやろう!と後に引きませんでした。

 結局、私たちは花子さんを呼ぶことになりました。
 3番目の個室のドアを開け、中に誰もいないことを確認しました。
 私たちは決められた手順でことを進めていき、花子さんおいでください…と、3回目の呼びかけを終えました。
 しーん…。
 特に変わったことは起きません。
 私たちは、やっぱりただの噂だったんだね、と笑いあいトイレを後にしようとしました。
 
 その時です。
 コン…コン…コン。
 扉を小さくノックする音が3回、トイレから聞こえてきました。
 私たちは驚いて、一斉に振り返りました。
  
 そして、そこにいた全員が確かに聞いたのです。
「…は、ぁ、い」
 それは、幼い女の子のか細い声でした。
 私たちはそれぞれに叫び声を上げ、校舎から飛び出しました。

 あれからいくつもの月日が流れました…あの小学校には今も、花子さんはいるのでしょうか-。
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