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第50話 努力だけではどうにもならない
しおりを挟むまた異世界に来てしまった俺は、エルフ達の前で2度も失態をしてしまい落ち込んでしまった。
気分を晴らすために、空を飛ぼうと考えた俺は、今鳥になっている。
言い間違いは良くない。
鳥ではなくロケットになってしまった。
「うわあああああー!」
「エイシスさん、エイシスさん、聞こえますか?制御できません。どうすれば?」
『ペロから借金して翼を付けたんでしょ。最長点に達してからなら制御できるはずですよ』
エイシスがそう言うが、頂点に達したら後は落ちるだけだよねー、言っておくがそんな余裕はない!
『頑張って努力してみてください。何事も経験です』
「待って、このまま落ちたら俺確実に死ねるから!」
『仕方ありませんねー。着地の時だけ手助けしますから、あとは頑張って。ファイト!』
こんなの、努力だけでどうにかなるとは思えない。
そして、最頂点に達し一瞬だけほぼ無になった。
これから始まるのはジェットコースター真っ青の落下劇だ。
「うわーー落ちる、落ちれば、落ちます、落ちますぅー」
翼で制御しようと思っても翼がひしゃげちゃって全然役に立たない。
風魔法を発動しても、少しだけしか効果がない。
こんな時、夜目の能力が恨めしい。
暗闇の中でもはっきり見えてしまうから。
何となくだけど、落下地点に人がいる気がする。
「危ないから退いてー!」
まだ、聞こえるはずもないのだが叫ばずにはいられない。
「怖い、怖い、怖い」
落下スピードが恐ろしく速くて怖い。
スカイダイビングする人はなぜこの恐怖に耐えられるのだろう?
『マスターの恐怖耐性がやっとレベル5になりました。良かったですね』
エイシスさんや、そんな事今言われても反応に困るんだが?
夜だというのに人がいる。
あれ、もしかしてあの臭いゴブリンか?
だが、倒れているのはフードを被っていてわからないが子供のようだ。
『マスター、割と冷静ですね。これは手助けは必要ありませんか?』
「いいえ!必要です。お願いします」
『では、制御開始します。マスターは地上にいるゴブリンの排除をお願いします』
エイシスの制御のおかげで、頭からの落下から足に変わり、落ちるスピードも遅くなった。
亜空間で魔法の練習をしたおかげか、エイシスがどのように魔力操作をおこなったのか多少わかるようになったのは僥倖だ。
『マスターは、そこにいるゴブリンの撃退をお願いします』
「言われなくてもそのつもりだ。【ダークショット】【ダークショット】【ダークショット】」
「うわー結構いるなあ」
それからダークショットを打ちまくって数十体のゴブリンを倒したのであった。
そして、いろいろあったがどうにか地面に着地した俺は、ホッと息を溢し普段気にならない地面に感謝したのだった。
◆
「おい、大丈夫か?」
着地した俺は直ぐに倒れていた子供に声をかけたが反応がない。
うつ伏せになっていたので慎重に仰向けにさせた。
「うっ、凄い怪我だ」
フードを外すと顔全体が腫れ上がり、目はほぼ塞がり鼻は皮膚に埋まっていた。
それに至る所から出血していた痕がある。
呼吸はしているので意識を失っているのだろうが怪我の酷さが心配だ。
『それは怪我ではありませんよ。マスター、鑑定をしてみて下さい』
言われた通り倒れている子に鑑定をかける。
………
ユリア・ストローク(9歳)侯爵家長女
職業 ……
Lv1
HP 1/10
MP 74/10000
STR(力量)4
DEX(器用)6
VIT(防御)4
AGI(敏捷)3
INT(知力)10
MMD(精神)15
LUK(運) 38
CHA(魅力)-24(98)
*魔力過多症による瀕死状態。
6分後に死亡する。
………
「ヤバい、この子死にそうだ。それに凄い魔力量だ。俺より多い」
『やはり魔力過多症でしたか。マスター、助けますか?』
「子供をこのままにはしておけないよ。病気ならキュアで治るか?」
『マスター、この病はエリクサーでないと治りません』
エリクサーなら師匠からもらったやつがたくさんある。
ストレージからエリクサーを取り出して、瓶のフタを開けて口に近づけた。
『マスター、気を失っている子にそのような方法では飲ませられませんよ。身体を少し起こして口移しで流し込んで下さい。肺器官に液体が流れ込みますがエリクサーなので直ぐに吸収されるので問題ありません』
保険体育の授業で意識の無い人に水を飲ませてはいけないと教わった。
水を流し込むと肺に水が入り呼吸困難になるそうだ。
「口移しって、アレだよな?」
『そうです。マスターはその子を助けたいのでしょう?もう時間がないですよ』
「わかった、やるよ!これ、治療だから後でセクハラとか文句を言わないでくれよ」
自らの口にエリクサーを含み、そのままその子の口を開いて流し込んだ。
すると、その子の身体が光だし腫れた顔もだんだんと引いていく。
『マスター良くやりました。上出来です』
もう一度鑑定をかけてみたが、病気は治っていた。
「はーあ、良かった。でもこの子どうしよう?家に帰した方がいいよね?」
気を失って俺の腕の中ですやすやと寝息をたてている。
さっきの酷い顔と違って、幼いながら可愛いらしい美少女に変わっていた。
『マスター、魔力過多症はこの世界では不治の病として知られています。エリクサーなら治りますが、この世界の人族でエリクサーを手に入れることはとても難しいのです。恐らくですが、この子は捨てられたのだと思いますよ』
「こんな子供をか!許せないな、それ!」
『まだ確定ではありません。状況から判断してその可能性があると言うことです』
「そうか、そうだよな。でも治ったなら家に帰っても問題ないんじゃないか?侯爵家の娘さんらしいし」
『取り敢えず、目が覚めてから事情を聞いたらどうですか?このまま放置できませんし』
俺もそう思い影収納でその子を収納し、ひとまず拠点に戻ったのだった。
……
『この子の意思もありますが、この魔力量はきっとマスターの役に立つでしょう。それに、レベル上げをしなければ膨大な魔力が身体に馴染まないでしょうし。
マスターは同年代の女子にはトラウマのせいで一歩引いた接し方をしてます。
幼子なら普通に接する事ができるのでマスターの世話係にちょうど良いですね』
エイシスはそう独り言を呟いた。
◆
光の柱が立ち昇った大森林の調査に向かったアミリア第一王女率いる白鳳騎士団は、大森林に入り、少し開けた場所で野営をしていた。
幾つものテントが建ち並び、周りには魔物避けのお香が焚かれている。
総勢23名の白鳳騎士団は、貴族子女が多く在籍するが、数名の平民も在籍している。
この騎士団に入っている女子が望まぬ相手との婚約を破棄したり、されたりした者もおり、アミリア王女がそんな貴族子女の居場所を作る為に創設したのは公然の秘密である。
そんな騎士団で現在夜番の役を受けているのは婚約破棄を相手に申し出たアンジェラもその一人である。
この国には四大公爵と言われる権力を有した公爵家があり、アンジェラはその公爵家のひとつであるライスパーク公爵家の次女でキンズリー公爵家の長男と婚約していた。
しかし、その長男はあまりにも女癖が悪く権力を盾にやりたい放題の男だったので、賠償金を払って婚約を解消したのだった。
その話は貴族の社交界で直ぐに噂になり、アンジェラは、自身の居場所を失いかけていた。
その時、幼い頃から仲が良かったアミリア殿下が事情を鑑み、その境遇を自分自身に重ねたのがきっかけでこの白鳳騎士団が作られたのだが、それを知るのは殿下と数名の者しか知らない。
「アンジェラ様、もう一時で交代になります」
そう言ってお茶を入れたのは平民から魔法の腕を買われてこの騎士団に入隊したチェルシーである。
チェルシーは、平民枠で魔法学園を卒業した優秀な魔法使いで、得意な魔法は土魔法である。
「どうもありがとう。チェルシーも疲れたでしょう?今日一日歩き詰めでしたから」
「私は小さい頃から野山を走り回っていたので平気ですよ。アンジェラ様の方がお疲れでは?」
「私は殿下と一緒に騎士学園にいたので、野営は慣れてますよ。体力もまだまだ有り余ってます」
そう言って僅かな力こぶを作って見せた。
「それにしても今日接敵したのはゴブリンばかりでしたね。私、ゴブリンは臭いから嫌いなんですよ」
「確かに、魔石を取るのが嫌になるほど匂いがキツいですわね。でも、魔石の回収はこの騎士団の収入になりますし我慢しませんといけませんね」
その時、上の方から声が聞こえた。
「今、空から声が聞こえませんでした?」
「そうですか?私には何も聞こえませんでした。鳥か獣ではないですか?」
「そうでしょうか?夜に鳥は飛ばないと思いますが、獣にでも追い立てられたのかしら。それとも私の聞き間違いかもしれませんね」
こうして魔物に襲われる事なく白鳳騎士団の野営は、無事に朝を迎えたのであった。
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