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1章
第十四話:姉から見た弟
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一ノ瀬綾乃と上条悠斗を見送った後、彼の姉である祐奈はキッチンに顔を出す。
「あら、悠斗は?」
「綾乃ちゃんち。今日の宿題が多く出たから一緒にってさ」
それに食器を洗っていた母は心配そうに眉を顰めた。
「……大丈夫かしら、綾乃ちゃんのお父さんはまだ帰ってないから二人だけでしょ? 宿題ならお姉ちゃんも見て上げたら?」
母の心配も祐奈は分かる。
悠斗と綾乃は幼馴染。
それも彼女の家庭の事情で、一般的な幼馴染よりも関係は深い。
恋人となったというのも納得出来る。
――だからこそ、一時の感情や興味で簡単に一線を超えてしまうのではないか、と。
高校一年生の男女は既に無垢な子供では無い。
学生の多くが自分のスマホやPCを持つ情報社会である昨今。性へのハードルは下がっている。
年齢が規制される動画サイトは元より、誰もが見れるSNSでも一部ではその手のアカウントや動画、画像が飛び交っているのだ。
口には出さずとも、二人も目にしている事だろう。
そして、恋人が傍に居れば、雰囲気に流される事もある筈だ。
そして、高校一年生の男女は大人でも無い。
遊び半分で犯した過ちを自分達で全て拭える程の力《ちから》は無い。
――命には大きな責任が伴うのだ。
それが大人の女性として愛を育み、子を育ててきた母親の視点。
しかし、
「そんなに心配しなくても良いんじゃない? 恋人ってよりも仲直りしたばっかりで、話足りないだけだよ。昔はそれこそ『結婚するー』って言ってた位だもん」
「そう……かもしれないわね。悠斗も中学生の時はどこか元気なかったから」
母はまだ納得しきれていない様子だが、
「けど、あんまり遅くなってもご迷惑だから、帰ってこない様なら声かけてね」
「はいはい、悠斗が盛んない様にあの子の部屋で見張ってるから」
「もう! だから、女の子がそういう事言わないの!」
乱暴に洗った皿の水を切る母を揶揄う様に笑って、祐奈は弟の部屋に向かう。
「……そういえば、最近、まともに入ってないなー」
たしか、前に入った時は弟が高校に上がる前頃だったか。
当時は本やらゲームソフトやらが乱雑に出しっぱなしだったが、今はちゃんと片付いている。
なんとなくベッドの下を覗いてみるが、多少、埃があるだけで何もなかった。
「……隠し場所を変えたか、弟よ――」
しみじみ思いつつ祐奈は彼のベッドに横たわる。
しかし、お隣の、しかも窓越しの部屋に弟が彼女と居ると思うと姉としては複雑だった。
「何も無い――訳が無いんだよなー、あの子達」
母には、彼らには男女の愛はまだ早い、と言ったものの、そんな事は無いと祐奈は思う。
彼らは互いを既に異性として意識している。
昨夜の窓越しの会話や先ほどの食事の様子を見れば明らかだし、そもそも綾乃に悠斗との事を相談されたのは祐奈だった。
あの時の彼女は、中学生になったばかりだったが真剣だった。
弟も、酷く後悔していた。
中学三年間の疎遠の反動で男女の一線など簡単に超えるだろう。
――今の二人は熱に浮かされている。
その衝動が愛なのか欲情なのか本人達でも分かっていない筈だ。
過ちを犯す前に一旦、距離を空けるべきだ、と大人達は言うだろう。
もしも――未成年で妊娠したら。
出産するにしても、中絶するにしても、どちらの選択肢をしたとしても、一般的な人生とは言えなくなる。
世間的に見て、“今の彼らの様な距離感は良い関係”ではない。
「だけど、まぁ……」
上条悠斗と一ノ瀬綾乃にはその限りでは無いと上条祐奈は断言できる。
祐奈も今でこそ恋人は居ないが、同世代の女子の中では、人生経験は豊富な方だ。
色々な男と出会った。
長く居た事もあるし、直ぐに別れた事もある。本気と思えた事も、何となくという事もある。
優しい人物だった事も、そうで無い事もあった。良い男、悪い男。
頼りになる人、ならない人。
――その他諸々etc。
既に、上条祐奈は初心な乙女とは言えないが、だからこそ言える。
弟は、彼女が出会ってきた男とは、どこか違う。
根拠は無いけれど、あの目には、言葉にはそう思わせる何かがあった。
――たとえ、若気の至りがあったとしても、後悔だけで終わる事は無い筈だ。
「その点だけは、安心だけど……やっぱ初めて同士はちょっと危ないかなー? 一回始まったら止まんないわなぁー。必要なの用意してんのかなぁー」
と、念の為、弟に釘を刺す為にスマホを手に取る。
「……お?」
それと同時に、弟からメッセージが届いた。
「あら、悠斗は?」
「綾乃ちゃんち。今日の宿題が多く出たから一緒にってさ」
それに食器を洗っていた母は心配そうに眉を顰めた。
「……大丈夫かしら、綾乃ちゃんのお父さんはまだ帰ってないから二人だけでしょ? 宿題ならお姉ちゃんも見て上げたら?」
母の心配も祐奈は分かる。
悠斗と綾乃は幼馴染。
それも彼女の家庭の事情で、一般的な幼馴染よりも関係は深い。
恋人となったというのも納得出来る。
――だからこそ、一時の感情や興味で簡単に一線を超えてしまうのではないか、と。
高校一年生の男女は既に無垢な子供では無い。
学生の多くが自分のスマホやPCを持つ情報社会である昨今。性へのハードルは下がっている。
年齢が規制される動画サイトは元より、誰もが見れるSNSでも一部ではその手のアカウントや動画、画像が飛び交っているのだ。
口には出さずとも、二人も目にしている事だろう。
そして、恋人が傍に居れば、雰囲気に流される事もある筈だ。
そして、高校一年生の男女は大人でも無い。
遊び半分で犯した過ちを自分達で全て拭える程の力《ちから》は無い。
――命には大きな責任が伴うのだ。
それが大人の女性として愛を育み、子を育ててきた母親の視点。
しかし、
「そんなに心配しなくても良いんじゃない? 恋人ってよりも仲直りしたばっかりで、話足りないだけだよ。昔はそれこそ『結婚するー』って言ってた位だもん」
「そう……かもしれないわね。悠斗も中学生の時はどこか元気なかったから」
母はまだ納得しきれていない様子だが、
「けど、あんまり遅くなってもご迷惑だから、帰ってこない様なら声かけてね」
「はいはい、悠斗が盛んない様にあの子の部屋で見張ってるから」
「もう! だから、女の子がそういう事言わないの!」
乱暴に洗った皿の水を切る母を揶揄う様に笑って、祐奈は弟の部屋に向かう。
「……そういえば、最近、まともに入ってないなー」
たしか、前に入った時は弟が高校に上がる前頃だったか。
当時は本やらゲームソフトやらが乱雑に出しっぱなしだったが、今はちゃんと片付いている。
なんとなくベッドの下を覗いてみるが、多少、埃があるだけで何もなかった。
「……隠し場所を変えたか、弟よ――」
しみじみ思いつつ祐奈は彼のベッドに横たわる。
しかし、お隣の、しかも窓越しの部屋に弟が彼女と居ると思うと姉としては複雑だった。
「何も無い――訳が無いんだよなー、あの子達」
母には、彼らには男女の愛はまだ早い、と言ったものの、そんな事は無いと祐奈は思う。
彼らは互いを既に異性として意識している。
昨夜の窓越しの会話や先ほどの食事の様子を見れば明らかだし、そもそも綾乃に悠斗との事を相談されたのは祐奈だった。
あの時の彼女は、中学生になったばかりだったが真剣だった。
弟も、酷く後悔していた。
中学三年間の疎遠の反動で男女の一線など簡単に超えるだろう。
――今の二人は熱に浮かされている。
その衝動が愛なのか欲情なのか本人達でも分かっていない筈だ。
過ちを犯す前に一旦、距離を空けるべきだ、と大人達は言うだろう。
もしも――未成年で妊娠したら。
出産するにしても、中絶するにしても、どちらの選択肢をしたとしても、一般的な人生とは言えなくなる。
世間的に見て、“今の彼らの様な距離感は良い関係”ではない。
「だけど、まぁ……」
上条悠斗と一ノ瀬綾乃にはその限りでは無いと上条祐奈は断言できる。
祐奈も今でこそ恋人は居ないが、同世代の女子の中では、人生経験は豊富な方だ。
色々な男と出会った。
長く居た事もあるし、直ぐに別れた事もある。本気と思えた事も、何となくという事もある。
優しい人物だった事も、そうで無い事もあった。良い男、悪い男。
頼りになる人、ならない人。
――その他諸々etc。
既に、上条祐奈は初心な乙女とは言えないが、だからこそ言える。
弟は、彼女が出会ってきた男とは、どこか違う。
根拠は無いけれど、あの目には、言葉にはそう思わせる何かがあった。
――たとえ、若気の至りがあったとしても、後悔だけで終わる事は無い筈だ。
「その点だけは、安心だけど……やっぱ初めて同士はちょっと危ないかなー? 一回始まったら止まんないわなぁー。必要なの用意してんのかなぁー」
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「……お?」
それと同時に、弟からメッセージが届いた。
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