死に戻りオメガはもう旦那様の言うことを聞きたくありません!

進木えい

文字の大きさ
4 / 28

二度目の初めて

しおりを挟む
 
 公爵家からの使用人は気付くとどこにもいなくなっていた。屋敷でアルバの姿を見ることはほとんどなく、夫婦の寝室は一人で使っていた。その代わりと言ってはなんだがリオールの側をついて回るは、アルバの部下だった。剣を携え、まるで何かに警戒しているかのように、付き従っていた。
 
「アルバは」
「王家に顔を出しています」
「そうですか。……もうすぐ発情期が来ると、伝えておいてください」
 
 あの人は何処にも属さない人だったと思う。だが故に誰も制御ができずに、首輪が嵌められなかった。そういった性質から恐れられていたし、手に入れようとした。前とは違う動きに少し戸惑う。
 アルバからは番契約がある限り離れられない。リオールはオメガであるが、自分の体のことを子どもを孕めることと発情期があることくらいしか知らない。そう言えばアルバとは子どもが出来なかった。それについて何かを話すことはない。ただ、夫のすることを全て受け入れて信じていた。馬鹿で、無知な自分に腹が立つ。アルバは、聖人と番いたかったのだろうか。
 書斎には初めて入った。以前は文字が読めなかったし、アルバが課題として与えてくれた本は、絵本や小説のようなものが多かった。絵も多く、文字を読むのにつっかえても内容を理解しやすいものだった。ハッと鼻を鳴らす。アルバがリオールに文字を教えたことが、リオールが文字を書くことにつながり、それが結果としてアルバの命を救った。父に手紙を書いたのは初めてだった。多忙な父に生前あった事はほとんどなく、手紙は読んでもらえたのかと複雑な気持ちになる。
 
「番について……、番、に……」
 
 書斎で本を読む。暗くて埃っぽい場所であった。自分が生きていた公爵家より随分マシである。
 番契約の破棄について。書かれた書籍は少なかった。何故なら、番契約を破棄という事はほとんど行われない。大抵は死別である。
 
「番と死別したアルファは、その生涯を……、耐え難い苦痛と共に、過ごす……」
 
 眉を顰めた。あの時読んだ本にはさらりと書かれていた顛末には、アルバの気持ちなど一ミリも書かれていなかった。ただ、悪行の限りを尽くし、自殺をしたとそれだけ。
 番と死別したオメガの方は精神的ショックも大きく、精神的不調から体を壊し亡くなる事例もなくはない。でも多くは、生きる。バースは子孫の繁殖に特化したものであり、子どもの命を繋いでいくためかも知れない。
 アルバが死んだ後、リオールが生きていたらどうなったのだろうか。公爵家に連れ戻され、次は違う旦那を当てがわれるのだろうか。あのまま殺される事はあまり考えていなかった。 
 
「発情期が近いのに、何故出歩く」
「……アルバ、さま」
「寝室に戻れ。本ならいくらでも持っていけばいい」
 
 リオールの開いていた本にアルバは少し目を落とし、閉じてから小脇に抱えた。部屋に戻り、リオールがベッドに寝転がるとアルバは本をベッドサイドに置いた。アルバの顔が、ベッドサイドの灯りに照らされている。掘りの深い目元に影が落ちる。
 耐え難い苦痛を、貴方は何年耐えたのですか。貴方は何を望んで、何を見て、何を考え、俺に死んでくれと頼んだのですか。
 
「アルファは……、頭がいいんですね。体が大きいのも、番には優しいのも、貴方がアルファのせいなんですね」
「さあ。他のアルファは知らない」
「俺の頭が悪いのは、オメガのせいですか。何でも貴方のいうことに従うのは、オメガのせいですか」
「さあ……。他のオメガは知らない」
 
 自分の指を握る。アルバの手が俺の手を包んで握る。アルバの体温はいつも落ち着いている。今は発情期前でリオールの方が体温が高い。
 
「番契約の解除。俺もそれについて調べる」
「…………そうですね、おれもそっちの方がいいと思います」
「発情期にはキチンと務めは果たす。抱くから服を脱げ。本格的に発情する前に一度ヤれば、大人しく過ごせるはずだ」
 
 服を脱いだ。アルバもジャケットを脱ぎ、逞しい体を久しぶりに見た。ベッドに押し倒されてのしかかられる。大きな体は最初は怖くて、食べられてしまうかと思った。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

無愛想な氷の貴公子は臆病な僕だけを逃さない~十年の片想いが溶かされるまで~

たら昆布
BL
執着ヤンデレ攻め×一途受け

回帰したシリルの見る夢は

riiko
BL
公爵令息シリルは幼い頃より王太子の婚約者として、彼と番になる未来を夢見てきた。 しかし王太子は婚約者の自分には冷たい。どうやら彼には恋人がいるのだと知った日、物語は動き出した。 嫉妬に狂い断罪されたシリルは、何故だかきっかけの日に回帰した。そして回帰前には見えなかったことが少しずつ見えてきて、本当に望む夢が何かを徐々に思い出す。 執着をやめた途端、執着される側になったオメガが、次こそ間違えないようにと、可愛くも真面目に奮闘する物語! 執着アルファ×回帰オメガ 本編では明かされなかった、回帰前の出来事は外伝に掲載しております。 性描写が入るシーンは ※マークをタイトルにつけます。 物語お楽しみいただけたら幸いです。 *** 2022.12.26「第10回BL小説大賞」で奨励賞をいただきました! 応援してくれた皆様のお陰です。 ご投票いただけた方、お読みくださった方、本当にありがとうございました!! ☆☆☆ 2024.3.13 書籍発売&レンタル開始いたしました!!!! 応援してくださった読者さまのお陰でございます。本当にありがとうございます。書籍化にあたり連載時よりも読みやすく書き直しました。お楽しみいただけたら幸いです。

「オレの番は、いちばん近くて、いちばん遠いアルファだった」

星井 悠里
BL
大好きだった幼なじみのアルファは、皆の憧れだった。 ベータのオレは、王都に誘ってくれたその手を取れなかった。 番にはなれない未来が、ただ怖かった。隣に立ち続ける自信がなかった。 あれから二年。幼馴染の婚約の噂を聞いて胸が痛むことはあるけれど、 平凡だけどちゃんと働いて、それなりに楽しく生きていた。 そんなオレの体に、ふとした異変が起きはじめた。 ――何でいまさら。オメガだった、なんて。 オメガだったら、これからますます頑張ろうとしていた仕事も出来なくなる。 2年前のあの時だったら。あの手を取れたかもしれないのに。 どうして、いまさら。 すれ違った運命に、急展開で振り回される、Ωのお話。 ハピエン確定です。(全10話) 2025年 07月12日 ~2025年 07月21日 なろうさんで完結してます。

運命じゃない人

万里
BL
旭は、7年間連れ添った相手から突然別れを告げられる。「運命の番に出会ったんだ」と語る彼の言葉は、旭の心を深く傷つけた。積み重ねた日々も未来の約束も、その一言で崩れ去り、番を解消される。残された部屋には彼の痕跡はなく、孤独と喪失感だけが残った。 理解しようと努めるも、涙は止まらず、食事も眠りもままならない。やがて「番に捨てられたΩは死ぬ」という言葉が頭を支配し、旭は絶望の中で自らの手首を切る。意識が遠のき、次に目覚めたのは病院のベッドの上だった。

運命の番は姉の婚約者

riiko
BL
オメガの爽はある日偶然、運命のアルファを見つけてしまった。 しかし彼は姉の婚約者だったことがわかり、運命に自分の存在を知られる前に、運命を諦める決意をする。 結婚式で彼と対面したら、大好きな姉を前にその場で「運命の男」に発情する未来しか見えない。婚約者に「運命の番」がいることを知らずに、ベータの姉にはただ幸せな花嫁になってもらいたい。 運命と出会っても発情しない方法を探る中、ある男に出会い、策略の中に翻弄されていく爽。最後にはいったい…どんな結末が。 姉の幸せを願うがために取る対処法は、様々な人を巻き込みながらも運命と対峙して、無事に幸せを掴むまでのそんなお話です。 性描写が入るシーンは ※マークをタイトルにつけますのでご注意くださいませ。 物語、お楽しみいただけたら幸いです。

オメガの復讐

riiko
BL
幸せな結婚式、二人のこれからを祝福するかのように参列者からは祝いの声。 しかしこの結婚式にはとてつもない野望が隠されていた。 とっても短いお話ですが、物語お楽しみいただけたら幸いです☆

殿下に婚約終了と言われたので城を出ようとしたら、何かおかしいんですが!?

krm
BL
「俺達の婚約は今日で終わりにする」 突然の婚約終了宣言。心がぐしゃぐしゃになった僕は、荷物を抱えて城を出る決意をした。 なのに、何故か殿下が追いかけてきて――いやいやいや、どういうこと!? 全力すれ違いラブコメファンタジーBL! 支部の企画投稿用に書いたショートショートです。前後編二話完結です。

処理中です...