私が愛されないのは仕方ないと思ってた…だって、あなたの愛する人を傷つけた悪女だから。

coco

文字の大きさ
1 / 1

私が愛されないのは仕方ないと思ってた…だって、あなたの愛する人を傷つけた悪女だから。

しおりを挟む
「仕方なくお前を連れて来てやったんだ、あまりベタベタするなよ。」

「…分かってます。」

 せっかくのパーティーだと言うのに、気が重いわ…。

 私は、婚約者の彼から嫌われていた。
 仕方ないわ…私は、彼の愛する人を傷つけた悪女だもの。

 今更後悔しても遅いのは分かってる…でもあの時、私はどうしてあんな事をしてしまったのかしら─。

 私は彼の幼馴染を階段から突き落し、怪我をさせてしまった。

 気が付いた時には、私は彼女の背中を押していた。
 階段下で泣きわめく彼女と、その声に駆け付けて来た婚約者─。

 彼女を抱き起した後、私を睨む彼の冷たい目…今でも忘れられないわ。

『いいか、お前との婚約は家同士の約束で仕方なくだ。俺が本当に愛してるのは…あの幼馴染だ。お前は俺の愛する人を傷つけた、悪女なんだよ!』

 騒動の後、彼に突き付けられたこの言葉で、私は全く愛されていない事に漸く気付いたのだ─。

「…悪女の癖に、よくパーティーに出れたものね。」

 声をかけて来たのは、私が傷付けた幼馴染だった。

「こんな女でも、俺の婚約者だからな…連れて行かないと父の小言がうるさいんだ。でも約束通り、君のダンスの相手は俺がするよ。…そういう事だから、お前はお前で好きにしろ。」

 私は二人から離れ、壁際にポツンと一人立ち尽くした。

 すると、そんな私にある人物が声をかけて来た。

 そして私は、驚きの事実を知る事に─。

※※※

「…まだあの子と婚約破棄しないの?」

「父が許してくれないんだ。」

「せっかく私が体を張ったのに!わざわざ催眠術師を雇いあの女を操り、私を階段から突き落す様暗示をかけ…それであの女を悪女に仕立てたのに、それでもまだ駄目なの?」

「真面目で優しい彼女が、そんな事するはずないと言うんだ。だから、今度は別の作戦を考えてある…あの女を男に襲わせ、浮気をでっちあげるんだ。」

「流石にそんなふしだらな女、いくらお父様でもお許しにならないわね!」

「そう上手くはいきませんよ。」

「お前…か、勝手に入って来るな!この部屋は俺たちが貸し切って…!」

「私の従者はどうしたの、見張りを頼んだのに!」

「あの方なら帰られました。事情を話したら、厄介事に関わるのはご免だと言ってね。」

 部屋に入って来た私に、二人は冷や汗をかき視線をさ迷わせた。

「どうして、あなたを階段から突き落すような非道を働いたのか…私はずっと分からないでいた。でも、催眠術で操られていたなら納得です。私と別れるのをお父様に許して貰えないからって、私を悪女に仕立てるとは…何と卑怯な!」

「だ、黙れ!」

「いいわ、そんなに別れたいなら婚約破棄しましょう。私から、あなたのお父様にそう言ってあげる。」

 私の言葉に婚約者は驚き、幼馴染は喜びの声をあげた。

「それ本当!?後から復縁したいとか、言わないでよ!」

「言わないわ、絶対にね─。」

※※※

「という訳で父上、俺はあいつから婚約破棄された。向こうから断られたなら仕方ないだろう?だから俺は、愛する幼馴染と─」

「そうか分かった、ならばこの家を出て行け。」

「ど、どう言う事です!?」

「兄上の企みは俺が全て調べ、父上に報告済みです。催眠術師に続き、怪しげな男を雇うなど…この家の名誉に関わりますから。」

 部屋に入ってきた弟を、俺は呆然と見つめた。

「もしや…あの女に真相を伝えたのも、お前か?」

「俺は彼女の事がずっと好きだった…あなたの様な心根の腐った人に、彼女は渡せません。」

「彼女は、改めてこの弟と婚約する事になった。今後は弟に、家も事業も任せる。」

「そんな…!」

※※※

 その後彼は、身一つで家を追い出された。
 そんな彼は、幼馴染に助けて貰おうと彼女の家に駆けこんだが…そこに彼女の姿はなかった。

 何と彼女は、今回の事が原因で早々に家を出され、他国に嫁がされていたのだ。

 娘の悪事が使用人の間に広まり、このままではいけないと思った父親の判断だというが…その相手はかなり年上の醜い男だそうで、彼女は泣く泣く嫁いで行ったという。
 
 それを知った彼は大いに悲しみ、すぐにその後を追いかけたらしいが…お金も何も持ってないあなたが、そこまで辿り着けるとは思えない。

 案の定、彼はその国に向かう途中で力尽き病に倒れ…その後は行方知れずとなってしまった。

 そんな目に遭うのも、自業自得ね…人を不幸にし得た愛では、幸せになる事など決して出来やしないのよ─。
しおりを挟む

この作品は感想を受け付けておりません。

あなたにおすすめの小説

婚約者の座は譲って差し上げます、お幸せに

四季
恋愛
婚約者が見知らぬ女性と寄り添い合って歩いているところを目撃してしまった。

婚約破棄、別れた二人の結末

四季
恋愛
学園一優秀と言われていたエレナ・アイベルン。 その婚約者であったアソンダソン。 婚約していた二人だが、正式に結ばれることはなく、まったく別の道を歩むこととなる……。

婚約者と幼馴染は、私がいなくなってから後悔するのでした。でももう遅いですよ?

久遠りも
恋愛
婚約者と幼馴染は、私がいなくなってから後悔するのでした。でももう遅いですよ? ※一話完結です。 ゆるゆる設定です。

姉に婚約者を奪われましたが、最後に笑うのは私です。

香取鞠里
恋愛
「カレン、すまない。僕は君の姉のキャシーを愛してしまったんだ。婚約破棄してくれ」  公爵家の令嬢の私、カレンは、姉であるキャシーの部屋で、婚約者だったはずのエリックに突如そう告げられた。  エリックの隣で勝ち誇ったようにこちらを見つめるのは、姉のキャシーだ。  昔からキャシーはずるい。  私の努力を横取りするだけでなく、今回は婚約者まで奪っていく。  けれど、婚約者が愛していたのは本当は姉ではなく──!?  姉も、そんな婚約者も、二人揃って転落人生!?  最後に笑うのは、婚約破棄された私だ。

【完結】誕生日に花束を抱えた貴方が私にプレゼントしてくれたのは婚約解消届でした。

山葵
恋愛
誕生日パーティーの会場に現れた婚約者のレオナルド様は、大きな花束を抱えていた。 会場に居る人達は、レオナルド様が皆の前で婚約者であるカトリーヌにプレゼントするのだと思っていた。

お前は要らない、ですか。そうですか、分かりました。では私は去りますね。あ、私、こう見えても人気があるので、次の相手もすぐに見つかりますよ。

四季
恋愛
お前は要らない、ですか。 そうですか、分かりました。 では私は去りますね。

婚約者を妹に奪われました。気分が悪いので二人を見なくて良い場所へ行って生きようと思います。

四季
恋愛
婚約者を妹に奪われました。気分が悪いので二人を見なくて良い場所へ行って生きようと思います。

裏切り者

詩織
恋愛
付き合って3年の目の彼に裏切り者扱い。全く理由がわからない。 それでも話はどんどんと進み、私はここから逃げるしかなかった。

処理中です...