現代錬金術のすゝめ 〜ソロキャンプに行ったら賢者の石を拾った〜

涼月 風

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第8話 ステータス

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エイシスに言われてランニング10Km、腹筋100回、腕立て伏せ100回、スクワット100回、ストレッチ15分を終えて、今はお風呂に入っている。

「お~~気持ち良い」

以前の僕だったら考えられなかったけど、運動して汗をかくって楽しいかも。
それに思ったより身体が軽くて楽だった。

『身体の再構築したおかげですね。以前のマスターなら1キロ走っただけでくたばっていた事でしょう。私を誉めても良いのですよ』

そんな事をエイシスは語りかけてきたが、自分でもそう思うので言い返せない。
取り敢えず、感謝はしておこう。

「エイシスのおかげだよ。ありがとう」

『うへっ、わ、わかれば良いのです。素直なマスターはこ、好感が持てます』

エイシスが変な声を上げた。
それにしてもエイシスって何者なんだろう。
AIでも、こんなやりとりはできないよね。
まるで生きてる人間のようだ。

『私は魔法で作られた概念的生命体です』

「概念的生命体って?」

『そんな事もわからないのですか?おバカですね』

うん、ディスられた。
しかし、この性格はどうにかならないのだろうか?

『私の性格や人格は、マスターの身体をスキャンした結果です。つまり、マスターの好みに合うように調整されています。という事は……ふふ、私はマスターの理想の女性なのです!』

「そんなわけあるか!」

心で思うだけでエイシスに伝わってしまうのは、仕方ないとしてもエイシスが理想の女性というのは納得できない。
だけど、エイシスなら僕が気づく事もない深層心理まで理解してるのかもしれない。
それ、怖いんですけど……

そう考えているとエイシスから辛辣な言葉が返ってくるかと思ったが、何も言ってこなかった。

お風呂を満喫してラフな部屋着に着替えるて、買ってきたお弁当を食べる。
チーちゃんからもらったお裾分けの肉じゃがもいただく。

「へ~~この肉じゃが美味しいや。味の濃さも僕好みだし」

お腹が空いてたのであっという間に平らげる。
タッパを洗って、自分の部屋に戻るとエイシスが再び語りかけてきた。

『今日のランニングセットを明日から朝、と夕方の2回、やってもらいます。それから、今から1時間ほど瞑想をしてください。マスターの精神は貧弱すぎますから』

マジ……という事は1日20キロ走るってことかよ。

『慣れてきたら距離を延ばします。できますよね?できないなんて言わせませんけど。私の言ってること理解できますよね?マスター……』

怖い、怖い、怖い……

「わ、わかったよ。ちゃんとするから」

『わかれば良いのです。では、さっさと瞑想を始めてください』

1時間、座禅を組むのは無理そうなので胡座姿で眼を閉じる。

そういえば瞑想って何すれば?
「心頭滅却」とか言うけど、心を無にする事なんて直ぐにできるわけない。
こうしているだけで、余計な雑念が次々と頭の中に浮かんでくる。

(なあ、エイシス。瞑想ってこれで良いの?)

『した事ないのでわかりません』

(はあ!?した事もないのに僕にやれと言ったの?)

『私は概念的生命体と言ったでしょう。魔法で作られているのですよ。瞑想なんてするわけないでしょう?』

まあ、確かにそうだけど……

暇だから、円周率でも数えているか。3、14159265……
覚えてる限りの数字を頭の中で数えていると、何だか眠くなってきた。
それでも眠気を堪えて続けていると、少し身体が温まってくる。
呼吸がゆっくりとなり、自分の心臓の音が次第に大きくなる。
どれくらいの時間が経っただろう。
そう思い始めているとエイシスから声がかかった。

『マスター時間です』

「うん、そうなんだ」

初めは上手くいかなかったけど、終わりの方は何だか瞑想してる感じだった。
うん、初めてにしては上出来なんじゃないかな?

『マスターはお気楽で良いですネ』

「おい!」

大賢者への道は遠い。


◇◇◇


あれから、ラノベを読もうとしたのだが、学校を休んでいる間の勉強が遅れている事が気になって勉強してしまった。
中間試験がもう時期にくるし、学生の本文は勉強する事だから問題ないよね。

今日一日、慣れないことばかりで疲れたのかいつもより早めに就寝。

翌朝、朝5時にエイシスに叩き起こされ、ランニングに出発。
シャワーを浴びて、タッパを届けに茜おばさんちに行く。
茜おばさんが僕の分までお弁当を作ってくれたみたいなので、ありがたく受け取る。

いつもより一本早い電車に乗り、学校に行く。
教室に着くと1人の女生徒しかいなかった。
名前は、知らないが僕と同じようにいつも1人で本を読んでいる。
顔が隠れるくらいの長い前髪にでかいフレームの眼鏡をかけていて、雰囲気が僕に似てるので覚えていた。

僕も鞄からラノベを取り出して読み始める。

異世界召喚物の物語らしく、主人公が所属するクラスメイト全員がある世界に召喚されたようだ。

読んでいる内に物語の世界に引き込まれていく。主人公がクラスメイトから迫害され追放されたシーンは、自分をみているようで共感が湧いた。

「マジかよ。なんて酷い奴らなんだ」

創作物だとわかっているけど、理不尽過ぎて腹が立ってくる。

『マスター、熱中するのはいいですけど声に出てますよ』

あ、不味い……

エイシスに注意されて慌てて周囲を見渡す。
まだ、登校している生徒は少ないのでセーフだと思いたい。

『いいえ、残念ですが1人の女生徒に聞かれていましたよ。ほら、あそこで本を読んでる女子です』

その子はあのぼっちの女子だった。
席が近いので、聞こえたのだろう。

(あの子なら言いふらしたりしないだろうし)

『マスターが声を出した時、しっかりと見られてましたけどね。不審者を見るような目つきで』

(うう、追い討ちをかけないでくれ)

僕は落ち込みはしたもののラノベの続きを読み始める。
本を読み終えた頃には、クラスは騒がしくなっていた。
すると、ホームルームの始まりのチャイムが鳴る。

うわぁ~~熱中しちゃったよ。
ラノベって面白いな。
続きが気になるけど、本は高いし来月にならないと買えないな。

『ですから、ポーションを作れば資金面の心配は解決しますよ』

エイシスが脳内で語りかけてくるのにも、だいぶ慣れてきた。

(ポーションか……さっきのラノベでも出てきたけど作れたら便利だよね)

『その通りです。マスターは、まだ魔法を使う練習はしてませんので、ポーション作りをしながら魔法と錬金術を一緒に学べば効率的だと提言します』

魔法とか錬金術とか昨日も言ってたけど、僕にそれが使えるのか?
そんな夢みたいな事あるのか?

『ですから、マスターは大賢者なのですよ。使えるに決まってるじゃないですか。今まで私の説明の何を聞いていたのですか?』

エイシスが言ってた事は、本当なのか?
実際、エイシスのことは自分が作り上げた幻想で脳内に響く声は幻聴なのではないかと、考えていた。
ネットで調べたら『統合失調症』の症例に当てはまるようだ。
僕は、病気なのでは?と、少し思っていた。

『マスターは病気ではありません。スマホでそのような症例を調べていたのは知ってますが、こいつ、いまいち信じていねぇな!って私は思ってました』

ははは、だって現実世界だよ。さっき読んだ創作物とは違うんだって。
賢者の石とか魔法とか錬金術とか、現実世界にあるわけないだろう。
そう思うのって普通だよね。
普通ならまず、病気を疑うよね。
あんな事があったんだ。
僕の精神が壊れてしまったって思っても仕方ないじゃないか。
だから、僕は病気なんだよ。
統合失調症なんだ。
入院先の医者や看護師だって可哀想な目で僕を見てたじゃないか!

心の中で溜め込んでいた想いを吐き出す。
突然、脳内に奇妙な声が聞こえてきたんだ。
ストレスだって溜まるんだよ。

『言いたいことはそれだけですか?その思いも私は理解してましたが、溜め込むのは良くないと思っていました。ここで吐き出したのは良い傾向でしょう。なので、もう一度言います。マスターは正常です。統合失調症という精神の病気ではありません。私はエイシス。マスターが呼称をつけてくださった大賢者【叡智システム】の魔法による概念的生命体です。その証拠にマスターのステータスを表示します。

____________________________________
御門 賢一郎(15歳) 人間? 性別 男性
職業 高校生(1学年) 大賢者(仮)
Lv1
HP100
MP100

STR(力量)100
DEX(器用)100
VIT(防御)100
AGI(敏捷)100
INT(知力)100
MMD(精神)  9
LUK(運)  10
CHA(魅力) 68

オリジナルスキル
  ※大賢者(賢者の石 解放率0・8739%)
   【叡智システム】呼称 エイシス

所持スキル
 …………

________________________________

目の前に透明のパネルが広がっていた。
そこには、ゲームのような僕の能力値が書かれてあった。

マジかよ……今度は幻覚か……


◆◆◆


その日の朝、柚木家では……

「千穂、早く起きなさい。遅刻するわよ」
「う~~ん、あと5分……」

微睡の中で、騒がしいママの声が聞こえる。
せっかく朝練が無い日なのだ。
ゆっくり寝てても良いじゃない。

あれ、でも何か忘れてる気がする。
何だっけ……

「千穂、いつまで寝てるの。ケンちゃんはもう学校に行ったわよ」

「あっ!そうだった」

思い出した。
昨日、ケン君と話して朝練のないから一緒に登校しようと思ってたんだ。
急いでお着替えをして、バタバタと階段を降りていく。
洗面所に向かって身だしなみを整えた。

「ママ~~ケン君、いつ頃来たの?」
「20分前くらいかしら。ケンちゃんがどうかしたの?」
「ううん、何でもない」

あ~~あ、20分前だと今から行っても間に合わない。
せっかくのチャンスだったのに~~。

「ねーたん、どうした?」

落ち込んでるところに妹の香穂が声をかけてきた。
舌ったらずの言い方が可愛い。

「何でもないよ。香穂はご飯食べたの?」
「まだ、ねーたん待ってた」

なんて可愛いんだろう。

「じゃあ、一緒に食べようね」

妹を抱っこして幼児用の椅子に座らせる。
テーブルには、ベーコンエッグとサラダが人数分置いてあった。

ケン君も一緒に食べれば良いのに……

「そうだ。千穂、今日ケンちゃんにお弁当渡したんだけどお箸を渡すのを忘れちゃったみたい。届けてくれる?」

ケン君、今日は私と同じお弁当なんだあ、へへ。

「うん、わかった」

お箸を届けてケン君と一緒にお弁当……良いかも。

柚木家は、いつも通り賑やかな朝を迎えていた。
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