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条件
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Aさんの地元には、とある不思議な話が伝わっていました。
それはこういう話です。
「雨の降る日の夕方に、A橋、B橋、C橋の順に渡る。その際、全ての橋を渡り切る間に、自分以外の歩行者と出会ってはいけない。誰とも出会わずに最後のC橋を渡り切り、次の一歩を踏み出した者は異世界に行ける。」
ところがこの条件を全てクリアにすることは、難しいことだそうです。
この3つの橋は通学路に利用されており、A橋、B橋をクリアできたとしても、C橋の途中で誰かに出会い条件はクリアできない、そうAさんは言いました。
しかしAさんの友達が、ある雨の日の夕方、この条件をクリアしそうになったのです。
その友達は、その話をあまり信じていませんでした。
ですから特に気にすることなくA橋、B橋、を渡っていきました。
そしてC橋を半分渡った時に、この話を思い出したそうです。
そういえば、A橋、B橋で誰とも会わなかった。
このC橋でもまだ誰とも会っていない。
こんなことは珍しい。
…もし、あの話が本当なら、このままこの橋を渡り終えたら、次の一歩を踏み出した瞬間、私は異世界に行ってしまう。
そう思った瞬間、その友達の背中に嫌な汗がつうっと伝いました。
心なしか歩く歩幅は小さくなり、そのペースも落ちました。
友達は立ち止まりC橋の先の様子を、そっと傘を傾け伺いました。
残りは、あと20メートル程です。
友達は橋の先を見ることが怖くなり、傘を深く差し自分の足元だけを見て、再び歩き始めました。
しとしと…しとしと…。
ピチャピチャ…ピチャピチャ…。
雨の降る音と自分の足音以外は、何も聞こえません。
あと…10メートル。
しとしと…しとしと…。
ピチャピチャ…ピチャピチャ…。
あれ…私の足元、こんなに暗かった?
それに、何だか空気が重いような。
どうしよう、もうすぐで渡り終わってしまうのに-。
それでも、何故かその足は止まりません。
あと3メートル…!
その時です、後ろからププ-ッと車のクラクションが鳴りました。
そして一台の車が止まり、一人の女の子が降りてきました。
そして友達に、声をかけてきたのです。
「良かったら、車に乗ってきなよ!」
こうして友達は、C橋を渡り切る前にその車に乗り込み、帰路に着いたそうです。
※※※
「ね、その声をかけた一人の女の子ってもしかして…。」
私がそう尋ねると、Aさんはにっこり笑って答えました。
「そう、私。橋を渡ってる友達の様子がおかしかったから、車降りて声かけたの。やたら、暗い様子で歩いてたから気になって。後で話を聞いたら、やっぱり声かけて良かった。夕方は逢魔が時って言うし、気を付けないとね。」
それはこういう話です。
「雨の降る日の夕方に、A橋、B橋、C橋の順に渡る。その際、全ての橋を渡り切る間に、自分以外の歩行者と出会ってはいけない。誰とも出会わずに最後のC橋を渡り切り、次の一歩を踏み出した者は異世界に行ける。」
ところがこの条件を全てクリアにすることは、難しいことだそうです。
この3つの橋は通学路に利用されており、A橋、B橋をクリアできたとしても、C橋の途中で誰かに出会い条件はクリアできない、そうAさんは言いました。
しかしAさんの友達が、ある雨の日の夕方、この条件をクリアしそうになったのです。
その友達は、その話をあまり信じていませんでした。
ですから特に気にすることなくA橋、B橋、を渡っていきました。
そしてC橋を半分渡った時に、この話を思い出したそうです。
そういえば、A橋、B橋で誰とも会わなかった。
このC橋でもまだ誰とも会っていない。
こんなことは珍しい。
…もし、あの話が本当なら、このままこの橋を渡り終えたら、次の一歩を踏み出した瞬間、私は異世界に行ってしまう。
そう思った瞬間、その友達の背中に嫌な汗がつうっと伝いました。
心なしか歩く歩幅は小さくなり、そのペースも落ちました。
友達は立ち止まりC橋の先の様子を、そっと傘を傾け伺いました。
残りは、あと20メートル程です。
友達は橋の先を見ることが怖くなり、傘を深く差し自分の足元だけを見て、再び歩き始めました。
しとしと…しとしと…。
ピチャピチャ…ピチャピチャ…。
雨の降る音と自分の足音以外は、何も聞こえません。
あと…10メートル。
しとしと…しとしと…。
ピチャピチャ…ピチャピチャ…。
あれ…私の足元、こんなに暗かった?
それに、何だか空気が重いような。
どうしよう、もうすぐで渡り終わってしまうのに-。
それでも、何故かその足は止まりません。
あと3メートル…!
その時です、後ろからププ-ッと車のクラクションが鳴りました。
そして一台の車が止まり、一人の女の子が降りてきました。
そして友達に、声をかけてきたのです。
「良かったら、車に乗ってきなよ!」
こうして友達は、C橋を渡り切る前にその車に乗り込み、帰路に着いたそうです。
※※※
「ね、その声をかけた一人の女の子ってもしかして…。」
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「そう、私。橋を渡ってる友達の様子がおかしかったから、車降りて声かけたの。やたら、暗い様子で歩いてたから気になって。後で話を聞いたら、やっぱり声かけて良かった。夕方は逢魔が時って言うし、気を付けないとね。」
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