リーネリア様は生きる意味と死んだ理由を知りたい

暗い灯り

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第七章 沈黙の交差点

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 第七章:沈黙の交差点

夜の街に、風が走っていた。
マルヴァの宿場町は旅人と商人と流れ者の灯りで賑わって見えた。

 ⸻

リーネリアは夢を見ていた。 どこかで見た黒い空 赤く滲んだ水面 無数の声が沈んでいく。目を開けると、薄暗い部屋の中。 窓の外に人の気配がした。
(……誰かいる)
身体が自然と動こうとしたその時—— 鍵が音もなく外された。
「リーネリア・フェン」 低い声が、空気を裂いた。黒衣の影が、窓から滑り込むように入ってくる。 その手には、細く鈍く光る針。
(……動けない)
声が出ない。 足も震えている。 ああ、怖い——
その瞬間だった。
光が弾けた。
短く、白い閃光が走り、男の手が止まった。次にリーネリアが気づいたとき、 目の前には銀髪の少女がいた。
「……間に合ってよかった」
それは、イサリだった。
「イサリ……どうして……」
「“お守り”って、そういうものでしょ」
彼女の耳には片方のイヤリング。 リーネリアの胸元には、もう片方が、淡く熱を持っていた。「少し眠って。ここは私がなんとかするから」リーネリアは、何も言えないまま、意識を手放していった。

 ⸻

その頃、別の場所。

夜の路地、屋台の明かりに照らされない裏通り。

ルアンは、誰もいない角を曲がりながら、静かに足を止めた。
「……もう終わったか」

彼は数刻前、確かに“反応”を感じ取った。 あのイヤリングが発する、わずかな魔力の共鳴。けれど、すぐには動けなかった。

なぜなら——

少し前、町外れの市場裏。ルアンは、一人の女とすれ違っていた。艶やかな黒髪、紅い唇。ただそこに立っていただけなのに、空気が重く濁っていた。
(ミラディアにいるはずの、ファルマス……?)

一瞬にして、全神経が“観察”から“警戒”へと切り替わった。この魔力、この圧。この“存在”。あれは、人間ではない。

心魔—— それを言葉にすることさえ、禁忌に近い力を持った存在。

(このまま自由に動かせば、マルヴァが崩れる……)

その判断は、一個人の命よりも、“街の存続”に重きを置いた。 そうせざるを得なかった。

(リーネリアはイサリに任せるしかないか....)彼は確信していた。

(あのイヤリングは、エルフの転移座標。)

静かに、空を仰ぐ。

町の喧騒。活気ある市場に、異質な気配を隠しきれないファルマスの背を見る。人気のない路地で、何やら雑談している。(商談をしているようだが...人身売買とあれば見てみぬふりはできないな)ファルマスが路地裏の商会の建物に入る。

ルアンの視界からいなくなった瞬間。
背後から声をかけられる。

「女性を尾行するなんて、良い趣味ですね」

ルアンはゆっくりと振り返る。(...足音も衣擦れもない。化け物か) 「ミラディアの大商人がなぜこんな小さな村に?」

「対話というのは、対等でないといけませんわ。あなたはどちら様で?」

「私はアストレイヤ魔法局、記録員のルアンと申します。立場上しかたなかったのですが、失礼なことをした。申し訳ない。」

「あら、素直なんですね。」 ファルマスは微笑む。

「聞いてしまった以上は、記録し報告します」

「あら、構いませんことよ。ただ...アストレイヤの貴族にも多くの顧客がいることをお忘れなく。」

「私はただ、事実のみを記録し報告するだけです。」

「ふふ、楽な仕事ね」 そう言って、ファルマスは商会の建物へと入って行った。

 ⸻
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