44 / 125
第44話 求めるもの
しおりを挟む「あーー疲れた」
勉強会というお泊まり会から解放された俺は、大きな伸びをしてそのまま縁側に寝転んだ。
結局、みんなは俺の家に泊まることになり、女子達は勉強よりは話に夢中になり、俺と深海君は、ラノベやオタク談議をしていた。
みんなと仲良くなったのは良いことだけど、どこか冷めた自分がいる。
また裏切られるんじゃないかと……
『マスター、精神値が上がってもダメダメですね』
(前はこんな風に考えなかったけど、この思考って性格なの?それともまだ引きずってるってこと?)
『風邪とか怪我と違って心の傷は治りにくいですよ。きっかけがあればある時ふと心が軽くなったりもします。向き合うのもひとつの方法ですが悪化する危険性もあります』
(治りづらいってのはよくわかるよ。下手すると一生治らないのでは?って思うし。そんなこと気にしないで普通に生きたい)
『普通の定義は曖昧ですが、まあ、焦っても仕方ありません。治らないとは言ってないのですから。今は心の休み時間だと思ってのんびりする事ですね』
「ニャー」
いつの間にか猫のトラさんがそばで寝転んでた。
「トラさん、久しぶり。何だかトラさん見てると癒されるわ」
「ニャーニャー『こっち見んなっ!何か食い物くれ』」
これってトラさんの声だよね!
知りたくなかったよ、トラさんの心の声。
この時ばかりは言語翻訳が恨めしい。
そんなことを考えていると家の隅っこから縁側を見ている小さな影に気づいた。
その影はゆっくりとこちらに近づいてくる。
そして、意を決したのか駆け足でトラさん目掛けて突っ込んで来た。
一方、トラさんは一瞬ビクッとしてそのままどこかに行ってしまった。
「うわー猫しゃん、いっちゃっちゃー」
今にも泣きそうになってベソをかく、チーちゃんの妹の香穂。
「香穂、まだまだ修行が足りないぞ」
「ちゅぎょうってなーに?」
「修行とは目的の為に頑張ることだ。まずは猫のことをよく知らないとトラさんとは仲良しになれないぞ」
「かほ、ちゅぎょうする!」
「では、まずお昼寝だ」
縁側に座布団を持ってきて、そこに横になった。
「これで猫さんと仲良くなれる?」
「直ぐには無理だ。だが、こうしていれば香穂が追いかけなくとも猫の方からやってくるんだ。先は長いが香穂に耐えられるかな?」
「かほ、平気だもん。ちゅぎょうがんばる」
縁側で香穂と一緒に横になっていると《あら、気持ち良さそうね》と、ペロが亜空間から出てきて一緒になって横?になった。
「あ、ねこさんじゃなくて白いヘビさんがやってきた」
香穂は、ペロを怖がらずに眺めている。
「香穂、この蛇さんはペロって名前だ。でもいきなり触ったらダメなんだ。香穂だって寝てる時に急に起こされたらイヤだろう?」
「わかっちゃ、見てるだけにしゅる」
(ペロ、悪いがその女の子を少しだけペロペロしてくれないか?)
《いいけど、今日はお刺身が食べたいわ。赤いやつ、マグロだっけ?あれお願いね》
(わかったよ。夕方、買いに行ってくるから)
財布に優しくないペロだった。
そのかわり、ペロにペロペロされた香穂は満足したようで喜んでいた。
◇
夕方、買い物に出かけてペロにお刺身を買ってきた。
ペロが美味しそうに刺身を食べてる姿を眺めているとエイシスに問われた。
『ペロをあの小娘の前に出して良かったのですか?』
(庭に池を造ったらいずれみんなにバレるだろうし、ペットとしてみんなに紹介しよかと考えてるんだ。まずは様子見で香穂の反応を見ただけだから)
『そうですね。確かにペロはいつ現れるかわかりませんから困ったものです』
《呼んだ?》
(呼んでないから、食べてていいよ)
《わかったわ》
異世界から帰って来てから、こっちの生活が忙しくてストレージや師匠からもらった魔法鞄の中身の整理ができてない。
それに自分自身の能力の検証もまだだ。
「ねえ、エイシス。魔法の練習がしたいんだけど、どこか良い場所ないかな?」
『ミストラルなら無人島とかダンジョンの中がうってつけなのですが、この世界は監視衛星のような物もありますし、またゲート先のダンジョンで今のマスターが魔法を使うのは少し難しいですね』
「ダンジョンもダメなのか?」
『ええ、採取くらいなら問題ありませんが、魔法を使えばマスターの魔力の元を管理者が把握する可能性があります』
「ダンジョンに管理者なんているんだ?」
『詳細は禁忌事項で話せませんが、マスターの存在がわかれば必ず敵対行動にでるでしょう。今のマスターなら瞬殺されます』
「何それ、怖っ!絶対行きたくないな、ダンジョン」
『ええ、素材の採取なら問題ありませんが絶対ではありません』
この世界では無理ってことか……
『もし、魔法を使いたいのであれば次元魔法を組み込みましょうか?』
「次元魔法って?」
『ペロが棲家にしている亜空間を創れる魔法です。本来なら賢者の石の解放率が60%以上にならないと組み込めないのですが、そこで脳天気に刺身を食べているペロのおかげでマスターには神力が宿りました。
今のマスターの神力は30程しかありませんのでおよそ学校の体育館ていどの亜空間しか創れませんが、魔法の練習はできますよ』
何それ!凄いじゃん。
「是非とも組み込んでほしい。その次元魔法を」
『わかりました。言質はとりましたからね』
えっ!?不穏な言葉が聞こえたんだが……
『では、組み込みます。お覚悟を』
「えっ、ちょっと待ってーーあああああ!!!」
痛い、痛い、痛い!
身体の神経全てが悲鳴をあげてる。
「あーーー!痛い!エイシス、痛いなんて聞いてな……い」
あまりの痛さで俺は気を失ってしまった。
『やはり、まだ身体が未熟でしたか。神経も焼き切れている箇所もありますし、このまま生命活動を維持しつつ、可能な限り身体を強化しましょう。
それでも、◯◯と敵対するには難しいでしょうが……
また、ミストラルに行き可能な限りレベルを上げるようにしませんと。
あの世界に転移するには、まだ時間が必要でしたが、マスターが次元魔法を習得した今ならいつでも可能になりましたし。
マスター、一緒に頑張りましょうね……』
◆
ここはミストラル世界。
大精霊ウンディーネが復活した時に天の柱のごとく眩く光る光景を屋敷で見ていた少女がいた。
その少女は魔法省の官職に就く父親の長女であるが、ある病に侵されていた。
それは、魔力過多症。
魔力が大き過ぎるが故に、自身の魔力で身体を破壊してしまう病で10歳迄は生きられないと言われている。
この病の特徴は、自身の魔力で身体が焼け爛れしまい至る所から出血し出す恐ろしい病だ。
そんな病を背負ってしまった少女、ユリア・ストロークは来月に10歳の誕生日を迎える。
そんな彼女が天に昇る光の柱を見たのは、幸か不幸かまだわからない。
だが、彼女はある決意を固めていた。
お母様は、私の病気を治す為に奇跡の実を求めて、護衛達と一緒に大森林に向かった。でも、途中で魔獣に襲われて亡くなってしまった。
お父様は、お母様が亡くなったのは私のせいとばかりに、私に会いに来なくなった。
第二夫人の義母は、私を穢れた娘と罵り、その子である長男のマイクは最初は私を虐めて楽しんでいたけど、私の病気が酷くなると汚いと言って避けるようになった。
メイド達も用が済めばさっさと部屋を出て行ってしまう。
私は、この家に必要ない人間だ。
だから、身体が動く今しかチャンスはない。
「優しかったお母様のところに行くのは今しかないの」
大森林から立ち昇る光を見て、私は行動に出た。
醜い姿を隠す為に、顔を隠せる厚手のローブを羽織り、じっとみんなが寝静まるまでそっと息を潜めていた。
「お母様があの光の柱を目印においでと、私を呼んでいるんだわ」
そうして、夜は更けていくのであった。
149
あなたにおすすめの小説
七億円当たったので異世界買ってみた!
コンビニ
ファンタジー
三十四歳、独身、家電量販店勤務の平凡な俺。
ある日、スポーツくじで7億円を当てた──と思ったら、突如現れた“自称・神様”に言われた。
「異世界を買ってみないか?」
そんなわけで購入した異世界は、荒れ果てて疫病まみれ、赤字経営まっしぐら。
でも天使の助けを借りて、街づくり・人材スカウト・ダンジョン建設に挑む日々が始まった。
一方、現実世界でもスローライフと東北の田舎に引っ越してみたが、近所の小学生に絡まれたり、ドタバタに巻き込まれていく。
異世界と現実を往復しながら、癒やされて、ときどき婚活。
チートはないけど、地に足つけたスローライフ(たまに労働)を始めます。
アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~
うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」
これしかないと思った!
自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。
奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。
得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。
直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。
このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。
そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。
アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。
助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。
魔王を倒した勇者、次の職場は東京のラーメン屋でした
希羽
ファンタジー
異世界グランディアを救った勇者アレクサンダー、通称アレク。彼は平和になった世界で自身の存在意義を見失いかけていた。そんなある日、魔王が遺した最後の呪いによって次元の狭間に吸い込まれ、現代の東京・高円寺に迷い込んでしまう。
右も左もわからず、甲冑姿で街をさまようアレクは、警察に職務質問され大ピンチに。その窮地を救ったのは、頑固一徹だが人情に厚いラーメン屋「麺屋 漢(おとこ)」の店主、黒田龍司(くろだ りゅうじ)だった。
言葉も通じず、社会常識ゼロのアレクだったが、その驚異的な身体能力と、何事にも真摯に取り組む姿勢を龍司に見込まれ、住み込みでバイトとして雇われることに。
「レベルアップだと思えばいい」「麺の湯切りは剣技に通じるものがある」
アレクは異世界での経験をラーメン作りに活かし、次第にその才能を開花させていく。聖剣の代わりに握った菜箸で、彼は東京という新たな世界で、人々の笑顔と自らの新たな居場所を見つけることができるのか。異世界勇者の、しょっぱくて熱いセカンドライフが今、始まる。
転落貴族〜千年に1人の逸材と言われた男が最底辺から成り上がる〜
ぽいづん
ファンタジー
ガレオン帝国の名門貴族ノーベル家の長男にして、容姿端麗、眉目秀麗、剣術は向かうところ敵なし。
アレクシア・ノーベル、人は彼のことを千年に1人の逸材と評し、第3皇女クレアとの婚約も決まり、順風満帆な日々だった
騎士学校の最後の剣術大会、彼は賭けに負け、1年間の期限付きで、辺境の国、ザナビル王国の最底辺ギルドのヘブンズワークスに入らざるおえなくなる。
今までの貴族の生活と正反対の日々を過ごし1年が経った。
しかし、この賭けは罠であった。
アレクシアは、生涯をこのギルドで過ごさなければいけないということを知る。
賭けが罠であり、仕組まれたものと知ったアレクシアは黒幕が誰か確信を得る。
アレクシアは最底辺からの成り上がりを決意し、復讐を誓うのであった。
小説家になろうにも投稿しています。
なろう版改稿中です。改稿終了後こちらも改稿します。
『希望の実』拾い食いから始まる逆転ダンジョン生活!
IXA
ファンタジー
30年ほど前、地球に突如として現れたダンジョン。
無限に湧く資源、そしてレベルアップの圧倒的な恩恵に目をつけた人類は、日々ダンジョンの研究へ傾倒していた。
一方特にそれは関係なく、生きる金に困った私、結城フォリアはバイトをするため、最低限の体力を手に入れようとダンジョンへ乗り込んだ。
甘い考えで潜ったダンジョン、しかし笑顔で寄ってきた者達による裏切り、体のいい使い捨てが私を待っていた。
しかし深い絶望の果てに、私は最強のユニークスキルである《スキル累乗》を獲得する--
これは金も境遇も、何もかもが最底辺だった少女が泥臭く苦しみながらダンジョンを探索し、知恵とスキルを駆使し、地べたを這いずり回って頂点へと登り、世界の真実を紐解く話
複数箇所での保存のため、カクヨム様とハーメルン様でも投稿しています
パーティーの役立たずとして追放された魔力タンク、世界でただ一人の自動人形『ドール』使いになる
日之影ソラ
ファンタジー
「ラスト、今日でお前はクビだ」
冒険者パーティで魔力タンク兼雑用係をしていたラストは、ある日突然リーダーから追放を宣告されてしまった。追放の理由は戦闘で役に立たないから。戦闘中に『コネクト』スキルで仲間と繋がり、仲間たちに自信の魔力を分け与えていたのだが……。それしかやっていないことを責められ、戦える人間のほうがマシだと仲間たちから言い放たれてしまう。
一人になり途方にくれるラストだったが、そこへ行方不明だった冒険者の祖父から送り物が届いた。贈り物と一緒に入れられた手紙には一言。
「ラストよ。彼女たちはお前の力になってくれる。ドール使いとなり、使い熟してみせよ」
そう記され、大きな木箱の中に入っていたのは綺麗な少女だった。
これは無能と言われた一人の冒険者が、自動人形(ドール)と共に成り上がる物語。
7/25男性向けHOTランキング1位
異世界転移「スキル無!」~授かったユニークスキルは「なし」ではなく触れたモノを「無」に帰す最強スキルだったようです~
夢・風魔
ファンタジー
林間学校の最中に召喚(誘拐?)された鈴村翔は「スキルが無い役立たずはいらない」と金髪縦ロール女に言われ、その場に取り残された。
しかしそのスキル鑑定は間違っていた。スキルが無いのではなく、転移特典で授かったのは『無』というスキルだったのだ。
とにかく生き残るために行動を起こした翔は、モンスターに襲われていた双子のエルフ姉妹を助ける。
エルフの里へと案内された翔は、林間学校で用意したキャンプ用品一式を使って彼らの食生活を改革することに。
スキル『無』で時々無双。双子の美少女エルフや木に宿る幼女精霊に囲まれ、翔の異世界生活冒険譚は始まった。
*小説家になろう・カクヨムでも投稿しております(完結済み
【完結】不遇スキル『動物親和EX』で手に入れたのは、最強もふもふ聖霊獣とのほっこり異世界スローライフでした
旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
ブラック企業で過労死した俺が異世界エルドラで授かったのは『動物親和EX』という一見地味なスキルだった。
日銭を稼ぐので精一杯の不遇な日々を送っていたある日、森で傷ついた謎の白い生き物「フェン」と出会う。
フェンは言葉を話し、実は強力な力を持つ聖霊獣だったのだ!
フェンの驚異的な素材発見能力や戦闘補助のおかげで、俺の生活は一変。
美味しいものを食べ、新しい家に住み、絆を深めていく二人。
しかし、フェンの力を悪用しようとする者たちも現れる。フェンを守り、より深い絆を結ぶため、二人は聖霊獣との正式な『契約の儀式』を行うことができるという「守り人の一族」を探す旅に出る。
最強もふもふとの心温まる異世界冒険譚、ここに開幕!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる