現代錬金術のすゝめ 〜ソロキャンプに行ったら賢者の石を拾った〜

涼月 風

文字の大きさ
2 / 125

第2話 入院中の恥はかき捨て

しおりを挟む


「う~~、ここはどこだ?」

目を開けると知らない天井。
周囲を見渡すと色々な医療器具が並んでいる。

「病院?」

『ピッ、ピッ』っとメトロノームのような規則的な電子音が耳に入る。

すると突然、声がかかる。

「あっ!御門君、目を覚ましたのね」

若い看護師が側にいたようだ。
その看護師は慌てた様子で僕の頭の上にあるボタンを押す。
すると病室にスピーカーから声がかかった。

「どうしました?」
「望月です。御門君が目を覚ましました。先生をお願いします」
「わかりました」

望月と名乗る若い看護師が虚空に向かって話しかけていた。
僕は。状況が分からずプチパニックになっている。

「御門君、名前と生年月日言えるかな?」
「ええ、ミカドケンイチロウ。平成〇〇年5月27日です。僕はどうしてここに?」

そう尋ねようとすると、今度は細面の白衣を着た医者が別の看護師を引き連れて入って来た。

「御門君、身体の痛みとか痺れはあるかね?」

低い声で話す医者の声は、しっかりと耳に届く。

「え~~っと無いです」

眼鏡をかけた如何にも神経質そうなその医者は、機械の数値を一瞥して僕の顔を覗き込んだ。

「じゃあ、記憶はどうだい?」

そう医者に問いかけられて、少し慌ててしまった。

「ソ、ソロキャンプに行って、そして……その後はよくわかりません」
「う~~む」

そう呟きながら再び備え付けの医療機器に眼を通している。
若い看護師は、僕の熱を測りながら医者に話しかけた。

「先生、御門君は名前と生年月日は言えます」
「そうか、小さい時の事は覚えているかね?」

「はい、覚えてます」

僕の記憶に違和感はない。あの忌々しい記憶もしっかりと残っている。だが、どうしてこの病院のいるのか思い出せない。

その後、医者の問いかけられて、言われるまま身体を動かされた。
どこも違和感なく身体は動かしてる僕をみて医者は、安心したような顔を浮かべた。

僕としては繋がってる医療器具を取り外してもらいたいのだけど……

「うむ、記憶もあるし問題ないかな」

医者は、笑顔になりそう語りかけた。
側にいる看護師達もどこかホッとしてる感じがする。

「え~~と、僕はどうして病院にいるのでしょう?」
「そうだね。君は気絶してしまったからわからないかもしれないけど、雷に撃たれてここに運ばれてきたんだよ。運ばれてきた当時は、熱も高く危険な状態だったんだ。5日も意識が戻らなかったしね」

そう言えば、キャンプ場で雷が鳴っていたけど僕に落ちたのか?そこら辺は記憶が曖昧だ。

「そうだったんですか……」

「その辺の記憶の齟齬は仕方がないよ。一瞬で気絶したのだろうしね。それよりも……少し見た目がね」

「見た目ですか?」

何だろう、嫌な予感がする。

「望月君、鏡を持ってきてもらえるかな?」
「はい、少しお待ちください」

暫くすると若い看護師が手鏡を持ってきた。
見たいような見たくないような不安が押し寄せる。

「少しショックかもしれないけど落ち着いてね」

えっ、マジやめて下さい。そんな不安を煽るような言い方。

恐る恐る若い看護師さんが手向けている手鏡を覗いた。

「あっ……」

鏡に映る僕の髪の毛は真っ白になっていた。


◇◇◇


あれから医者から説明を受けて様子をみる為、暫く入院する事を告げられた。
この場に残った看護師の望月さんは、不要な医療器具を外している。

「う~~ん、これって」

手鏡を覗きながら、白髪になった顔を眺める。
医者が言うにはショックで髪の毛が白髪になると言う事例はいくつかあると言っていた。雷に打たれたのが原因で間違い無いが、どうしてこうなったのかは説明がつかないと言われた。

(まあ、今は白髪染めもあるしそんなにショックじゃないけど……)

そう言いながら手鏡を胸の方に向ける。
病院着を少しずらして胸を見るとそこには『リヒテンベルク図形』と呼ばれる樹状の傷跡が広がっていた。
それは胸を中心にして放射状に広がっており、右腕の肘近くまで伸びていた。

「まいったな」

痛々しい傷跡を見ても嫌悪感を抱いていないが、他人からは見れば異様に映るだろう。
医者が言うには、雷に打たれて死亡するリスクは70%~80%、何も処置しなかったら90%の確率らしい。

『幾つかの要因があって君は命を保てたんだ。心肺停止後の直ぐの蘇生。体内に流れた高電流を地面に流せた。生きているのが奇跡なんだよ』と頷きながら話していたのを思い出していた。

僕を蘇生させてくれた人は、近くでキャンプしていた人達。
その中に看護学生がいたようで、雷に打たれた俺が心肺停止状態になっていたのを応急処置で蘇生してくれたようだ。

マジ死んでたかもしれないのか……その看護学生の人に後でお礼しないといけないな。

「どうしたの?気分は大丈夫?ショックだよね~~」

望月さんが心配そうに見つめる。

「気分は悪くないです。まあ、髪や傷跡は仕方ないですよね。命があっただけでも儲けものですから」

人間不信に陥っている僕にとって他人と話す事はストレスを感じるのだが、昔のように流暢に会話をしていた。少し、違和感を感じたが1秒後にはすぐに忘れていた。

「そうか、御門君は歳の割には大人だね。でも身体の傷跡はもしかしたら最上級ポーションを飲めば治るかもしれないよ。噂では欠損した手が生えてきたって言われてるしね」  

この世界には異界に繋がるゲートが存在する。
世界中にゲートが現れたのは今から15年前。
その年に流星群が地球に降ってきた。
その影響からどうかは未だ研究されているようだが、事実として、その後世界中の至る所のゲートと呼ばれる不思議な門が現れた。
ゲートを潜るとそこは迷宮(ダンジョン)に繋がっていたようで、魔物などが徘徊しているようだ。
そう聞くと魔物がこの世界にゲートから溢れ出てくるのでは?と心配になるが、ゲートからこの15年間魔物が外に出てきた事はない。
それよりも、魔物を倒す事で得られる魔石という物質が新たなエネルギー資源になる事がわかって、世界中でゲートの内側の探索が繰り広げられている。

そんなゲートの先のダンジョンで得られるの資源のひとつにポーションがある。
このポーションは、気力や体力を回復するものやさっき看護師さんが言ったようの身体の欠損を再生する物、病気の治療ができる物まであるらしい。

「最上級ポーションですか……でも僕には手に入れる事はできないですよ」

上級ポーションでさえ数億円するらしいし、最上級ポーションなど夢のまた夢だ。

「それはわからないわよ。将来御門君は大物になりそうな気がするの。私の勘は結構当たるのよ」

最上級ポーションは、噂はあるが世界でもまだ見つかっていないらしい。
もしかしたら、権力者や富豪家などは手に入れてるかも知れないが権力もお金も無い僕には無理な相談だ。

望月さんは看護師になりたてのようで僕に希望を持たせるためにそんな事を言ったのだろうけど、軽々しくそんな事を言ってほしくはない。

背丈は160センチ前後。
出るとこはちゃんと出ている。
以前なら好きになっていたタイプの美人だが今の僕にはそんな感情は湧かない。
器具を外す時、望月さんの二つの膨らみが僕の顔近くにきて少し焦っているが……。

「ケンちゃん。眼を覚ましたんだって?」

そう言いながら部屋に飛び込んで来たのは、茜おばさんだ。

「茜おばさん……」
「う~~ケンちゃん、無事で良かったよ~~」

僕に抱きついて泣きじゃくる茜おばさんは、母親の妹だ。
抱きつかれたことに焦っている僕の顔は、真っ青に変わる。

「あ、茜おばさん。僕は大丈夫だから離れて」
「う~~ケンちゃん。良かったよ~~」

あ~~マジで勘弁してほしい

茜おばさんの豊満な膨らみが僕の顔を圧迫している。

うう~~っ、冷や汗が出てきた……

「御門君、どうしたの?身体震えているよ」

望月さんが異常を察知した。
つけていた血圧計と心拍が跳ね上がって異常値を告げる機械音が鳴り響いている。

「す、直ぐに先生呼ぶからね!」

望月さんはあたふたしながらナースコールで先生を呼び出している。

そんな事より茜おばさんを僕から引き離して欲しい

意識が遠のく。
僕が覚えているのはそこまでだった。


◇◇◇


「うん、見たことある天井だ」

目を覚ましてあたりを見回すと外してあった医療器具は再度設置されていた。
近くにある机の上には見たことのある目覚まし時計が置いてある。

「2時35分……昼間って感じじゃ無いな」

時計を見て夜中に目を覚ましたらしい。

そう言えばおしっこに行きたくならないなあ。
点滴3本も打ってるのに。

下半身に意識を集めると、何やら大事な息子に違和感がある。

少し起き上がって掛け布団を上げ下半身を見ると、病院着から管が通っている。
その管の行先を追っていくとベッドの脇に袋が吊るされており、その中には黄色い液体が半分ほど溜まっていた。

ま、まさか……あそこに管が挿さっているの?

ま、ま、マジですか……

では、自分の尿をあの若い看護師の望月さんや他の看護師、それに茜おばさんに見られてたって事?

………死にたい。

意識を失ってた間でも排泄はするのか?
オムツでいいんじゃないか?
何も大事な息子に管を入れなくても。

「はっ!もしかすると……」

俺は病院着をめくって自分の下半身を見る。
紙オムツをしてる……

……はあ、死にたい。

するとその時、

《身体の再構築が50%完了しました。%@#¥¥になるまで後119時間59分26秒かかります》

突然脳内に響き渡る女性の声。

「何だ!何だ!」

慌てて周囲を見渡したが誰もいない。

マジか、ここは幽霊が出るのか?

得体のしれない声にビビってナースコールのボタンを押した。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

七億円当たったので異世界買ってみた!

コンビニ
ファンタジー
 三十四歳、独身、家電量販店勤務の平凡な俺。  ある日、スポーツくじで7億円を当てた──と思ったら、突如現れた“自称・神様”に言われた。 「異世界を買ってみないか?」  そんなわけで購入した異世界は、荒れ果てて疫病まみれ、赤字経営まっしぐら。  でも天使の助けを借りて、街づくり・人材スカウト・ダンジョン建設に挑む日々が始まった。  一方、現実世界でもスローライフと東北の田舎に引っ越してみたが、近所の小学生に絡まれたり、ドタバタに巻き込まれていく。  異世界と現実を往復しながら、癒やされて、ときどき婚活。 チートはないけど、地に足つけたスローライフ(たまに労働)を始めます。

アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~

うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」  これしかないと思った!   自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。  奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。  得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。  直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。  このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。  そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。  アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。  助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。

魔王を倒した勇者、次の職場は東京のラーメン屋でした

希羽
ファンタジー
異世界グランディアを救った勇者アレクサンダー、通称アレク。彼は平和になった世界で自身の存在意義を見失いかけていた。そんなある日、魔王が遺した最後の呪いによって次元の狭間に吸い込まれ、現代の東京・高円寺に迷い込んでしまう。 右も左もわからず、甲冑姿で街をさまようアレクは、警察に職務質問され大ピンチに。その窮地を救ったのは、頑固一徹だが人情に厚いラーメン屋「麺屋 漢(おとこ)」の店主、黒田龍司(くろだ りゅうじ)だった。 言葉も通じず、社会常識ゼロのアレクだったが、その驚異的な身体能力と、何事にも真摯に取り組む姿勢を龍司に見込まれ、住み込みでバイトとして雇われることに。 「レベルアップだと思えばいい」「麺の湯切りは剣技に通じるものがある」 アレクは異世界での経験をラーメン作りに活かし、次第にその才能を開花させていく。聖剣の代わりに握った菜箸で、彼は東京という新たな世界で、人々の笑顔と自らの新たな居場所を見つけることができるのか。異世界勇者の、しょっぱくて熱いセカンドライフが今、始まる。

異世界転移「スキル無!」~授かったユニークスキルは「なし」ではなく触れたモノを「無」に帰す最強スキルだったようです~

夢・風魔
ファンタジー
林間学校の最中に召喚(誘拐?)された鈴村翔は「スキルが無い役立たずはいらない」と金髪縦ロール女に言われ、その場に取り残された。 しかしそのスキル鑑定は間違っていた。スキルが無いのではなく、転移特典で授かったのは『無』というスキルだったのだ。 とにかく生き残るために行動を起こした翔は、モンスターに襲われていた双子のエルフ姉妹を助ける。 エルフの里へと案内された翔は、林間学校で用意したキャンプ用品一式を使って彼らの食生活を改革することに。 スキル『無』で時々無双。双子の美少女エルフや木に宿る幼女精霊に囲まれ、翔の異世界生活冒険譚は始まった。 *小説家になろう・カクヨムでも投稿しております(完結済み

『希望の実』拾い食いから始まる逆転ダンジョン生活!

IXA
ファンタジー
30年ほど前、地球に突如として現れたダンジョン。  無限に湧く資源、そしてレベルアップの圧倒的な恩恵に目をつけた人類は、日々ダンジョンの研究へ傾倒していた。  一方特にそれは関係なく、生きる金に困った私、結城フォリアはバイトをするため、最低限の体力を手に入れようとダンジョンへ乗り込んだ。  甘い考えで潜ったダンジョン、しかし笑顔で寄ってきた者達による裏切り、体のいい使い捨てが私を待っていた。  しかし深い絶望の果てに、私は最強のユニークスキルである《スキル累乗》を獲得する--  これは金も境遇も、何もかもが最底辺だった少女が泥臭く苦しみながらダンジョンを探索し、知恵とスキルを駆使し、地べたを這いずり回って頂点へと登り、世界の真実を紐解く話  複数箇所での保存のため、カクヨム様とハーメルン様でも投稿しています

パーティーの役立たずとして追放された魔力タンク、世界でただ一人の自動人形『ドール』使いになる

日之影ソラ
ファンタジー
「ラスト、今日でお前はクビだ」 冒険者パーティで魔力タンク兼雑用係をしていたラストは、ある日突然リーダーから追放を宣告されてしまった。追放の理由は戦闘で役に立たないから。戦闘中に『コネクト』スキルで仲間と繋がり、仲間たちに自信の魔力を分け与えていたのだが……。それしかやっていないことを責められ、戦える人間のほうがマシだと仲間たちから言い放たれてしまう。 一人になり途方にくれるラストだったが、そこへ行方不明だった冒険者の祖父から送り物が届いた。贈り物と一緒に入れられた手紙には一言。 「ラストよ。彼女たちはお前の力になってくれる。ドール使いとなり、使い熟してみせよ」 そう記され、大きな木箱の中に入っていたのは綺麗な少女だった。 これは無能と言われた一人の冒険者が、自動人形(ドール)と共に成り上がる物語。 7/25男性向けHOTランキング1位

転落貴族〜千年に1人の逸材と言われた男が最底辺から成り上がる〜

ぽいづん
ファンタジー
ガレオン帝国の名門貴族ノーベル家の長男にして、容姿端麗、眉目秀麗、剣術は向かうところ敵なし。 アレクシア・ノーベル、人は彼のことを千年に1人の逸材と評し、第3皇女クレアとの婚約も決まり、順風満帆な日々だった 騎士学校の最後の剣術大会、彼は賭けに負け、1年間の期限付きで、辺境の国、ザナビル王国の最底辺ギルドのヘブンズワークスに入らざるおえなくなる。 今までの貴族の生活と正反対の日々を過ごし1年が経った。 しかし、この賭けは罠であった。 アレクシアは、生涯をこのギルドで過ごさなければいけないということを知る。 賭けが罠であり、仕組まれたものと知ったアレクシアは黒幕が誰か確信を得る。 アレクシアは最底辺からの成り上がりを決意し、復讐を誓うのであった。 小説家になろうにも投稿しています。 なろう版改稿中です。改稿終了後こちらも改稿します。

辺境に追放された魔導工学師、古代遺跡の【お節介AI重機】を目覚めさせる。不毛の荒野? 多脚戦車で一瞬で温泉リゾートですが何か?

ken
ファンタジー
王国筆頭魔導工学師、アルド。 彼は10年にわたり、勇者の聖剣から王都の巨大結界まで、あらゆるインフラと魔導具の整備を一手に引き受けてきた。 しかし、その仕事はあくまで「裏方」。派手な攻撃魔法を使えない彼は、見栄えを気にする勇者パーティから「地味で役立たず」と罵られ、無一文で国外追放を言い渡される。 「……やれやれ、やっと休めるのか」 ブラックな職場環境から解放されたアルドが辿り着いたのは、誰も住まない辺境の荒野。 そこで彼は、古代文明の遺産――自律型汎用開拓重機『ギガント・マザー』を発掘する。 「あら、栄養失調ですね。まずはご飯にしましょう」 お節介なオカンAIを搭載した多脚戦車とタッグを組んだアルドは、その規格外の採掘能力で荒野を瞬く間に開拓。 地下3000メートルから温泉を掘り当て、悠々自適なリゾートライフを始めることに。 一方、アルドを追放した王国は、インフラが次々と機能を停止し、滅亡の危機に瀕していた……。

処理中です...