現代錬金術のすゝめ 〜ソロキャンプに行ったら賢者の石を拾った〜

涼月 風

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第43話 色々わかったこと

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私は探索者学校の最寄り駅近くにあるカフェである人物を待っている。

その人物は、弟、賢一郎の元彼女である佐々木真里ちゃんだ。

真里ちゃんのお母さんから連絡先を聞いて、土曜日の今日、ここで待ち合わせをしている。

「もう一度ちゃんと話を聞かなくちゃ」

真里ちゃんとの件をきっかけに、弟をはじめ、うちの家族はおかしくなってしまった。

お父さんは、仕事で家になかなか帰って来ないし、お母さんは料理の研究と称して旅行ばかりしている。

子供の手が離れたと思っているのだろうか?弟はまた高校生だというのに。

確かに私も弟が家を離れてホッとした気持ちがあった。
それは、不祥事を起こした弟が居たときは、家の中が暗く両親もピリピリしていて何となく怖かったからだ。

家の中で引き篭もる弟を見て見ぬフリをしてた私が今更両親のことをとやかく言う資格はないのだろう。

だけど、このまま何もしなければうちの家族は壊れてしまう。

スマホで時間を確認する。
約束の時間は10分ほど過ぎている。
友人なら気兼ねなく、スマホで連絡を入れるのだが……

「あ、凛音さん。お久しぶりです」

そう声をかけてきた人物が一瞬誰だかわからなかった。

金髪に染めた髪。
耳たぶには赤いピアス。
それに、派手な化粧にイケイケの格好。

「もしかして、真里ちゃん?」

「そうですよー。呼び出したのは凛音さんじゃないですかー」

あまりにも変わってしまった真里ちゃんを見て、藤堂先輩の言葉を思いだした。
………
『もし、嘘をついて弟さんを嵌めたのなら格好も派手になってるだろうし、性格も歪んでいるんじゃないかな?』
………

「す、少し変わったわね。大人っぽくなったよ」

「それは、どうも。それで凛音さん。聞きたいことって何ですか?」

「それより、何か注文しない?呼び出したのは私だし、何か奢るわよ」

「じゃあ、遠慮なく。凛音さんと同じもので」

店員さんに注文を済ませて、少しばかり世間話をする。

真里ちゃんの通っている探索者学校は、普通の高校と違って武道が必修科目になっているらしく、真里ちゃんは槍術を専攻しているらしい。

「2年生からダンジョン実習があるんですけど、魔物を倒すのに剣だと接敵しなければならないので、私は槍術を専攻したんですよねー。少しでもリーチが長い方が有利ですし」

「そうよね。私の友人も大学のサークルに入らないで探索者を目指すって言ってたわ。危険だから止めたんだけどね」

「一般講習は、2日で終わるけど最低ランクからのスタートだし、あまり稼げないですよ。講習も短時間で終わるので危険性を理解出来なくて死んじゃうケースも多いです。
その点探索者学校ならばきちんと勉強しますし、学校を卒業すればDランクからのスタートですので深いところまで潜れて稼ぎも多いです」

探索者のことはよくわからないけど、何だか全てお金絡みの話に結びつけてモヤモヤする。

そろそろ本題に入らないと……

「真里ちゃん、今日真里ちゃんに聞きたかったことは賢一郎のことなの。あの時のこともう一度聞かせてくれないかな?」

そう尋ねた時、真里ちゃんは一瞬顔をしかめた。

「友達から聞いたんですけど、賢一郎は田舎の高校に通っているらしいですね?」

「母親の実家にすんでるわよ。夏休みとかよく行ってた場所に」

「あー、そういえば夏休みはその田舎に行ってましたよねー。私は田舎は虫が多いし嫌いだけど」

私も虫は好きじゃなないので弟ほど頻繁に行かなかった。

でも、聞きたいのはそのことじゃない。

「それで、あの時弟は本当に真里ちゃんを襲ったの?」

「はあ~、前にも説明しましたよねー。それにもう過去のことですし今更蒸し返しても意味無いと思いますよ」

「真里ちゃんの言うことはわかっているつもり、でも私は賢一郎の姉だからきちんと向き合いたいの」

「そうですか、でも前話した以上のことはないですよ。賢一郎も学校通い出したみたいだし、もういいじゃないですかー」

既に真里ちゃんにとって、過去のどうでもいい話になってるんだ。

それに、私は何であの時この真里ちゃんを信用したんだろう?

泣いてたから?

でも、今回会って始めてわかった。
 
弟は真里ちゃんとその先輩に嵌められたんだ。

だけど証拠がない。
私には、真里ちゃんの口を割らせる技量もない。

だけど、女の勘が言ってる。
この子は嘘をついてると。

「そうね、弟も頑張ってるみたい」

「そうですよー。いつ迄も引き篭もっていたら周りに迷惑ですしね」

弟は、なんでこんな悪魔みたいな女を好きになったんだろう?

何で私も……

その後に続く言葉は、出てこなかった。

わかったことは、既に手遅れだということ。

私は、本当に愚かだ。
やっと気づくなんて……

弟は、聡いし感受性が人一倍強い子だからあの時に全て理解してしまったのだろう。

私達家族は、とうの昔に壊れてたこと。

そして、弟を厄介払いしたつもりでいる両親や私も含めて、逆に弟に捨てられたんだってことに。
 
私は、どうすればいいの?




………
俺は探索者になって、いずれSランクになり、探索者の頂点に立つ!
………

そのメッセージがきたのは、みんなが落ち着いて勉強を始めたその時だった。

(ボクシングのミドル級で世界の頂点に立つんじゃなかったの?)

「ケンくん、どうしたの?重要なメッセージ?」

「違うよ。みーちゃん見てよ。バイトで知り合った人なんだけど、ボクシングで成り上がるって言ってたのに、探索者になったんだってさ」

メッセージを送ってきたのは瀬戸海航平さん。イケイケの陽キャな人だ。
探索者の講習を受けたようで、Fランクの探索者証を翳してニカっと笑ってる自撮りの写真付きだ。

「私にも見せて」

俺のスマホは、チーちゃんに取られここにいるメンバーを一周して戻ってきた。

「これは眩しい写真ですな。拙者には光り輝いていて良く見れなかったでござる」

「お兄ちゃん、またそんな事言って。ほら、お兄ちゃんだって輝いてたでしょ」

愛佳ちゃんが見せてくれたのは、太った少年がマワシを巻いて賞状とトロフィーを持ってる姿だった。

「あ、深海君の小学生の頃の写真だ。面影あるー」

「深海君、相撲やってたんだね。知らなかった」

「これは、県大会で優勝した時でしょうか?賞状にそう書いてあります」

『だてに太ってた訳ではなかったですね』

(エイシスさん、悪いけど今出てこないで、ツッこめないから)

『マスター、わかりました。しかし、私は遺伝子に疑問を持ちました。何故妹さんは細いのでしょう?未だ海底を這いつくばっている姿に驚きを感じています』
 
(それ、水圧の件でしょ。ツッこませないでくれる?)

何かと邪魔してくるエイシスより、大人しくしてるペロのがマシだ

《呼んだ?》

(呼んでないから今出てくんなっ!)

亜空間からペロが顔を出したのだけど、みんな深海君の子供の頃の写真を見て気づいていない。

ひとりを除いて……

「拙者、どうやら御門殿の先程の眩しい写真に眼をやられたようです。何もないところに白いウナギが見えました」

《失礼ねっ!ウナギじゃないわ。私は蛇…じゃない、神よ。あのデブのところだけずっと雨を降らしてやる!》

今回は念話だけだが、ペロが恐ろしいこと言ってる。

(カビが生えそうだからやめて。あとでお菓子あげるから、今は堪えてよ)

《仕方ないわねー、でも今度ウナギって言ったら容赦しないんだから》

ウナギにこだわるペロは、おそらく過去に間違えられたことがあるのだろう。

「そうなんだー。深海君ちはみんな相撲ファンなんだー」

チーちゃんが愛佳ちゃんとそんな話しをしてる。

「そうなんです。私は今は大関の琴サクラが好きなんです。とても逞しくて可愛いです」

そう言って愛佳ちゃんは顔を紅く染めた。

「「「「(あ、愛佳ちゃんってデブ専だ)」」」」

ここにいる深海家の人以外はきっとそう思ったに違いない。


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