現代錬金術のすゝめ 〜ソロキャンプに行ったら賢者の石を拾った〜

涼月 風

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第51話 拠点を変えよう

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「チュン、チュン……」

辺りが白け始め、小鳥達の鳴き声が森の中に聞こえ始めた。
近くに流れる小川のせせらぎが優しく心に響き渡る。

これがスローライフだ!

と、思ってた時期もありました。

「グオオオーーー!」

【ウィンド・カッター】

小川の水を飲みに来たのであろう、ツノの生えた熊の首を落としたところだ。  

「こんなの絶対スローライフと違う!」

『マスター、魔法の使い方が上手くなりましたね。あ、もう一匹来ますよ』

「だから、俺はスローライフがしたいんだあ【ウィンド・カッター】」

首が落ちたツノ有り熊さんの目が恨めしそうにこちらに向いてる。

「しかし、前回こんなに魔物が多くなかったよな?魔物と格闘し続けて夜を明かしてしまったぞ。空が何だか黄色く見えて眩しいし」

『ええ、どこかの騎士団が魔物避けの魔道具を使っているようで、その匂いに追い立てられた魔物がこっちに来たようですね』

「なんて傍迷惑な騎士団なんだ。きっと権力を傘にきたムカつく男達なんだろう?やりたい放題やりやがって。会う事があったら一発殴って文句を言ってやる!」

『…そうなると良いですね』

「もう、ここはダメだな。どこか新しい拠点を探さないと」

『亜空間は椅子だけしかありませんしね。マスターの稼ぎが悪いから必要な物を揃える事ができませんね』

「倦怠期の夫婦みたいな話はやめろ。確かにそうだけど」

移動するとしてもどうするか?

悩みのタネは、影の中で寝ているユリアとかいう少女のことだ。
未だ眼を覚ましていない。
心配になってちょくちょく鑑定をかけて様子を見ているが、病気の方は問題ない。

『マスター、ここではダメなのですか?』

「何かねー、これだけ魔物を殺した場所にいるのはねーちょっと気分的に滅入るんだよ」

そこらじゅうに魔物の死体がゴロゴロしてる。

使えそうな魔物は、勿論ストレージに入れてあるが、ゴブリンとかゴブリンとかゴブリンが周りに転がっているのだ。

だから、とっても臭い。

『火魔法で燃やすか土魔法で埋めて浄化すれば良いのでは?』

「確かに、このままでは衛生的に良くない。立つ鳥跡を濁さずだな」

『結局、移動するわけですね?』

河原から少し離れた森の中に少し大きめの穴を掘り、臭いゴブリンを運んで埋めた。

そして、自分自身を含めてこの惨状となった場所を浄化したのだった。

『それでどこに行くつもりなんですか?マスターには出来る限りレベルを上げてもらいたいので街や村はお勧めしません。そうですねー、リンドウ王国にある迷宮都市なら構いませんが』

「それって、ダンジョンがある街ってこと?」

『はい、迷宮を中心として栄えている都市ですね。貴重なアーティファクトが手に入る可能性があります』

「アーティファクト……別にいらないな」

『マスター、アーティファクトですよ!誰もが欲しがってるアーティファクトなんですよ』

「別にただでくれるならもらうけど、自分から無理して取りに行くのは面倒くさい」

『はあ~、マスターのその欲の無さは良いのか悪いのか判断しかねます』

エイシスは、呆れたようにそう言うが、危険を犯してまで取りに行く必要性を感じないだけだ。

まだ、魔法だって上手く使いこなせていない。剣術だって動画頼りだ。
これ以上便利グッズがあっても使いこなせないだろう。

「さて、移動するか」

そう言って歩き出した。
行き先は既に決めてある。
この小川の大元である上流に割と大きめの湖がある。
視界も開けており、拠点としてはうってつけだと思っていた。

その場所は、この前こちらに来た時に千里眼で確認しておいたのだ。

『影移動を使わないのですか?』

「いろいろな素材がありそうなので採取しながら行くつもりだよ。そんなに遠くないし」

ストレージからこの前買った安物の剣を取り出して、道なき道を剣で草や枝を斬りなが進んで行く。

20分程進むと見たこともない木に美味しそうな果実がなっている木が前方に見えた。

「何か良い匂いもするし、あれ、絶対美味いやつだ」

『マスター、近寄る前に鑑定をお勧めします』

「そうだよな、この場所は普通の場所じゃないし、よし【鑑定】」

………………
マダガスカル(食人木)
Lv 182
HP 3056
MP 1250

STR(力量)1200
DEX(器用)350
VIT(防御)3800
AGI(敏捷) 25
INT(知力) 90
MMD(精神) 11
LUK(運)  52
CHA(魅力) 82

所持スキル
 根操作  Lv 10
 果実操作 Lv 10
 気配察知 Lv 10

果実の甘い匂いに誘われてきた生物を根から捕食する。

弱点
火魔法による攻撃
………

「は!?食人木?」

『マスター、驚いてる暇はありませんよ。既にマスターを狙っています』

気配察知が既にカンストしてる。
既に補足済みか。
甘い匂いを出して餌を呼び寄せるタイプで弱点は火魔法。

すると、突然地面が唸って根っこがあちこちから飛び出してきた。

「マズい!!」

その場から後ろに飛び退いた。
すると、俺のいた場所から先端が尖った根が突き出てきて襲いかかってきた。

持っていた剣で受け止めたが、あまりの攻撃の強さに身体ごと弾き飛ばされてしまった。

そして、思わず自身の影の中に隠れたのであった。

「何あれ、怖い、怖い」

『マスターの恐怖耐性はレベル5もあるのですが、これ数値詐欺でしょうか?』

(エイシスがそう言うが、怖いものは怖い。それに、あの木を倒せる気がしない)

『そこで木と気で韻を踏むとは、マスターやりますね』

なに呑気なことを言ってんだ?この魔法生命体は!

影の中なら不思議空間だから根っこの攻撃はこないし、このまま影移動で移動するか。

ふとまだ寝息をたてて寝ているはずの少女を見ると、バッチリ目が合ってしまった。

「あ、天使さまだ」

何を言ってるんだろう?この子は……

「俺は天使じゃないよ。それよりどこか調子の悪いところあるか?」

「ううん、どこも痛くない。ここってどこ?天国それとも地獄?」

何と説明しよう?
影の中にいるって言って信じてくれるか?

「天国でも地獄でもない。君は生きてるよ。何でも治る回復薬を飲ませたんだ」

『そこは口移しでと付け加えるところでは?』

(余計な言葉はいらないんだよ。知らない方が良いことだってあるんだから)

すると、ユリアは自分の顔を触り出した。
スマホは机にかけてある鞄中だし可愛くなったユリアの顔を見せてあげられない。

「お顔が腫れてない、それに痛くない。なーんだ、やはり天国なんだ。でも、ここ暗いし地獄に落ちちゃったの?ユリア、悪いことなんかしたっけ?そうだ、あの意地悪なメイドさんが見てないところで服に唾をペッってしたのが悪かったのかな?それとも……」

聞いてもいないのに何だか自分の悪事を話し出したのだが?

少女の対応に困っていると頭上から悲鳴が聞こえた。

声が聞こえた頭上を見上げるとそこには、女性騎士らしき二人がさっきの食人木の根に捕まって真っ逆様な体勢で宙に浮いていたのだった。

「何で……」

驚き過ぎてそれしか言葉にできなかった。




ちょっと前のこと……

「よし、この辺で小休止するぞ」

大森林の行軍中に騎士団長のアミリア殿下がそう言った。

アミリア様は、行軍に慣れていない魔法騎士を気遣って、度々休みを入れてくれる、優しいお方だ。

皆、その場に腰を下ろし持ち歩いている水筒で水分の補給をする。

「チェルシー悪いが荷物を見ててくれないか。私はお花摘みに行ってくる」

「アンジェラ様、それなら私も行きます。朝から紅茶をがぶ飲みしたのが悪かったのかお花を摘む回数が増えてしまって」

「それなら一緒に行こうか」

二人は荷物を同僚に頼み、剣と杖だけ持って皆の場所から離れた。

「あまり遠くには行かないぞ」

先を進むチェルシーは、用事を済ませる良い場所を見つけるためにズンズン森の中を進んで行く。

「この場所なら少し開けてますし、外敵も居なそうです」

程よく木々の間隔が空いており、チェルシーからも身を隠せそうだ。

そして、用意をしてしゃがみ込むと何処からか甘い香りが漂ってきた。

そして、私とチェルシーはあっという間に脚を絡め捕られて宙に浮かされたのだった。


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