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一章:異世界召喚
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「…………は?」
そうして次に目が覚めた瞬間、視界に飛び込んできたのは見慣れた鍋やまな板――ではなく、見知らぬ景色だった。俺は豪奢な赤い絨毯の上に転がっており、だだ広い部屋は四方が白い大理石の柱に囲まれている。よくゲームやアニメで見かけるような、いかにもな部屋の造りだ。
「え、なに、なんだ、ここ」
ゆっくりと起き上がる。幸い、体に痛むところはなかった。先程まで手にしていたはずの愛用の包丁がどこかに消えてしまっていることが惜しまれる――が、そんなことは目の前の光景に比べればすべてが些事だった。
目を瞬かせる俺の周囲を、兵士や貴族らしき人々が取り囲んでいる。天井から吊り下げられたいくつものシャンデリアが眩い光を放っており、思わず目を細めた。こんな光景、テレビの中でしか見たことがない。
なんだ、なんなんだ、一体なんなんだここは!
人間、混乱を極めると逆に冷静になるのかもしれない。
――俺の脳内は確かに混乱のさなかにあったが、その合間を縫うように今までの人生が駆け抜けていく。
俺、榊戒斗はこの世に生を受けてもうすぐ三十年。俺の人生は、凡そ特別とは程遠い平々凡々なものだった。
優しい両親のもとすくすくと育った俺は、洋食屋を営んでいた父の影響で料理が好きになり迷わず料理人の道に進んだ。数多くの店やホテルで修行をすること数年、五年前にようやく念願叶って小さいながらも自分の店を持つことが出来たのだ。
それ以降はありがたくも常連さんに支えられ、慎ましやかながらも忙しく日々を過ごしていた――、はず。そうだよな、合ってるよな俺の人生!
こんな天変地異のような状況に巻き込まれるなど、ありえない。あってはならないのだ。日本の庶民である俺にとって、このいかにも西洋貴族といった空間はあまりにも縁がないものである。場違い感がすごすぎて、思わず「すみません、俺何かやっちゃいましたかね?」なんて冗句を口にしそうになったその瞬間。
周囲の人だかりから、わっと歓声が上がった。
「ついに……ついに聖女様が我らの声に応えて下さったぞ!」
「我が国を救う、神の使いだ!」
あちこちから聞こえてきた声に、思わず目をまあるく見開いてしまったのだって許されたい。彼らの視線は俺に注がれていることは明らかで、つまるところ“聖女”とやらも俺を指しているのだろう――が。
待て待て。頼む、待ってくれ。小さく裏手でツッコミを入れながら、俺は息を吐いた。
特別詳しいわけではないが、俺にも一応それっぽい知識はある。聖女とは、大体のファンタジー作品における特別な存在だ。たとえば美少女だったり、特別な力を持っていたり。彼らが言うように、国を救うとんでもない存在であるというのが常だろう。
だけどどうだ、俺を見てくれ。どこをどう見ても、いい年したおっさんですよ?
高校時代はそれなりにモテもした。学年一の美少女と名高い中川さんに告白されたのは、俺の人生ではちょっとした自慢である。後輩の女の子に連絡先を渡されたこともあったっけな。どうやら見てくれだけはそこそこらしい。当時も友人達に「顔がいい奴は得するよなあ」なんて悪態をつかれたこともあったが、今となってはすべて過去の栄光だ。なんせここ数年はそういった話とも無縁で、常連さんたちからは令和のご時世に似つかわしくない見合い話を持ち掛けられそうになる始末。
そんな俺が聖女なんて、……ねえ?
「……だが待てよ。おかしくはないか? 聖女は女性のはずでは……」
「しかし、召喚は成功している……! 魔法陣だって反応を示しているだろう!」
「でも見てみろ。どこからどう見ても男……しかもおっさんだぞ!」
「口を慎め、痴れ者が! おっさんだろうと召喚は召喚、不敬であるぞ!」
「しかしこんなおっさんが……何かの間違いでは?」
俺の不安を読み取ったかのように、ざわめきと動揺が周囲に伝播していく。繰り返されるおっさんの単語が、ちくちくと突き刺さるような気がした。
いや。確かにおっさんなんだけども。自認は確かにそうだが、周りからこうもおっさんを連呼されると少々悲しくなってしまうというのが人間の性だ。
「――……静かにしろ! 王子の御前だぞ!」
ざわめきが広がる中、一際重厚な鎧に身を包んだ男が叫んだのを合図に人垣が割れた。そこから現れたのは、長い金髪を持つ青年。凛と伸びた背筋は、彼がただならぬ身分である証左のようだった。
華奢な輪郭の内側では、神さまが手塩をかけて配置したかのような端正なパーツが光っている。中でも切れ長の目元は、きっと老若男女問わず人目を惹くだろう。青の双眸を縁取るまつ毛は長く伸びており、まなざしは鋭い。まだ一言も言葉を交わしていないにも関わらず、彼の心の内が清廉なものであると物語っているようでもあった。
白のマントを纏った姿は絵画から抜け出した絵本の中の王子様そのもので、ため息が出るほど美しい。彼が、この場の主なのだろう。
「……私はこの国の第一王子、アリシアスだ。」
澄んだ声で名乗りを上げ、青年――アリシアスは真っ直ぐ俺を見据えてくる。冷たい青の瞳に射抜かれ、背筋がぞわっと泡立った。
「あ、どうも。俺は榊。榊戒斗です」
名前も見た目も負けている側の俺が名乗るのはどうにも気後れしたが、ここでだんまりを貫くわけにもいかないだろう。おずおずと名を告げれば、アリシアスは然程興味がなさそうに小さく頷いた。
「神託によれば、聖女はこの国を救う存在。召喚は確かに成功した。だが……」
彼は一歩近づき、俺を見下ろすようにして目を細める。まるで品定めをするかのような眼差しだ。実際、そうなのだろうけど。
アリシアスは俺を頭のてっぺんから爪先まで見下ろした後に、――感情を伴わない声で、淡々と言葉を続けた。
「なぜ、男なんだ」
いや、俺が知りたい。
「すみません。俺が何でここにいるのかはさっぱりなんですが、ええと、俺は定食屋をやってただけの普通の人間でして……聖女とか召喚とか、そういうのは間に合ってるっていうか」
というか、さっさと帰らせてくれ。
言いかけたところで、アリシアスは容赦なく言葉を遮った。
「まったくもって使えんな。セリス、お前は一体何をしていた?」
アリシアスの言葉に、相変わらず抑揚はない。それが却って恐ろしく思えた。
刃物のように鋭い言葉を投げ掛けた先には、一人の少年がいた。
「す、すすすすすすみません!」
年のころは十五歳くらいだろうか。アリシアスに凄まれた瞬間、びくりと少年の肩が大きく跳ねた。すっかり萎縮した少年はかわいそうなくらいに身を縮こまらせていた。うさぎを彷彿とさせる白い髪が、かわいそうなくらいに震えている。
「す、すみません。アリシアス王子。ですが神託の通りに召喚は成功しています、ですから、この方が我が国を救う聖女であることは間違いないかと……」
「このくたびれた風貌の男がか?」
「ええ、そうです! 確かに見てくれはいささか庶民の雰囲気が否めませんが、国民の親近感を得やすいという点では優れた御仁であるかと! それに、大切なのは見た目ではなく秘められた能力です。癒しの力こそが聖女の証、我が国に繁栄と秩序をもたらすのですから!」
「ふむ……。お前は、この男にその力があると申すか?」
「え、ええ! もちろん! すみません、サカキ……様? 失礼いたします!」
完全に置いてけぼりを喰らっていたが、どうやら話は着々と進んでいたらしい。セリスと呼ばれた少年は、一歩大きく前に踏み出した。床に座ったままの俺と視線を合わせるように膝を折り、恭しく頭を下げる。
身に着けている服はどこからどう見ても上等なそれで、彼もそこそこの身分なのだということは推察に容易い。そんな相手に畏まられると居心地の悪さが拭えないが、視線を逸らすことは出来なかった。俺を見つめるセリスのまなざしが、あまりにも真剣だったからだ。
「どうか楽になさってください。……僕の能力は、“スキル鑑定”です。その方が持つスキルを、すべてただしく鑑定することが出来ます。ご本人が気づいているいないに関わらず、です」
「……そうか」
それ以上は、何も言えなかった。
なんせ俺にとっちゃ、すべてがわからないことばかりなのだ。飛び交う単語も聞き覚えのないものばかりで、すべて耳を素通りしていく。
きっとこれは、夢なのだろう。夢にしちゃ随分とリアルな感じがするが、きっとあと少しもすれば目が覚めるに違いない。現実に戻るまでの少しの間、このおかしな夢に付き合ってやるのも良いだろう。
そう自分に言い聞かせて、俺はセリスと視線を重ねる。――そうして、数十秒の沈黙。厳かな雰囲気の広間を重たい沈黙が占めて、しばらく経ってから。
「…………………………あ、あれえ………?」
沈黙を破ったのは、目の前のセリスの声だった。
セリスが完全に動揺しきっているのは震える声と急に彷徨い始めた視線からも明らかで、否が応でも俺はこの後の展開を予想してしまう。
俺は、どうやらこの世界に召喚された聖女様というやつらしい。
そしてその聖女とやらは、不思議な力を持っているらしい。
その力をセリスは鑑定できる、――とのことだったが。
「ええと、セリス……くん?」
「……………」
「おい、目逸らすなよ。……ええと、俺……もしかして、無能だった?」
こういう時、気の利いた言葉が何も出てこない自分の語彙力が嘆かわしい。とはいえ回りくどい表現をしたって意味はないだろう。
敢えて言葉を選ばずに“無能”と形容したが、あながち間違いではないはずだ。セリスは再び数秒の沈黙の後に、壊れたロボットのようなぎこちない動きで頷いた。
「は、はい……。サカキ様、貴方は……癒しの力はおろか、戦闘スキルも魔法スキルも持ち合わせていません。どうやら貴方は、間違って召喚されてしまったようです……」
そうして次に目が覚めた瞬間、視界に飛び込んできたのは見慣れた鍋やまな板――ではなく、見知らぬ景色だった。俺は豪奢な赤い絨毯の上に転がっており、だだ広い部屋は四方が白い大理石の柱に囲まれている。よくゲームやアニメで見かけるような、いかにもな部屋の造りだ。
「え、なに、なんだ、ここ」
ゆっくりと起き上がる。幸い、体に痛むところはなかった。先程まで手にしていたはずの愛用の包丁がどこかに消えてしまっていることが惜しまれる――が、そんなことは目の前の光景に比べればすべてが些事だった。
目を瞬かせる俺の周囲を、兵士や貴族らしき人々が取り囲んでいる。天井から吊り下げられたいくつものシャンデリアが眩い光を放っており、思わず目を細めた。こんな光景、テレビの中でしか見たことがない。
なんだ、なんなんだ、一体なんなんだここは!
人間、混乱を極めると逆に冷静になるのかもしれない。
――俺の脳内は確かに混乱のさなかにあったが、その合間を縫うように今までの人生が駆け抜けていく。
俺、榊戒斗はこの世に生を受けてもうすぐ三十年。俺の人生は、凡そ特別とは程遠い平々凡々なものだった。
優しい両親のもとすくすくと育った俺は、洋食屋を営んでいた父の影響で料理が好きになり迷わず料理人の道に進んだ。数多くの店やホテルで修行をすること数年、五年前にようやく念願叶って小さいながらも自分の店を持つことが出来たのだ。
それ以降はありがたくも常連さんに支えられ、慎ましやかながらも忙しく日々を過ごしていた――、はず。そうだよな、合ってるよな俺の人生!
こんな天変地異のような状況に巻き込まれるなど、ありえない。あってはならないのだ。日本の庶民である俺にとって、このいかにも西洋貴族といった空間はあまりにも縁がないものである。場違い感がすごすぎて、思わず「すみません、俺何かやっちゃいましたかね?」なんて冗句を口にしそうになったその瞬間。
周囲の人だかりから、わっと歓声が上がった。
「ついに……ついに聖女様が我らの声に応えて下さったぞ!」
「我が国を救う、神の使いだ!」
あちこちから聞こえてきた声に、思わず目をまあるく見開いてしまったのだって許されたい。彼らの視線は俺に注がれていることは明らかで、つまるところ“聖女”とやらも俺を指しているのだろう――が。
待て待て。頼む、待ってくれ。小さく裏手でツッコミを入れながら、俺は息を吐いた。
特別詳しいわけではないが、俺にも一応それっぽい知識はある。聖女とは、大体のファンタジー作品における特別な存在だ。たとえば美少女だったり、特別な力を持っていたり。彼らが言うように、国を救うとんでもない存在であるというのが常だろう。
だけどどうだ、俺を見てくれ。どこをどう見ても、いい年したおっさんですよ?
高校時代はそれなりにモテもした。学年一の美少女と名高い中川さんに告白されたのは、俺の人生ではちょっとした自慢である。後輩の女の子に連絡先を渡されたこともあったっけな。どうやら見てくれだけはそこそこらしい。当時も友人達に「顔がいい奴は得するよなあ」なんて悪態をつかれたこともあったが、今となってはすべて過去の栄光だ。なんせここ数年はそういった話とも無縁で、常連さんたちからは令和のご時世に似つかわしくない見合い話を持ち掛けられそうになる始末。
そんな俺が聖女なんて、……ねえ?
「……だが待てよ。おかしくはないか? 聖女は女性のはずでは……」
「しかし、召喚は成功している……! 魔法陣だって反応を示しているだろう!」
「でも見てみろ。どこからどう見ても男……しかもおっさんだぞ!」
「口を慎め、痴れ者が! おっさんだろうと召喚は召喚、不敬であるぞ!」
「しかしこんなおっさんが……何かの間違いでは?」
俺の不安を読み取ったかのように、ざわめきと動揺が周囲に伝播していく。繰り返されるおっさんの単語が、ちくちくと突き刺さるような気がした。
いや。確かにおっさんなんだけども。自認は確かにそうだが、周りからこうもおっさんを連呼されると少々悲しくなってしまうというのが人間の性だ。
「――……静かにしろ! 王子の御前だぞ!」
ざわめきが広がる中、一際重厚な鎧に身を包んだ男が叫んだのを合図に人垣が割れた。そこから現れたのは、長い金髪を持つ青年。凛と伸びた背筋は、彼がただならぬ身分である証左のようだった。
華奢な輪郭の内側では、神さまが手塩をかけて配置したかのような端正なパーツが光っている。中でも切れ長の目元は、きっと老若男女問わず人目を惹くだろう。青の双眸を縁取るまつ毛は長く伸びており、まなざしは鋭い。まだ一言も言葉を交わしていないにも関わらず、彼の心の内が清廉なものであると物語っているようでもあった。
白のマントを纏った姿は絵画から抜け出した絵本の中の王子様そのもので、ため息が出るほど美しい。彼が、この場の主なのだろう。
「……私はこの国の第一王子、アリシアスだ。」
澄んだ声で名乗りを上げ、青年――アリシアスは真っ直ぐ俺を見据えてくる。冷たい青の瞳に射抜かれ、背筋がぞわっと泡立った。
「あ、どうも。俺は榊。榊戒斗です」
名前も見た目も負けている側の俺が名乗るのはどうにも気後れしたが、ここでだんまりを貫くわけにもいかないだろう。おずおずと名を告げれば、アリシアスは然程興味がなさそうに小さく頷いた。
「神託によれば、聖女はこの国を救う存在。召喚は確かに成功した。だが……」
彼は一歩近づき、俺を見下ろすようにして目を細める。まるで品定めをするかのような眼差しだ。実際、そうなのだろうけど。
アリシアスは俺を頭のてっぺんから爪先まで見下ろした後に、――感情を伴わない声で、淡々と言葉を続けた。
「なぜ、男なんだ」
いや、俺が知りたい。
「すみません。俺が何でここにいるのかはさっぱりなんですが、ええと、俺は定食屋をやってただけの普通の人間でして……聖女とか召喚とか、そういうのは間に合ってるっていうか」
というか、さっさと帰らせてくれ。
言いかけたところで、アリシアスは容赦なく言葉を遮った。
「まったくもって使えんな。セリス、お前は一体何をしていた?」
アリシアスの言葉に、相変わらず抑揚はない。それが却って恐ろしく思えた。
刃物のように鋭い言葉を投げ掛けた先には、一人の少年がいた。
「す、すすすすすすみません!」
年のころは十五歳くらいだろうか。アリシアスに凄まれた瞬間、びくりと少年の肩が大きく跳ねた。すっかり萎縮した少年はかわいそうなくらいに身を縮こまらせていた。うさぎを彷彿とさせる白い髪が、かわいそうなくらいに震えている。
「す、すみません。アリシアス王子。ですが神託の通りに召喚は成功しています、ですから、この方が我が国を救う聖女であることは間違いないかと……」
「このくたびれた風貌の男がか?」
「ええ、そうです! 確かに見てくれはいささか庶民の雰囲気が否めませんが、国民の親近感を得やすいという点では優れた御仁であるかと! それに、大切なのは見た目ではなく秘められた能力です。癒しの力こそが聖女の証、我が国に繁栄と秩序をもたらすのですから!」
「ふむ……。お前は、この男にその力があると申すか?」
「え、ええ! もちろん! すみません、サカキ……様? 失礼いたします!」
完全に置いてけぼりを喰らっていたが、どうやら話は着々と進んでいたらしい。セリスと呼ばれた少年は、一歩大きく前に踏み出した。床に座ったままの俺と視線を合わせるように膝を折り、恭しく頭を下げる。
身に着けている服はどこからどう見ても上等なそれで、彼もそこそこの身分なのだということは推察に容易い。そんな相手に畏まられると居心地の悪さが拭えないが、視線を逸らすことは出来なかった。俺を見つめるセリスのまなざしが、あまりにも真剣だったからだ。
「どうか楽になさってください。……僕の能力は、“スキル鑑定”です。その方が持つスキルを、すべてただしく鑑定することが出来ます。ご本人が気づいているいないに関わらず、です」
「……そうか」
それ以上は、何も言えなかった。
なんせ俺にとっちゃ、すべてがわからないことばかりなのだ。飛び交う単語も聞き覚えのないものばかりで、すべて耳を素通りしていく。
きっとこれは、夢なのだろう。夢にしちゃ随分とリアルな感じがするが、きっとあと少しもすれば目が覚めるに違いない。現実に戻るまでの少しの間、このおかしな夢に付き合ってやるのも良いだろう。
そう自分に言い聞かせて、俺はセリスと視線を重ねる。――そうして、数十秒の沈黙。厳かな雰囲気の広間を重たい沈黙が占めて、しばらく経ってから。
「…………………………あ、あれえ………?」
沈黙を破ったのは、目の前のセリスの声だった。
セリスが完全に動揺しきっているのは震える声と急に彷徨い始めた視線からも明らかで、否が応でも俺はこの後の展開を予想してしまう。
俺は、どうやらこの世界に召喚された聖女様というやつらしい。
そしてその聖女とやらは、不思議な力を持っているらしい。
その力をセリスは鑑定できる、――とのことだったが。
「ええと、セリス……くん?」
「……………」
「おい、目逸らすなよ。……ええと、俺……もしかして、無能だった?」
こういう時、気の利いた言葉が何も出てこない自分の語彙力が嘆かわしい。とはいえ回りくどい表現をしたって意味はないだろう。
敢えて言葉を選ばずに“無能”と形容したが、あながち間違いではないはずだ。セリスは再び数秒の沈黙の後に、壊れたロボットのようなぎこちない動きで頷いた。
「は、はい……。サカキ様、貴方は……癒しの力はおろか、戦闘スキルも魔法スキルも持ち合わせていません。どうやら貴方は、間違って召喚されてしまったようです……」
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