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第2話 胸が痛い
しおりを挟む俺は、鏡から人生の終了を宣言されていた時、寝室のドアをノックする音がした。
「旦那様、アルマの旦那様、起きてやすか? 」
確か、この声は、この屋敷の執事ギジーだったっけ……
「何かようですか~~」
何時もの口調で返事をした。
「ギジーでやす。失礼しやす」
入ってきたのは、年老いたせむし男だった。
黒い服で包まれたこのせむし男は、目が飛び出ており、前歯も欠けている。
(何、この人、超怖いんですけど……)
「お目覚めやんしたか~~先程、変な声が聞こえやしたもんでね、慌てて、駆けつけやした次第でやんす」
「何でもないよ、ちょっと、驚いただけだし~~」
執事のギジーは、不審そうに俺をジロジロ見て、
「アルマの旦那様でやんすよね~~? 」
執事のギジーが疑いの目を向けると、突然、胸に激痛が走った。
(痛っ! 何、これ……)
そう言えば、あの女神という女性が言ってた。入れ替わったのがバレたら、即、死だと……
(聞いてない、こんな痛み、耐えなれない……)
「どうかしやしたか、旦那様」
胸を押さえ苦しんでいる俺を見ながらせむし男は、目をギロリとさせて問いかける。
(バレないようにすれば、おそらく……)
「いや、何でもないぜ、それより、飯の支度をしろ! 」
胸の痛みを押さえながら、低い声で命令口調に言葉を返すと
「そうでやんすか? 随分、痛そうでしたが……それに胸に血糊がついてやんすよ。あっ! もしかしたら、昨夜の女ですかい? 」
(違うわっ! )
「まぁ、まぁの女だった。少し、乱暴に扱ったせいで胸が痛かったがな」
痛いのは本当である。
「な~~るほど、冷徹な旦那様の心を痛めるほど、昨夜は、凄いプレーだったのでやんすね。わかりやした。今夜も最高な女を用意しやすぜ」
せむし男は納得したようで、目を閉じながら大きく頷いていた。
「あ~~頼む」
(こいつ、その女に刺されたのか? 自業自得だよ。それに、こいつ、いや、俺、ドSなのか? もう、勘弁してよ~~)
「今日は、どういたしやすか? 」
せむし男は、予定を聞いてきたが、こいつを知ってる不気味な男といてもボロが出るだけだ。それに、あの胸の痛みは耐えられない。
(確か、こいつの書斎があったはず、俺、もう、引きこもろう……)
「今日は、書斎で用がある。ギジー、飯は適当に持ってきてくれ」
「わかりやした。でも、旦那様が、仕事でやんすか? お珍しい……」
(痛っ、胸が……)
(こいつ、嫌、俺か……仕事してないのか?だが、怪しまれたって仕方がない。この痛みを何とかしなければ……)
「溜まった仕事をやるだけだ」
「わかりやした。後で持っていきやす」
せむし男のギジーは、納得してないだろう。怪訝な顔をしながらそう言い残し部屋を出て行った。
(マジか~~疑われるだけで、痛みが走るのかよ~~)
俺は、痛みには、昔から弱い。
自慢じゃないけど、採血だけで、失神する自信がある。
(だから、バレずに生きていかないと……)
それは、痛みから逃れたいという本能だった。
俺は、そそくさと着替え書斎に引きこもったのだ。
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