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26.目的が果たされて
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アートレイドが力の気配を感じると同時に、シェイナの身体が白い光に包み込まれた。その光は、ねこのサイズから人間のサイズへとどんどん大きくなる。
時間としては、そう長くない。
その光がゆっくりと消え、再びその姿が現れた時。
そこには黒ねこではなく、一人の少女がいた。
「シェイナ……?」
「アート……あたし、戻った?」
真っ直ぐな黒髪のポニーテイルに、大きな青い瞳。生成りのブラウスと、紺のスカートには小さな白いエプロンがついて。髪には、赤いリボンが揺れている。
黒ねこにされたあの日と、同じ姿だ。手にはちゃんと指が五本あるし、顔に長いひげはもうない。
「戻ったぁっ!」
術が完全に解けたとわかった瞬間、兄妹は抱き合って喜んだ。そこへフローゼも加わって、喜びを分かち合う。
ディラルトは、穏やかな表情でそんな三人を見ていた。もし魔法がうまくいかなければ、こっそりと手助けをするつもりでいたのだ。
彼らに話した通り、竜は生命の危機に直面した時しか、人間に対して力を使わない。
だから「シェイナにかけられた魔法を解いてやる」ということも、自分からは言い出さなかった。
ディラルトにすれば、彼女にかけられた魔法を解くくらい、簡単なものだ。しかし、兄妹から頼まれなかったし、今すぐに命がどうこうという状況ではないので、手を出さなかった。
ディラルトが「駄目だった時は手を貸してやろう」と考えたのは、アートレイドにベグスバーノの始末を任せた、いわば礼のつもりだったのだ。
もし、アートレイドがディラルトに頼んでくれば、それを理由に承諾する気だったが……どうやら、その必要はなかったらしい。
「魔骨をこういう形で使うとは……考えたものだな」
「ええ。それに、フローゼの元に一つだけ魔骨が残ったのも、何かの縁でしょうね」
この様子を見守っていたネイロスとユーリオンも、解呪が成功したことを喜んでいた。
話を聞いた時には「そんなことが可能なのか」と思ったが、ディラルトに立ち会ってもらうとアートレイドが言うので、それなら大丈夫だろうと考え直す。
竜がそばにいて、何か悪いことが起きるとは思えない。
それでも、実際にシェイナの姿が戻るまでは、一抹の不安があった。魔骨の力が使われるのを見るのは初めてだし、どう反応するのかも予測不可能。詠唱の失敗で、違う効果が発動することも考えられる。
だが、それも杞憂に終わったようだ。
彼らも人間の姿に戻ったシェイナを見て、心から安堵のため息をついた。
ひとしきり盛り上がった後、アートレイドからペンダントを返してもらったフローゼは、それを持ってディラルトのそばへ行く。
「ディラルト、お願い」
シェイナは無事に元の姿に戻れた。次は、魔骨からその力を抜いてもらわなければならない。
「ああ」
ペンダントをフローゼから受け取ると、ディラルトはその上に手をかざす。
呪文はなく、ベグスバーノの世界で見たような青い竜の影は現れず、見た目には何も起きない。
だが、ディラルトは小さくうなずいて、ペンダントをフローゼへ返した。
「はい、おしまい」
「え? もう? 竜の影とかは見えなかったと思うけど」
「うん、出ないよ。あれはベグスバーノに見せ付けるために、あえて出したものだったからね」
魔骨を全て燃えかすのようにしてしまったように、魔骨から力が失われた、とベグスバーノが目で見て認識できるように、ディラルトが細工していたのだ。
アートレイドが魔骨の力を使っても、竜の影が出ない訳である。
「これでそのペンダントは、きみにとって『大切な形見の品』以外の何物でもなくなった。おかしな奴らに狙われることは、もうないよ」
「ありがとう、ディラルト」
ペンダントトップの玉は減ってしまったが、たった一つでも手元に残っている。
それだけで、フローゼは十分だった。
☆☆☆
明日、ディラルトは「ネイロス邸を出る」と言った。
今回の件でかなりの数の魔骨を一気に処理できたが、世間にはまだ多くの魔骨が散らばっている。
小さな装飾品に加工されている物が多く、あちこちに存在するのでそれを探さなければならないのだ。
ここへ来た時も「探し物は一つではない」と言っていた。緊急を要する訳ではないが、のんびりしていいというのでもない。
また、アートレイド達もシェイナの術が解けたことで、ネイロス邸にとどまる理由がなくなった。
シェイナを自分達の出身地であるアムルの村へ送るとして、家の状況がどうなっているのか、気になるところでもある。
村長が家を保存してくれているか、アートレイド達はもう戻らないと考えて処分しているか、ここでは確かめようもない。
処分されていたら、空き家を探すか改めて建てるか。もしくは、別の村か街へ移るのかを決めなければならない。
どうするか、とあれこれ考えていたアートレイドだったが、シェイナは「ここに残りたい」と言い出した。
「あたし、あの書庫にある魔法書で勉強したい」
それが理由だ。
ここへ来た時も目を輝かせていたが、ねこの姿ではろくに見ることもかなわなかった。爪で本を傷付けかねないし、そもそもねこの手では棚から本を出すことも大変だ。
しかし、こうして無事人間に戻れた今、いくらでも手に取って読むことができる。
もっとも、それはネイロス達がシェイナの滞在を許してくれたら、の話で……。
「本は人が読むためにある物だ。読んで勉強したいのなら、いくらでもいればいい」
ネイロスが快諾し、シェイナと一緒にフローゼも喜んだ。
兄弟姉妹がいない彼女にすれば、妹ができたようなもの。それが嬉しかったのだ。育ての母ライカが亡くなって以来、家族が男ばかりだった、というのもある。
アートレイドも村に妹一人を残すより、ここにいた方がずっと安心できる。
頼りになる魔法使いが二人もいるのだから、シェイナが今後どういう道を究めることになっても、道を踏み外すようなことはない。
人見知りはしないシェイナのことだから、村にもすぐに溶け込むだろう。もう人間の姿に戻ったのだから、魔物だと言われることもないはず。
シェイナをアムルの村へ送らなくてよくなったアートレイドは、とりあえず近くの街へ出る、と言って言葉を濁した。
これまでずっと「シェイナの術を解く方法」を探していたので、いざ術が解けたら自分はこれからどうしていいのか、と戸惑っている部分がある。
元々、街へ出て魔法使いとしての仕事ができる場所を探そうと思っていたのだし、最初に出ようと考えていた街が別の街になった、というだけだ。
そう思ってはみるのだが、どうも自分の中ですっきりしない。
夜が更け、それぞれが自分の部屋へ戻った。
シェイナはすでに別の部屋をあてがってもらい、今はアートレイドだけだ。こういう時は、多くの弟子がいたので部屋が多い、という家はありがたい。
いつも昼間は好きなように走り回っていたシェイナだが、眠る時に自分だけだと不安だったのだろう。
野宿する時はすぐそばに、こうして屋根がある場所で休める時はベッドの端に丸まって。
それでも思春期の女の子が兄と一緒に寝るのは複雑、といった表情で、付かず離れずの微妙な距離感を保って休んでいた。
黒ねこが足下にいないベッドに、ちょっと違和感を覚える。異常な状態ではあったが、長くそれが続いたことで慣れてしまったらしい。
これが当たり前なんだ、と思いながらシーツをめくったが、妙な気分は否めない。
思い立ったように、アートレイドは部屋を出た。
向かったのは、ディラルトの部屋だ。
軽くノックすると返事が聞こえ、そっと扉を開けた。竜の化身である青年はまだ眠らず、窓を開けて夜空を眺めていたようだ。
「どうした?」
部屋に明かりはなかったが、ディラルトの姿ははっきりと見える。月明かりのせいか、その銀色の髪のせいか。やっぱり人ではないんだな、というのがわかる気がした。
「こんな時間に、ごめん。……ディラルトは明日、出発するって言ってただろ」
「ああ」
「俺もついてっちゃ……ダメかな」
「一応、聞いておくか。どうしてだ?」
さして驚いた様子もなく、ディラルトは静かに尋ねる。
「街へ出たり一人で旅をするより、絶対色んなことが学べると思うから」
「お前、最初に会った時から思っていたが、本当に真っ直ぐだな」
聞きようによっては、ひどく自分本位な理由だ。
自分の経験値を増やすため、役目のある竜にくっついて行こうと言うのだから。
それでも、アートレイドはそれを隠そうともしなかった。
もっとうまい理由を言って相手の心をくすぐろう、断りにくい状況を作ろう、なんて細工は一切ない。
もっとも、余計なことを言わない方が、ディラルトの心をくすぐっていた。
「オレの旅に、目的地はないぞ。魔骨があるとわかれば、どこへでも行く。そんな旅でも構わないのか?」
「ああ。どこだろうと、俺にとっては初めての場所なんだ。どういう場所でも、すっごく興味がある」
今までアムルの村を出て、シェイナと一緒にあちこちの村や街へ行った。
しかし、それは解呪の方法を探す旅。
どこがどんな場所だったか、なんてことは当時のアートレイドにとって必要な情報ではなかったので、まるで覚えていない。
せいぜい、大きなあの街にはたくさんの魔法書があったな、ということくらいのもの。あとは似たような状況ばかりだったので、ほとんど抜け落ちている。
だから、全てが初めてに等しいのだ。
「お前がそれでいいなら、好きにしろ」
「え……いいのか」
アートレイドの反応に、ディラルトは吹き出した。
時間としては、そう長くない。
その光がゆっくりと消え、再びその姿が現れた時。
そこには黒ねこではなく、一人の少女がいた。
「シェイナ……?」
「アート……あたし、戻った?」
真っ直ぐな黒髪のポニーテイルに、大きな青い瞳。生成りのブラウスと、紺のスカートには小さな白いエプロンがついて。髪には、赤いリボンが揺れている。
黒ねこにされたあの日と、同じ姿だ。手にはちゃんと指が五本あるし、顔に長いひげはもうない。
「戻ったぁっ!」
術が完全に解けたとわかった瞬間、兄妹は抱き合って喜んだ。そこへフローゼも加わって、喜びを分かち合う。
ディラルトは、穏やかな表情でそんな三人を見ていた。もし魔法がうまくいかなければ、こっそりと手助けをするつもりでいたのだ。
彼らに話した通り、竜は生命の危機に直面した時しか、人間に対して力を使わない。
だから「シェイナにかけられた魔法を解いてやる」ということも、自分からは言い出さなかった。
ディラルトにすれば、彼女にかけられた魔法を解くくらい、簡単なものだ。しかし、兄妹から頼まれなかったし、今すぐに命がどうこうという状況ではないので、手を出さなかった。
ディラルトが「駄目だった時は手を貸してやろう」と考えたのは、アートレイドにベグスバーノの始末を任せた、いわば礼のつもりだったのだ。
もし、アートレイドがディラルトに頼んでくれば、それを理由に承諾する気だったが……どうやら、その必要はなかったらしい。
「魔骨をこういう形で使うとは……考えたものだな」
「ええ。それに、フローゼの元に一つだけ魔骨が残ったのも、何かの縁でしょうね」
この様子を見守っていたネイロスとユーリオンも、解呪が成功したことを喜んでいた。
話を聞いた時には「そんなことが可能なのか」と思ったが、ディラルトに立ち会ってもらうとアートレイドが言うので、それなら大丈夫だろうと考え直す。
竜がそばにいて、何か悪いことが起きるとは思えない。
それでも、実際にシェイナの姿が戻るまでは、一抹の不安があった。魔骨の力が使われるのを見るのは初めてだし、どう反応するのかも予測不可能。詠唱の失敗で、違う効果が発動することも考えられる。
だが、それも杞憂に終わったようだ。
彼らも人間の姿に戻ったシェイナを見て、心から安堵のため息をついた。
ひとしきり盛り上がった後、アートレイドからペンダントを返してもらったフローゼは、それを持ってディラルトのそばへ行く。
「ディラルト、お願い」
シェイナは無事に元の姿に戻れた。次は、魔骨からその力を抜いてもらわなければならない。
「ああ」
ペンダントをフローゼから受け取ると、ディラルトはその上に手をかざす。
呪文はなく、ベグスバーノの世界で見たような青い竜の影は現れず、見た目には何も起きない。
だが、ディラルトは小さくうなずいて、ペンダントをフローゼへ返した。
「はい、おしまい」
「え? もう? 竜の影とかは見えなかったと思うけど」
「うん、出ないよ。あれはベグスバーノに見せ付けるために、あえて出したものだったからね」
魔骨を全て燃えかすのようにしてしまったように、魔骨から力が失われた、とベグスバーノが目で見て認識できるように、ディラルトが細工していたのだ。
アートレイドが魔骨の力を使っても、竜の影が出ない訳である。
「これでそのペンダントは、きみにとって『大切な形見の品』以外の何物でもなくなった。おかしな奴らに狙われることは、もうないよ」
「ありがとう、ディラルト」
ペンダントトップの玉は減ってしまったが、たった一つでも手元に残っている。
それだけで、フローゼは十分だった。
☆☆☆
明日、ディラルトは「ネイロス邸を出る」と言った。
今回の件でかなりの数の魔骨を一気に処理できたが、世間にはまだ多くの魔骨が散らばっている。
小さな装飾品に加工されている物が多く、あちこちに存在するのでそれを探さなければならないのだ。
ここへ来た時も「探し物は一つではない」と言っていた。緊急を要する訳ではないが、のんびりしていいというのでもない。
また、アートレイド達もシェイナの術が解けたことで、ネイロス邸にとどまる理由がなくなった。
シェイナを自分達の出身地であるアムルの村へ送るとして、家の状況がどうなっているのか、気になるところでもある。
村長が家を保存してくれているか、アートレイド達はもう戻らないと考えて処分しているか、ここでは確かめようもない。
処分されていたら、空き家を探すか改めて建てるか。もしくは、別の村か街へ移るのかを決めなければならない。
どうするか、とあれこれ考えていたアートレイドだったが、シェイナは「ここに残りたい」と言い出した。
「あたし、あの書庫にある魔法書で勉強したい」
それが理由だ。
ここへ来た時も目を輝かせていたが、ねこの姿ではろくに見ることもかなわなかった。爪で本を傷付けかねないし、そもそもねこの手では棚から本を出すことも大変だ。
しかし、こうして無事人間に戻れた今、いくらでも手に取って読むことができる。
もっとも、それはネイロス達がシェイナの滞在を許してくれたら、の話で……。
「本は人が読むためにある物だ。読んで勉強したいのなら、いくらでもいればいい」
ネイロスが快諾し、シェイナと一緒にフローゼも喜んだ。
兄弟姉妹がいない彼女にすれば、妹ができたようなもの。それが嬉しかったのだ。育ての母ライカが亡くなって以来、家族が男ばかりだった、というのもある。
アートレイドも村に妹一人を残すより、ここにいた方がずっと安心できる。
頼りになる魔法使いが二人もいるのだから、シェイナが今後どういう道を究めることになっても、道を踏み外すようなことはない。
人見知りはしないシェイナのことだから、村にもすぐに溶け込むだろう。もう人間の姿に戻ったのだから、魔物だと言われることもないはず。
シェイナをアムルの村へ送らなくてよくなったアートレイドは、とりあえず近くの街へ出る、と言って言葉を濁した。
これまでずっと「シェイナの術を解く方法」を探していたので、いざ術が解けたら自分はこれからどうしていいのか、と戸惑っている部分がある。
元々、街へ出て魔法使いとしての仕事ができる場所を探そうと思っていたのだし、最初に出ようと考えていた街が別の街になった、というだけだ。
そう思ってはみるのだが、どうも自分の中ですっきりしない。
夜が更け、それぞれが自分の部屋へ戻った。
シェイナはすでに別の部屋をあてがってもらい、今はアートレイドだけだ。こういう時は、多くの弟子がいたので部屋が多い、という家はありがたい。
いつも昼間は好きなように走り回っていたシェイナだが、眠る時に自分だけだと不安だったのだろう。
野宿する時はすぐそばに、こうして屋根がある場所で休める時はベッドの端に丸まって。
それでも思春期の女の子が兄と一緒に寝るのは複雑、といった表情で、付かず離れずの微妙な距離感を保って休んでいた。
黒ねこが足下にいないベッドに、ちょっと違和感を覚える。異常な状態ではあったが、長くそれが続いたことで慣れてしまったらしい。
これが当たり前なんだ、と思いながらシーツをめくったが、妙な気分は否めない。
思い立ったように、アートレイドは部屋を出た。
向かったのは、ディラルトの部屋だ。
軽くノックすると返事が聞こえ、そっと扉を開けた。竜の化身である青年はまだ眠らず、窓を開けて夜空を眺めていたようだ。
「どうした?」
部屋に明かりはなかったが、ディラルトの姿ははっきりと見える。月明かりのせいか、その銀色の髪のせいか。やっぱり人ではないんだな、というのがわかる気がした。
「こんな時間に、ごめん。……ディラルトは明日、出発するって言ってただろ」
「ああ」
「俺もついてっちゃ……ダメかな」
「一応、聞いておくか。どうしてだ?」
さして驚いた様子もなく、ディラルトは静かに尋ねる。
「街へ出たり一人で旅をするより、絶対色んなことが学べると思うから」
「お前、最初に会った時から思っていたが、本当に真っ直ぐだな」
聞きようによっては、ひどく自分本位な理由だ。
自分の経験値を増やすため、役目のある竜にくっついて行こうと言うのだから。
それでも、アートレイドはそれを隠そうともしなかった。
もっとうまい理由を言って相手の心をくすぐろう、断りにくい状況を作ろう、なんて細工は一切ない。
もっとも、余計なことを言わない方が、ディラルトの心をくすぐっていた。
「オレの旅に、目的地はないぞ。魔骨があるとわかれば、どこへでも行く。そんな旅でも構わないのか?」
「ああ。どこだろうと、俺にとっては初めての場所なんだ。どういう場所でも、すっごく興味がある」
今までアムルの村を出て、シェイナと一緒にあちこちの村や街へ行った。
しかし、それは解呪の方法を探す旅。
どこがどんな場所だったか、なんてことは当時のアートレイドにとって必要な情報ではなかったので、まるで覚えていない。
せいぜい、大きなあの街にはたくさんの魔法書があったな、ということくらいのもの。あとは似たような状況ばかりだったので、ほとんど抜け落ちている。
だから、全てが初めてに等しいのだ。
「お前がそれでいいなら、好きにしろ」
「え……いいのか」
アートレイドの反応に、ディラルトは吹き出した。
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