9 / 125
第9話 時と場所は選ぼうよ
しおりを挟む目の前に広がるパネルは、エイシス曰く、ステータス表というらしい。
僕の病気はかなり進行しているようだ。
幻聴だけならまだしも幻覚まで見えるようでは、もはや治療しても手遅れかもしれない。
『マスター、ふざけてます?ふざけてますよネ~~』
(ふざけてないです。ちゃんと理解してます)
『病気のことではないですよ。あれ程言ったのにまだ疑っているんですね。これはお仕置きが必要ですネ!』
(まて、まて、まて~~!エイシス、疑ってないから。幻覚なんて思ってないから)
『天誅!!』
(ギャーー痛い、痛い!)
(ホームルーム中というのに、エイシスの野郎!いたたた。まて、まった~~!)
自分の席で悶え苦しんでいると、僕の背後の席の何某さんが
「先生、御門君が苦しそうです」
「そうなのか、御門大丈夫か?」
猪熊先生が僕の席にやって来た。
痛みで声がまともに出せない。
「保健委員は、樫村だったな。悪いが御門を保健室まで連れてってくれ」
「わかりました」
僕は頭を押さえながら、樫村という女生徒に連れられて保健室に向かった。
エイシスのお仕置きは途中で終わっていて、痛みは今はないのだが、あの状態だった僕がクラスの中にいるのは精神が参ってしまうので保健室で休んでいようと思ったのだ。
「御門君、大丈夫?」
「ああ、少し落ち着いたよ。すまないな」
「良いのよ。これも保健委員の仕事だから」
よく見たら保健委員の女生徒は、朝1番に教室に来ていた地味な子だった。
「朝は、楽しそうに本を読んでたのにね」
『聞かれていたようですね。マスター』
(エイシス、お前なーー!場所選べよ!)
「ははは、そうだね」
取り敢えず会話を成立させる。
『マスター、ボキャ貧すぎますよ』
(煩い!少し黙っててよ)
『は~~い』
「ねえ、何の本を読んでたの?」
「異世界物のラノベだよ。昨日本屋で買って初めてラノベを読んだんだ」
「えっ、ラノベ初めて読んだの?」
「うん、そんなに驚くことかな?」
「だって、御門君、いつもの本読んでたからてっきり今朝が初めてじゃないって思ったんだよ」
「何時も読んでた本はプログラミングの本だよ。出来るようになって早く家から独立したかったんだ」
「そうなんだあ、将来の事考えているんだ。偉いね」
偉くないです、必要に迫られて仕方なくです……
「え~~と……」
この女子、名前何だっけ?
「樫村、樫村世理愛《かしむらせりあ》だよ。クラスメイトなのに覚えてないなんて酷いよ」
「す、すまない。どうも人の名前を覚えるのは苦手で……」
早く保健室に着かないかな。
「御門君、私に何か聞きたい事あったの?」
「あ、うん。樫村さんもよく本を読んでるよね。何の本なの?」
「私はラノベしか読まないよ。今読んでるのはラブコメ物だよ」
「そうなんだ。でも、ラノベって初めて読んだけど面白いね。続きが読みたいけど今月はお金がピンチで来月にならないと買えないや」
「良かったら本貸そうか?私、たくさん持ってるし」
「え、いいの?……いや、やはり遠慮しとくよ」
つい本読みたさで貸して欲しいと思ってしまったが、まだ、誰かと話したりするのは苦手だ。
「遠慮しなくて良いよ。異世界物が好きなのよね。私のとっておきを明日持ってくるから」
樫村さんの嬉しそうな顔を見てしまうと断るのを躊躇ってしまう。
「遠慮しなくて良いんだからね。何にしようかな?ラノベ初心者にはあの本かな。それより、展開が神すぎるあの本なら~~」
樫村さんは実に楽しそうだ。
でも、この子は大事な事を忘れている。
「樫村さん、明日は土曜日で学校休みだよ」
「あっ、そうだったね。じゃあ、月曜日に持ってくるから期待しててね」
そんな話をしながら保健室に着いた。
僕はベッドに寝かされて樫村さんは書類に記入している。
保健の先生は、僕を名前と様子を見て少し驚いた顔をした。
「あなたは御門君よね。雷に打たれたけど学校に来れるくらい回復したんだね。頭が痛いのはその後遺症なのかしら?」
保健の先生は、20歳後半の女性の先生だ。
大人の魅力が溢れている。
「えっ、御門君が入院してたのって雷に打たれたからなの?」
樫村さんはさっきの話を聞いていたようだ。
クラスにその事が伝わってなかったのは、個人情報保護の為か。
「そうだよ。キャンプに行って雷に打たれたんだ」
「あら、先生、余計な事言っちゃったみたいね。この話はここだけにしてね。それより、御門君の場合、そういう状態なら病院に行ったほうが良いわね。先生方には話しておくから、誰かに迎えに来てもらう?」
「僕は一人暮らしなので呼べるような人はいません。先生、病院に行かなくてもここで休んでいれば大丈夫ですから」
(エイシスのせいなので!)
『マスター、煩いですよ!』
でも先生は、僕の様子を見て返答した。
「そう言ってもね、保健医として見過ごせないわ。御門君の担当は圏央医科大附属病院の三角先生よね。私も普段はその病院に勤めているのよ。じゃあタクシー呼ぶね」
この保健の先生は、あの病院の女医さんなのか。
「先生、お金をそんなに持ってないです」
「心配しなくて良いわよ。先生が立て替えておくから、都合がついたら返してね」
そう言われて1万円ほど預かった。
「それにしても助かって良かったわね。御門君は覚えてないだろうけどドクターヘリで運ばれたのよ。その時、ヘリに乗っていた医者が何と私と担当医の三角先生なのでした」
何という偶然。
こんな事ってあるんだ~~。
それに、僕ドクターヘリに乗ったんだ。
意識が無かったのが悔やまれる。
「そうだったんですか。え~~と」
「私は桐谷沙織よ。圏央医科大の研修医をしているわ」
「桐谷先生、僕の命を救ってくれてありがとうございます」
僕は、今できる精一杯の感謝を込めて丁寧にお辞儀をした。
「私は、傷の手当てをしただけよ。蘇生させたのは、現場でキャンプしていた医科大附属の看護学生よ。その子が居なかったら御門君は助からなかったわ。感謝するならその子にした方が良いわね。それで、胸の傷はどう?酷い火傷だったけど」
「痛みはないです。傷痕は残っているけど、気にしなければ大丈夫です」
「それなら良かったわ。少し見てあげましょうか?じゃあ、上を脱いでくれる?」
えっ、ここで……
俺は仕方なしに上着を脱いでシャツのボタンを外す。
胸に広がるリヒテンベルク図形と呼ばれる樹状の傷痕は、あの時のままだ。
「本当だ。あの酷かった火傷がもう治っているのね。三角先生が御門君の回復力は異常だと、言ってた意味がわかったわ」
「そんな事を言われてたんですか?知らなかったです」
「記憶障害もないし、奇跡と言っても良いくらいだわ。集中治療室にいた時には何度も御門君を診てたんだけど、別の患者さんの担当になってから御門君が意識を取り戻した時には病院で会うことは無かったわね。それにしても傷痕もすごいけど筋肉も凄いわね。私が手当てした時は、こんなになってなかったと思ったけど……」
そうですよね~~
先生に直に肌に触れられて、少しくすぐったい。
「少し鍛えたんですけど、こんなになっちゃって」
「本当、御門君、すごーーい」
あ、樫村さんがいたんだ。
堂々と裸の上半身を見せてしまった。
先生も樫村さんの事を忘れていたようだ。
『あっ!』て顔をしてた。
「え~~と、保健委員の樫村さんよね。このことは内緒でね」
「はい、御門君の秘密は誰にも洩らしません!」
そんな大層に秘密にすることじゃないけど、黙っててもらえるならありがたい。
「ねえねえ、御門君、その筋肉触ってもいい?」
「別に良いけど、触っても面白くないよ」
「そんなことないよ。じゃあ、失礼します」
樫村さんがペタペタと俺の胸や腹筋を触りながら『え~~こんなに硬いの?』とか『すごーーい、ピクピクしてる』とか言ってる。
何、この状況!?
「さあ、これでお終いよ。樫村さんは教室に戻って御門君の荷物を持ってきてくれる?先生はタクシー呼ぶから」
「え~~残念。でも、わかりました。御門君、ありがとうね。直ぐにバッグ持ってくるから」
そう言って樫村さんは急足で保健室を出て行った。
また、病院か……、でも、保険申請の書類も記入してもらわなくちゃならないし、ちょっど良いか。
僕は、退院2日目でまた、あの病院に行くことになってしまった。
204
あなたにおすすめの小説
七億円当たったので異世界買ってみた!
コンビニ
ファンタジー
三十四歳、独身、家電量販店勤務の平凡な俺。
ある日、スポーツくじで7億円を当てた──と思ったら、突如現れた“自称・神様”に言われた。
「異世界を買ってみないか?」
そんなわけで購入した異世界は、荒れ果てて疫病まみれ、赤字経営まっしぐら。
でも天使の助けを借りて、街づくり・人材スカウト・ダンジョン建設に挑む日々が始まった。
一方、現実世界でもスローライフと東北の田舎に引っ越してみたが、近所の小学生に絡まれたり、ドタバタに巻き込まれていく。
異世界と現実を往復しながら、癒やされて、ときどき婚活。
チートはないけど、地に足つけたスローライフ(たまに労働)を始めます。
アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~
うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」
これしかないと思った!
自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。
奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。
得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。
直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。
このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。
そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。
アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。
助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。
異世界転移「スキル無!」~授かったユニークスキルは「なし」ではなく触れたモノを「無」に帰す最強スキルだったようです~
夢・風魔
ファンタジー
林間学校の最中に召喚(誘拐?)された鈴村翔は「スキルが無い役立たずはいらない」と金髪縦ロール女に言われ、その場に取り残された。
しかしそのスキル鑑定は間違っていた。スキルが無いのではなく、転移特典で授かったのは『無』というスキルだったのだ。
とにかく生き残るために行動を起こした翔は、モンスターに襲われていた双子のエルフ姉妹を助ける。
エルフの里へと案内された翔は、林間学校で用意したキャンプ用品一式を使って彼らの食生活を改革することに。
スキル『無』で時々無双。双子の美少女エルフや木に宿る幼女精霊に囲まれ、翔の異世界生活冒険譚は始まった。
*小説家になろう・カクヨムでも投稿しております(完結済み
転落貴族〜千年に1人の逸材と言われた男が最底辺から成り上がる〜
ぽいづん
ファンタジー
ガレオン帝国の名門貴族ノーベル家の長男にして、容姿端麗、眉目秀麗、剣術は向かうところ敵なし。
アレクシア・ノーベル、人は彼のことを千年に1人の逸材と評し、第3皇女クレアとの婚約も決まり、順風満帆な日々だった
騎士学校の最後の剣術大会、彼は賭けに負け、1年間の期限付きで、辺境の国、ザナビル王国の最底辺ギルドのヘブンズワークスに入らざるおえなくなる。
今までの貴族の生活と正反対の日々を過ごし1年が経った。
しかし、この賭けは罠であった。
アレクシアは、生涯をこのギルドで過ごさなければいけないということを知る。
賭けが罠であり、仕組まれたものと知ったアレクシアは黒幕が誰か確信を得る。
アレクシアは最底辺からの成り上がりを決意し、復讐を誓うのであった。
小説家になろうにも投稿しています。
なろう版改稿中です。改稿終了後こちらも改稿します。
魔王を倒した勇者、次の職場は東京のラーメン屋でした
希羽
ファンタジー
異世界グランディアを救った勇者アレクサンダー、通称アレク。彼は平和になった世界で自身の存在意義を見失いかけていた。そんなある日、魔王が遺した最後の呪いによって次元の狭間に吸い込まれ、現代の東京・高円寺に迷い込んでしまう。
右も左もわからず、甲冑姿で街をさまようアレクは、警察に職務質問され大ピンチに。その窮地を救ったのは、頑固一徹だが人情に厚いラーメン屋「麺屋 漢(おとこ)」の店主、黒田龍司(くろだ りゅうじ)だった。
言葉も通じず、社会常識ゼロのアレクだったが、その驚異的な身体能力と、何事にも真摯に取り組む姿勢を龍司に見込まれ、住み込みでバイトとして雇われることに。
「レベルアップだと思えばいい」「麺の湯切りは剣技に通じるものがある」
アレクは異世界での経験をラーメン作りに活かし、次第にその才能を開花させていく。聖剣の代わりに握った菜箸で、彼は東京という新たな世界で、人々の笑顔と自らの新たな居場所を見つけることができるのか。異世界勇者の、しょっぱくて熱いセカンドライフが今、始まる。
パーティーの役立たずとして追放された魔力タンク、世界でただ一人の自動人形『ドール』使いになる
日之影ソラ
ファンタジー
「ラスト、今日でお前はクビだ」
冒険者パーティで魔力タンク兼雑用係をしていたラストは、ある日突然リーダーから追放を宣告されてしまった。追放の理由は戦闘で役に立たないから。戦闘中に『コネクト』スキルで仲間と繋がり、仲間たちに自信の魔力を分け与えていたのだが……。それしかやっていないことを責められ、戦える人間のほうがマシだと仲間たちから言い放たれてしまう。
一人になり途方にくれるラストだったが、そこへ行方不明だった冒険者の祖父から送り物が届いた。贈り物と一緒に入れられた手紙には一言。
「ラストよ。彼女たちはお前の力になってくれる。ドール使いとなり、使い熟してみせよ」
そう記され、大きな木箱の中に入っていたのは綺麗な少女だった。
これは無能と言われた一人の冒険者が、自動人形(ドール)と共に成り上がる物語。
7/25男性向けHOTランキング1位
『希望の実』拾い食いから始まる逆転ダンジョン生活!
IXA
ファンタジー
30年ほど前、地球に突如として現れたダンジョン。
無限に湧く資源、そしてレベルアップの圧倒的な恩恵に目をつけた人類は、日々ダンジョンの研究へ傾倒していた。
一方特にそれは関係なく、生きる金に困った私、結城フォリアはバイトをするため、最低限の体力を手に入れようとダンジョンへ乗り込んだ。
甘い考えで潜ったダンジョン、しかし笑顔で寄ってきた者達による裏切り、体のいい使い捨てが私を待っていた。
しかし深い絶望の果てに、私は最強のユニークスキルである《スキル累乗》を獲得する--
これは金も境遇も、何もかもが最底辺だった少女が泥臭く苦しみながらダンジョンを探索し、知恵とスキルを駆使し、地べたを這いずり回って頂点へと登り、世界の真実を紐解く話
複数箇所での保存のため、カクヨム様とハーメルン様でも投稿しています
【完結】不遇スキル『動物親和EX』で手に入れたのは、最強もふもふ聖霊獣とのほっこり異世界スローライフでした
旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
ブラック企業で過労死した俺が異世界エルドラで授かったのは『動物親和EX』という一見地味なスキルだった。
日銭を稼ぐので精一杯の不遇な日々を送っていたある日、森で傷ついた謎の白い生き物「フェン」と出会う。
フェンは言葉を話し、実は強力な力を持つ聖霊獣だったのだ!
フェンの驚異的な素材発見能力や戦闘補助のおかげで、俺の生活は一変。
美味しいものを食べ、新しい家に住み、絆を深めていく二人。
しかし、フェンの力を悪用しようとする者たちも現れる。フェンを守り、より深い絆を結ぶため、二人は聖霊獣との正式な『契約の儀式』を行うことができるという「守り人の一族」を探す旅に出る。
最強もふもふとの心温まる異世界冒険譚、ここに開幕!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる