魔王討伐戦で亡国の女帝をナンパしたら、めちゃくちゃ重たく愛されている勇者の俺

蒼山りと

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帝国の特殊部隊、闇の雷の襲撃

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 帝都アリストルの城門を抜ける時、夕暮れの薄闇が辺りを包んでた。馬車の車輪が石畳を軋ませて、俺とエリルは魔鏡のレプリカを持って王国へ帰る道に就いた。シュベリートとの会談が頭から離れない。あの魔王は俺を「レン」と呼び、エリルに俺を殺すかをたずねていた。エリルが俺を殺しのターゲットにしてたなんて衝撃だったけれども、彼女が涙ながらに本当のことを話してくれた時、俺はただ彼女の手を握り返した。歌姫のエリルがそばにいるだけで少し落ち着けた。バカだな俺、彼女は俺の命を狙っていたようなのに。

 関所に着くと、衛兵たちが馬車を囲んだ。松明の明かりが鋭い影を落とし、衛兵長が無愛想に言った。

「荷物を確認する。帝国を出る者は全て調べる決まりだ」

俺は馬車から降りて、ただの村人っぽく振る舞った。

「分かったよ。俺、果樹園の世話人だし、急いでるから早く頼むな」

エリルが穏やかに笑ってフォローしてくれた。

「私たちはリファイア王女の使者です。どうか手早くお願いしますね」

衛兵たちは荷物をざっと見たけど、魔鏡のレプリカは果物の箱に隠して布で包んであったから気づかれなかった。俺の素朴な態度とエリルの気品に押されたのか、衛兵長は渋々通してくれた。

「行け。だが、街道は安全じゃないぞ」

その言葉が頭に残ったけど、まさかこんなすぐ現実になるとは思わなかった。

帝都を離れて、馬車が森の街道を進むと、空気が急に冷たくなった。俺の耳が何か変な気配を捉えて、馬を止めた。

「エリル、何かおかしい。気をつけろ」

言葉が終わる前に、闇の中から黒い影が飛び出してきた。飛行魔法で宙を舞う連中が馬車を囲んだ。黒いマントに魔法の光で鈍く輝く雷の紋章が刻まれてて、仮面の下で目だけが冷たく光ってる。「闇の雷」――村の噂で聞いたことある秘密の特殊部隊だ。実在するなんて誰も本気で信じてなかったけど、今目の前にいる。

「我らは闇の雷、聞いたことがあろう……抵抗は無駄だ。投降しろ」

頭目らしき魔術師が杖を構えて低い声で言った。紫電が迸って地面を焦がす。俺は鞄から剣を手に持ったけど、正直焦った。

「俺、戦えねぇよ…エリル、どうする?」

エリルは短剣と竪琴を手に持って静かに笑った。

「アルさん、大丈夫。私が守りますから」

何だその自信は? と思ったけど、すぐに戦いが始まった。

軽装の剣士が飛行魔法で飛び回りながら、多段攻撃で俺に襲いかかってきた。鋭い刃が何度も振り下ろされる。俺は戦ったことなんてねぇのに、なぜか体が勝手に動いた。軽いステップで刃をかわして、まるで風みたいに敵の間をすり抜けた。自分でもビックリして呟いた。

「何だこれ…体が勝手に…?」

魔術師たちが次々に雷の魔法を放ってきたけど、俺の前に薄い光の膜が現れて、それを弾き返した。何だこの力? 俺、魔法なんて使えねぇはずなのに。頭目が目を細めて呟いた。

「自動無意識魔法の多重シールドだと!  くそ、バケモノか…」

多重シールド? バケモノ? 何だそりゃって思ったけど、エリルがそれを見て目を大きく見開いてた。驚いてるみたいで、ちょっと口が開きかけてたけど、何か我慢してる感じだった。

「アルさん、呪文を教えてあげます! 『フレイム』って唱えてみて!」

エリルが叫んだ。俺はわけ分からねぇまま従った。

「フレイム…?」

そしたら、俺の手から小さな炎が飛び出して、剣士の一人を直撃した。最下級の火炎魔法のはずなのに、すげぇ威力でそいつを吹き飛ばして地面に倒した。俺、目を丸くした。

「俺が…やったのか?」

エリルがまた叫ぶ。

「そう! もう一度、アルさん!」

「フレイム!」

再び炎が迸って、次々と剣士が倒れていく。頭目が恐れおののいて叫んだ。

「信じられん…最下級の火炎魔法で我が闇の雷が…!」

何だよこれ、俺がこんな力持ってるわけねぇだろって思うけど、事実目の前で敵が倒れてくんだ。

エリルが竪琴を鳴らして、歌い始めた。

「♪夜の帳よ、心を閉ざし、静寂に沈め…♪」

その透き通った声が響いて、飛行してた剣士たちの動きが鈍くなった。一人、また一人と眠りに落ちて地面に落ちていく。魔術師たちも眠そうにしてて、半数が意識を失った。でも、頭目と側近一人は耳を塞いで抵抗してた。俺も少し眠くなったような気はしたが、歌聴いただけで眠るとかありえないだろ。

「貴様の歌ごときで闇の雷が倒れるか!」

頭目が杖を振って、雷撃がエリルを狙った。俺は無意識に飛び込んで、光の膜でそれを弾き返した。衝撃で地面がえぐれて、俺とエリルは少し後退した。戦いが長引いて、息が上がってきた。

「アルさん、頭目を! 『フレイム』で!」

エリルの指示に、俺は叫んだ。

「フレイム!」

強烈な炎が頭目を直撃して、肩を焼いて膝をつかせた。エリルは短剣で側近の腕を切りつけて、至近距離で歌い続けた。側近が倒れて、ようやく戦場が静かになった。

俺とエリルは息を切らして、倒れた敵を見下ろした。頭目はまだ意識があって、かすれた声で呟いた。

「魔鏡…レプリカだろうと…我々には分かっていた…」

俺は剣を突きつけて聞いた。

「誰に命じられたんだ?」

頭目は笑って、最後に力を振り絞った。

「帝国ではない…魔王の復活を…恐れる者たちが…我々に…」

そいつはそのまま息絶えた。

エリルが俺の肩に手を置いて、静かに言った。

「アルさん…やっぱり、あなたはただの村人じゃないね」

俺は首を振った。

「そんなわけねぇだろ…俺、戦ったことなんてないのに…」

エリルが俺の手を握って、目を輝かせた。すげぇ驚いてるみたいで、ちょっと興奮してるような顔だった。

「でも、守ってくれた。私、信じられないくらいすごかったよ。 ……かっこよかった」

俺は答えられなくて、ただ森の奥を見つめた。馬車に戻って旅を再開する中、風の音が何かおかしな気配を運んでる気がした。俺、何者なんだ?
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