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王女の想い人
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……王家御用達とかいてある看板を彼女に見せるのはなんとなく恥ずかしい。
「ほら……いいところだろ?」
「……風が心地よいですね……それに……良い景色です。そう……ここは柑橘類を特産にする王国最西部の村……レンの村ですね」
「え? よく村の名前がわかった……もんだな?」
「王族が領内の地理歴史特産を知らなくてどうする……私の亡き父によく叱られながら……覚えさせられたものです……」
「……なるほど」
王女さまも大変なんだな……。
「なんてね? 実はこの村の名前はすぐ覚えましたよ?」
「なんで?」
「ふふ……秘密です……」
そういって、彼女は微笑んで首を傾けて、あさってな方向を見る。
はにかんだ顔がカワイイ。
思えばこれが、オレが初めて見た彼女の笑顔だったかもしれない。
彼女が視線を向けた先には、王家御用達とかいてある立て看板が根元にたっているアルジェリンの立派な木があった。
……ちょっと恥ずかしいんだけど。
「この果物……おいしいんですよね……」
……やめてくれ……。
「なぁ、あっちみてくれよ! 村の田園風景! おれの自慢の景色なんだ……」
「……教会がみえますね……。王都のよりはずっと小さいですが……品があってカワイイ建物ですね……。勇者レンはここで式を挙げたそうですね」
「勇者レン?」
「……三百年は昔の話です。魔王を封印した伝説の勇者の故郷なんですよ?この村」
……結婚か……なんか考えたくないな……。
「ところでさ……。……王女さまは……好きな……ひととか……その? いないの?」
……彼女は……彼女が大好きなひとと結ばれるのが一番だと思った。
だから、彼女の想い人を知りたい。そしてオレは彼女の恋を応援するのだと。
「なんです……突然」
「いや、いいやっ。ほら、このアルジェリン食えよ? 食べ頃だぜ?」
普段はしないんだけどな。王家御用達の木からアルジェリンをもぎ取り彼女に渡す。
「いいんですか……わたしばっかり、ごちそうになって、嬉しいのですが……」
「気にすんなって? 災難だったな? このぐらい……良いことないとな」
王女は首をちょっとかしげると……
「ね? 私からも、ごちそうさせてください……」
「あ? なんか食いもん持っているの? 食べ頃?」
「いえ……一応は……食べ頃……だと思います……」
「王女さまがくれるもんだったら、オレはなんでもおいしくいただくぜ!」
実際に、王宮のモノならなんでもうまいだろ。
「……本当に?」
「当たり前だろ?」
「……絶対、絶対召し上がってくれないとイヤです……」
「うーん……そこまでのこと?」
「……私……」
「なに?」
「そのぉ……だから……私を……」
「え?」
「……いいです……やっぱ」
「早くちょうだいよ! おれも実はパオだけじゃ物足りないんだ」
そのときだ……。リファイア王女はキリッとした顔になって言った。
「あの教会で結婚しましょう……。アルさん……今気づきました。私はあなたが大好きです」
ちょっと待て……。オレが? 王女と結婚? それはちょっと……。
「……イヤですか?……そうですか」
うつむく彼女。オレは王女と結婚はしたくない。だが彼女を悲しませるのもイヤだった。……くそ……どうしろっていうんだ。
「……こうしましょう……一年間だけでいいです……結婚して……捨ててください」
「何言っているのですか? 自分は大事にしましょうよ?」
「アルさん……私は嘘は嫌いです」
「……はい」
「……心の底から私はあなたと結婚したいと思っているのです」
「いやその……すぐに返事しなくてはダメ?」
「わかりました」
……ほっとするオレ。
「待ちます……何年でも」
え? 凍り付くオレ。
「……ごめん……。おれも嘘つけない……。オレは……エリルって子が好きなんだ」
「……そうだと思っていました……ごめんなさい」
あ、あぁ。まあ、でも振られているんだけどな……。
「……いや、結婚するよ。君と……」
「あ……」
彼女の顔が和らぐ、そして彼女は泣きながらオレに抱きついてきた。
オレは泣きじゃくる彼女を胸に……ずっと彼女の……ひどい想い出を聞かされて……いつしか同じように泣いていた。涙は見せないようにしたつもりだったけどな……。彼女からはもう王宮の香りはせず、ただアルジェリンの香りだけがあたりには漂っていた。王宮のことを忘れさせたい……と強く願った。
「ほら……いいところだろ?」
「……風が心地よいですね……それに……良い景色です。そう……ここは柑橘類を特産にする王国最西部の村……レンの村ですね」
「え? よく村の名前がわかった……もんだな?」
「王族が領内の地理歴史特産を知らなくてどうする……私の亡き父によく叱られながら……覚えさせられたものです……」
「……なるほど」
王女さまも大変なんだな……。
「なんてね? 実はこの村の名前はすぐ覚えましたよ?」
「なんで?」
「ふふ……秘密です……」
そういって、彼女は微笑んで首を傾けて、あさってな方向を見る。
はにかんだ顔がカワイイ。
思えばこれが、オレが初めて見た彼女の笑顔だったかもしれない。
彼女が視線を向けた先には、王家御用達とかいてある立て看板が根元にたっているアルジェリンの立派な木があった。
……ちょっと恥ずかしいんだけど。
「この果物……おいしいんですよね……」
……やめてくれ……。
「なぁ、あっちみてくれよ! 村の田園風景! おれの自慢の景色なんだ……」
「……教会がみえますね……。王都のよりはずっと小さいですが……品があってカワイイ建物ですね……。勇者レンはここで式を挙げたそうですね」
「勇者レン?」
「……三百年は昔の話です。魔王を封印した伝説の勇者の故郷なんですよ?この村」
……結婚か……なんか考えたくないな……。
「ところでさ……。……王女さまは……好きな……ひととか……その? いないの?」
……彼女は……彼女が大好きなひとと結ばれるのが一番だと思った。
だから、彼女の想い人を知りたい。そしてオレは彼女の恋を応援するのだと。
「なんです……突然」
「いや、いいやっ。ほら、このアルジェリン食えよ? 食べ頃だぜ?」
普段はしないんだけどな。王家御用達の木からアルジェリンをもぎ取り彼女に渡す。
「いいんですか……わたしばっかり、ごちそうになって、嬉しいのですが……」
「気にすんなって? 災難だったな? このぐらい……良いことないとな」
王女は首をちょっとかしげると……
「ね? 私からも、ごちそうさせてください……」
「あ? なんか食いもん持っているの? 食べ頃?」
「いえ……一応は……食べ頃……だと思います……」
「王女さまがくれるもんだったら、オレはなんでもおいしくいただくぜ!」
実際に、王宮のモノならなんでもうまいだろ。
「……本当に?」
「当たり前だろ?」
「……絶対、絶対召し上がってくれないとイヤです……」
「うーん……そこまでのこと?」
「……私……」
「なに?」
「そのぉ……だから……私を……」
「え?」
「……いいです……やっぱ」
「早くちょうだいよ! おれも実はパオだけじゃ物足りないんだ」
そのときだ……。リファイア王女はキリッとした顔になって言った。
「あの教会で結婚しましょう……。アルさん……今気づきました。私はあなたが大好きです」
ちょっと待て……。オレが? 王女と結婚? それはちょっと……。
「……イヤですか?……そうですか」
うつむく彼女。オレは王女と結婚はしたくない。だが彼女を悲しませるのもイヤだった。……くそ……どうしろっていうんだ。
「……こうしましょう……一年間だけでいいです……結婚して……捨ててください」
「何言っているのですか? 自分は大事にしましょうよ?」
「アルさん……私は嘘は嫌いです」
「……はい」
「……心の底から私はあなたと結婚したいと思っているのです」
「いやその……すぐに返事しなくてはダメ?」
「わかりました」
……ほっとするオレ。
「待ちます……何年でも」
え? 凍り付くオレ。
「……ごめん……。おれも嘘つけない……。オレは……エリルって子が好きなんだ」
「……そうだと思っていました……ごめんなさい」
あ、あぁ。まあ、でも振られているんだけどな……。
「……いや、結婚するよ。君と……」
「あ……」
彼女の顔が和らぐ、そして彼女は泣きながらオレに抱きついてきた。
オレは泣きじゃくる彼女を胸に……ずっと彼女の……ひどい想い出を聞かされて……いつしか同じように泣いていた。涙は見せないようにしたつもりだったけどな……。彼女からはもう王宮の香りはせず、ただアルジェリンの香りだけがあたりには漂っていた。王宮のことを忘れさせたい……と強く願った。
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