43 / 125
第43話 色々わかったこと
しおりを挟む私は探索者学校の最寄り駅近くにあるカフェである人物を待っている。
その人物は、弟、賢一郎の元彼女である佐々木真里ちゃんだ。
真里ちゃんのお母さんから連絡先を聞いて、土曜日の今日、ここで待ち合わせをしている。
「もう一度ちゃんと話を聞かなくちゃ」
真里ちゃんとの件をきっかけに、弟をはじめ、うちの家族はおかしくなってしまった。
お父さんは、仕事で家になかなか帰って来ないし、お母さんは料理の研究と称して旅行ばかりしている。
子供の手が離れたと思っているのだろうか?弟はまた高校生だというのに。
確かに私も弟が家を離れてホッとした気持ちがあった。
それは、不祥事を起こした弟が居たときは、家の中が暗く両親もピリピリしていて何となく怖かったからだ。
家の中で引き篭もる弟を見て見ぬフリをしてた私が今更両親のことをとやかく言う資格はないのだろう。
だけど、このまま何もしなければうちの家族は壊れてしまう。
スマホで時間を確認する。
約束の時間は10分ほど過ぎている。
友人なら気兼ねなく、スマホで連絡を入れるのだが……
「あ、凛音さん。お久しぶりです」
そう声をかけてきた人物が一瞬誰だかわからなかった。
金髪に染めた髪。
耳たぶには赤いピアス。
それに、派手な化粧にイケイケの格好。
「もしかして、真里ちゃん?」
「そうですよー。呼び出したのは凛音さんじゃないですかー」
あまりにも変わってしまった真里ちゃんを見て、藤堂先輩の言葉を思いだした。
………
『もし、嘘をついて弟さんを嵌めたのなら格好も派手になってるだろうし、性格も歪んでいるんじゃないかな?』
………
「す、少し変わったわね。大人っぽくなったよ」
「それは、どうも。それで凛音さん。聞きたいことって何ですか?」
「それより、何か注文しない?呼び出したのは私だし、何か奢るわよ」
「じゃあ、遠慮なく。凛音さんと同じもので」
店員さんに注文を済ませて、少しばかり世間話をする。
真里ちゃんの通っている探索者学校は、普通の高校と違って武道が必修科目になっているらしく、真里ちゃんは槍術を専攻しているらしい。
「2年生からダンジョン実習があるんですけど、魔物を倒すのに剣だと接敵しなければならないので、私は槍術を専攻したんですよねー。少しでもリーチが長い方が有利ですし」
「そうよね。私の友人も大学のサークルに入らないで探索者を目指すって言ってたわ。危険だから止めたんだけどね」
「一般講習は、2日で終わるけど最低ランクからのスタートだし、あまり稼げないですよ。講習も短時間で終わるので危険性を理解出来なくて死んじゃうケースも多いです。
その点探索者学校ならばきちんと勉強しますし、学校を卒業すればDランクからのスタートですので深いところまで潜れて稼ぎも多いです」
探索者のことはよくわからないけど、何だか全てお金絡みの話に結びつけてモヤモヤする。
そろそろ本題に入らないと……
「真里ちゃん、今日真里ちゃんに聞きたかったことは賢一郎のことなの。あの時のこともう一度聞かせてくれないかな?」
そう尋ねた時、真里ちゃんは一瞬顔をしかめた。
「友達から聞いたんですけど、賢一郎は田舎の高校に通っているらしいですね?」
「母親の実家にすんでるわよ。夏休みとかよく行ってた場所に」
「あー、そういえば夏休みはその田舎に行ってましたよねー。私は田舎は虫が多いし嫌いだけど」
私も虫は好きじゃなないので弟ほど頻繁に行かなかった。
でも、聞きたいのはそのことじゃない。
「それで、あの時弟は本当に真里ちゃんを襲ったの?」
「はあ~、前にも説明しましたよねー。それにもう過去のことですし今更蒸し返しても意味無いと思いますよ」
「真里ちゃんの言うことはわかっているつもり、でも私は賢一郎の姉だからきちんと向き合いたいの」
「そうですか、でも前話した以上のことはないですよ。賢一郎も学校通い出したみたいだし、もういいじゃないですかー」
既に真里ちゃんにとって、過去のどうでもいい話になってるんだ。
それに、私は何であの時この真里ちゃんを信用したんだろう?
泣いてたから?
でも、今回会って始めてわかった。
弟は真里ちゃんとその先輩に嵌められたんだ。
だけど証拠がない。
私には、真里ちゃんの口を割らせる技量もない。
だけど、女の勘が言ってる。
この子は嘘をついてると。
「そうね、弟も頑張ってるみたい」
「そうですよー。いつ迄も引き篭もっていたら周りに迷惑ですしね」
弟は、なんでこんな悪魔みたいな女を好きになったんだろう?
何で私も……
その後に続く言葉は、出てこなかった。
わかったことは、既に手遅れだということ。
私は、本当に愚かだ。
やっと気づくなんて……
弟は、聡いし感受性が人一倍強い子だからあの時に全て理解してしまったのだろう。
私達家族は、とうの昔に壊れてたこと。
そして、弟を厄介払いしたつもりでいる両親や私も含めて、逆に弟に捨てられたんだってことに。
私は、どうすればいいの?
◇
………
俺は探索者になって、いずれSランクになり、探索者の頂点に立つ!
………
そのメッセージがきたのは、みんなが落ち着いて勉強を始めたその時だった。
(ボクシングのミドル級で世界の頂点に立つんじゃなかったの?)
「ケンくん、どうしたの?重要なメッセージ?」
「違うよ。みーちゃん見てよ。バイトで知り合った人なんだけど、ボクシングで成り上がるって言ってたのに、探索者になったんだってさ」
メッセージを送ってきたのは瀬戸海航平さん。イケイケの陽キャな人だ。
探索者の講習を受けたようで、Fランクの探索者証を翳してニカっと笑ってる自撮りの写真付きだ。
「私にも見せて」
俺のスマホは、チーちゃんに取られここにいるメンバーを一周して戻ってきた。
「これは眩しい写真ですな。拙者には光り輝いていて良く見れなかったでござる」
「お兄ちゃん、またそんな事言って。ほら、お兄ちゃんだって輝いてたでしょ」
愛佳ちゃんが見せてくれたのは、太った少年がマワシを巻いて賞状とトロフィーを持ってる姿だった。
「あ、深海君の小学生の頃の写真だ。面影あるー」
「深海君、相撲やってたんだね。知らなかった」
「これは、県大会で優勝した時でしょうか?賞状にそう書いてあります」
『だてに太ってた訳ではなかったですね』
(エイシスさん、悪いけど今出てこないで、ツッこめないから)
『マスター、わかりました。しかし、私は遺伝子に疑問を持ちました。何故妹さんは細いのでしょう?未だ海底を這いつくばっている姿に驚きを感じています』
(それ、水圧の件でしょ。ツッこませないでくれる?)
何かと邪魔してくるエイシスより、大人しくしてるペロのがマシだ
《呼んだ?》
(呼んでないから今出てくんなっ!)
亜空間からペロが顔を出したのだけど、みんな深海君の子供の頃の写真を見て気づいていない。
ひとりを除いて……
「拙者、どうやら御門殿の先程の眩しい写真に眼をやられたようです。何もないところに白いウナギが見えました」
《失礼ねっ!ウナギじゃないわ。私は蛇…じゃない、神よ。あのデブのところだけずっと雨を降らしてやる!》
今回は念話だけだが、ペロが恐ろしいこと言ってる。
(カビが生えそうだからやめて。あとでお菓子あげるから、今は堪えてよ)
《仕方ないわねー、でも今度ウナギって言ったら容赦しないんだから》
ウナギにこだわるペロは、おそらく過去に間違えられたことがあるのだろう。
「そうなんだー。深海君ちはみんな相撲ファンなんだー」
チーちゃんが愛佳ちゃんとそんな話しをしてる。
「そうなんです。私は今は大関の琴サクラが好きなんです。とても逞しくて可愛いです」
そう言って愛佳ちゃんは顔を紅く染めた。
「「「「(あ、愛佳ちゃんってデブ専だ)」」」」
ここにいる深海家の人以外はきっとそう思ったに違いない。
150
あなたにおすすめの小説
『希望の実』拾い食いから始まる逆転ダンジョン生活!
IXA
ファンタジー
30年ほど前、地球に突如として現れたダンジョン。
無限に湧く資源、そしてレベルアップの圧倒的な恩恵に目をつけた人類は、日々ダンジョンの研究へ傾倒していた。
一方特にそれは関係なく、生きる金に困った私、結城フォリアはバイトをするため、最低限の体力を手に入れようとダンジョンへ乗り込んだ。
甘い考えで潜ったダンジョン、しかし笑顔で寄ってきた者達による裏切り、体のいい使い捨てが私を待っていた。
しかし深い絶望の果てに、私は最強のユニークスキルである《スキル累乗》を獲得する--
これは金も境遇も、何もかもが最底辺だった少女が泥臭く苦しみながらダンジョンを探索し、知恵とスキルを駆使し、地べたを這いずり回って頂点へと登り、世界の真実を紐解く話
複数箇所での保存のため、カクヨム様とハーメルン様でも投稿しています
異世界転移「スキル無!」~授かったユニークスキルは「なし」ではなく触れたモノを「無」に帰す最強スキルだったようです~
夢・風魔
ファンタジー
林間学校の最中に召喚(誘拐?)された鈴村翔は「スキルが無い役立たずはいらない」と金髪縦ロール女に言われ、その場に取り残された。
しかしそのスキル鑑定は間違っていた。スキルが無いのではなく、転移特典で授かったのは『無』というスキルだったのだ。
とにかく生き残るために行動を起こした翔は、モンスターに襲われていた双子のエルフ姉妹を助ける。
エルフの里へと案内された翔は、林間学校で用意したキャンプ用品一式を使って彼らの食生活を改革することに。
スキル『無』で時々無双。双子の美少女エルフや木に宿る幼女精霊に囲まれ、翔の異世界生活冒険譚は始まった。
*小説家になろう・カクヨムでも投稿しております(完結済み
【完結】不遇スキル『動物親和EX』で手に入れたのは、最強もふもふ聖霊獣とのほっこり異世界スローライフでした
旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
ブラック企業で過労死した俺が異世界エルドラで授かったのは『動物親和EX』という一見地味なスキルだった。
日銭を稼ぐので精一杯の不遇な日々を送っていたある日、森で傷ついた謎の白い生き物「フェン」と出会う。
フェンは言葉を話し、実は強力な力を持つ聖霊獣だったのだ!
フェンの驚異的な素材発見能力や戦闘補助のおかげで、俺の生活は一変。
美味しいものを食べ、新しい家に住み、絆を深めていく二人。
しかし、フェンの力を悪用しようとする者たちも現れる。フェンを守り、より深い絆を結ぶため、二人は聖霊獣との正式な『契約の儀式』を行うことができるという「守り人の一族」を探す旅に出る。
最強もふもふとの心温まる異世界冒険譚、ここに開幕!
帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす
黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。
4年前に書いたものをリライトして載せてみます。
病弱少年が怪我した小鳥を偶然テイムして、冒険者ギルドの採取系クエストをやらせていたら、知らないうちにLV99になってました。
もう書かないって言ったよね?
ファンタジー
ベッドで寝たきりだった少年が、ある日、家の外で怪我している青い小鳥『ピーちゃん』を助けたことから二人の大冒険の日々が始まった。
俺得リターン!異世界から地球に戻っても魔法使えるし?アイテムボックスあるし?地球が大変な事になっても俺得なんですが!
くまの香
ファンタジー
鹿野香(かのかおる)男49歳未婚の派遣が、ある日突然仕事中に異世界へ飛ばされた。(←前作)
異世界でようやく平和な日常を掴んだが、今度は地球へ戻る事に。隕石落下で大混乱中の地球でも相変わらず呑気に頑張るおじさんの日常。「大丈夫、俺、ラッキーだから」
異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた
りゅう
ファンタジー
異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。
いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。
その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。
俺だけLVアップするスキルガチャで、まったりダンジョン探索者生活も余裕です ~ガチャ引き楽しくてやめられねぇ~
シンギョウ ガク
ファンタジー
仕事中、寝落ちした明日見碧(あすみ あおい)は、目覚めたら暗い洞窟にいた。
目の前には蛍光ピンクのガチャマシーン(足つき)。
『初心者優遇10連ガチャ開催中』とか『SSRレアスキル確定』の誘惑に負け、金色のコインを投入してしまう。
カプセルを開けると『鑑定』、『ファイア』、『剣術向上』といったスキルが得られ、次々にステータスが向上していく。
ガチャスキルの力に魅了された俺は魔物を倒して『金色コイン』を手に入れて、ガチャ引きまくってたらいつのまにか強くなっていた。
ボスを討伐し、初めてのダンジョンの外に出た俺は、相棒のガチャと途中で助けた異世界人アスターシアとともに、異世界人ヴェルデ・アヴニールとして、生き延びるための自由気ままな異世界の旅がここからはじまった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる